正確な統計 行政責務 倉林氏が厚労省不正を追及(2019/5/21 厚生労働委員会)
(資料があります)
日本共産党の倉林明子議員は21日の参院厚生労働委員会で、厚労省でたび重なる統計不正について、国民の財産である情報を棄損する事態だと政府の姿勢をただしました。
倉林氏は、毎月勤労統計で本来全数調査すべきだった従業員が500人以上の事業所を、2004年以降、東京都で3分の1の抽出調査にしていた問題で「全数調査をやらなくなった動機が解明されていない」と批判。東京都の該当する事業所実数と調査回答事業所数の変遷を示し、1986年では9割近い回答率が徐々に低下し、抽出調査に変えたとされる04年以前の2001年には63・5%に落ち込んでいると指摘。「全数調査の実態に合わせて、総務省に届け出ないままルールを変更したのではないか」と質問。厚労省の藤澤勝博政策統括官は「指摘は当たらない」と開き直りました。
倉林氏は、厚労省所轄の二つの統計が必要な復元をしていなかったと16日の統計委員会の点検検証部会で指摘されていることをあげて、「次々と発覚する統計不正は、国民の財産である情報を棄損している」と批判。厚労省が18年1~11月の実質賃金の変化率を明らかにしていないことについて「国民が消費税増税の是非を判断する上で賃金動向は大切な情報だ」「正確な情報提供は行政に課せられた責務だ」と強調しました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
毎勤統計の不正事案の発覚から見ますと、既に五か月が経過しております。毎勤統計のデータ、これ八年分がいまだ欠損したままというふうになっております。これ、三つともそろわないと復活できないデータがあるということが要因になっているわけですけれども、私は、このデータの欠損などというのは絶対放置するわけにはいかない問題だというふうに思っております。
これ、データの復活がなぜ必要なのか、総務省に改めて、その一つ一つのデータの不足を補わなければならない個別の問題じゃなくて、データ復活の意義ということで御説明いただきたい。
○政府参考人(横山均君) お答えします。
統計委員会では、毎月勤労統計は賃金や労働時間に関する重要性の高い統計であり、他の統計では代替できないため、二〇〇四年から二〇一一年の遡及推計値を提供することは、時系列データの連続性を確保し、経済政策運営上のニーズやユーザーの利便性を図るとの観点から重要と考えているものと承知しております。
〔委員長退席、理事そのだ修光君着席〕
○倉林明子君 統計データ、代替できないということにとどまらず、私は、国民の財産だということを強調したい。欠損したままということは絶対に許されないことなんですよ。前代未聞のことになっているということを改めて踏まえた議論が必要だというふうに思っております。おっしゃったとおり、景気判断にも影響する重要なデータであります。
そこで、三つのデータのうち、二〇一〇年以前の雇用保険データ、これについては、母集団労働者数から逆算も可能という結論が統計委員会等でされていると認識しております。あと二つですね。
もう一つが二〇〇七年一月の旧対象事業所のデータであります。これについては予算委員会でも取り上げました。厚労省は探しても見付からなかったということを繰り返し御説明いただいておりますが、第三者の目も入れるべきじゃないかと、専門家の力も借りるべきじゃないかと。
加えて、デジタル機器の復活という点では、新たにデジタルフォレンジックという収集、解析の手法が調査の手法としてもされていると。この実施も私繰り返し求めているんです。実際にこのデジタルフォレンジック調査についてはやられたのかどうか、どうでしょうか。
○政府参考人(藤澤勝博君) デジタルフォレンジック調査をやったかどうかというお尋ねでございますけれども、調査対象事業所から回答がありました個票データは、通常は集計に用いる統計処理システムに保存されますとともに、バックアップとしてCD―ROM等の外部媒体に記録をして保管をされております。このような業務の実態を踏まえれば、平成十九年一月調査分の旧対象事業所分の個票データについて、デジタルフォレンジック調査の対象としては今申し上げました統計処理システムが対象として考えられるところでございます。
