国会レポート

権利擁護の観点が欠落 精神保健法改悪案を批判 参院委で可決(厚生労働委員会)

2017年5月16日

 精神障害者の措置入院に対する警察介入の仕組みをつくり監視体制を強化するなど、人権侵害につながるおそれのある精神保健法改悪案が16日、参院厚生労働委員会で自民・公明・維新などの賛成多数で可決しました。日本共産党、民進党、社民党は反対しました。

 日本共産党の倉林明子議員は反対討論で、同改定案は精神障害者の権利擁護の観点が欠落していると批判。さらに、審議途中に改定趣旨を変更する前代未聞の経過をたどったものの、中身は犯罪防止が目的となっていることに変わりがないことを指摘し、「法の趣旨をねじ曲げるもの。本来、撤回すべきだ」と求めました。

 採決に先立つ質疑で倉林氏は、国連の自由権規約委員会や拷問禁止委員会から日本の精神科医療について、非人道性などが指摘され是正勧告が出されているにもかかわらず、過去10年間で身体拘束が2倍、保護室隔離も3割増しと、共に1万人を超える状況で増加に歯止めがかかっていないと指摘。「勧告の趣旨をしっかりと受け止めるべきだ。精神医療のあり方には政府の姿勢が問われている」と批判しました。塩崎恭久厚生労働大臣は「国連の指摘は真摯(しんし)に受け止めなければいけない」と述べるにとどまりました。

 倉林氏はさらに、日本の精神医療の現場では医療の必要のない人が30年の長期にわたり入院している実態があると指摘。「非自発的入院、強制入院は人権侵害。解消をしっかり目指すべきだ。改定案は、精神障害者に対する差別や偏見を助長することにつながりかねない。徹底した審議をせよ」と求めました。


議事録を読む(質疑)

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 前回の質疑の続きで、グレーゾーン事例への対応について確認をさせていただきたいと思います。
 本会議の塩崎大臣の答弁は、確固たる信念を持って犯罪を企図する者への対応などは医療と警察の分担が必要、このため、あらかじめ代表者会議においてその対応方針を明確化することが必要と答弁されております。そして、五月十一日、堀江部長は、医療の対象というよりは、個別ケース検討会議の外、入る前に自治体が警察と協議すると答弁をされております。
 それでは、措置入院者がグレーゾーンであるかどうかと、この認定、一体誰がすることになるのか、そして何に基づいて行うことになるんでしょうか。

○政府参考人(堀江裕君) お尋ねのグレーゾーン事例とは、他害のおそれが精神障害によるものかについて判断が難しい事例のことを意味してございまして、精神科医療の現場では、グレーゾーン事例について、精神保健法に基づく対応が開始された後に他害のおそれが精神障害によらない可能性が高いことが判明する場合がございまして、例えば精神障害が疑われるとして警察官通報がなされたが、措置診察の結果、他害のおそれが精神障害によらない可能性が高いと認められ、措置入院で対応すべきでないと判断される場合や、措置診察時点では他害のおそれが精神障害によるものと考えられ措置入院になりましたが、入院中に時間を掛けて診察する中で他害のおそれが精神障害によらない形で認められることが分かってくる場合などがございまして、このような事例が把握された場合には、自治体から警察に対応を相談、依頼することを想定してございまして、また、警察に対応を相談すべきかどうかについては、まず医師が、他害のおそれが精神障害によらない可能性が高く、医療で対応すべきでない事例に該当するか否かを判断し、その上で医師から相談を受けた自治体が、各自治体の個人情報保護条例に基づいて警察に個人情報の提供を行うことが可能かどうかを最終的に判断することとなります。
 精神科医療の役割は、精神障害者に対する治療や健康の維持増進を図るものであり、犯罪の発生防止ではございません。本来医療で対応すべきではないケースまで医療で抱え込むことにならないよう、グレーゾーン事例について、他害のおそれが精神障害によらない可能性が高く、医療で対応すべきでないと判断されるに至った場合の全国的な対応方針を今後協議会の運用通知で示す予定でございます。その際、どのようなケースが他害のおそれが精神障害によらない可能性が高いかと考えられている点についても、現場の事例を収集、整理して、モデル的な事例を併せて示したいと考えてございます。
 この全国的な方針に沿いまして、代表者会議の場において、自治体、医療関係者、警察等の間であらかじめ地域の関係機関間の連絡体制など具体的な対応方針を決めていただくことを想定してございまして、こうした対応は現在も各自治体の判断で行われているものでございますが、改正法案により新たな対応を求めるものではなく、現場で迷いや混乱が生じないよう、対応に当たっての考え方を整理して国からお示しするものでございます。

