倉林明子

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女性活躍推進法等改定案 参考人質疑 浅倉氏「ハラスメント禁止規定を」 角田氏「裁判で被害者は救えない」/ ハラスメントなくせ 倉林氏 禁止規定を要求(2019/5/23 厚生労働委員会)

(議事録は後日更新いたします)

 参院厚生労働委員会は23日、女性活躍推進法等改定案について参考人質疑を行い、雇用差別禁止法制を研究してきた浅倉むつ子・東京都立大学名誉教授、長年セクハラ訴訟に携わってきた角田由紀子弁護士らが意見陳述を行いました。

 浅倉氏は、同改定案のハラスメント規定をめぐって、全般的な禁止規定を設けるよう主張。有効な監視と指導を行う人員配置を含め、「禁止規定や措置義務規定の実効性をしっかり確保することが重要だ」と強調しました。また、「男女の賃金の差異の実態」「ハラスメント対策の整備状況」などの情報公表とともに、労働者の関与を組みこむことが法を機能させる上で重要だと話しました。

 角田氏は、裁判では、不法行為の枠を超えられず本当に被害者が求めているものを獲得できないと指摘。セクハラによる屈辱感、自尊感情の破壊がもたらす心身へのダメージの大きさと、困難な裁判をたたかった結果、得られる賠償金の低さを指摘し、「現状の法案では、不法行為の司法的救済に期待しているが、それでは不十分だというのが30年間(セクハラ訴訟に)携わってきた私の結論だ」と訴えました。

 日本共産党の倉林明子議員は「(セクハラ訴訟では)被害者が裁判しがいのある結果になっているのか」と質問。角田氏は、被害者の落ち度が問題にされ、孤立無援のたたかいを迫られるセクハラ訴訟の実態を語り、「裁判ではない別の救済方法を考えなくてはいけない」と述べました。


 日本共産党の倉林明子議員は23日の参院厚生労働委員会で、ハラスメントを根絶し被害者を救済するうえで女性活躍推進法等改定案では実効性がないとして、独立した救済機関の設置とハラスメント禁止規定の創設を求めました。

 倉林氏は、セクハラ被害の行政救済制度の活用状況(2017年)について、相談件数6808件に対し、調停はわずか34件、解決金の中央値は29・5万円だと指摘。「圧倒的な相談者が諦めているのが実態だ。現行制度は『被害者と事業者の譲り合い』が前提で、被害者にとって受け入れがたい。被害の認定、加害者からの謝罪、権利の回復ができる独立した救済機関を設置すべきだ」と主張しました。

 さらに、損害賠償請求の裁判の困難さを、セクハラ訴訟に30年携わる角田由紀子弁護士が「提訴するのはエネルギーの残る少数の人。仕事を失い、長い間のおとしめを乗り越えて手にするのはわずかな賠償金だ」と語ったことに触れ、「被害者は裁判で救われているか」と質問。根本匠厚労相は「負担が大きい面もある」としか答えず、倉林氏は「救済に役立っていない現実を認めるべきだ」と批判しました。

 倉林氏は「救済制度でも裁判でも被害者が救われない最大の要因は、法律上、セクハラの禁止規定がないことだ」と指摘。国際労働機関(ILO)で採択される見込みのハラスメント禁止条約に見合う水準の禁止規定を創設するよう強く求めました。


議事録を読む(未定稿)(参考人質疑)
(この会議録は未定稿です)

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 今日は、本当に短い時間の中で、五人の参考人の皆さんが本当にスピードアップしてお話もいただきまして、ありがとうございました。今から質問しますけれども、是非ゆっくり答弁してもらったら、回答してもらったら聞き取りやすくていいかなと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 先ほど角田参考人の方から、日本の裁判官の意識についての、裁判官についての見解表明もあったんだけれども、本当にそういう問題意識強く持っていまして、せんだっても、考えられない性暴力が無罪になるというようなことが相次いでいるということもやっぱり大きな課題として受け止めるべきだろうなというふうに改めて思っているところです。
 追加的に是非角田参考人にはお願いしたいと思っているのは、セクシュアルハラスメントで被害を受けた被害者が裁判に打って出るというのは本当に大変なことだろうと思うんですね。裁判に立ち上がって、じゃ、裁判した、しがいと言うんですか、そういう結果というのは得られているんだろうかと。この間闘ってこられて感じられていることを是非御紹介いただきたいと思います。

