倉林明子

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米国の保護強化問題 安価医薬品の確保こそ 特許法等の一部改正(経済産業委員会)

 倉林明子議員は4月1日の経済産業委員会で、TPP(環太平洋連携協定)交渉の知的財産分野において、世界一の医薬品の特許件数を持つ米国が医薬品の保護「強化」を求めている問題について質問。保護の強化によって「価格が高い『新薬』として販売される期間を延長し、価格が低いジェネリック医薬品(後発医薬品)を出しにくくする」など、医療費全体の高騰につながる米国の狙いを明らかにしました。

 倉林議員は「巨大製薬企業の利益を優先し、国民の命と健康を阻害するようなことがあってはならない」と強調。「安価な医薬品の確保は譲れない国益だ」と迫りました。

 茂木俊光経産相は「(TPP交渉における)きわめて重要な課題だと考えている」と述べました。

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第186回国会 経済産業委員会 2014年4月1日

特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

〇倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
まず、お配りいたしました表を見ていただきたいと思うんですけれども、特許庁の人員配置の内訳というもので、二〇〇三年から二〇一四年までを表にしているものです。特許庁からいただいたものでございます。
これから一層審査官の体制の強化や能力向上という観点からの強化が求められていると思うわけですが、確かにこの間、トータルとして審査官は増えてはいるんだけれども、その中身で見ますと、任期付審査官ということになるわけですね。
今年度末で任期が切れて、九十八人が任期満了になるということで伺っているんですが、そういう経験の蓄積、精度が高い審査結果を出していくという観点からもこういう採用の形態でいいのかということを問われるわけですが、今後の対応についてはどうお考えでしょうか。

〇政府参考人(羽藤秀雄君) 議員御指摘の任期付審査官の採用でございますけれども、これは、これまで審査の迅速化を達成するために、二〇〇二年の知財立国宣言、二〇〇三年の知的財産基本法を踏まえまして、特許庁として五年間にわたりまして各年度九十八名ずつの審査官を任期付きで採用し、今日に至り、審査の迅速化について所定の目標を達成をしておると、こういうことでございます。
今後、引き続きこの迅速化に努めるとともに、やはり品質の確保をしていくという観点から、この審査体制の充実はなお必須の課題であるというふうにまず基本的に認識をしております。とりわけ、先ほど来御指摘がございます意匠審査を例に取りましても、いろいろな文献を調査をする、また、海外の特許文献なども、語学能力の向上であるとかあるいは審査資料の整備といったようなことを含めて、システムでサポートを得ながら審査官それぞれが人材を、資質を高めていくといったことも重要な課題だと思います。
そういう観点で、この任期付審査官の方々の得意分野あるいは知見を活用しながら、今後十年間で特許権利化までの期間を半減をするという目的を達成をしていくために集中的に体制を整備をするという観点で、この任期付審査官の活用を考えております。

〇倉林明子君 任期が切れるということで再任用とかもされているということは伺っているんですけれども、やっぱり通常審査官ということでしっかり見通しも持ってやっていけるという体制づくりというのは非常に大事になってくるんじゃないかと。通常審査官での増員という点でも対応していくべきではないかと、これは意見として申し上げておきたいと思います。
その上で、私、今後の知的財産の保護のレベルということを考えたときに、大きな影響を及ぼしていくのがTPPだというふうに認識をしております。知的財産の分野も日本の国益に関わる重要な分野であるというふうに考えますが、大臣の認識を伺っておきたいと思います。

〇国務大臣(茂木敏充君) TPP交渉は様々な分野について行われておりまして、そこの中で、知的財産分野、これ、日本企業が開発した新技術であったりとか日本でつくられた高付加価値な製品やコンテンツを海外で適切に保護していく上で極めて重要な分野であります。
かなり各国の利害、十二か国間で対立をする難しい分野の一つでありまして、二月に開催されましたシンガポールの閣僚会合では残された論点の整理が進んで、一定の進展、この知的財産の分野でも見られたと思っております。
TPP交渉、まさに今交渉の途中でありますのでその内容についてつまびらかにすることできませんが、国益を最大化するために、知的財産の保護とそして利用の適切なバランスに配慮しつつ、精力的に交渉してまいりたいと考えております。

〇倉林明子君 とりわけ、知的財産の中でも医薬品についてちょっと質問したいと思うんです。
アメリカは、TPPでも保護強化という姿勢、明確にしております。そのアメリカは、韓国とのFTAで特許リンケージを昨年認めさせたと伺っております。
外務省に伺いますが、これ、どんな制度となっているでしょうか。

〇政府参考人(片上慶一君) お答え申し上げます。
第三国間のFTAでございますので、日本政府として有権的に解釈する立場にはない点は御理解いただければと思います。
御指摘の米韓FTAにおいて、医薬品の市販の許可と特許の関係につきまして、以下の内容の規定がございます。
第一に、両国政府は、先発薬の特許の存続期間内に市販許可を要請する全ての製薬会社の身元が特許権者に通報されるようにすること。その二、両国政府は、先発薬の特許の存続期間内に特許権者の同意あるいは黙認なしに製薬会社がジェネリック薬を市販することを防止するための市販許可手続の措置を履行すること。以上でございます。