○倉林明子君 答弁は簡潔に、御協力をよろしくお願いします。
 通報するのは、ずばり医師だということだと思うんですね。自治体はこの通報に基づいて警察と協議をする、そのルールを作っていくんだということかと思います。この法案の改正趣旨が変更された後も再発防止に資すると説明をしておられます。通報しなかったことから事件の再発防止が、防げなかったということにはなってはならないという圧力がこれ医療の現場には間違いなく加わってくると思います。結果として、精神医療に犯罪防止を持ち込むことにほかならないと私は指摘をしておきたいと思います。
 そこで、引き続き、前回の議論に続きまして、精神障害者の権利擁護について質問をいたします。
 二〇一四年七月、国連の自由権規約委員会では、精神医療についての勧告がされております。強制入院について、多数の精神障害者が極めて緩やかな要件の下で強制入院を余儀なくされ、かつ、自らの権利侵害に対して異議申立てをする効果的な救済手段を利用できないでいる、また代替サービスの欠如により入院が不必要に長期化していると報告されていることに懸念を有すると、極めて具体的な指摘になっています。
 そこで、日本政府に求めた行動の中身は何でしょうか。簡潔に、付け足しなしでお願いします。

○政府参考人(堀江裕君) 二〇一四年七月に出されました自由権規約委員会の最終見解では、我が国の非自発的入院制度に関しまして、三つ、一番、精神障害者のための地域密着型あるいは代替となるサービスを増やすこと、二番、非自発的入院が必要最小限の期間で、最後の手段としてのみ課されること、また自傷他害防止のために必要な場合のみ、かつ相当とされる程度のみ課されることを確保すること、三番、虐待に対する実効的捜査と制裁措置及び虐待の被害者とその家族への補償を目的とする精神病棟に対する実効的かつ独立した監視及び報告制度を確保することにつきまして対応するよう求められてございます。

○倉林明子君 これは二〇一四年の勧告となっております。それに先んじまして二〇一三年、国連の拷問禁止委員会からも精神医療に対する勧告が出されております。非自発的入院の多さ、長期化に対する強い懸念を示した上で、こうした収容を減らすように求めていたものとなっています。こうした非自発的入院については、非人道的及び品位を傷つける取扱いたり得る行為であると、独居拘禁、身体拘束及び強制投薬の頻繁な使用に懸念を有するとしているわけですね。司法的コントロールと効果的な不服申立ての機構の確立も、この先ほど詳細紹介していただいた自由権規約委員会の勧告に先んじて拷問禁止委員会からも勧告受けているんですね。
 非人道的、こう指摘されていた身体拘束及び隔離の状況について確認をしたいと思います。過去十年間で身体拘束が二倍、保護室隔離も三割増し、どちらも一万人を超えております。これは、国連の勧告以降も増加傾向に歯止めが掛かっていない現状だというふうに思います。その理由は何でしょうか。

○政府参考人(堀江裕君) 厚生労働省が行っています調査におきまして、精神科病院で身体的拘束、隔離を受けた患者数は増加傾向にあり、平成二十六年に、今御指摘のそれぞれ一万件を上回っているものでございます。
 精神科病院における隔離や身体的拘束については、精神保健福祉法上、精神保健指定医の診察により、患者の医療と保護のため必要性が認められた場合に限り、必要最小限の範囲内で行うことができるものとされてございまして、保護室への隔離や身体的拘束の数が増加している要因は、例えば、在院日数が減る中、急性期の入院患者数は増えているというようなこともございますので、比較的症状が激しい急性期の入院患者が増加していることなどが考えられますが、現時点で明確ではございません。
 厚生労働省といたしましては、隔離や身体的拘束の増加要因を早期に分析することが重要と考えてございまして、厚生労働科学研究として、本年六月に隔離や身体的拘束に関する全国調査を実施できるよう調査設計を行っているところでございます。

