倉林明子

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医師・看護師大幅増員を 長時間労働を告発(厚生労働委員会)

 日本共産党の倉林明子議員は4日の参院厚労委員会で、政府の「働き方改革実行計画」の中で示された医師の残業規制と、看護師の労働環境の問題について質問しました。

 同計画では、時間外労働を「月100時間未満」とする政府案の“規制”の適用対象としている一方、医師には診療行為を求められたとき正当な理由がない限り拒んではならないという「応召義務」があり、その「特殊性を踏まえた対応が必要」としています。
 倉林氏は、「応召義務があるからといって、医師が長時間働いて過労死するような事態を放置できない。医師の労働時間短縮のためには大幅な増員が必要だ」と強調。「厚労省は将来医師が過剰になるとして新規参入の削減をしてきた。必要な医師数の推計は労働時間短縮にみあったものとして見直しが必要だ」と求めました。
塩崎恭久厚労相は「具体的には今後検討していく」と繰り返すにとどまりました。

 さらに倉林氏は、看護職員の労働環境も人不足で、2交代制で16時間以上の夜勤など深刻な実態を指摘。看護師確保法に基づく基本指針に、夜勤回数制限、インターバル確保、1日8時間労働を基本とした長時間労働規制などを盛り込むべきだと求めました。


議事録を読む

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 まず、働き方改革の実行計画が策定されたということで、これについて質問します。
 電通で過労自殺された高橋まつりさんのお母さんがコメントされています。過労死を予防するための法案なのに、過労死ライン以上の百時間とするのは、過労死をさせよということを認める法案でしょうか、全く納得できないというものでした。
 そこで確認したいと思います。実行計画がこれ法律となれば、繁忙期なら最大で月百時間未満、休日労働も含めれば年間最大九百六十時間働かせても違法とはならないということになるんでしょうか、大臣。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今、高橋まつりさんのお母さんの話がありましたけれども、私どもも、今回の実行計画の真意を丁寧にやはり御説明申し上げて、理解をしていただけるようにしていかなければいけないというふうにまず感じるところであります。
 この時間外労働の限度時間というのは、労働政策審議会で長年議論してきたけれども、合意に至らずに法律化ができなかったということでありました。つまり、大臣告示にとどまっていたわけでありまして、今回の実行計画においては、労使合意に基づいて、現行の大臣告示で定める月四十五時間、年三百六十時間の上限を法律に明記、そして、現在上限なく定めることができる特別条項を改めて、上回ることができない上限を年七百二十時間としたことは、これ自体やはり大きな前進だというふうに考えているところでございます。
 加えて、労使合意では、上限時間水準までの協定を安易に締結するのではなく、月四十五時間、年三百六十時間の原則的上限に近づける努力が重要だということを明記をしております。
 これを踏まえて、実行計画では、さらに可能な限り労働時間の延長を短くするために、新たに労働基準法に指針を定める規定を設けるということとして、行政官庁は、当該指針に関し、使用者及び労働組合等に対し、必要な助言、指導を行えるようにするとの方針を打ち出したわけでありまして、私どもはそれに従ってしっかりと対応してまいりたいと思っております。

○倉林明子君 質問は、百時間未満も年間最大九百六十時間もこれ法律で違法にならないということじゃないですかと。答えないんじゃないですか。違法とならないと、これ確認させていただきたいと思います。
 そこで、経済同友会が働き方改革に対する意見を二月に発表されております。私、いろいろ意見合わないところありましたけれども、注目したのは次の意見なんです。上限の設定には、法定労働時間の意義を弱め、上限までの時間外労働が許容されるという誤った認識につながり、労働時間の高止まりを招くと。私、そのとおりだと思いました。そのとおりだと思いませんか、大臣。

