倉林明子

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利用制限・排除を懸念 生活困窮者自立支援法等改定案 (2024/4/16 厚生労働委員会)

(議事録は後日更新いたします)

 生活保護世帯への居住支援、家計改善、就労支援の強化などをうたう生活困窮者自立支援法等改定案が16日の参院厚生労働委員会で、自民、公明、立民、維新、国民、無所属の賛成で可決されました。日本共産党、れいわは反対しました。

 日本共産党の倉林明子議員は反対討論で、改定案が生活保護の医療扶助について、都道府県がデータ分析を行い、市町村に情報提供を行う仕組みを設けていると指摘。医療扶助の「適正化」を目的に「医療扶助費削減のために、生活保護利用者の受診を不当に制限する権利侵害につながりかねない」と批判しました。

 生活保護利用者に対する就労準備支援事業、家計改善支援事業の法定化は「生活保護制度から利用者を排除する手段につながる」と懸念を表明しました。

 また、住民を生活保護制度から排除している群馬県桐生市の生活保護の違法運用、人権侵害行為が参考人質疑で告発されたと指摘。「法定化の前に、全国の自治体で家計支援、就労支援などを名目にした人権侵害、利用制限が行われていないか検証し、不法・不適切な行為を是正すべきだ」と主張しました。

 さらに、同改定案は「居住支援の強化」を打ち出しながら、「住まいの貧困」を解消する抜本的な対策はありません。倉林氏は、単身高齢者にとどまらず、低年金に苦しむ女性、ひとり親世帯、学生など「住まいの貧困」はより深刻さを増していると強調。家賃補助制度の創設を急ぎ、公営住宅を抜本的に充実することなどを求め、「住まいは人権」の立場での政策転換を主張しました。


議事録を読む(未定稿)
(この会議録は未定稿です)

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 参考人質疑で、群馬県桐生市の生活保護行政の実態が明らかになりました。一日千円ずつ手渡すと、月額保護費の半分しか渡していなかったと、そして、残りの残額は金庫で保管していたにもかかわらず、ケース記録上は全額支給と記載していたと、保護世帯の何と三・五倍にも上る印鑑千九百四十八本を保管し、本人の同意なく押印していたと、ここまで明らかになっているんですよ。
 不適切どころじゃないんですよ。違法行為だと思います。大臣、認識いかがですか。

○国務大臣(武見敬三君) いや、これはびっくりしました。
 御指摘のように、支給決定した生活扶助費については、全額を支給しない対応については生活保護法に規定する生活扶助の実施方法に適合をいたしません。
 また、個別の事案についてお答えは差し控えたいと思いますけれども、こうした、一般論として、福祉事務所で印鑑を保管して本人の同意なく押印するということが本当に現実に起きていたということだとすると、これはとんでもない話で、これは問題だと思います。

○倉林明子君 いや、違法行為なんですよ、明らかに。公文書偽造をやっていたって認めているんですから。こういう違法な権利侵害の実態と併せて制度の根幹を揺るがすような私は問題だと思っております。放置するわけにはいかないというふうに思うわけです。
 桐生市では、生活保護利用者に対して、就労支援事業、家計改善指導事業、桐生市ではこれをどういうふうに扱っていたかというと、ハローワークへの毎日通所を要件にして分割、減額が実施されていたと。さらに、家計簿提出を求めてレシートを百円単位までチェックすると。家計簿相談では、何と十七世帯が保護廃止という事態になっていたんです。これ、桐生市だけの問題かということなんですよ。
 これ、法定化が今度されます、生活保護世帯に対しても。この法定化の前に、家計支援、就労支援を名目にして人権侵害や保護利用を断念させる圧力を掛けると、こんなことがあるのかないのか、調査、検証をやるべきだと思います。不法、不適切な行為の是正、これがまず求められると思いますけれども、いかがでしょう。

○国務大臣(武見敬三君) 厚生労働省としては、やはりこれはもう問題であったという認識をしっかり持っておりますので、今年三月の自治体の全国会議で、こうした、例えばこの支給事務の適切な実施について要請を行ったところでありますけれども、いずれにせよ、御指摘のこの桐生市の事案については群馬県の監査による調査が今現在行われておりまして、この桐生市においても今年三月に第三者委員会を設置して検証を行っていると承知しております。
 厚生労働省としても、群馬県を通じて情報収集を行って、不適切な取扱いが認められれば、これにしっかりと対応するよう指導してまいりたいというふうに思います。
 そして、生活保護の実施というのは、生活保護を申請させないという申請権の侵害をしないことは、これが基本でありますから、侵害していると疑われるような行為も厳に慎むようこれまでも周知してきているということは申し上げておきたいと思います。

○倉林明子君 あのね、調査、検証すべきだって申し上げたんですよ。
 群馬県のお話ありました。これ、群馬県は十年間、こんなことがやられていたにもかかわらず、見抜くことが監査でできなかったんですよ。これも非常に重大な問題です。
 しかし、稲葉参考人の指摘にもあったように、桐生市の保護実績で見ますと非常に特徴があります。それは、保護費の半減、母子世帯の保護率の異常な低下、二十六が二世帯まで減少したとか、それから警察官OBの多用、こういう特徴があるんですよ。
 少なくとも、こうした実績が認められる、急激な保護費が減っていると、こういうようなところに対しては速やかに、少なくともこういう自治体はやっていないかという検証が、調査が要るんですよ。大臣、調査していただきたい。