○倉林明子君 要因については若干の推定はあるけれども、はっきりした原因については今後調査をしていくという中身だったかと思います。
 堀江部長に確認したいんですけれども、こうした身体拘束や隔離、増えているということについては、これは決して良くないことだという認識はお持ちだと思いますが、確認をしておきたい。

○政府参考人(堀江裕君) 繰り返しでございますけれども、隔離や身体的拘束は、精神保健福祉法上、指定医の診察により患者の医療と保護のため必要が認められた場合に限り、必要最小限の範囲内で行うことができるものでございまして、もしそれが逸脱する場合があるとすれば、それは趣旨に合っていないということがあろうかと存じます。

○倉林明子君 増加傾向をたどっているのはいいことと考えているのか悪いことだと考えているのか、権利擁護の観点からはどうお考えでしょうか。

○政府参考人(堀江裕君) 今、法の趣旨に沿って身体的拘束あるいは隔離が抑制的に実施されるべきものだと考えてございます。

○倉林明子君 非人道的な拘束になっているという指摘なんですよ。そういう自覚が私は問われているというふうに思うわけです。
 そこで、次に確認したい。この身体拘束を受けていた患者の入院形態、この中で最も多いのは何ですか。

○政府参考人(堀江裕君) 厚生労働省の行っています調査では、平成二十六年六月三十日時点で、精神病床において身体的拘束が行われていたと確認された患者は一万六百八十二人でございまして、このうち医療保護入院が最も多く八千九百七十七人、次いで任意入院千四百四十五人、措置入院二百三十二人などとなってございます。

○倉林明子君 八割を超える者が医療保護入院だということは、これ数字から見ても明らかだと思うんですね。ベッドの入院形態の割合から見ても、医療保護入院に高い比率で身体拘束が行われているということが数字から読み取れると思うわけですね。
 自傷他害のおそれがないと、そういう下での非自発的入院が医療保護入院ということになるわけです。それなのに、なぜこれだけ身体拘束が多いというふうにお考えでしょうか。

○政府参考人(堀江裕君) ちょっと今の御指摘のところで、措置件数と患者数との比で見ますと措置入院が医療保護入院より高くなってまいりまして、一五・四%でございます。それから、医療保護入院は六・八%、それで任意入院は〇・九%というふうになってございますので、補足させていただきたいと存じます。
 身体拘束が多い理由につきましてお尋ねをいただきました。先ほどのように、必要性が認められた場合に限り必要最小限の範囲内で行うことができるとされているもので、具体的には、自殺の企図又は自傷行為が著しく切迫している場合、多動又は不穏が顕著である場合、その他精神障害のためにそのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶおそれがある場合であって、他に代替する方法がない場合に身体的拘束の対象となるものでございます。