○参考人(角田由紀子君) 私は八九年からセクシュアルハラスメントの裁判に関わってきたんですけれども、最初のうちはただ勝つわけなので悪くはなかったんですけれども、四、五年やっていくうちに、自分の依頼者が、彼女が何を獲得したのかということがとても疑問になってきたわけですね。単なる弁護士的な観点からだと、勝訴判決をもらってそれなりの、数百万円であっても賠償金が入るということは仕事としては一応うまくいっているということになるんですけれども、そのことを離れて、私の依頼人であるその原告の彼女は一体何を獲得したのかということがだんだん疑問になってきたわけなんですね。それで、私は、その疑問を持ちながら、不法行為というその枠の中でやることの矛盾も考えました。
 それから、やっぱり日本の中では、別にセクシュアルハラスメントじゃなくても、裁判をやるということはとても重大なことというか重荷のことなんですね。特に、セクシュアルハラスメントで会社も含めて訴えたいというふうに思ったときには、これは大変難しいというふうに思います。日本人の意識では、お上に弓を引くという言葉がまだありますけれども、自分の雇主に対して何か要求する、しかもそれを裁判でやるということは非常にやりにくいことで、決意が要るというふうに思うんですね。
 それで、私が考えるんですけれども、大体、裁判に訴える人というのは、とりわけセクシュアルハラスメントについて言えば、裁判に行く前の段階でほとんどエネルギーを使い尽くしている、精も根も尽き果てているという状況が率直なところではないかと思うんですね。それなのに、それにもかかわらず裁判を始めるということは物すごく大きなプレッシャーであると。
 それから、個人相手だけだったらまだいいんですけれども、会社も相手にする。何で会社を相手にするかといいますと、それは、損害賠償金の獲得を容易にするためには、個人だけではなくて、会社があれば会社も訴えた方がいいということになるわけなんですが、そのときに、在職しながら訴えるというのはとても難しいというふうに思うんですね。
 私がそれこそ三十年間に扱った原告の人たちで、在職しながら裁判やった人というのは二人しかいないんです。一人はキャリアのある人ですね。だから、キャリアが中断するということはとても彼女にとっては耐え難いことなので、何とか大変でも守り抜きたいということ。それから、もう一人は公務員だった人なんですね。これも普通の会社に勤めている人よりはまだ、立場上、ましであったということがありました。それ以外の人はどうしたかというと、ほとんど全員が仕事を辞めてから、それでもやっぱりこの状況に納得できないということで、本当に文字どおり最後の手段として訴訟を起こすということになってきているわけなんですね。
 会社に在職中の人たちは、それでは周りの同僚から支援を得られたかというと、それはほとんど得られないですよね。とにかく何だかトラブルメーカーだというふうに扱われたり、それからいろいろ良くないことを言われる、非難されるということ。それから、場合によっては、証言してやってもいいよという人もいるわけなんですね、証人になってもいいと。そういう人は、実際に会って話を聞いてみて実際に裁判になると、いや、やっぱり自分の立場が悪いので証人になることはちょっと勘弁してねということになってくるわけなんです。ですから、日本の中で裁判をやるということがどんなに難しいかということなんです。
 それから、性被害では、別にセクハラに限らず刑事事件でもそうなんですけれども、性被害に遭った人に対して周りは基本的に何と言うか。それは、あんたに落ち度があったんじゃないか、あんたが悪いんだよということが一番最初にやっぱり言われることだと思うんですよね。そうすると、告発するということ、セクシュアルハラスメントであってもそれ以外の性被害であっても、告発をするということは、私にも落ち度がありましたと、その反面で言っているような実際的な結果になってくるわけなんですね。そのことがあるので、非常にいろんなことを考えて、本当にその覚悟を固めて、しかも孤立無援の闘いになってもやり抜けるのかという、途中でやめたって別にいいんですけどね、そういうふうに思ってやらなければいけないということなんです。
 そして、このことは、こういう全体的な状況、裁判をめぐる基本的な状況と、とりわけ性被害に関わる裁判をめぐる特殊な状況とがあるので、日本の中では裁判を選択するということは非常に難しい、消極的なことになるということなんです。
 さっき申し上げたように、私は、在職中の人って二人しか関わったことがないんですね。それ以外の人はみんな辞めているということなんです。裁判で勝った結果、低い賠償金でも入ってくればいいとするのか、あるいは確かに裁判で勝てば彼女はうそを言っていなかったということにはなるわけです、周りに対して。しかし、そのことが証明されたからとして、周りの人が考えを変えるかというと、そんなことは余りないんですね。だから、被害者としてはやっぱり納得できないという思いがずっと残る。
 それから、被害者にしてみれば、重い被害が残っている、PTSDなんかが残っているときは、裁判は二年か三年で終わっても、その後もっともっと長い期間を、自分が受けたその被害の回復というのは大変難しいんですけれども、付き合わなければいけないという不条理もあるわけですね。だから、裁判に勝ったら終わりではないということが、不法行為でやっても、なかなか被害者本人の救済にならないんじゃないかというふうに私は思うようになったわけなんです。
 それから、先ほどから措置義務の話が出ているんですけれども、これ、措置義務だって、会社に対して一体何人がそういうことを言い出せるだろうかということはやっぱり考えてみなければいけないと思うんですね。手続規定としては措置義務を申し立てることができるというふうに言っても、本当にそんなことが会社の中で言えるのかということになったときに大変難しいと思いますし、それは辞めてからだったら意味ないわけですね。
 ですから、不法行為だけを当てにするのではなくて、もっと別の、もっと時間が掛からなくて、しかも煩わせが少ない、それからプレッシャーの少ない、そういう別の法的な救済方法を考えなければいけないと思いますし、それから、外国では、これは禁止規定を持っていることと連動しているんですけれども、もちろん司法的な救済はあるんですけれども、それ以外の、名前はいろいろ、人権委員会とか雇用平等委員会とかいろいろあるんですけれども、いわゆるそういう行政機関での訴訟にない、もっといろんなうまみを持った解決方法ができているということで、それを私、日本でも検討する必要があるというふうに思っております。
 以上です。