このため、厚生労働省の統計処理システムの保守管理を委託をしております業者にデジタルフォレンジック調査の実施について確認をいたしました。そうしたところ、現在の統計処理システムは平成二十五年に更改、運用を開始をしているということ、また、システム更改においてデータ更新、消去等の証跡情報は移行せず全て廃棄をしている、サーバー等の機器も存在しないために、現在のシステム更改前のシステムであります平成十六年から平成二十三年時点についてはデジタルフォレンジック調査を行うこと自体ができないとの回答を業者から得ているところでございます。
このため、御指摘の平成十九年一月調査分の個票データについては調査を行っていないところでございます。
○倉林明子君 繰り返し繰り返し、なぜやらないのかということも申し上げてきたんですけれども、私、それもやっぱり内部にとどめた話になっているんですよ。業者の話でしょう。やってもらっている業者の話だということですよ。私、相当な確率でデータの復活、発見も可能な技術だというふうにも聞いている。だから、本当に本気で見付けないといけないデータなんだというその探しぶりになっているのかということは重ねて指摘したいと思う。
さらに、もう一つなんですけれども、二〇〇九年の抽出替え時点における新産業分類変更のための資料、これもないわけです、ないとされてきたわけです。ところが、二〇〇九年の毎勤統計の調査票データ及び二〇〇六年の事業所・企業統計の調査票データ、つまり個票ですよね、これあれば推計できるんじゃないでしょうか。どうですか。簡潔にお願いします。
〔理事そのだ修光君退席、委員長着席〕
○政府参考人(藤澤勝博君) 委員もおっしゃいましたように、統計委員会から、こういうふうにやったらできるんじゃないか、ああいうふうにやったらできるんじゃないかという、いろいろ、何といいますか、お話というか御示唆もいただいて、統計委員会と議論をしながらできることをやっていこうと、そういう方針で臨んでいるところでございます。
それで、今おっしゃった点につきましては、四月の二十六日の統計委員会において、二〇〇九年の抽出替え時点における新産業分類変更のための資料につきましては、統計委員会から存在が確認できるデータからの推計が可能であるとの御指摘をいただいているところでございます。
ちょっと時間の関係で具体的なところは省略いたしますが、今申し上げましたように、統計委員会から御指摘のありました手法、推計が必要な部分については、毎月勤労統計の調査票データ、あるいはその母集団名簿でございます二〇〇六年の事業所・企業統計調査の調査票データで得られる事業所数で案分する手法によって推計を行って、可能なものから統計委員会でお示しをすることとしたいと考えております。
引き続き、統計委員会の指摘にもしっかりと対応していきたいと考えております。
○倉林明子君 つまり、この新産業分類が変更されたところについては推計ができる見通しが見えてきたということが言えると思うんですよね、それやっていこうということだから。実相に近づくという推計は可能だということかと思います。
もう一つのその見付かっていない個票データの二〇〇七年の一月の旧対象事業所データというのが、これデータの復活には決定的になってくるんです。これ見付からないと、欠損した期間の賃金について、もうずっと未来永劫検証不能になるわけですよ。始まっている給付の返還額の信憑性、これも問われる事態なわけです。そういうより正確なデータをいかに回復させるのかと、その責任は極めて厚労省、重大だということを認識していただきたい。
毎勤統計で、今日も議論出ておりましたけれども、東京都の五百人以上の事業所、この全数調査をなぜやらなくなったのかと、この動機についてはいまだに解明されておりません。特別監察委員会でも解明できなかったという中身になっております。
それで、私もお願いして調べてもらって用意していただいたのが、資料、提出しております表です。結局、これ見ていただいたら、並べていますのは、一番左が母集団の事業所数、これはセンサスで事業所の実数を調べたもの、だから空いている年もあります。そして、次に、右に②としているところが回答事業所数、そしてその隣が回答率というふうになっているんです。