○国務大臣(塩崎恭久君) そもそも一か月当たりの時間外労働時間の限度というのは原則月四十五時間というふうにしたわけでございまして、臨時的な特別の事情がある場合に該当すると労使が合意をしなければこれを上回ることはできないというのが今回の合意であります。また、労使合意では、上限時間水準までの協定を安易に締結するのではなくて、先ほど申し上げたとおり、月四十五時間、年三百六十時間の原則的上限に近づける努力が重要だというふうに明記をされているわけでございます。
 これを踏まえて、実行計画では、先ほど申し上げたとおり、さらに可能な限り労働時間の延長を短くするため、新たに労働基準法に指針を定める規定を設けることとして、行政官庁は、当該指針に関し、使用者及び労働組合等に対し、必要な助言、指導を行えるようにするという先ほどの方針を打ち出しているわけであります。
 このように、今回の計画は安易に月百時間未満といった長時間労働を認めるということでは全くなくて、高止まりしないように、あくまでも月四十五時間、年三百六十時間の原則に近づけるというものであると思います。

○倉林明子君 重ねて聞いてもおっしゃらないけれども、これ違法にならないんですよ、このまま法制化すると。長時間労働を政府が容認するということになるわけです、結果として。厚生労働省が私歯止め掛けないでどこが掛けるのかと言いたいと思うわけですよ。おっしゃったように、大臣告示、これ上限にするんだというんだけれども、ここで規制を掛けていくという法制化に向かうべきだということを強く申し上げておきたいと思います。
 そこで次に、この働き方改革の実行計画で医師の残業規制について盛り込まれました。医師には、診療行為が求められたときに正当な理由がない限りこれ拒んではならない、十九条で定めがある応招義務についてであります。この応招義務との関係で大変な議論になると医師会の会長の発言も報道されていたし、先ほど四病協の要望も紹介あったとおりだと思います。
 そこで、応招義務があるからといって医師が長時間働いて過労死するような事態というのをこれ放置できないというのが働き方改革の原点だろうかと思います。そこで、医師の労働時間を短縮しようと思ったら、私、大幅な増員は避けられないと思いますけれど、いかがでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) この実行計画におきましては、医師について、時間外労働規制の対象とするけれども、医師法に基づく応招義務等の特殊性を踏まえた対応が必要だというのが原則でありまして、具体的な対応については、今後、医療界の参加をいただいて検討の場を設けて検討して結論を得ていこうと、こういうことであります。
 一方で、我が国の医療を取り巻く環境というのは大変大きな変化に直面をしておりまして、厚労省では、昨年十月に新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会というのを立ち上げておりまして、近々この最終報告が出てまいりますが、新たな医療の在り方と、この在り方を踏まえた医師、看護師等の新しい働き方確保の在り方、これについて新たな方向性を出していかなければいけないというふうに思っていまして、この検討会では、医師の勤務実態それから他の職種との役割分担、この意向を把握するための大規模な全国調査も行いました。必要医師数については、これらの議論やあるいは調査結果を踏まえた上で検討してまいりたいというふうに考えております。

○倉林明子君 私は、本当に政府の本気度が問われる問題だと思っています。
 これからの検討の中身について若干御紹介ありました。昨年六月の時点で医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会の中間取りまとめが出されております。暫定的にこの間増やしてきた医学部定員について、期限となる二〇一七年度以降も当面延長するということが確認されております。
 そこで、これからについては検討していくということなんだけれども、現状の推計で二〇二五年の医師の数というのはどう想定しているのか、その後の推計はどうなっているか。上位、中位、下位というふうに検討されている、数字があると聞いていますので、上位で見積もった場合の推計について御紹介ください。

○政府参考人(神田裕二君) 先生御指摘のとおり、厚生労働省で医療従事者の需給に関する検討会の中の医師需給分科会におきまして、昨年三月に医師需給推計を行っております。その前提といたしましては、現在の九千二百六十二人という医師養成定員を維持したというふうに仮定することと併せまして、上位推計におきましては、高度急性期とか急性期病院に従事する医師の週当たりの労働時間、現状五十六・六時間でございますが、それがほかの病院、診療所と同レベルの四十五・七時間まで改善した場合と仮定しておりまして、この推計によりますと、二〇三三年に医師の需給が均衡するというふうに推計しているところでございます。

