後遺症対策の強化を 新型コロナ 調査求める(2024/5/14 厚生労働委員会)
(資料があります)
日本共産党の倉林明子議員は14日の参院厚生労働委員会で、新型コロナウイルス感染症の後遺症対策の強化を求めました。
新型コロナ感染症の後遺症患者は、身体障害者福祉法による障害認定が可能です。しかし、症状が重篤でも認定に至らないケースも多く、倉林氏は実態把握を要求。武見敬三厚労相は「罹患(りかん)後症状の実態把握と併せて、身体障害の認定状況等を把握することを検討したい」として、調査項目に加える考えを明らかにしました。
倉林氏は、コロナ後遺症を診療する医師によれば、後遺症患者の1割が失職または休職し、労働に影響した人は7割にのぼるとして、支援・救済は待ったなしの課題だと指摘しました。
また、世界ではコロナ後遺症と筋痛性脳脊髄炎(ME/CFS/慢性疲労症候群)に着目した研究が進んでいると指摘。被害、影響の重大さに見合うよう、診断、治療につながる研究の予算と規模を拡大するよう求めました。
倉林氏は、後遺症の人たちを置き去りにしないためには、感染拡大を抑えることとあわせ、医療の拡充、経済的支援を強化すべきだと強調しました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
偽造のマイナンバーカードが、これスマホ乗っ取りということで事件が相次いだ、発覚しております。被害の拡大が非常に懸念される事態だというふうに受け止めております。機微な健康情報も含めて、情報漏えいの新たなリスクが表面化しているということだと思うわけです。
この事件を受けて、リスクに関する大臣の認識はどうかということと、これ、マイナ保険証の普及を進めて、この事件を受けてもですね、マイナ保険証の普及を進め、健康保険証は方針どおり十二月に廃止と、これ変わらないのかと。いかがでしょう。
○国務大臣(武見敬三君) 今般の事案は、券面を単純に印刷した偽造マイナンバーカードを契約等の場面において提示をし、他人が成り済ましを行ったものであると承知しています。こうしたカードは本来見分けることができるものでございますが、窓口での確認において活用可能なチェックポイントを周知できるよう、今デジタル庁が関係省庁と連携してその検討をしているものと承知しております。
一方で、本来、マイナ保険証については、マイナンバーカードのICチップに格納された電子証明書を利用して電子的な本人確認を行うとともに、資格情報を格納しているデータベースに照会を行い資格情報の提供を受けていることから、券面を単純に印刷した偽造カードでは成り済ましができない仕組みになっております。
したがって、このように、今般の事案はマイナ保険証の本来の利用とは性質が、状況が異なり、マイナ保険証そのものの利用に問題が生じているものではないと考えます。こうしたセキュリティー上の対策がしっかりと講じられていることを国民の皆様に丁寧に説明をしつつ、今年十二月二日から保険証の新規発行を終了をし、マイナ保険証を基本とする仕組みに円滑に移行してまいりたいと考えます。
○倉林明子君 いや、デジタル庁、河野大臣は、ちゃんとそういう仕組みで読み取りしてもらえれば、チップを、大丈夫なんだと。ところがね、ところがですよ、読み取り機を無償配付するけれども、そのアプリの開発はこれからだというじゃないですか。デジタル庁がそう説明していますよ。
私、こういう運用のされ方もしているわけで、本人証明としての運用もされている中でこういう乗っ取り事件が起こったということ、重大だと思うんです。マイナカードに税や医療、口座と本当に多くの情報をひも付けているために、一旦成り済まされると被害は極めて甚大なんですよ。厚労省が、こういう事態を受けても率先して国民の被害よりマイナの、マイナカードの普及を優先させると、もってのほかだと指摘をしたい。
情報漏えい事件というのは、このマイナカード発足以来、相次いで表面化しているわけです。国家公務員のマイナ保険証の三月の利用率ということで、この委員会でも議論がありました。公表された中身を見てみますと、共済組合別で利用率が最も低いのが防衛省なんですよ。次が外務省、そして厚労省第二共済組合というふうになっております。
