国会レポート

臨床研究法成立 独立性の高い第三者組織の設置を(厚生労働委員会)

2017年4月6日

 臨床研究に関する規定を定めた臨床研究法が7日参院本会議で全会一致で可決・成立しました。
 
 日本共産党の倉林明子議員は6日の参院厚生労働委員会で、臨床研究での被験者保護の重要性を述べ、独立性の高い第三者組織の設置を求めました。
 この法案は、医薬品の臨床研究をめぐって、ノバルティスファーマ社の高血圧症治療薬ディオバンの臨床研究でデータ改ざん問題が明らかになったことをうけ、臨床研究を新たに法律で規制することとしたものです。
 倉林氏は規制対象に含まれないものや努力義務にとどまるものもあり、被験者保護に格差が残っていることを指摘し、「通常の治療と違って生命や健康、安全を損なう恐れがあるのが臨床研究だからこそ、臨床研究が個々の被験者の権利と利益よりも優先されることがあってはならない。被験者の保護が最優先されるべきだ」と主張しました。

 また、厚労相が認定する「認定臨床研究審査委員会」について、これまで発生した不適正事案に厚労省がかかわっていたこともあることを示し、独立性の高い第三者組織の設置を要求。「肝炎原告団と国との約束でもある。今こそ第三者組織の設置をすべきだ」と重ねて求めました。


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○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 本法案は、臨床研究においてこれまでなかった法規制を新たに作るということで、賛成したいと思います。
 そこで、このディオバン事件に端を発した、続発した不正事案、これ確実に防止していくということが求められていると思うわけです。そこで、最初に幾つか確認をしたいと思います。
 まず一つ目、今回の法案で対象としていない臨床研究は何になるのか。二つ目、対象としているものの努力義務ということになっているのはどういうものか。三つ目、対象となる特定臨床研究、これが件数は先ほど紹介もありました。そして被験者数、これつかめないということでしたが、もう一回確認、これが全体の臨床研究の中でどの程度になるのか、それぞれ御説明ください。

○政府参考人(神田裕二君) この法案は、医薬品等を人に対して投与し、その医薬品等の有効性、安全性を明らかにすることを目的とする臨床研究を規制することを内容とするものでございます。
 このため、個々の患者の病状に合わせた治療内容を変更することなく、その結果を用いる観察研究でございますとか、医薬品、医療機器等を用いない手術手技の臨床研究、それから既に医薬品医療機器法で規制されております治験については本法案の規制の対象には含まれていないところでございます。
 二点目でございますけれども、この法律案の規制対象の臨床研究のうち、厚生労働大臣が定める実施基準の遵守を義務付ける特定臨床研究以外の臨床研究としてどのようなものがあるのかということでございますけれども、医薬品医療機器法に基づく薬事承認されたその適応に従って薬を用い、また製薬企業等から資金提供を受けない医薬品等の臨床研究につきましては努力義務を課すということにいたしているところでございます。
 それから、三点目でございますけれども、特定臨床研究の実施件数についてでございますが、公式の統計はございませんけれども、臨床研究に関する指針に基づきまして公開データベースに登録されている臨床研究は年間三千件程度というふうな実態でございます。このデータベースに登録されている臨床研究を対象にいたしましてサンプル調査をいたしまして、その割合を基に推計をいたしますと、特定臨床研究は年間八百件程度と見込んでいるところでございます。
 最後の被験者の数につきましては、研究によって参加する被験者の人数が異なるということから、現状ではデータがございません。

○倉林明子君 先ほども議論がありました、過度の規制は研究の萎縮を招くというものもあったわけですが、私、一方、被験者保護という観点から考えた場合、今回の法規制というものには、対象とならないものもあるし、努力義務にとどまるもの、これも多くあるということは確認できると思うんですね。被験者の保護という観点からは、いまだ格差が残るということにならないでしょうか、大臣。