○倉林明子君 直近のところで見ると、二〇二五年、上位推計でいうと三十・三万人の医師が必要になると。つまり、一万人を超える不足だという推計がされて、その後医師も増えるので二〇三三年には均衡する、その後過剰になると、こういう推計していると思うんですね。五年後に労働時間規制の導入をやると。これもう目の前で、実際には医師の不足が見込まれる期間なわけです。どれだけの増員が必要になるのかという点で、新たに働き方改革、上限規制を設ける対象にしたということを踏まえれば、私、この推計については基準も見直していくべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 医師の時間外労働規制の具体的な対応につきましては、働き方改革実行計画において、今後、医療界の参加の下で検討の場を設けて検討し結論を得るというふうにされたことは先ほど申し上げました。さっきも触れましたいわゆるビジョン検討会と我々が呼んでいるこの昨年十月に立ち上げた新たな医療ビジョンと働き方ビジョン、これに関して申し上げれば、先ほど申し上げた全国調査、これは一万六千人近くの医師が回答しておりますけれども、これらの結果を今分析をしているわけであります。
 今お触れになったその需給推計、見直すべきじゃないかということでありますけれども、今申し上げたような議論あるいは調査の結果を踏まえて、例えば他職種へのタスクシフティング、つまり担い手を替えるということもあり得るわけで、あるいは、AI、ICTなどの新たな情報技術の活用による生産性の向上によって医療の効率化あるいは質の向上ということが図られるなどの今後の労働時間に影響を与えるような大きな変化というのが取組の中でいっぱい出てくると思います。この医師の働き方の前提条件となるこうした変化をよく整理をして、そして再度推計を行う必要があるのではないかというふうに考えております。

○倉林明子君 いろんなことの要件も加味して考えたいということを今おっしゃったわけだけれども、私、やっぱり医師が過剰になるという推計、医師が将来は過剰になるという推計は今に始まった話じゃないんですよね。これ、一九八六年に厚労省が医師は将来過剰になるということで新規参入の削減を打ち出して、医学部定員は減らしてきたと。ところが、その後どうなったかと、医師不足ということで社会問題になりました。そして、定員を減らすのではなくて増員で対策していくということをやってきたわけですよ。私、やっぱりそんな過ち繰り返してはならないと思うんです。やっぱり必要な医師数の推計は、労働時間短縮に見合ったものとしてしっかり見直しを求めておきたいというふうに思います。
 次に、私、そのビジョン、医師、看護師も含めたビジョンの検討を行われているということで、看護師について質問したいと思います。
 看護師の需給見通しというのは、これ五年ごとに見直されて、都道府県の計画策定に活用されてきたという経過がございます。これ、七次にわたってきた歴史があるわけですが、この需給見通しが実は二年間空白と、これかつてない事態になっているんですよ。八次需給見通しというのが本来機能していなければならないんだけれども、この見通しというのはいまだありません。いつになったらできるんでしょうか。

○政府参考人(神田裕二君) 御指摘の看護職員の需給推計についてでございますけれども、平成二十七年の十二月に医療従事者の需給検討会を立ち上げまして、平成二十八年三月からその検討会の看護職員の需給分科会において検討を開始したところでございます。その分科会におきましては、都道府県が二〇二五年の医療需要を踏まえて作成する地域医療構想との整合性の確保でございますとか、地域偏在等の是正などの観点を踏まえて看護職員の需給を検討するということにしているところでございます。
 これに加えまして、先ほど大臣からも御答弁申し上げた、我が国の医療を取り巻く状況の変化を踏まえた新たな医療の在り方、また新たな医療の在り方を踏まえた医師、看護師等の働き方及び確保の在り方について検討を行う、新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会が平成二十八年十月に設置されておりまして、現在その取りまとめに向けた議論が行われているところでございますので、この結果を踏まえまして、今後、看護職員の需給推計の検討をしてまいりたいと考えております。