○倉林明子君 ありがとうございました。
 長年均等法を研究されてこられたということで、浅倉参考人にもお伺いしたいんですけれども、今回、労政審の建議のところででも、無期転換の非正規雇用労働者についてコース別雇用管理指針において位置付けるということになっていると、そして無期転換した人たちのコースも指針の対象を明確化するというふうにされたわけですけれども、無期に転換した非正規という人たちは、有期から無期にということでそれは一歩前進なんだけれども、正規の総合職とか一般職とか、もう手当や福利厚生などを含めて待遇全般で大きな壁がやっぱりあるというふうに思うんですね。
 そういう意味でいうと、その待遇の違いも踏まえて内容を更に詰めていく必要があるんじゃないかと思うんですけれども、御所見を伺えたらと思います。

○参考人(浅倉むつ子君) ありがとうございます。
 おっしゃいますように、労働契約法十八条がありまして、五年を超えた有期契約労働者が申し込めば無期転換したものとみなすという、そういう規定があるんですけれども、結局は労働条件は有期の時代と同一であるというその定めがあって、私は以前からこれは非常におかしな条文だというふうには思っておりました。
 ですので、無期転換した非正規雇用労働者という一つの雇用管理タイプですよね、その人も結局はいわゆる正社員と比較した際に職務の内容等を参照した上で適切な待遇を確保すべきだという、そういう意味では、今回のコース別雇用の指針の中で取り上げるという、そういう方針は非常に良いかというふうには思います。
 しかしながら、その場合に、やはり同一の職務であるとか同一価値の職務であるという場合にやはり同じ待遇が確保されるんだという、その原則ですよね、均等待遇の原則というものを、それを柱にして御指摘のコース別指針においてそういう考え方を示していくということが非常に重要だと考えておりますので、具体的に指針の中で取り上げていただければと考えております。

○倉林明子君 時間になりました。参考にさせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。


議事録を読む(未定稿)(対政府質疑)
(この会議録は未定稿です)