○国務大臣(塩崎恭久君) 臨床研究におけるこの被験者保護の問題についてでございますが、これまで人を対象とする医学系研究に関する倫理指針、これに基づいて指導をしてまいりました。製薬企業等の資金提供を背景とした一連の不適正事案が発生したことを受けて、臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会におきまして有識者による検討がなされまして、その結果、倫理指針だけでは不十分だということで判断をされました。
 ということから、我が国の臨床研究に対する国民の信頼を回復するために今回の法案提出となったわけでありますが、本法案では、被験者のリスクが特に高いと考えられる未承認、適応外の医薬品等の臨床研究等は実施基準の遵守を義務付け、これに次いでリスクの高い臨床研究については本法案で努力義務を課すということと整理をさせていただきました。
 さらに、リスクの低い研究に関しましては、従来どおり倫理指針を遵守していただくというように、リスクに応じた被験者保護を行うという形を取らせていただいているところでございます。

○倉林明子君 まあリスクに応じて差を設けている、つまり差はあるということに結果としてやっぱりなるんじゃないかなと答弁聞いていて思ったわけですが。
 そこで、改めて確認をさせていただきたいと思うんです。国際人権B規約第七条の規定はどうなっているか、及びこれまで遵守を求めてきた倫理指針、すなわち医学系研究倫理指針、この目的規定がどうなっているのか、読み上げて御説明ください。

○政府参考人(神田裕二君) 国際人権自由権規約、B規約の第七条についてでございますが、「何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。特に、何人も、その自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けない。」というふうに規定されております。
 また、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針の第一章総則の目的におきましては、「この指針は、人を対象とする医学系研究に携わる全ての関係者が遵守すべき事項を定めることにより、人間の尊厳及び人権が守られ、研究の適正な推進が図られるようにすることを目的とする。」というふうに規定されているところでございます。

○倉林明子君 適正な研究の前提ということになるんだと思うんですね。人間の尊厳及び人権が守られる、これ必要なんだということです。
 世界医師会のヘルシンキ宣言、ここでも倫理原則の一般原則で、医学研究の主目的は新しい知識を獲得することであるが、この目的の達成が個々の研究対象者の権利と利益よりも優先されることは決してあってはならないとされているわけです。
 臨床研究を規制するこの新たな法案に、原則だということだと思うわけですね。大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 生命や自由の権利について規定をしております先ほど来出ております国際人権自由権規約、いわゆるB規約の第七条と、研究者が適正かつ円滑に研究を行うため遵守すべき事項について定めております人を対象とする医学系研究に関する倫理指針、ここにおいて研究対象者の人権を保護することの重要性が指摘をされているわけでございます。
 今回の法案は、その検討過程において患者代表等の有識者から成る委員にも御参加をいただきました。被験者である研究対象者の保護や研究の質の確保等の観点から御意見をいただいてまとめられたものであります。具体的には、被験者保護の観点から、インフォームド・コンセントや個人情報の保護等について国際的な基準を踏まえて定めるべきとされておりまして、法案化を行って国会に提出をさせていただいたということでございます。
 したがって、御指摘の国際人権自由権規約、B規約第七条と、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に記載があるような臨床研究の対象者の人権の尊重にも十分配慮した内容となっていると考えておるところでございます。

○倉林明子君 まあそうおっしゃるんだけれど、先ほども指摘あったとおり、この倫理原則が法案には触れられていない、だからこそ取り上げているんですよね。この指摘は衆議院でもあって、前提としているんだという御説明もありました。
 それだったら、本当にどうやってこれ担保していくのかということが問われると思うんです。短めにお願いします。

○政府参考人(神田裕二君) 御指摘の人権の保護の点につきましては、多くの委員の方々からも御指摘をいただいているところでございます。
 元々、この法律の中では、研究の対象者を含めます国民の臨床研究に対する信頼を確保してその推進を図るということで、被験者の保護の点についても十分配慮した内容となっておりますけれども、御指摘のように、人権の保護ということをしっかり位置付けるべきではないかという御指摘を踏まえまして、この法律に基づきます実施基準の中で御指摘のような点を規定することを検討してまいりたいと考えております。

