倉林明子

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感染研の法人化批判  「業務の後退」(2023/5/30 厚生労働委員会)

(資料があります)

 国立感染症研究所と国際医療研究センターを統合し特殊法人化する国立健康危機管理研究機構法が5月31日の参院本会議で、自民、公明、維新、国民などの賛成多数で可決、成立しました。日本共産党、立民、れいわは反対しました。

 日本共産党の倉林明子議員は同30日の参院厚生労働委員会で、特殊法人化で重点課題への「選択と集中」が強化されれば、感染症から国民の命と健康を守る業務が後退すると批判。新型コロナへの対応の徹底した検証と科学的知見に基づく対策の強化、財源確保を求めました。

 倉林氏は委員会採決に先立ち、コロナ禍で脆弱(ぜいじゃく)さが露呈した保健所体制の強化を求めました。

 倉林氏は、大阪府では2000年に61カ所あった保健所が20年には18カ所に減らされ、大阪市では24カ所が1カ所に集約されるなど、全国での大幅削減が保健所崩壊を招いたと批判。保健師の業務が地区分担から業務分担制にされ、地域の公衆衛生を面で捉えることや地区医師会との連携など保健所機能が低下したと指摘した上で、減らされた保健所の復活と保健師の増員、地区分担制の回復を求めました。

 加藤勝信厚労相は「地区担当の推進を支援したい」と答える一方、保健師増員については答えませんでした。


保健所数の推移


議事録を読む

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 新機構設立後、ワクチンなどの国家検定を独立法人PMDAに移管すると先ほども議論がありました。ワクチンなどのこの生物学的製剤について、感染研では、メーカーが行う自家試験に加えて、実際に製造された全てのロットについての国家検定を行ってきたというふうに、一部書類審査ということもやっているということですけれども、こうした実地試験を必要としてきた理由ということについて御説明いただきたい。

○政府参考人(八神敦雄君) ワクチンなどの国家検定についてのお尋ねでございました。
 細菌やウイルス由来成分等を用いた生物学的な製剤であるワクチンなど高度な製造技術や品質管理が必要な医薬品等につきましては、医薬品としての有効性、安全性の承認審査や、製品の出荷時のメーカーによる自家試験に加えまして、国の機関において動物などによる実地試験でロットを検査をし、製品が一定の品質で製造されることを確保するために検定を実施をしてきたところでございます。特に、生物由来の製品などにつきまして、品質のばらつきがないかといった点で検査をするということでございます。
 検定の手法には、実地試験と書面審査がございます。近年、医薬品メーカーの品質管理、試験技術が大幅に向上しております。かつては検定不合格品もあったというところでございますが、公認の機関により重ねて実地試験を実施せずとも品質の確認、確保ができるようになってきているということがございます。

○倉林明子君 これ、高い品質をより求めるためにやってきたということは、薬剤と違って健常者に用いるということがあったわけですよ。そして、我が国には薬害の歴史があったと。そして、より高い安全性やより高い品質、検定のですね、これは求められてきたということが私は大事だと思っているんですね。
 感染研が書面審査で可能だと判断したものから、これPMDAに移行するということなんだけれども、将来的には検定業務を移管するということになるのか。PMDAへの移管はやるべきじゃないと、実地試験の全ロットの検定と、こういう体制も含めて維持されるべきだというふうに思うんだけれども、いかがでしょう。

○国務大臣(加藤勝信君) 今局長から御説明を申し上げたように、ワクチンなど高度な製造技術や品質管理が必要な医薬品等については国家検定を実施してきたわけでありますが、近年の品質管理技術の進展を受けて、またこれまでの実地試験における検定結果の実施も踏まえて、国立感染症研究所とも連携して国家検定の実施方法の見直しを進めてきたところであります。そして、国立健康危機管理研究機構の設立後は、書面で審査できると評価した製品の検定から、順次PMDAに移管することとしております。
 一方、引き続き実地試験等が必要な製品や、書面審査が可能な製品であっても製品の品質や安全性が疑われる場合には、実施試験部分を国立健康危機管理研究機構に委託して実施をすることを考えております。これによって、ワクチン等の安全性について重層的な確認ができる体制を確保することとしており、必ずしも全ロットを対象とした実地試験を実施する必要性があるとは考えておりません。
 また加えて、PMDAは医薬品の審査、安全対策を実施しており、専門性を有する機関であるとともに、移管によりワクチンの副反応疑い報告データと検定結果との関連性を一貫して評価できるようになるため、ワクチン等の安全対策の一層の向上にも資するものと期待をしているところでございます。

○倉林明子君 いや、製品の安全性ですよね。ワクチンや血液製剤等の安全性、生物学的に、苦い経験をしてきた、そういう意味から、やっぱりそのPMDAに移管ということで一体化する、そちらで一体化するんじゃなくて、切り離した形でやっぱりやっていくことが大事だという趣旨です。薬害の教訓ということをしっかり、後退にならないようにと、後退につながりかねないということは指摘しておきたいと思います。
 次、保健所体制の強化について質問したいと思います。
 二〇〇八年の新型インフルエンザの教訓として示された二〇一〇年の報告書、これ、結びでどのように書いているかといいますと、新型インフルエンザを含む感染症対策に関わる人員体制や予算の拡充なくして、抜本的な改善は実現不可能であると、この点は、以前から重ね重ね指摘されている事項であり、今回こそ、発生前の段階からの体制強化の実現を強く要望し、総括に代えたいと、こう述べてあるんですよね。
 この教訓、十数年前になりますけれども、この教訓といったらこの間どう生かされてきたのか、簡潔な御説明を。大臣にお願いしていますけどね。

