倉林明子

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賃上げ担保にならず  リスキリングで批判 (2024/5/25 厚生労働委員会) 

(議事録は後日更新いたします)

 日本共産党の倉林明子議員は25日の参院厚生労働委員会で、岸田政権が進める「三位一体労働市場改革」に盛り込まれたリスキリング(学び直し)は、構造的な賃上げの担保にはならないと批判しました。

 雇用保険法改定案は、新たに基本手当に相当する給付として「教育訓練休暇給付金」を創設します。教育訓練のために無給の休暇を取得した場合に支給されるため、事業主は負担なく一定の生活保障付きの教育訓練を労働者に受講させることができます。

 一方で、大企業では人事評価制度によって、降格・賃下げが横行している実態があります。倉林氏は「現場の実態を踏まえれば、事業主は教育訓練の成果を低く評価し、処遇の引き下げなどによって、解雇せずとも労働者が自ら退職を選ばざるをえないよう追い込むことが可能になるのではないか」と質問。武見敬三厚労相は「人事評価制度の乱用は問題だ」と答弁しました。

 倉林氏は「教育訓練休暇給付金」は基本手当に相当する給付のため、自発的な離職を迫られた労働者は失業給付も受け取れないと指摘。リスキリングが労働者にとって不利益になる重大問題だと批判しました。


議事録を読む(未定稿)
(この会議録は未定稿です)

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 まず、法案に入る前に一問お聞きしたいと思います。
 四月十九日に大阪高裁が、1型糖尿病の障害年金の支給停止について処分を受けた控訴人全員の支給を認めるという判決を行っております。厚労省は、これ上告を断念して、訴えた控訴人にとどまらず、平成二十八年当時、年金支給を停止された全ての1型糖尿病患者に対して速やかに支給を再開するということを求めたい。
 あわせて、この基準の見直しが要ると思うんですね。生活上の困難さを含めた当事者の生活実態を十分反映できるようにと、物すごく曖昧になっているところをきちっと認定基準にも見直していくべきだと考えます。いかがでしょう。

○国務大臣(武見敬三君) 今回の大阪高等裁判所における判決でありますが、厚生労働省が定めた糖尿病についての障害認定基準は一定の合理性を有するとした上で、1型糖尿病患者である控訴人八名について、国の判断と異なり、障害等級二級に該当すると判断されたものでございます。
 厚生労働省としては、現在、この判決の内容を精査中でございます。関係省庁とよく相談をした上で、今後の対応は検討してまいりたいと思います。
 いずれにせよ、1型糖尿病による障害の状態は様々であることを踏まえて、引き続き適正な認定に取り組んでまいりたいと思います。

○倉林明子君 重ねて控訴は断念すべきだと申し上げておきます。やっぱり認定基準そのものを見直すべきだと、当事者の実態に合わせた速やかな見直しを求めておきたいと思います。
 それでは、法案です。
 法案でこれ充実を図るとしているリスキリング支援について質問したいと思います。
 これ、出発点は、三位一体の労働市場の改革ということが盛り込まれた、いわゆる骨太の方針二〇二三ということになるわけです。リスキリングと職能給の導入、さらに労働移動の円滑化、これ三つ一体で進めることで構造的に賃金が上昇する仕組みをつくるんだって書いてあるんですよね。これがよう分からぬのですよ。何でこのリスキリングに、まあ三つ一体に取り組めばその構造的に賃金が上がるのかというところなんですよね。
 これ、リスキリングについて聞きたいと思うんですけれども、これ取り組むことで構造的な賃上げということにどれだけの効果があるとお考えでしょうか。

○国務大臣(武見敬三君) 御指摘のリスキリングによる能力向上支援が賃上げに与える効果というの、これは定量的にすぐ出せるものではありません。それは難しいんですけれども、このデジタル化の進展など、企業や労働者を取り巻く環境が急速に今変化をしています。それから、労働者の職業人生の長期化、元気な方々がより長期間労働に従事されるようになってまいりました。それから、個人や企業に対するリスキリング支援を強化をし、自律的、主体的な学び、学び直しを後押ししていくことは、企業内での昇任、昇給や転職による処遇改善につながるとともに、企業にとっても生産性の向上等につながることが期待できるというふうに考えております。
 このリスキリングを通じて、こうした各労働者が自分の選択肢を広げることができる、こうしたことを通じて、最終的にはこうした賃上げも含めた好結果に結び付けるように政策として推進していきたいと、こうまいっているところであります。

○倉林明子君 本当に定量的な説明って難しいというのはそのとおりだと思います。
 さらに、労働者がスキルを身に付けたとしても、賃上げにつながるかどうかということでいいますと、雇用する事業主の評価次第だと私思うんですよ。さらに、この三位一体の労働市場改革で職務給の導入、これ企業が促進するということになるんだけれども、職務給の導入が労働者の賃上げにつながると、これはどういう根拠なんでしょうか。