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 昨年四月、当時の財務省事務次官による放送記者に対するセクシュアルハラスメントが発生する。これ、セクハラの事実を認めない事務次官に対して、財務省もですけれども、批判が殺到すると。そして、とうとう次官は辞職ということになったわけですけれども、日本の財務省、この官僚のトップが起こしたというセクハラ事案、大臣の認識はどうなのかというのをまず聞きたいのと、あわせて、私は、本会議で大臣にセクシュアルハラスメントというのは女性差別だという認識ありますかと質問をしたんだけれども、どうも明確に答弁いただいたというふうには受け止められなかったので、改めてここでも確認をさせていただきたい。いかがでしょうか。

○国務大臣(根本匠君) 個別事案についてはコメントは差し控えさせていただきますが、その上で、その上で一般論として、職場におけるセクハラは働く人の尊厳や人格を傷つけ、職場環境を悪化させるものであって、あってはならないと考えております。
 セクハラ被害者の多くは女性であります。セクハラが行われる職場は、女性の意識や役割に対する誤った認識など雇用環境ないし雇用管理上の問題を抱えていることが多く、雇用における男女の均等待遇を進めるための前提を欠いていると言えるのではないかと認識をしております。

○倉林明子君 個別の事案ということにすべきではない事案だったんじゃないかと思うんです。元財務省事務次官のセクハラ行為というのは、憲法擁護義務がある国家公務員のやったことなんですよ。さらに、あらゆる差別を禁じた憲法十四条、そして個人の尊厳を規定した十三条、これを踏みにじる行為をやったんだと。これは、極めて重大な人権侵害がここで、官僚組織の中で起こった、行政組織のトップが起こしたと、こういう認識を持つべき事案だったということは指摘をしたいと思います。
 その上で、今の説明でもよう分からぬ。女性差別、セクシュアルハラスメントは女性差別なのかどうかという問いに対して、イエスかノーかで答えてほしい。どうです。これ、大臣の認識だから。(発言する者あり)

○委員長(石田昌宏君) 速記を止めてください。
   〔速記中止〕

○委員長(石田昌宏君) 速記を起こしてください。

○国務大臣(根本匠君) これは、多くは女性でありますが、まあまあ、女性、男性、両方あり得るとは思いますけど、要は差別意識が背景にあるようなことであってはならないと、こう思いますよ。

○倉林明子君 いや、何でそこがはっきり言えないのかなというところが、要はこれからの取組に関わっても私は重大だなと思ったので改めて確認したんです。
 この事務次官の事件の方ですけれども、この事件を契機にしまして、日本でもやっぱりミー・トゥー運動というのが広がった。当事者から勇気ある被害の告発が相次ぎました。メディア、文化、情報関連の職場、ここで働く労働者がつくります日本マスコミ文化情報労組会議がアンケートをやったんですね。そうしたら、深刻なハラスメントの実態、セクシュアルハラスメントの実態が浮き彫りになったんです。
 回答者四百二十八人のうち、女性でセクシュアルハラスメントを受けた、七四%でした。被害の種類は一人当たり五種類にも及ぶと。中には、性的関係の強要、そしてストーカー行為の被害、こういう申告もあったというわけです。さらに、公務員が加害者の例も多いということで、被害者の中には、死にたくなるほど憂鬱という回答もあったというんですね。一方、被害に遭っても七四%が相談しなかった、できなかったと回答しているわけです。
 セクシュアルハラスメントに対して、均等法で定めた措置義務が課されてから十三年ですよ。何で被害はなくならないのか。大臣、どうですか。簡潔にお答えください。

○国務大臣(根本匠君) セクシュアルハラスメント防止のための措置義務、これは、都道府県労働局によって行政指導などにより履行確保を図っているところでありますが、これは、事業主や労働者自身にセクシュアルハラスメントを行ってはならないという意識が十分に浸透していないという課題もあると認識しております。
 これは、このセクハラ対策の実効性を向上させるため、まさに本法案では、セクハラを行ってはならないものであって、他の労働者に対する言動に注意を払うよう努めるべきであることを国、事業主及び労働者の責務として明確化するほか、労働者が事業主にセクハラの相談を行ったことを理由とした不利益取扱いの禁止、こういうことを今回の法案でしっかり明記しているところであります。