これ、一九八六年のところ、一九八六年、ここで見ますと、母集団の事業所数に対し回答率は八七・七%、極めて全数調査に近い数字として出ているんじゃないかと思います。ところが、三分の一の抽出調査に変えたとされます二〇〇四年以前、母集団事業所数のデータがあります二〇〇一年、注目していただきますと、母集団に対して回答率はこれ六三・五%まで減っているんです。回答率の推移を見てみますと、順次減少傾向、これ明らかに見て取れると思うんですね。これ、全数調査が年々難しくなってきた、こういう背景がこれ見えてきたと思うんですね。これ、全数調査の実態に合わせてルール変更、要は、総務省には届けないままルール変更をやったということじゃないのかというふうに思うんですけれども、これどうですか。
○政府参考人(藤澤勝博君) 回収率が低くなって抽出調査並みの回答数になったので全数調査から抽出調査に変更したのではないかと、そういう御指摘ではないかと思いますけれども、回答事業所数のところを見てまいりますと、東京都の五百人以上規模の回答事業所数については、平成十五年以前までは、大体二十年以上にわたりましておおむね六百社から八百社で推移をしておりましたけれども、一方で、平成十六年以降は二百社台の後半から四百社といったようなところで推移をしているところでございます。
平成十五年以前の全数調査時の回答事業所数と平成十六年以降の抽出調査にしてからの回答事業所数で明らかな段差がございますが、平成十五年以前の回答事業所数は一定の範囲で推移をしていたところでございますので、御指摘は当たらないものではないかと考えているところでございます。
○倉林明子君 何の論拠があってそんな説明できるんですか、当たらないと。こういう傾向が出ていると、私は、三分の一並みになっているなんという説明は一言もしておりません。実態として減少傾向があると、こういう実態として集められなくなったということを背景として三分の一に切り替えていくということにしたんじゃないのかと、こういう推測を申し上げたんです。それを断じて否定するというようなことでは真相解明になんて近づけませんから、厳しく指摘をしておきたい。
そこで、大体、調査方法をこれ総務省に断りもなく勝手に変えた。総務省には隠していた。これ、毎勤統計でも出た。そして、そっくりな構図というのが、同じ基幹統計ですよ、この基幹統計の賃金構造統計不正でも見られるわけです。総務省にはちゃんとやっていると報告はするわけですよ。ところが、回答数を確保するために、賃金構造統計では総務大臣の承認を受けた方法とは違う、こういう郵送調査を長年にわたってやっていたと、こういう構図ですよね。いつから不正な調査をしていたのか、これさえ先ほどあったとおり判明していないわけですよ。
そこで、更に明らかになって唖然としたのは、五月十六日の統計委員会での点検検証部会、一般統計でも全体の六割を超える調査で誤り、公表の不備があった、こういうことで、厚労省も大変数多いという御指摘あったとおりです。
そのうち、必要な復元をしていなかった統計、二つ発覚しております。これいずれも厚生労働省の所管です。その一つについて質問します。
最低賃金に関する実態調査では二〇一八年の復元は行ったということでしたけれども、それ以前のデータについての扱いはどうなっているでしょうか。簡潔にお願いしたい。
○政府参考人(坂口卓君) お答え申し上げます。
一般統計調査の自己点検を契機といたしまして、最低賃金に関する実態調査におきまして不適切な取扱いが確認されたことにつきまして、まずもっておわびを申し上げます。
賃金改定状況調査は、最低賃金審議会におきます最低賃金の目安等の審議の参考にするために中小零細企業の労働者の賃金の状況等を調査するものでございます。
今般、一般統計調査の自己点検の結果、労働者の賃金上昇率につきまして集計しましたいわゆる第四表は復元していたものの、一部の集計表について復元を行わずに集計していたことを把握したため、今月十四日の中央最低賃金審議会を開催して、この旨と、平成三十年、二〇一八年調査の復元集計結果を報告したところでございます。