○国務大臣(武見敬三君) 政府としては、その個々の企業の実態に応じた職務給の導入のみならず、リスキリングによる能力向上支援、それから成長分野の労働移動の円滑化、併せて取り組む三位一体の労働市場改革を行うことで、客観性、透明性、公平性が確保される雇用システムへの転換を図って、これによって構造的に賃上げが、確実にその賃金が上昇する仕組みというものをつくろうとしているところなんであります。

○倉林明子君 それ、思いは説明あったかもしれないけど、それ根拠と言えるものだろうかと。
 私、閣議決定のこの基になっている新しい資本主義実現会議の提案、これ読ませてもらうと、中に書いて、入っているのは、三位一体の労働市場改革の指針というものの中に書き込まれているものとして、従業員のパフォーマンス改善計画、いわゆるPIPについても例示してあるんですね。このPIPってどういうものかというと、外資系企業発のこれ人事評価制度で、事業主が業績不十分だとした労働者に対して、改善計画と称して無理難題を押し付けるわけですよ。PIPを受け入れるのか、それとも自主退職かと、この二者択一を迫るという手法で、アマゾン、日本IBM、ここで事実上の退職強要の手法になっているということで、手法になっているということが告発もあって発覚しているわけです。
 職務給の導入、これ、職務に達していないということを理由にして賃下げや自主退職を可能とする手段、事業主に与えるということにもつながりかねないという懸念を持っております。
 労働者の雇用の安定に逆行すると、この可能性もあるんじゃないかと思うんですけれども、認識いかがですか。

○国務大臣(武見敬三君) 職務給の導入などの賃金制度の変更というのは、基本的には労使間でよく話し合っていただくことが重要であります。
 ここで、厚生労働省では、関係省庁とも連携をして、リスキリングによる能力向上支援であるとか、個々の企業の実態に応じた職務給の導入などを通じて労働市場改革に取り組んでおりますけれども、こうした労働市場改革というのは、働く個人の立場に立って、多様なキャリアや職業、処遇の選択肢の提供を確保しようとするものであって、不安定雇用を促進するというような御指摘の意味では全くありません。
 引き続き、安心して自らのキャリアや働き方を選べる環境を整備していきたいと思います。

○倉林明子君 いや、実際にそういうことが告発もあって明らかになっているよと、そういうふうに使われれば、賃上げどころか、賃下げあるいは自主退職、こういうことに追い込まれる労働者ということが増えないかという懸念なんです。これで、閣議決定もされた方針に基づいてやっていますという、こういう企業の退職強要の手段として使われるようなことまでお墨付きを与えるようなことにつながってはいけないと思うわけです。
 法案では、新たに無給の教育訓練に対し教育訓練休暇給付金、これ創設されることとなりまして、事業主は、これ負担なく労働者に一定の生活保障付きの教育訓練を受講させることが可能となるということです。
 既に、職業能力開発促進法によって有給の教育訓練休暇制度などがあるわけですけれども、これ、新たに制度を創設する目的は何か。あわせて、この制度を利用した労働者が六か月以内に離職した場合の失業手当の特例、これ設けた理由は、趣旨は何でしょうか。

○政府参考人(山田雅彦君) 労働者の主体的な能力開発をより一層推進するためには、比較的長期間の教育訓練を受ける場合にあっても、労働者は生活費等への不安なく教育訓練に専念できるようにすることが重要です。
 厚労省では、御指摘のように、有給の教育訓練休暇制度の導入を推進してきたところでありますが、これはこれとして引き続き推進していきますが、併せて無給の教育訓練休暇制度を利用した労働者への支援を講ずることによって、労働者のリスキリングを一層推進するため、教育訓練休暇給付を創設することとしたものであります。
 また、無給の教育訓練休暇を活用して自発的に教育訓練を受けることは教育訓練に専念するために離職する場合と同視し得ることから、本給付は失業給付に相当する給付として創設することとしております。
 最後に言われた教育訓練給付、ごめんなさい、教育訓練休暇給付金を受給した場合は失業給付の受給資格は一旦リセットされることになりますが、その上で、失業中の生活の安定を図るという雇用保険の目的に鑑み、教育訓練休暇給付金を受給して、失業給付の受給資格を再び満たすまでの間に倒産、解雇等の理由で離職する場合に限っては、特例的に九十日分の失業給付を支給する、そういう扱いにしたものであります。

○倉林明子君 職業能力開発促進法及び労働施策等総合推進法では、教育訓練等を含め、能力の評価に関する規定があります。
 法案のその教育訓練休暇給付金、これ利用した教育訓練についても、やっぱりこれ評価を受けるということになるんじゃないでしょうか。どうでしょう。

○政府参考人(岸本武史君) お答えいたします。
 御指摘の職業能力開発促進法等の規定は、基本理念を掲げる規定でございまして、ここから直ちに事業主に対して本法案の教育訓練休暇給付金の対象となる教育訓練を含め、訓練等に関する評価の実施を義務付けるものではございません。