○倉林明子君 いや、浸透していないからこうだったのかというのは、決してそうじゃないんじゃないかと。救済ということでいえば、少なくとも法の効き目がないんですよ。私は、被害者が救済されると、ここにつながらないと本当に解決につながっていかないというふうに思っています。
 本法案で新たにハラスメント規制を導入するということなんだけれどもですよ、均等法のセクハラ防止措置、この義務の仕組みと同様の規制と、枠組みはなります。じゃ、均等法の措置義務の遵守の状況というのはどうかということです。
 二〇一七年、雇用均等基本調査が実施されております。現在の均等法によるセクハラ防止の措置義務を履行している事業主の割合、相談窓口を設置している事業主、そして相談窓口の研修を行っている事業主及びセクハラの防止対策に取り組んでいない事業主の割合、どうなっていますか。

○政府参考人(小林洋司君) 御指摘の平成二十九年度雇用均等基本調査によりますと、相談・苦情対応窓口を設定した企業の割合は三九・四%、相談・苦情対応窓口担当者への研修を行った企業の割合は八・九%でございます。また、セクハラ防止対策に取り組んでいない企業の割合は三四・六%となっております。

○倉林明子君 今の数字聞いていても、極めて低水準の到達だと言わざるを得ないと思うんですね。これ、なぜできないのかということだと思うんですよ。これ、措置義務を守らない事業主に対する唯一の制裁制度とも言える企業名公表制度、これ参考人の方からも御紹介ありました、これ、活用はたった一件ですよね。
 それでは、均等法十一条の是正指導はどれだけ実施されているか、措置義務を遵守していない事業主に対して指導した是正指導事業主の割合、これ分かりますか。

○政府参考人(小林洋司君) 平成二十九年度におきます均等法第十一条、これセクハラに関する是正指導ということになりますが、均等法十一条に関する是正指導の件数は四千四百五十八件でございます。
 都道府県労働局において措置義務違反を把握した場合は、全て助言、指導、勧告等の行政指導を実施しているところであります。

○倉林明子君 いや、ほんまにできているのかと、ほんの一部と違うかと。参考人の意見というのは、指摘もあったということは、じゃ本当に全部やれているというふうな数字なのかと、率直に疑問を呈したいと思います。
 その上で、セクハラの措置義務違反に対する企業名は先ほど言ったとおり一件だけやと。これは、制裁としても、是正指導の方法ですけど、抑止力になってないという現状をしっかり見る必要があるんじゃないかと思います。制裁措置としての企業名公表に、私、実効力がこの十三年ないということが明らかになったと受け止めるべきだと思います。
 さらに、措置義務の一つである相談窓口の設置について、JILPTの調査では、会社の窓口に相談した人は僅か三・一%なんです。窓口設置しても、設置率も低いんだけれど、設置しても利用されない、なぜこんなに利用されないのか、どうですか。

○政府参考人(小林洋司君) 御指摘の背景として、一つは、相談をすることによって不利益取扱いを受けることへの懸念といったことがあるのではないかというふうに思っております。
 今回、セクハラを行ってはならないという責務を明確化しておりますが、こういったセクハラがあってはならないという認識が当然のものになるようにしていかなければいけないということと、相談を理由とした不利益取扱いの禁止規定というのを今度盛り込むことにしておりますので、こういったことを通じて、相談をちゅうちょするようなことのない職場というのをつくっていかなければいけないと思います。

○倉林明子君 いや、不利益取扱いがあるから相談しないのかというたら、ちょっと違うんじゃないかと思うんですよ。勤務先への相談で不利益取扱いを受けたと、こういう人は一体どれだけいるかと、僅か三・六%という調査結果あるんですよ。これ、不利益取扱いをやめることを追加するだけで、じゃ相談件数伸びるのかと、そういうことにはつながっていかないということを指摘したいと思う。
 そこで、セクハラ被害者の救済制度は、じゃ救済につながっているのかという問題なんです。現行の行政救済制度の活用状況を私は確認したい。直近の数字を、労働局への相談件数、そして紛争解決の援助の申立て件数、そして調停件数、それぞれ何件になっているか。そして、結果としての金銭解決金額というのは幾らか、どうですか。