こうした国家公務員が利用しないということについての理由ですね、聞き取り調査というのはやられたんでしょうか。
○政府参考人(伊原和人君) お答えいたします。
今月八日に、三月時点の国家公務員共済組合のマイナ保険証の利用状況を公表しております。国共済全体としては、昨年十一月時点から一・三一倍と増加してございます。
そうした中で、今先生の御質問にございますけれども、マイナ保険証を利用しない理由につきまして聞き取り調査というのは行っておりません。
○倉林明子君 個人情報保護委員会がデジタル庁に対して異例の行政指導を実施したと、これ去年の九月のことでした。デジタル庁が保有するのが特定個人情報や保有個人情報であるという意識も、その漏えい事案であるという意識も欠如していたと。これ、デジタル庁の組織の問題として指摘されたんですよ。今回の成り済まし事案への対応、これ、デジタル庁の対応見る限り、構造何にも変わっていないなというのが受けた印象です。
改めて、健康情報という機微な個人情報を扱う厚労省が、この個人情報の漏えいリスク、これ顧みることなくカードの普及に突き進むというようなことはあってはならないと思うんですけれども、大臣、どうですか。
○国務大臣(武見敬三君) マイナ保険証については、昨年春に別人へのひも付け問題などが報道され、国民の皆様に大きな不安を与えたことに鑑みまして、これまでに全保険者による自主点検であるとか登録済みデータ全体についての住民基本台帳の情報と照合を完了して、今般、保険者等による必要な確認作業を終了しました。それから、新規のひも付け誤りを防止するため、今月七日より、新規の被保険者についてJ―LIS照会を行うチェックシステムの仕組みも導入をいたします。こうした対応を行って国民の不安払拭に努めてまいりました。
マイナ保険証がより良い医療の提供を可能にするほか、医療DXのパスポートとして、今後電子処方箋の普及が進むことでリアルタイムでの薬剤情報の共有が可能になります。それから、今年秋以降は、救急医療の現場における患者の意識がない場合などでも医療情報の共有が可能になります。令和七年度中には電子カルテ情報共有サービスの運用開始により患者の電子カルテ情報を医療機関などが電子的に送受信できるようにするなど、そのメリットはこれからますます増えていくものと考えております。
○委員長(比嘉奈津美君) 簡潔にお願いいたします。
○国務大臣(武見敬三君) したがって、こうしたメリットを早期に最大限発揮させることが重要だと考えておりますから、十二月二日からのマイナ保険証を基本とする仕組みに移行すべく、このマイナ保険証の利用促進に積極的に取り組んでまいりたいと思います。
○倉林明子君 そういう利便性を強調されるんだけど、情報漏えいのリスクがやっぱりその点検の後だって起こっているわけですよ。で、こんな乗っ取り事件まで起こっているんですよ。そういう情報漏えいリスクがあるからこそ、国家公務員の中でもとりわけ情報漏えいに機敏なところでの利用が進まないって当然のことだと思います。健康保険証というのはずっと長年使い続けられてきて、国民の信頼は絶大ですよ。廃止ありきの方針というのは改めて強く撤回を求めたいと思います。
次に、コロナの後遺症について伺いたいと思います。
コロナ五類移行から一年になりますが、感染拡大の波は私続いているというふうに指摘したいと思います。
感染拡大と医療逼迫の関連、示す指標として、今日資料をお配りしていますのが各消防本部からの救急困難事案に係る状況調査というもので、この同じデータの取り方をしたのが三月、今年の三月途中まで出ております。五類に移行してから一定期間これ取っているんですね。
これ見ていただきますと、赤い折れ線というのがコロナ前の同時期と比べたときにどれだけ増えているかというものを反映したもので、これ見事に感染ピークと一致するんですよ。で、これをフォローしていると、明らかな波が、九波、十波、いわゆる九波、十波と出ていると。つまり、五類移行後も実はコロナが医療に大きな負荷を与え続けていると、これ実態としても声上がってきております。こういう認識ですね、波は続いていると、そういう認識ありますか、大臣。短くお願いします。