○倉林明子君 実際に既に大企業でどんなことが起こっているかというと、役割評価の人事制度が実施されているところでは、これ、評価することで降格、賃下げということが横行しているし、その評価の基準ということは、もう企業、ブラックボックスということにもなっているという実態があります。
 事業主は、訓練の成果を低いと評価し、処遇を引き下げることによって、解雇しなくとも労働者を自ら退職を選ばざるを得ないように追い込むと、こんなことが可能になるんじゃないかという懸念持っています。現場の今、人事評価制度等を実施している実態を踏まえたら、こういう懸念が払拭できるということになるのかどうかですね、いかがでしょう。

○国務大臣(武見敬三君) 一般論として、企業が労働者の能力や業績などを評価して処遇に反映する人事考課制度におきましては、個々の労働者に対してどのような評価を行うかは、基本的には当該人事考課制度の中での裁量的判断となります。しかし、その裁量権の濫用があってはならず、一般的には、評価の手順や基準の合理性、それから個々の評価の適切性などが求められます。また、評価自体が適正なものであったとしても、それを理由に御指摘のように退職に追い込むような退職勧奨をすることは違法な権利侵害に当たるとして、これは問題となり得るものと考えます。
 厚生労働省としては、問題のある事案を把握した場合には、都道府県労働局において啓発指導等を行っているところでございます。

○倉林明子君 今でも、違法となり得るし、違法となり得るものに対して指導をやっているよということなんですけれども、今でも名立たる大手電機のところでどんなことが起こっているかというと、追い出し部屋に呼び出して退職を迫る面談を繰り返すだけじゃなくて、リストラということで対象に挙げた人に対しては、人材派遣会社に出向させると。そこで新たな再就職先を探させる例。さらに、人材派遣会社の開催する就職セミナー、転職セミナーへの参加を業務命令ということで強要するというようなことがやられています。労働者に退職を選択させているよと、こういう告発が、電機・情報ユニオン、労働組合から寄せられている実態があるんですよね。
 失業給付の特例ということで、整理解雇等の理由により離職した者もこれ対象になるということです。自発的な離職を選んだ労働者が離職前一年以内にこれ教育訓練休暇給付金を受けていた場合というのは、これ失業給付の扱いというのはどうなるんでしょうか。確認です。

○政府参考人(山田雅彦君) 教育訓練休暇給付金を受給した場合は失業給付の受給資格は一旦リセットされ、教育訓練休暇給付金を受給した後、新たに失業給付の受給資格を得るためには、原則十二か月の被保険者期間が必要となります。このため、教育訓練休暇給付金の対象となる休暇開始後一年以内に自発的に離職した場合は、失業給付は受給できないことになります。
 こうした取扱いについては、そういった給付金を申請する者、人に対しては、それはきちんと理解していただけるように制度の周知に努めるとともに、利用者が制度内容を理解した上で申請していることを支給申請の段階できちんと確認をするなど、きめ細かな対応を行うよう、施行に向けて手続の詳細を検討してまいりたいと思います。

○倉林明子君 結局、その無給の新たな教育訓練休暇給付金というものを使いますと、これ失業給付の前倒しということになるので、一年以内の、解職前一年以内に受けていたら、給付資格というか、受けられなくなっちゃうわけですよね、リセットしちゃうということがあるんですよ。結局、訓練教育を受けるというリスキリングに無給で挑戦したと。賃上げどころか、これ離職ということになった場合、実は失業給付が受けられないと。よう周知しますということですけれども、これ労働者にとっては、リスキリングをしたばっかりに不利益を被るということにつながるわけですよ。
 大体、そもそも論を言いますと、産業構造の変化とか技術の進歩とかそのほかの経済的な環境変化、こういうことが起こって、大きな変化起こっているという御説明ありました。こういう変化に対応する、業務内容が変化するということに対応する責任というのは、私、労働者にはないと思うんですよ。そもそも、そういうものに対応できる労働者に教育訓練するのは、企業の側の事業主の責任でやるものだと言いたいと思うんですよ。大臣、いかがですか。

○国務大臣(武見敬三君) このリスキリングは、あくまでも自主的にこうした労働者の皆さん方が将来の選択肢を増やすために自らの能力向上に励む、それを政府として政策的に支援するということが目的であります。
 この目的が、実際にその三位一体の労働市場改革の一つの柱としてその役割を果たすことによって、全体として我が国における労働者の賃金を構造的に支える仕組みとするという考え方であるということを是非御理解いただきたいと思います。

○倉林明子君 いや、リスキリングや労働市場、三位一体の労働市場の改革をすると、それが構造的な賃上げにつながるという説明なのに、実際にはリスキリングに挑戦した労働者が失業給付も受けられない事態もあると。構造的な賃上げといいながらそれを担保するということになっていないんじゃないのという指摘をいたしましたので、今日はこの程度で終わらせていただきます。