○政府参考人(小林洋司君) 平成二十九年度のセクハラに関します、まず都道府県労働局への相談件数でございますが、六千八百八件であります。それから、紛争解決援助の申立て受理件数ですが、百一件。そして、調停申請受理件数ですが、三十四件となっております。
 また、金銭解決につきまして、全ての調停の解決金について網羅的に把握はしておりませんが、中央値が二十九・五万円であるという調査研究があることは承知をしております。

○倉林明子君 これ、二〇一七年の結果なんですね。直近でいうと、もうこれしか出てこないと。解決金額に至っては、厚労省としてつかんでいるものではないんですね。これ文科省の研究費使ってやられたもので分かっている、データがあるというだけのものなんですね。
 その上で、これ金銭解決が最終的に救済として出てくるものになるんだけれども、二十九・五万円、中央値、これは余りにも低いと思うんですね。それに、相談数に対して調停件数の割合というのは、これ僅か〇・五%ですよ。これ、何でこんなに低いんですか。

○政府参考人(小林洋司君) 労使間でセクハラに関する紛争が生じる場合でありましても、調停まで至らないで労働局長の紛争解決援助により解決に至るケースもあるわけであります。これが先ほど申し上げた百一件。
 また、紛争解決援助の取組とは別に、労働局長の助言、指導等によって措置義務の履行確保を図っておるわけでございまして、これが平成二十九年度四千四百五十八件でございます。紛争となる前に円滑な解決が図られているというケースも多いものと考えております。
 今後とも、法の周知、そして履行確保というのをしっかり行って、セクハラ被害を受けた方が安心して相談し、制度を利用できる環境づくりに努めてまいりたいというふうに思います。

○倉林明子君 いや、それ事業主の方ばっかり向いているんじゃないかと思うんですね。
 被害者が本当に救済されているかどうか、あなたたちはつかんでいるのかと思うんですよ。圧倒的に、聞いているのは、諦めているということですよ。相談にまず行かない理由も、相談一旦してそこから先の解決につながらないのも、結果として被害者がもう諦めているという実態があるということを、私は、改めて法律の改正に当たってつかんでいかないと救済にはやっぱりつながらないということだと思うんですね。
 そもそも均等法の行政救済の前提というのは、先ほど少しおっしゃったけれど、被害者と事業主との譲り合いの仕組みですよね。被害者にとってはそもそもの前提が受け入れ難いという構図になっているんです。
 被害の認定、加害者からの謝罪、そして権利回復、こういうことを本当にできるような救済機関、私は独立した救済機関要るよということを本会議でも申し上げましたけれども、改めてその設置を強く求めたいと思います。
 さらに、大臣は、現状でも悪質な行為は刑法違反に該当し、不法行為として損害賠償請求の対象となり得るものと繰り返し答弁されております。
 これ、確かに加害者にとっては刑事罰問われるよという抑止力にはなるかもしれない、でも被害者にとってどうなのかということを私は問いたいわけで、裁判は極めてハードルが高いし二次被害も受ける、そういう意味で聞いているんですね。
 大臣は、損害賠償請求によって被害者が救済されている、そういう認識なんでしょうか。

○国務大臣(根本匠君) 裁判による損害賠償請求、これについては、被害者に落ち度があった等の中傷を受ける場合があるなど、被害者にとって負担が大きい面もあると認識をしております。セクハラを受けた被害者が求める被害回復の内容には、金銭的な賠償のほか、加害者の謝罪や、再発防止のための職場環境の改善など、事案の状況に応じて様々なものがあると考えております。
 このようなことを踏まえて、現在、セクハラの防止措置義務に関する指針では、事業主は被害者に対する配慮のための措置や行為者に対する措置を適正に行うこととされております。そして、当該措置の例として行為者の謝罪や行為者に対する懲戒処分等の措置が示されているほか、再発防止に向けた措置を講ずることとされているところであります。
 また、今回の法案によって、セクハラを行ってはならないことについての関係者の責務の明確化などを通じて措置義務の実効性の向上を図るほか、調停制度の機能の向上、あるいは行政指導を通じての履行確保を徹底することとしております。
 今回の法改正を通じて、セクハラの防止と被害者の救済のため、対策を強化していきたいと思います。