委員お尋ねの平成二十九年以前の調査につきましては、賃金改定状況調査は最低賃金審議会におきます最低賃金の目安等の審議の参考になる資料を得るための調査であること、また、先ほどの中央最低賃金審議会におきまして、第四表につきましては重要性を踏まえて一貫して復元集計をしていたことに加え、最低賃金の水準は様々なデータを考慮しつつ公労使で審議して決めるというプロセスを踏まえ、復元を実施していなかったことが過去の最低賃金の実際の引上げ額や目安額の議論に影響を与えるものではない旨について当日御了承いただいたということでございまして、そういったことから、私どもとしまして改めて復元集計するということは考えていないというところでございます。
○倉林明子君 集計項目では最大一・七ポイントの過大な数値になっていたという報告がありました。ここでも、十年間のデータの復元、今の話だと影響ないからしないという方向の答弁あったと思う。しかし、これ、加えて、回収率確保のため、総務大臣が了承した事業所数の倍、二万事業所に調査票を送付していたと、これも判明しております。
これ、最賃決定に、おっしゃったけれども、本当に影響していなかったのか、十分な検証がされたと私、到底言えないと思う。たとえ最賃の検討結果に影響が出なくても、他の統計データ利用者への影響は本当になかったのか、その点でも十分な検証が必要な段階なのに、復元していないと注記を付けただけでもう復元しない、こういうやり方は本当に統計に対する軽視があると言わざるを得ないと思います。
そこで、大臣に伺います。次々と発覚する統計不正、これ、国民の財産である情報を毀損している、こういう認識が大臣にはおありかどうか、確認したい。
○国務大臣(根本匠君) 統計というのは、政策立案、学術研究、経営判断の礎で、常に正確性が求められる。この常に正確性が求められる政府統計について今般の事態を引き起こしたこと、これは極めて遺憾であります。
毎勤統計を始め各般の統計をめぐる事案によって、公的統計への信頼を始め厚生労働行政に対して国民の皆様の不信感が高まっており、統計に対する意識とともに組織のガバナンスが問われていると思います。
個人レベルで法令遵守の意識を徹底することはもとより、統計部門の組織や業務の改革だけではなくて、厚生労働省全体が国民の目線を忘れずに、国民に寄り添った行政をできる体制、これを構築していかなければならないと考えています。
統計に対する姿勢、これを根本から正して、再発防止を徹底していきたいと思います。
○倉林明子君 いや、このやり取り聞いていても、根本から本当に正せるのかと物すごく不安になりますよ。
かつて経済企画庁長官だった堺屋太一氏、当たらない政府の、要は当たり外れの、当たらない政府の経済見通しに対して、他の思惑を差し挟まないで経済状況を正確に国民に伝えるべきだと言われたと報道で特集組んでいました。私、そのとおりだと思うんですよ。今、五か月たっても、日本の労働者の賃金が上がっていたのか下がっていたのか明らかになっていないというふうに国民受け止めていると思うんですよ。
消費税増税は十月だと決めたのが政府であります。そして、国民がその是非を判断する材料としても、これ賃金の動向というのは極めて大切な情報なんですよ。大臣、そういう認識で取り組んでいただきたいと思うけれども、どうですか。
○国務大臣(根本匠君) 要は、今般の事態を引き起こしたことは極めて遺憾で、国民の皆様に御迷惑をお掛けしたこと、これを改めて深くおわびを申し上げます。
要は、今回の一連の事案がありましたが、これからもしっかりと取り組んでいきたいと思います。
○倉林明子君 統計法第一条は、公的統計が国民にとって、ここが大事なんですよ、国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報であると統計を位置付けているわけです。政府によって統計がゆがめられる、こういうことは絶対に繰り返してはならないわけです。
正確な情報提供、そして公開、これは行政に課せられた国民に対する責務だという立場で、解明にも、そしてデータの復旧にも真摯に取り組んでいただきたい。強く要望して、更なる審議、第三者委員会での徹底解明を重ねて求めて、今日は終わります。