○国務大臣(武見敬三君) 厚生労働省としても、群馬県を通じてこうした情報収集を行って、この不適切な取扱いが認められれば、適切に対応するよう指導してまいります。

○倉林明子君 さっきから聞いているように、こういう法定化の前に、大変な事態起こっているわけだから、自治体に対してちゃんと調査しなさいと、そのことを求めているんだけど、ちょっと答弁逃げないでいただきたい。

○国務大臣(武見敬三君) まずは、この群馬県のケースをしっかりと調べた上で、その後の対応を考えたいと思います。

○倉林明子君 いや、法定化するんで重大だと思っているんですよ。重ねて、調査、検証しないと、こういうことがほかでも起こっていたらとんでもない問題なんですよ。こういうことを未然に防ぐためにも調査、検証は絶対必要だと、これ重ねて申し上げておきたい。引き続きこれ追及したいと思います。
 そこで、警察官、警察OBの配置についても聞きます。
 これ生活保護適正運営体制強化事業ということで、二〇一二年からですか、予算も付いてきたということです。暴力団員等以外でも不当要求を繰り返す者に対し実効ある対応を期待するとされているものです。
 そこで、確認したいんですけれども、警察官OB等、今度の予算ではどのぐらいの雇用を見込んでいるのか、そして、先ほどの答弁でも繰り返された不当要求なるものですよね、どんな定義をしているんでしょうか。

○政府参考人(朝川知昭君) 御指摘の事業は、福祉事務所における不当要求への対応強化を図るため、自治体の取組に対する補助を行うものでありまして、自治体におけるニーズに応じて、警察OBの配置のほか、警察との連絡会議の開催や福祉事務所職員への研修、そういった内容も含むものでございます。
 令和五年度におきましては二百二十六の自治体において必要な人数が配置され、令和六年度においても、令和五年度の事業と同様の内容でございますので、同規模の、同程度の規模での実施を想定してございます。
 また、御指摘の本事業における不当要求につきましては、各自治体の実情に応じて対応いただくものでありますが、ケースワーカーに対する暴力を振るうなどの暴力を用いた要求でありますとか、不正受給につながるような繰り返しの不当な要求でありますとか、そういうようなことを想定してございます。

○倉林明子君 いや、不当要求の定義というのは自治体でそれぞれだみたいなことでは、私本当に、判断が曖昧になるって、基準がないというのは非常に問題だと思います。そして、令和五年で、令和四年、令和五年ですか、自治体の数はありましたけれども、何人配置になっているのかということについては後刻報告を、個人的で結構ですので、求めたいと思います。
 その上で、桐生市では、警察官OBが暴力団関係者にとどまらず、新規相談、訪問、ほとんどに同席していたんですよ。暴言による威圧、権利侵害行為をしていたと、これ複数の証言が寄せられております。警察官OBを増員し、福祉事務所で相談者、保護利用者の対応に当たらせると、こういうことは、生活困窮者を萎縮させる、必要な人を保護から遠ざけるだけじゃなくて、保護利用者の権利制限につながるおそれがあります。
 桐生市での実態が判明したことを受けて、新たな予算については執行を見送るべきだと、留保すべきだと、いかがでしょう。

○政府参考人(朝川知昭君) 先ほど打越委員への答弁でもお答えさせていただきましたが、この本警察OBを活用する事業の趣旨は、福祉事務所における不当要求への対応強化を図ることでございまして、警察OBの配置を暴力団への対応に限定するものではございませんけれども、各自治体においてこの事業を活用する際には、事業の趣旨に沿って人員配置を行っていただく必要があると考えてございます。

○倉林明子君 あのね、生活困窮者の増加、こういうものに対して今やるべきは何かといったら、ケースワーカーの増員なんですよ。断じて警察官のOBを増やすことじゃないと強く申し上げたい。
 医療扶助の適正化についても質問します。
 医療扶助においては、これまでも、後発医薬品の使用、マイナンバーカードによる資格確認を原則にするなど、これ差別的な取扱いが進められてきたと認識をしております。本法案ではさらに、医療扶助のみを切り出して、都道府県がデータ分析を行う、市町村に情報提供を行うということにしているわけですね。
 これ、生活保護利用者にのみ限定して情報提供を行うとした具体的な根拠はどこにあるんでしょうか。