○倉林明子君 いや、聞いたのは、要は裁判というのが被害者救済になっているとお思いですかと、それだけなんですよ。大臣は被害者にとって負担が大きい面もあるとおっしゃるんだけれども、その点についていろいろおっしゃって、その裁判が被害者救済になっているのか、なってへんのか、よう分からなかったんです。どうなんでしょうか。分かるように答弁願いたい。

○国務大臣(根本匠君) 要は、損害賠償請求については被害者にとって負担が大きい面もあると、これは認識をしております。例えば、被害者に落ち度があったなどの中傷を受ける場合があるので、負担が大きい面があると認識しています。
 それから、セクハラを受けた被害者が求める被害回復の内容には、金銭的な賠償のほか、加害者の謝罪等々の事案の状況に応じて様々なものが、考えておりますので、今回の措置義務等の運用の中でこういう内容をしっかりと徹底していく、これが大事だと思います。

○倉林明子君 いや、今も同じ答弁ですよね。
 私、被害者救済になっていないという現実を見ないと駄目だと思うんです。午前中、角田参考人、三十年このセクハラ裁判をやってこられた弁護士がおっしゃっていましたよ。ほとんどの被害者が耐え切れずに悩んだ末、提訴するのはまだエネルギーの残っている少数の人だと。キャリアはそこで途絶え、勝訴しても失ったものは戻らない、長い間、新たなおとしめを乗り越え、手にしたのは僅かな賠償金だというんです。これが救済かと。
 救済に役立っているのかどうか。もう一回、大臣。同じ答弁書は読まない。はい、もう一回。

○国務大臣(根本匠君) 今回の、救済になっているかどうかという御質問ですが、これは、損害賠償請求で救済になっているかどうか、それについてはそれぞれのケース・バイ・ケースだと思いますが、これは裁判の結果ですから、だから、これはそれをどう見るかというのはいろんな見方があると思いますよ。

○倉林明子君 いや、違いますよ。三十年の結果、今の裁判、本当に見てほしいと思う。参考人の意見陳述も改めて見てほしい。これ見て、被害救済に裁判が、セクハラ裁判で役立っているなんという結論は絶対にあり得ないということを強調したいと思います。この事実は認めるべきだ、女性が受けている権利侵害について正面から受け止めるべきだということを指摘したい。
 そこで、救済制度も裁判もなぜ被害者の救済とならないのかということですよ。その最大の原因は、法が直接セクハラを禁止していない、ここに最大の要因があるというふうに思うわけです。本会議で禁止規定を求めましたところ、中長期的な検討を要するという答弁でした。今日もされております。
 日本はハラスメントの禁止規定を持っていない国だ、こういう明確な認識は、大臣、おありでしょうか。

○国務大臣(根本匠君) ILOの調査によると、調査を行った八十か国のうち六十三か国において性的ハラスメントを行うことが禁止されているとされ、これらの国に日本は含まれていない。そして、禁止規定については、これは中長期的な検討を要すると労働政策審議会の建議でありました。
 これは、全体のハラスメントの禁止規定を置いて、そしてそういう法体系をつくろうと思うと……(発言する者あり)いや、ちょっとこれ法的な、法的な整理の話ですから……

○委員長(石田昌宏君) 答弁をお続けください。

○国務大臣(根本匠君) ここが非常に肝の、ここが肝の部分なんだと思います。
 労働政策審議会建議で議論した上でどう整理されているか。職場のパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントの行為者に対して刑事罰による制裁を科すことや、被害者による行為者等に対する損害賠償請求の根拠を法律で新たに設けることについては、現状でも悪質な行為は既に刑法違反に該当し、又は不法行為として損害賠償請求の対象となり得る中で、民法など他の法令との関係の整理や違法となる行為の要件の明確化、種々の課題がある、これがあるので、一般的に禁止してそういう法律を作るというところは今の既存の法令との整合性が課題とされていると、こういうことであります。