○国務大臣(武見敬三君) はい。
昨年五月の五類感染症への移行の後に各都道府県において移行計画に基づく取組が進められた結果、特定の医療機関が負荷を負うのではなくて、幅広い医療機関で新型コロナの患者の受入れが進んで、今年五月から通常の医療の提供体制へ移行したところでございます。あっ、今年の四月からですね。
それからまた、クラスターを防ぐなどを目的として院内や施設内での感染対策を進めることも重要であって、医療機関や介護施設向けの感染対策周知啓発や医療従事者向けの講習会を行うとともに、令和六年度の診療報酬改定等において新型コロナを含む感染対策を評価する加算を新設するほか、医療機関と介護施設などとの連携を強化するなど、必要な対応を進めてきております。
現在、この新型コロナの感染状況については、一週間ごとの定点医療機関当たりの新規感染者の報告数は二・二七で、新規入院者数の報告数は……
○委員長(比嘉奈津美君) 答弁は簡潔にお願いいたします。
○国務大臣(武見敬三君) 一千七十六となっております。
医療機関の負荷は減少しているものと認識しておりますが、引き続き、新型コロナの患者数の動向などについては注視をしつつ、都道府県と連携し、必要な対応を行ってまいりたいと考えます。
○倉林明子君 注視とおっしゃるけど、定点観測しかないんですよ。実際、医療や介護や福祉の現場でもクラスターが起こっているという状況は続いているということを指摘したい。
にもかかわらず、五類移行に伴って検査もワクチンも治療もインフルエンザ同様の自己負担ということになりまして、現場際で何が起こっているかというと、熱があっても受診しないと、症状があっても受診しないと。受診しても、検査や治療については高額な負担を伴うということで断るという事例さえ起こっているんですよ。
感染拡大のリスクというのは極めて高いし、検査、治療の負担軽減と併せて、感染状況を広く国民に広報をするということをすべきだと思います。端的にお答えください。
○国務大臣(武見敬三君) この新型コロナウイルス感染症への移行については、二〇二三年五月に五類感染症に移行した上で、感染状況やその状況対応などを踏まえて、今年三月末で病床確保料や治療薬への公費支援などの新型コロナに関する特例措置はもう既に終了をいたしました。
感染状況については、プレスリリースやSNSを活用し、国民へ広く周知を行うとともに、今後も、感染動向を注視しつつ、必要な情報提供や基本的な感染対策の適時適切な周知を図っていきたいと考えております。
○倉林明子君 いや、なぜこう強調するかというと、コロナはインフルエンザと違って後遺症というのが付いてくるからなんですね。重篤なんですよ、しかも。一定割合出てくる。
社会が平常に戻る中でコロナ後遺症の患者は置き去りにされていると、全国コロナ後遺症患者と家族の会の代表の方の声であります。会が実施したアンケートでは、経済的支援について、制度の谷間に落ちていると回答した人が何と六六%に上っているという状況です。
そこで、政府参考人に聞きます。労働への影響などについて、調査、推計されているでしょうか。
○政府参考人(佐々木昌弘君) 直接的な調査はございませんが、幾つかの自治体の数万人規模の住民調査というものの中で、罹患後症状がある方でコロナ罹患後、休職、休学したと回答された方の割合が二・五%、退職、退学したと回答された方の割合が二・六%、こういった調査はございます。
○倉林明子君 アメリカでは、その労働ができなくなったことによる経済的な損失の調査、推計などもされていて、やっぱりその影響って大きいということで研究の取組なども強化されているというふうに聞いているんですね。
コロナ後遺症の患者さんを七千人診療されてきたヒラハタクリニック院長の平畑医師によれば、受診した後遺症患者の一割が失職、休職、労働に影響した人というのはおよそ七割に上っているということなんです。支援そして救済というのは待ったなしの課題になっているという認識、持つべきだと思います。