○倉林明子君 需給見通しの検討会では、作ると言ってやっぱりやめたと、こういう説明をしているんですね。そこで厳しい意見続きましたよ。見通しを作らない選択肢がまさかあるとは思っていなかった、現状の足下で足りない、絶対的に不足しているんだということで見通しは当然作るべきだという指摘があったのは私当然のことだと思います。
 確かに、看護師は年間三万人程度の増加があると。しかし、現場の労働実態どうかということですよ。病棟では二交代制勤務が増えているということを指摘してまいりましたけれども、過去最高になっています。その半分を超えるところで、十六時間以上連続した勤務を夜勤やっているというところが半分を占めているわけですね。勤務間隔、勤務と勤務の間のインターバルは八時間未満、これも五割になっているわけです。繰り返し求めまして、今年も厚労省として看護師の実態調査をしていただいております。結果はまだだと聞いておりますが。
 改めて大臣に認識をお聞きしたい。看護師の働き方について、現状どう捉えておいでか、見解を求めます。

○国務大臣(塩崎恭久君) 厚生労働省としては、平成二十七年度から病院の勤務環境に関するアンケート調査を実施しております。この調査によりますと、二交代制勤務が約六〇%、三交代制勤務が約三七%となっていまして、この二交代制での十六時間を超えるケースというのが約五九%、六割に近いということでございまして、夜勤一回当たりの勤務が長時間にわたることなど、病院で勤務をされている看護師の皆さん方が大変厳しい勤務環境だと、そういうことを承知をしているところでございます。
 厚労省としては、医療従事者の夜勤負担などの軽減に向けて、医療機関の勤務環境改善の取組や人材の確保について引き続き推進してまいりたいと思っております。

○倉林明子君 先ほど来、二〇二五年の医療体制を見直していくという議論の中で考えていくという話もありました。私、病棟も本当に深刻さが増しているんだけれども、実は在宅を支える訪問看護師の実態というのも大変なことになっています。実は、拘束当番日に深夜呼出しされると、翌日やっぱり勤務なんですよ。少人数で回しているから、こういう実態が深刻に広がっているわけです。
 改めて、看護師確保法が制定されて今年二十五年になります。複数、月八日以内、この夜勤回数など盛り込んだ基本指針、これが一度も改定されていないわけです。その理由は何でしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今御指摘をいただいた基本的な指針は、この人材確保法に基づいて、看護師等の資質の向上、それから就業の促進、確保の促進などに関する重要事項を定めるということとして平成四年に策定をされています。
 この指針について、これまで就業中の看護職員数は平成四年は約八十八万人だったのが平成二十七年には百六十三万人と順調に増加をしてきたこと、それから、看護系大学の一学年定員は平成四年に七百六十八人だったものが平成二十七年は二万一千三十四人というふうに著増しております。そんなこともあって、策定以来、指針の見直しが行われてこなかったということがございまして、一方で、平成四年の指針の策定以来、地域包括ケアを推進していく中で看護職員に求められる役割が、それから労働力人口の減少によって将来必要となる看護職員をどのように確保していくか、こういったことなどで看護職員の確保を取り巻く環境は大きく変わっております。
 したがって、この新たな確保の在り方について、今、先ほど申し上げたビジョン検討会で検討を行っておりまして、それを含めて指針の改定の必要性について今後議論を深めてまいりたいと思っております。

○倉林明子君 二十五年見直さなかった理由の説明としては、私、全く納得できないと強く申し上げたい。
 今、厚生労働省のホームページ開いて、もう表題、タイトル残っていますよ、この基本指針、開けてみたら表記されません。それだけ後景に追いやっているということじゃないでしょうかね。
 改めて強く求めたい。日本看護協会からも要請が出ています。夜勤回数の制限、インターバル確保、一日八時間労働を基本とした長時間労働規制など、具体的な中身を盛り込んだ指針としての見直し、求めたいと思います。
 終わります。