○倉林明子君 つまり、ないんですよ。ないの。何でそれが明言できないのかが私は理解できないんですよ。
 これ、被害救済には明確な禁止規定を規定する、これがその第一歩になるんですよ、ハラスメントをなくしていく、救済していくということについて。だから、この法規定があるかないかさえ何で言えないのかというところに、ILOに臨む姿勢として、大臣として大丈夫かと思うんですよ。
 そこで、女性に対する暴力を含む包括的なハラスメントの禁止というのは国際的な流れです。日本にとって先送りが許されない、こういう問題なんですよ。都道府県労働局に寄せられたいじめ、嫌がらせに関する相談件数というのは、ここ五年余りで、データある分で見ますと二万件以上増えております。そして、これは、相談件数全体の中で解雇や労働条件を上回って二〇一二年に最多になった、二〇一七年、年々更新して、何と七万二千六十七件になっているというわけですよね。
 昨年改定された過労死防止対策の大綱、これによりますと、職場におけるハラスメントの増加に対し、過労死等の防止を進めていく上で的確な対応が強く求められていると、こういうふうに指摘されております。大臣、過労死等の防止のための対策に関する大綱は、これは閣議決定であります。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続ける、この社会が副題になっているものであります。
 それでは聞きます。
 本法案でハラスメントを的確に減らせると言えますか、イエスかノーかで。

○国務大臣(根本匠君) 的確に減らせるような法案に私は構成していると考えています。

○倉林明子君 今までの質疑が何だったのかとびっくりするような答弁で、しっかり検証もなく、今、立て付けも含めてずっとおさらいしてきたのは、このままではハラスメントも的確に減らすことができないというのが明白だからですよ。私は、そういう事実を踏まえて対応すべきだと思う。
 もう一回答弁します。どうぞ。

○国務大臣(根本匠君) イエスかノーかと言うので、これは、的確に減らしたいという趣旨で私は申し上げました。
 今回の法案では、労働施策総合推進法の第四条の国の取り組むべき施策にハラスメント対策全般を充実することを明確にした上で、セクシュアルハラスメント、マタニティーハラスメントに加えて、喫緊の課題となっているパワーハラスメントの防止のための事業主の措置義務を設ける、国、事業主及び労働者の責務規定を設け、これらのハラスメントを行ってはならない旨を明確化している。
 こうした法改正によって、ハラスメントは行ってはならないという機運が醸成されることが期待されますし、やはりそういう機運をある程度の、つまり社会的な規範として私は醸成していく必要があると思っております。その結果として、ハラスメントを減らしていくように、まあこれは社会全体挙げての取組だと思いますが、そこはしっかりと取り組んで頑張っていきたいと思います。

○倉林明子君 私は大臣の熱意や決意まで否定するつもりは全くなくて、法案として、そしてこれまでの均等法でハラスメントの防止措置義務というのが一体どういうことができていて、どういうことができていないのかということを消化した上で、これからハラスメントの防止措置義務について言えば新たに課すことになるんだけれども、その実効性の担保というものが果たして本当にあるのかということがこの質問を通して問いたかったことなんです。
 改めて、中長期的な検討課題やということで、禁止規定の先送りというのは許されないということは強調したい。
 ILOのハラスメント禁止条約というのは六月には確実に採択されることになる、これ間違いないと思います。そして、いろいろハラスメントとセクハラは違うとかいろいろ言うてはりますけど、この採択される予定の条約の中で定義についても明確なんですよ。
 午前中、参考人がこれ翻訳したものを紹介していただきましたけれども、仕事の世界における暴力とハラスメントとは、一回性のものであれ繰り返されるものであれ、身体的、精神的、性的又は経済的危害を目的とするか引き起こす、又はそれを引き起こす可能性のある許容し難い広範な行為と慣行又はその脅威をいい、ジェンダーに基づく暴力とハラスメントを含むとはっきりしているんです。
 こういう条約が制定されたことを受けて法改正するというようなことじゃなくて、はっきりしているんだから、こういう禁止規定を、まずは法律を改正するのであればここに踏み込むという姿勢で臨むべきだということを申し上げまして、終わります。