○倉林明子君 私、入院形態別に比率を問題にしているんじゃないですよ。全体の身体拘束が医療保護入院にとりわけ大きいということで問題提起、検討していただきたいというふうに思ったからこそ取り上げたんですね。
 これ、なぜ増えるのかということについてはやっぱり合理的な理由があるんじゃないかと思うんです。それは、本人同意のない強制入院ということになっているわけですから、十分な理解がなければ、入院について、逃げようとしたり拒絶反応、拒否反応が当然出てくるものだと思うわけです。自傷他害のおそれはないのに入院治療が必要だということで医療保護を掛けて入院していただいているわけですけれども、それそのものがこうした身体拘束の多さにつながっているのではないかという観点からも、私、十分にやっぱり検討する必要があるんだと思います、減らしていくという観点からもね。その上で、入院治療の必要性についても十分な説明がされているんだろうかと。されないからこそ身体拘束増加の要因にもなっている可能性、否定できないと思うわけです。
 この強制入院、最後の手段としてのみ認められているんだということを、私はその勧告の趣旨をしっかり受け止めていくべきだというふうに思っています。増加しているということは、勧告を受けながらもそれに逆行する、結果としてそうなっているということをしっかり認識すべきだというふうに思います。
 そこで大臣に伺います。国連の人権機関からのこうした相次ぐ勧告に対して、私は、精神医療の在り方、強制入院の在り方、政府の姿勢が問われる問題だというふうに受け止めております。大臣の認識はいかがでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) この非自発的入院につきまして、国連の自由権規約委員会あるいは拷問禁止委員会から指摘をいただいているわけでありまして、これは御指摘のとおり真摯に受け止めなければならない問題というふうに受け止めております。
 例えば、自由権規約委員会からは、多くの精神障害者が非常に広範な条件で権利侵害に異議を申し立てるための実効的な救済措置なく非自発的入院の対象になっていること等について御指摘をいただいております。政府といたしましても、精神科病院の入院はあくまで任意入院が原則ということでありますので、その一方で、有識者による検討会報告書で示されているように病気の自覚を持てない場合がありますので、症状の悪化によって判断能力そのものが低下をするという精神疾患の特性を踏まえれば、自傷他害のおそれがある場合以外にも入院治療へのアクセスを確保することが必要であるというふうに考えます。
 その上で、入院に係る適切な処遇の在り方を検討して必要な見直しを講じていく必要があると考えておりまして、このような観点から、今回の改正では、措置入院者について、新たに入院を行った時点で速やかに精神医療審査会による審査を実施をすることとし、入院時の患者の権利擁護や適正手続の確保をより一層図っているわけであります。また、医療保護入院についても、制度は維持をしながら、入院に当たって医師から入院が必要となる理由を本人や家族等に文書などで丁寧に説明をするために所要の改正を行っているところでございます。
 また、拷問禁止委員会から民間の精神保健指定医が入院治療の必要性の判断を行っていることの懸念などについての御指摘を頂戴いたしておりまして、今回の改正では、精神保健指定医の更新要件に指定医としての業務に従事をした経験を追加するなどの対応を行うこととしておりまして、引き続き精神保健指定医の質の担保を図っていかなければならないというふうに思います。

○倉林明子君 指摘を真摯に受け止めると、こういう表明がありました。真摯にこうした勧告を真剣に受け止めるのであれば、本当に今増加している非自発的入院の多さ、身体拘束の問題、隔離の問題、解決に向けた取組こそ私は本当に求められるということを強く指摘をしておきたいと思うんですね。
 その上で、御紹介もありました精神医療審査会の問題です。非自発的入院は強制入院であるということから、入院者の権利擁護、この観点からのチェック機能の強化というのは本当に精神医療審査会に強く求められていることだと思います。
 そこで確認したいと思います。医療保護入院の入院届の審査結果で入院継続が不要となったケースというのは、審査件数全体に対して何件になっていますか。

○政府参考人(堀江裕君) 厚生労働省の衛生行政報告例によりますと、平成二十七年度の精神医療審査会におきます医療保護入院の入院届に係る審査件数は、全国で十八万三千百六十八件となってございまして、そのうち入院継続不要とされましたのは三件でございます。

○倉林明子君 いやこれ、一瞬計算できませんけど、五千件に一件もないということと違いますか。つまり、ほとんど入院継続不要となるケースはないということですね、実際の審査結果は。
 さらに、大きく当事者からも声が上がっていました退院請求、処遇改善、これらについてはどうなっているかといいますと、不適当と判断された場合ですね、この取扱いがどうなっているかというのを見れば、請求件数全体に対して数%と。この数字は、統計見せていただきましたけれども、ほとんど横ばい、変わっておりません。
 結果として、こうした強制医療保護入院の措置にしても、退院請求や処遇改善の措置にしても、医療側の行為に結果としてはお墨付きを与えているという批判の声が出るのは当然だと思います。変化もないわけですから、改善措置いろいろしてきたと言われるものの、結果としては出ていないと、ここを真摯にそれこそ受け止めるべきではないかというふうに思います。
 二〇一三年、国連の拷問禁止委員会の勧告が求めていたのは、効果的な不服申立て機構へのアクセスの強化であります。実態は効果的な不服申立て機構として機能もしていないし、患者のアクセスも十分とは全く言えないと思いますけれども、大臣、認識いかがですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今、拷問禁止委員会勧告の件でございますが、二〇一三年の国連の拷問禁止委員会の最終見解におきましては、我が国に対して、自らの意思に基づかない入院等への効果的な上訴制度の設置などが求められているというふうに理解をしております。
 精神医療審査会は、本人の同意によらない入院や処遇の妥当性を医療機関以外の第三者が審査をするという機関でございまして、定期病状報告や入院届の審査によって、患者本人からの請求を待たずに全件につきまして入院の必要性の審査を行っているわけでございます。このうち医療保護入院の入院届の審査につきましては、そのほとんどが現在の入院形態が適当という審査結果でございますが、そのことのみをもって審査結果を評価するということは難しいと考えております。
 一方で、御指摘の最終見解等の国際的な指摘も踏まえれば、患者の権利擁護の観点から精神医療審査会の機能を強化することは重要であるというふうに考えてございます。このため、今回の改正によりまして、入院時の患者の権利擁護、そして適正手続の確保をより一層図る観点から、措置入院者について入院を行った時点で速やかに精神医療審査会による審査を全数について実施をするという仕組みを新たに盛り込んだところでございます。
 また、今回の改正では、精神保健指定医の更新要件としてこの指定医業務の実績を追加するということにして、その実績として精神医療審査会への参加、これも評価することにして、指定医の委員をより確保しやすい環境を整備するということにしております。また、予備委員の積極的な活用を図ることなどを通じて審査会の機能強化を図って、実効性のある審査が行われるよう取り組んでまいりたいと思っております。