○政府参考人(朝川知昭君) 被保護者は、国保、国民健康保険の適用除外となりまして、ほとんどのケースで医療保険の適用を受けない仕組みになってございます。
 医療扶助はその全額を公費で負担するものでございますので、その適正を効果的に、あっ、適正かつ、その制度を適正かつ効果的に運用していくことが必要でございます。
 その上で、医療扶助の適正実施については、これまでも頻回受診対策、多剤・重複投薬対策などの取組をやってきましたが、今般の改正では、昨年十二月に取りまとめられました審議会報告書も踏まえまして、医療扶助や健康管理支援事業の適切な実施に向けて、都道府県が広域的観点からデータ分析を行い、市町村に対して優先的に取り組む課題とその課題解決に向けた取組目標の設定、評価、助言等の支援を行う仕組みを創設することとしています。
 これは、医療保険制度においても、例えば国民健康保険における都道府県の取組として、データ分析により重要課題を抽出し、モデル自治体の選定を通じた取組の実施と、他の市町村への横展開で管内全体の実施に波及させることで、住民の健康や医療費適正化につなげている事例もございますので、こうした医療全体の方向性とも整合的に医療扶助の適正かつ効果的な取組を進めてまいります。

○倉林明子君 つまり、これを行うことによって医療費、医療扶助費を減らしたいと、それ、そういうことですか。

○政府参考人(朝川知昭君) 医療扶助費を減らすことが目的ではございませんで、被保護者の健康でありますとか、あとはその公費で行われている医療扶助の適正な実施、そちらが目的でございます。

○倉林明子君 生活保護利用者というのは高齢世帯が多いです。そして、病気から生活保護世帯に移行するという割合が一般世帯は本当に高いんですよね。
 こういうことがあるという実態から、どうしても医療費扶助、先ほど全体一・七兆円という紹介もありましたけれども、高くなるんですよ。そういうところに対して、医療扶助だけを切り出して差別的な扱いの強化になっていないかと、利用者の権利侵害を拡大するということにつながりかねないと、私はやるべきではないと、いかがでしょう。

○国務大臣(武見敬三君) やはり、生活保護を受けられる方々というのは、その生活環境の中で特定の疾患に罹患したり健康を害したりする、そういう確率の高い方々が多くいらっしゃるというのが現実です。したがって、この生活保護の中で医療扶助というのが非常に重要であると同時に、実際に生活扶助の約半分はこの医療扶助に充てられているというのが実は現実であります。
 したがって、その中で、やはり医療保険制度と同様にデジタル化を通じて、より質の高い、しかも適正な医療を提供できるようにすることがこの医療扶助の中でもやはりしっかりと進めていかなければならないと、こう考えます。

○倉林明子君 いや、生活保護では適正化事業をやってこなかったんだというようなことではないと思うんですよ。改めて医療扶助で、医療扶助についての適正化を強化するということが中身だというふうに受け止めているんですね。
 私、生活保護利用者に対して、原則マイナンバーカードを作るとか、後発薬品を使用を原則で掛けていくと、こういうやり方進めてきましたよね。こういうやり方というのは、生活保護利用者は権利を制限されても仕方がないと、こういう発想が根底にないかと言いたいわけです。
 生活保護世帯に限った医療費適正化を進めると、こういう強化の方向については容認できないと申し上げて、終わります。


議事録を読む (反対討論)(未定稿)
(この会議録は未定稿です)
○倉林明子君 私は、日本共産党を代表して、生活困窮者自立支援法等改正案に反対の討論を行います。
 第一に、法案は、医療扶助について、都道府県がデータ分析を行い、市町村に情報提供を行う仕組みを設けるとしています。医療扶助の適正な実施を目的に、医療扶助費削減のために生活保護利用者の受診を不当に制限する権利侵害につながる可能性が否定できません。
 この間、後発薬使用の原則化、マイナンバーカードによる資格確認の原則化など、生活保護利用者に対する差別的取扱いが進められてきました。今回の改正は、医療扶助の適正化の名の下に、利用者の人権軽視を現場に浸透させる役割を果たすものであり、容認できません。
 第二に、生活保護利用者に対する就労準備支援事業、家計改善支援事業の法定化は、支援に名を借りた生活保護制度から利用者を排除する手段につながることを強く懸念します。
 参考人質疑で、つくろい東京ファンドの稲葉剛氏は、桐生市で家計相談支援事業により十七人が保護廃止となった、家計簿を提出させることと保護の休廃止がセットになってしまうということであれば、ほとんどこれは脅迫になってしまう、生活保護を諦めて生活しようというふうに制度の外へ締め出すという機能になってしまいかねないと指摘しています。
 法定化の前に、全国の自治体で家計支援、就労支援等を名目にした人権侵害、利用制限が行われていないか徹底的に検証し、不法、不適切な行為を是正すべきです。
 本法案は、居住支援の強化を掲げています。単身高齢者にとどまらず、低年金に苦しむ女性、一人親世帯、学生、青年の単身世帯など、高過ぎる居住費が家計を圧迫し、住まい喪失と隣り合わせの生活を迫られるなど、住まいの貧困はより深刻さを増しています。
 しかし、本法案は、低廉な家賃の住宅への転居費用補助が追加されたものの、深刻化する住まいの貧困を解決するための抜本的な対策はありません。関係者の共通の要望である家賃補助制度を早急に創設すること、公営住宅の抜本的な充実など、住まいは人権の立場から、誰でも安心して暮らせる住まいを確保する政策への転換を求め、反対討論といたします。