○倉林明子君 言うまでもなく、医学研究は医学の進歩にやっぱり欠かせないものだと私も思います。しかし、通常の治療と違いまして、生命、健康、安全を損なうおそれがある、これも臨床研究の特徴だと思うんですね。だからこそ、臨床研究が個々の被験者の権利と利益よりも優先されることは決してあってはならないと、被験者の保護が最優先なんだということをしっかり原則として貫いていくと、強く求めておきたいと思います。
 そこで、新たに設置する認定臨床研究審査委員会についても議論がありました。先ほど熊野委員からも御指摘があったように、ディオバン事案検討委員会でも、各大学の倫理審査委員会が歯止めになった形跡見当たらないということで、歯止めになる担保についての御説明がありました。そこで、法的規制を掛けていくということで歯止めにするんだということだったと思うんですね。
 その上で聞きたいのは、この認定臨床研究審査委員会なるものは、厚生労働大臣が認定するという委員会になるわけですね。衆議院の議論でも、厚労省が関わった不適正な事案があったという指摘もありました。私、被験者保護という観点からいうのであれば、独立性の高い第三者組織、こういうものの設置が必要ではないかというふうに思います。大臣、お考えいかがですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 臨床研究の実施計画を審査をいたします臨床研究審査委員会、ここにおきまして、委員の利益相反関係を適切に管理をして適正に審査がなされることというのが被験者保護の観点からも重要だというふうに考えておりまして、このため、今回の法案では、この審査委員会の委員構成につきまして、臨床研究を実施する者と同じ医療機関に属する委員を半数未満、外部委員がすなわちこれは半数以上ということですが、とするほか、審査に当たっては、臨床研究を実施をする者と過去に共同研究等を行ったことのある委員を審査から除外をするなどの審査委員会の独立性を高めるための要件というものを定めることを想定しております。
 さらに、審査委員会が、これらの要件を満たさない場合には、厚生労働大臣は改善命令や認定取消しを行うことができるということでございまして、こうした措置によって、審査委員会の審査業務の適正性あるいは公正性、これらを確保してまいりたいと考えております。

○倉林明子君 第三者性を高めているんだという御説明ですが、二〇一三年の薬事法改正、この議論で、当時の田村大臣が、独立性、専門性、機動性を持った組織の必要性、これ認めておられます。私、当時の肝炎原告団と国との約束でもあったのではないかと思うんですね。第三者組織というのをこの法律を作るという機にしっかり設置を考えていくべきだと思うんです。
 重ねて求めたいと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(神田裕二君) 午前中の質疑でも御指摘ございましたように、その検討会の中で、薬事規制と同様に臨床研究も規制すべきであるという意見があったということは私どもも承知いたしております。また、その後発生いたしました不正事案等を踏まえまして、まさにこの制度化について御議論いただいたわけでございますけれども、その中では、現在の倫理指針だけでは法的な根拠がなく不十分であるということと併せまして、過度な規制をすることによって臨床研究そのものが萎縮することがあってはならないと、両面の配慮が必要だというふうにされたところでございます。
 そういう観点から、今回の法律におきましては、薬事法におけますような、事前に届出をしまして三十日間は治験等に着手してはいけないという行政が直接審査をするような仕組みではなくて、臨床研究の審査委員会でまず審査をしていただき、その意見に従って是正等をした上で厚生労働大臣に届出をしていただくという仕組みにしたわけでございます。
 そういう仕組みを取っておりますので、まさに臨床研究審査委員会の独立性、公正性というのは非常に重要でございますので、先ほど大臣からも申し上げました公正でございますとか実際の審査に当たっての利益相反管理等については十分配慮をした上で運用していきたいというふうに考えております。