○倉林明子君 いや、数字だけだったら判断難しいというふうな答弁していたら、実効性担保なんかしていけませんよ。
 私は、この数にこそ、やっぱりいかにきちんとした評価されているのかということ、アクセスとして機能しているのかということが端的に表れていると思っているからこそ指摘しているんですよ。私は、拷問禁止委員会からも求めがあった効果的な不服申立て機構へのアクセスを強化すべきだという指摘に沿った結果を出すような見直しにしていくべきだということを強く申し上げておきたい。
 この間、認知症患者の増大、これが入院の長期化の要因にもつながっております。認知症に伴う徘回、暴力、昼夜逆転、本当に周辺症状が悪化することによって、在宅でも、そして施設でも介護が困難になった、こういう人たちの最後の受皿という役割が精神病院担っているというこれ現状になっていると思います。治療によって激しい症状というのは大体一か月程度でコントロールが可能になるというわけですね。退院の行き場がなく長期化しているという問題があります。
 本来、在宅、施設で生活が可能な認知症の方々が長期入院になっていると、こういう問題についてはどう現状認識されていますか。短くお願いしますよ。

○政府参考人(堀江裕君) 厚生労働省の調査によりまして平成十七年と二十六年の比較をいたしますと、認知症の総患者数は三十二万一千人から六十七万八千人に増加してございますけれども、精神病床における認知症の入院患者数は五・三万人ということで横ばいでございまして、また、入院期間一年以上の認知症の推計入院患者数も三万人で横ばいとなってございます。
 また、平成二十七年の病院報告によりますと、精神病床の平均在院日数は二百七十四・七日でございまして、この十年で五十二日間短くなりますとともに、精神病床における一年以上の長期入院患者数は、平成十七年は二十二万人であったところが平成二十六年には十八・五万人というふうに減少してございまして、認知症の増加により入院が長期化している傾向は見られないとは考えますが、いずれにしても、引き続き長期入院患者の地域移行を促進するとともに、精神障害者の方々が地域で安心して生活できることができるよう取り組んでまいりたいと考えてございます。