世界では、コロナ後増加したME、CFS、筋痛性脳脊髄炎、慢性疲労症候群、この関係に注目した研究というのが進んでおります。厚生労働科学研究班による罹患後症状とME、CFSに焦点を絞った研究していると、これ委員会でも答弁があったんですけれども、これ研究班の名称及び予算、どれだけになっているでしょうか。
○政府参考人(佐々木昌弘君) 二つ研究班がございます。
一つは、もう直接的なものですけれども、筋痛性脳脊髄炎、慢性疲労症候群の実態調査及び客観的診断法の確立に関する研究、これが研究課題名で、それで研究班を構成していて、予算は令和五年度予算ベースですと五百四十万です。
で、もう一つの研究班というのは、これもっと全体的な班なんですが、名称申し上げます。新型コロナウイルス感染症による医学・医療・健康に与えた中長期的影響の調査研究、今後の保健・医療体制整備の観点からというものの中に分担研究班を設けて、この中でME、CFSに絞った調査項目を加えるという研究班がございます。これは、令和四年度補正ベースでいうと約三億三千四百万、これ全体の研究班ですが、この二つの班で研究等を行っております。
○倉林明子君 これ、一部の分担研究のところで絞った研究というのはしているという紹介ですよね。
で、重大さ、要は被害や影響の重大さから見ると、私、余りにもこれ予算的にも少ないと言わざるを得ぬと思うんですよ。この研究内容について見ますと、文献調査にとどまっているんじゃないかというふうに思うんです、予算規模から見てもね。
私は、こういう、余りにも不十分だということを指摘したいのと、コロナの後遺症の診断の手引ということで出されていますよね。これ見ると、第三版が最近、直近だと思いますが、ME、CFSについての記載が症状へのアプローチの項にあったんです、第二版では。ところが、第三版ではマネジメントの方に移行していて、書いてあるのは、診療経験豊富な医師を紹介すると書いてあるんです。
ところが、実態はどうかというと、厚労省がお示しになっている後遺症に対応する医療機関リスト、ここに行っても、治療や診断につながらないという現状が会の方からも上がっているわけですよね。
研究予算の拡大、規模拡大ということを強く求めたいし、研究の中身も、このME、CFSということでいえば、神経免疫の専門家、しっかり組み込んだ治療、診断につながる研究が求められていると、急がれるというふうに思います。
加えて、コロナ後遺症患者に対し、身体障害者手帳の交付も可能だという答弁がありました。これ、どれだけの認定がされているのか、つかむための実態調査ということを求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(武見敬三君) 現在、この新型コロナの罹患後症状に関する実態把握を目的に一部の自治体と協力して厚生労働科学研究による調査研究を行っており、この調査項目に身体障害者手帳の取得の有無を追加する方向でこれ調査進めていきたいと考えます。
この身体障害者福祉法に基づく身体障害の認定に当たっては、原則として、原因となる疾病にかかわらず、障害の状態が認定基準に該当するかどうかで都道府県等において判断されております。このため、現在は障害認定の原因となった疾病等のデータはございませんけれども、今後、罹患後症状の実態把握と併せて、新型コロナウイルスに感染した方の身体障害の認定状況等を把握することを検討したいと思います。
いずれにしても、この身体障害の認定対象とならない方を含めて、罹患後症状に悩まれる方々の不安や負担を軽減することは重要でありますから、罹患後症状の実態解明や治療につながる研究の継続、それから、医療機関リストの周知や、傷病手当金や労災保険といった支援制度の周知、こうした取組をしっかりと続けて行ってまいりたいと思っております。
○倉林明子君 手帳についての改善していくと、これ明確な答弁していただきましたので、是非前に進めていただきたい。実態把握の一歩前に進むことになるだろうというふうに思います、救済とね。
さらに、やっぱり後遺症で苦しむ人たちを置き去りにしないというためには、感染拡大をやっぱり抑えるということと併せて、医療の拡充、経済的な支援、こういうことが強化、もっと強化されていかないといけないということを最後申し上げまして、時間になりましたので終わります。