○倉林明子君 やっぱりそこの独立性、中立性、公平性というのは肝になる部分だと思います。そこが担保されてこそ、国民の信頼というのは勝ち得ることができるということは強く申し上げたい。
 そこで、続発した臨床研究の不正事案、ここで浮かび上がったのは何だったかというと、大学の権威付けが欲しいという企業と、企業から寄附金もそして無償の手伝いも受けたいという大学側、こういうもたれ合いの構図があったのではないかという指摘がされておりました。
 今回の規制で、資金提供を公開していくということにしたのは当然のことだと思うんですけれども、これ、公開の範囲については御説明ありました。公開の範囲の対象とならないものは何か、御説明ください。

○政府参考人(神田裕二君) 今回の法案は臨床研究に対する信頼の確保を図ることを目的としていることから、製薬企業等からの資金提供について、例えば臨床研究費など臨床研究に関連したものに限って公表の対象とすることといたしております。このため、講演会を開催する場合の実費的な経費でございます会場費、交通費、宿泊費などの実費弁償的な情報提供関連費でございますとか、飲食費などの接遇費については公表の対象外としております。

○倉林明子君 労務提供はどうですか。

○政府参考人(神田裕二君) 製薬企業によります労務提供というのは非常に多岐にわたります。それを全て申告をするということになりますと、事務負担も非常に大きくなるわけでございます。まずは資金提供について公表することにいたしまして、実施の状況を見ながら、その対象範囲をどのようにするのかということについては、これは厚生労働省令で定めるということになっておりますので、施行状況を見ながら、その範囲を更に労務提供等に拡大するかどうかということについて、施行状況等を勘案しながら検討していきたいというふうに考えております。

○倉林明子君 まさにディオバンのときは労務提供が大きな問題の一つに上がっていたことではないかと思うんですね。実施状況を見てということでしたけれども、これが非公開になるということについては、しっかり私は監視していく必要あるなと思います。
 さらに、資金の方ですけれども、情報提供関連費及び接遇費などについては、実費弁償的なものについては非公開にするということでした。これ、講師謝金、講師への謝金付け替えるということも可能になるんじゃないかということが懸念されるということを指摘したい。
 さらに、先ほども御紹介あった日本製薬工業協会、製薬協の、今、透明性ガイドラインということで、公開が一部企業ということになりますけれども、されています。その中の公開対象を見てみますと、情報提供関連費及び接遇費、これ、公開対象となっております。わざわざ新たな規制を作るのに、業界団体のガイドラインよりも後退するようなことになるんじゃないかと。なぜこれらの資金提供が非公開でもよいということにしたんでしょうか。

○政府参考人(神田裕二君) 講演料につきましては、先ほど申し上げましたように、原稿執筆料と同様に公表の対象にすることを考えておりますので、そこはそのように現時点では考えております。
 それから、なぜこのような御指摘のようなものを対象外にしたのかということでございますけれども、あくまでも今回のこの法律の趣旨は臨床研究に対する信頼を確保するということで、製薬企業等から研究者に対します資金提供の透明性を確保するということが主目的でございますので、それに必要な範囲で義務付けをするということを考えているということでございます。
 先ほども申し上げたような、情報提供関連費のような実費そのもの、これによって臨床研究がゆがめられるようなおそれは少ないのではないか。それから、飲食費等の接遇費につきましては、既に医療用医薬品製造販売業公正取引協議会におきまして公正競争規約というものを定めまして、一定のものを除いて物品の提供等は禁止をされております。また、接遇に関しますものとしては、懇親行事等の飲食費でございますとか医療情報提供に伴う飲食については上限額が決められておりまして、これに違反した場合には、警告それから百万円以下の違約金、除名処分等の担保措置が講じられていることから、ここの部分につきましては、これによって研究がゆがめられる可能性は低いということから公表の対象としていないところでございます。

○倉林明子君 今から省令で定めていく事項も非常に多いという法案になっております。やっぱり二度とああいう事案が起きないんだと、不適正事案は起きないんだということの歯止めには、指摘事項も踏まえて対応していただきたい、求めまして、終わります。