○倉林明子君 いや、問題意識ちゃんと持つべきだと思います。横ばいやから問題ないというような認識では、今後必ず増加傾向になるものであります。きちんと受皿を確保していかないと、肩代わりというようなことが精神医療に求められてしまうということは絶対避ける必要があると思うから指摘をしておりますので、重く受け止めていただきたい。
 そして、再三議論にもなりました、今後、重度かつ慢性、こういう考え方で入院者を囲い込むというようなことになっては私は本当に本末転倒だと思いますので、この点は指摘にとどめておきます。
 最後、五月の十四日、先日ですけれども、NHKで「バリバラ」という番組やっています。実は、障害者の障害者による番組ということで、主体的に番組作りをされている。実はこの日は日本の精神医療を取り上げておられました。
 医療の必要のない人々が三十年以上の長期入院している、こういう現状を紹介し、当事者たちも登場しておりました。福島県の病院での取組は、長期入院患者の思いに寄り添って、退院に向けた支援があれば地域や施設で自立した生活が可能だということが示されていたということに感激しました。医師は、長期入院患者の四十人のうち、どうしても入院治療が継続だと判断されるのは二人程度だと話しておられたんですね。私、退院患者が自ら登場して、退院された後に幸せをやっとつかんだとおっしゃった言葉、本当に涙なしには聞けませんでした。
 治療の必要のない入院者、これを入院させ続けている現状というのは人権の侵害に当たる、私は日本の精神医療を解決していく上でこういう認識を持つということが大前提だと思うんですよ。大臣、どうですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほど来お話出ているように、現在でも多くの長期入院患者がいることはそのとおりだと思っております。背景はいろいろありますけれども、本人の抱える複合的な課題を解決するための仕組みが不十分だということであることがまず挙げられると思いますし、また、精神科病棟の入院患者の中には、地域移行を促す基盤整備が整えば必ずしも入院医療を要しない、そういった患者さんが一定数おられることもよく認識をしております。
 具体的には、精神病床の一年以上の長期入院患者のうちで、地域移行を促す基盤整備を推し進めることで四・七万人から六・二万人の長期入院患者が地域移行できるのではないかというふうに思われております。
 このため、都道府県、市町村が実施をする平成三十年度から三年間の第五期障害福祉計画において、平成三十二年度末における地域移行を促す基盤整備量を明確にし、計画的に基盤整備を推し進めるということ、加えて、平成三十二年度末までに多職種チームによる支援体制を構築するために、全ての障害保健福祉圏域と市町村ごとに保健、医療、福祉の連携に向けた協議の場を設置することとしておるところでございます。

○倉林明子君 非自発的入院、強制入院というのはやっぱり人権侵害なんだということの立場に立って、解消をしっかり目指していくべきだということを強く求めたい。
 そして、本法案は、こうした精神障害者に対する差別や偏見、こういうものを助長することにつながりかねないと。徹底した審議の継続を求める声も野党の中からありました。私も徹底した審議をしていくべきだと改めて思っております。
 本日の採決など、強行は絶対に認められない、最後表明して、終わります。

議事録を読む(反対討論)

○倉林明子君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
 反対する第一の理由は、精神障害者の情報を警察に提供する仕組みをつくり、結果として犯罪防止が目的となるからです。
 措置入院者に限り退院後の支援計画の策定を自治体に義務付けることで、公務員に対し、措置入院患者の規制薬物使用の告発や、確固とした信念に基づき犯罪を企図する者の情報提供を警察に行う仕組みを新たに設けることが審議を通じて明らかになりました。転居先の自治体までその情報は引き継がれることとなり、精神障害者の監視体制の整備となるものだからです。
 第二の理由は、法改正に精神障害者の権利擁護の視点が欠落しているからです。
 退院後の支援計画は、本人が要らないと表明しても、自治体に策定が義務付けられているために必ず策定されることとなります。本人に従う義務はないとしていますが、当事者の思いよりも計画策定が優先されることは明らかです。さらに、権利擁護の要となる精神医療審査会は、審査が形骸化し機能を果たせていない実態は厚労省の調査ではっきりしているにもかかわらず、改善措置は何ら盛り込まれませんでした。
 精神医療における人権問題として国連の人権委員会からも繰り返し求められているにもかかわらず、隔離、拘束については増加の一途をたどっています。法改正に最も求められていた精神障害者の人権擁護措置がとられていないことは極めて重大です。
 なお、ただいま提案されました修正案は、退院後支援計画の対象を措置入院者だけでなく医療保護入院を含む非自発的入院者に拡大するとしていますが、結果として原案の警察の関与が前提となるもので、その対象を広げることは権利侵害の対象拡大になり、賛成できません。
 本法案は、審議途中に改正趣旨を変更するという前代未聞の審議経過をたどりました。相模原事件は精神障害者による犯罪だという立法事実が崩れる中で、事件の再発防止という改正趣旨を変更せざるを得なかったというのが実態です。説明は変わっても盛り込まれた事件の再発防止策はそのままなのです。法の趣旨をねじ曲げる本法案は本来撤回すべきです。断固反対を表明し、討論といたします。