〇倉林明子君 つまり、この特許リンケージということが適用される場合、ジェネリック医薬品が出にくくなるということなんですね。日本ではこの米韓のFTAで認められているような事前通知という制度はありません。ジェネリック医薬品が、これで普及が妨げられるようなことになってはいけないというふうに思っているわけですけれども、そもそもこのジェネリック医薬品が過去十年間で第一世代のHIV、エイズの治療薬、ここで見ますと、薬価が九九%引き下げられたということがあります。これは、本当に新興国のところや低所得者に対して、世界中で治療薬の普及に大きく貢献するという役割を果たしたものであります。
保護強化されることによって、価格が高い新薬として販売される期間が延びると、価格が低いジェネリックが出にくくなると。こうなりますと、製薬会社の利益は確保される一方で、安い医薬品の恩恵を受けられる低所得者や新興国、ここにとっては命に関わる重大な問題になってこようかと思うんです。日本にとっては、医薬品、医療費全体を押し上げるということにもつながるもので、これ、国内の関係団体からも既に意見が寄せられていると承知をしております。
そこで、昨年八月の時点の各団体の意見、取りまとめておられる内閣官房に確認したいんですが、日本薬剤師会及び日本製薬団体連合会がこのジェネリックについてどうした懸念を表明しているか、これについて確認をさせていただきた
い。
○政府参考人(澁谷和久君) まず、日本製薬団体連合会の御意見の御紹介でございますが、特許期間の延長制度や日本と同等のデータ保護期間の確保など、日本と同様の制度とすることを参加国に求めていくべきと、こういう意見が出されている一方で、この連合会の加盟団体である日本ジェネリック製薬協会からの補足意見というのも併せて付いておりまして、知的財産権の保護と後発医薬品の適切な推進、パテントリンケージ制度を協議する場合には後発医薬品へのアクセスへ配慮すべきといった意見が提出されております。
また、日本薬剤師会からは、医薬品の知的財産権の保護が強化され、ジェネリック医薬品の上市が阻止されることのないようにといった意見が寄せられているところでございます。

〇倉林明子君 御紹介のように、懸念の声が上がっているということだと思います。
世界一医薬品の特許件数を持っているのがアメリカということになります。TPP交渉では、アメリカの製薬企業の関与が強まっているという報道もされているところであります。安くて安全な医薬品の確保というのは譲れない国益であると私は考えます。
そこで、アメリカの動きなんですけれども、これは、二〇一三年スペシャル三〇一条報告書、知的財産に関わる報告書ですけれども、これが出ていると思います。この報告書の性格について、簡単に特許庁から御説明願えるでしょうか。

〇政府参考人(中尾泰久君) お答え申し上げます。
米国のスペシャル三〇一条は、一九八八年に包括通商競争力法におきまして創設されました知的財産分野の諸外国の不公正慣行を調査する手続でございます。具体的には、毎年、米国のUSTRが発表いたします外国貿易障壁報告書、これに基づきまして優先国を指定しまして、優先国に指定いたしますと、USTRが調査と相手国との協議を行うということになってございまして、仮に協議が不調の場合には、関税の引上げ、輸入規制といった対抗措置の発動も予定されている、そういうものでございます。

〇倉林明子君 対抗措置を背景に、警戒レベルが高い順に協議をして警戒レベルを落とさせていくというものだと認識しております。
そこで、二〇一三年の米国通商代表、今紹介あったUSTR、外国貿易報告書で、医薬品についてのアメリカ政府から日本に対する要請がされているかと思います。具体的に内容を紹介していただきたい。

〇政府参考人(片上慶一君) お答え申し上げます。
御指摘の報告書では、医薬品に関して次のような記述がございます。
新薬創出等加算制度について、その恒久化を引き続き求めるとともに、市場拡大再算定制度など、革新的な医薬品の開発と導入を妨げる他の償還政策を導入することを控えるよう日本に求める。二番目でございますが、日本の医薬品・医療機器償還決定プロセスの透明性について、日本政府に対し、より開かれた予測可能性のある市場を育成するために、最近の改善を基に更に取り組むことを引き続き求める。こういった記述がございます。

〇倉林明子君 つまり、流通量に応じて新薬を安くする制度、これはやめるようにというような中身かと思うんですね。現在でも、新薬の価格が国内と同様に販売できないと、これはアメリカにとってですね、そういうルールは障壁だからということで具体的に日本に対しても圧力を掛けている、これがアメリカなんですね。
そこで、知的財産の保護という観点から非常に大事だと思いますのは、こうした国民の命と健康に関わる部分、ここは最優先で交渉にも当たっていくべきだというふうに考えますが、大臣、いかがでしょうか。

〇国務大臣(茂木敏充君) 我が国の国益考えたときに、当然、国民の生命、健康、極めて重要な課題だと考えております。
そういった中で、権利の保護そして利用のバランス、しっかり図っていくことが重要だと思っております。

〇倉林明子君 巨大製薬企業がTPP交渉のロビー活動といいますか、そういうところでも積極的な動きをしているということです。企業自身も働きかけを強めているという報道等もあります。
 今答弁ありましたけれども、巨大製薬企業の利益の保護優先ということにならないよう、国民の命と健康、これ阻害するようなことがないように奮闘を求めたいと思います。終わります。