○国務大臣(加藤勝信君) 平成二十一年に新型インフルエンザに対応した後、多くの保健所や保健所設置自治体において新型インフルエンザの保健所対応マニュアル等が作成されております。新型コロナにおいても活用されたものと認識しており、そうした対応を行ってまいりました。
 しかしながら、新型コロナ対応においては、感染者数が大きく増加する中で、保健所と医療機関、消防機関、市町村等との役割分担や協力関係が不明確であったこと、外部の、外部委託や都道府県での一元化等の業務効率化の取組がまちまちであったこと、健康危機に関する実践的な訓練が必ずしも十分に行われていなかったこと、こうしたことが保健所の業務の逼迫と指摘をされておりますので、先般、昨年十二月に改正した感染症法の改正法によって、都道府県連絡協議会において関係機関間で連携の在り方を検討し議論し、保健所整備を含めた予防計画を策定すること、また、各保健所においては、人員体制強化や外部委託等の業務の合理化等が円滑に進められるよう、平時からの必要な準備、実践型訓練の在り方等を含む健康危機対処計画を策定すること、さらに、有事の際に保健師等の専門人材を保健所等に派遣し支援を行う仕組みであるIHEATを法定化するなど、こうした対応をし、また、令和三年から五年度にかけて、保健所の恒常的な人員体制強化を取組も進めてきたところでございます。
 こうした取組によって、平時から有事に備えて計画的に保健所の体制整備が図っていけるよう、引き続き取り組んでいきたいと考えております。

○倉林明子君 いや、今やっていることをごっちゃにされると困るんですよね。コロナのパンデミックが起きたというときにあの教訓はどう生かされたんだろうかということでいうと、私は全くこの提言というのは無視されてきたと言わざるを得ないと思うんですね。感染症パンデミックに対応する保健所機能のもう脆弱さがこれ露呈したのがコロナですよ。
 この間、保健所機能がどう低下してきたのか。大阪府の状況でこれ紹介したいと思います。資料を付けております。
 二〇〇〇年、六十一保健所があった大阪府ですけれども、二〇二〇年には十八保健所まで減少しているんですね。これ、大阪だけの話じゃないんですよ。大阪は分かりやすいので引用させていただいたということでございます。大阪市では、二十四ある保健所が一か所になっちゃったんですね。京都でも、政令市はそういう傾向強いんですけれども、全て集約して一か所にということになりました。これ、結果、コロナパンデミックでの保健所崩壊ということの大きな要因になったと保健所からも指摘がされているところです。
 保健所をこんなに大幅に削減したことが保健所崩壊を招いたという認識はおありでしょうか。大臣。

○国務大臣(加藤勝信君) まず、保健所数については、平成六年に制定された地域保健法とその指針に基づき、母子保健分野など住民に身近な保健サービスについては保健所から市町村へ移譲するとともに、都道府県保健所の所管区域を二次医療圏等とおおむね一致することを原則としたこと等により集約化が進んできたと認識をしております。
 一方、保健所の職員については、設置主体である保健所設置自治体の判断により、地域の実情を踏まえながら必要な体制を確保していただいているというふうに承知をしており、例えば保健師さんの数について見れば増加していたものと認識をしているところでございます。

○倉林明子君 いや、保健所廃止と同時に、今あったように、身近なサービスは市町村だと、都道府県は国の方針の下、地区分担制からどうなったかというと、仕事変わったんですよ、業務分担制になったんですよ、多くのところがですね。これによって、地域の公衆衛生の課題を面で捉えると、地域で捉えるという機能が著しく低下したんです。地区医師会との連携強化というのが保健所長中心になって行われてきた。ところが、これも著しく後退したんです。所長は兼務になるとか、所長がいないとか、医師がいなくなるという状況もこれ加速しました。
 そこで、二〇一三年、地域における保健師、保健活動に関する指針、二〇一三年です、これ、新型インフルエンザの後に見直された中身の指針で見ますと、地区担当制の推進というのが掲げられているんですよね。抜本的な増員、保健所の復活と併せて、この保健活動の指針が具体化されるような業務分担制から地区分担制と、面で見るというところへの体制の転換が要るんだと思います。いかがでしょう。

○国務大臣(加藤勝信君) 管内を幾つかの地区に分けて担当保健師を配置し、当該保健師がその担当地区で責任を持って活動する地区担当制は、健康課題の分野を問わず、世帯や地域の課題に横断的、包括的に関わり、必要な支援をコーディネートできる、また、地区を担当する保健師が横断的に対応するため、住民にとっても相談を持ちかけやすいなどの利点があり、保健活動における重要な観点と認識をしております。
 そうした観点を踏まえて保健師の活動の基本的な考え方などを定めた保健師活動指針において、より地域の実情に応じた保健活動を行うため、保健師による地区担当制を推進しているところであります。
 残念ながら、コロナ禍においては保健所業務が逼迫をし、健康づくり等の地域保健活動が十分に実施できなかったこと等の状況が発生したと認識をしており、今後、実態把握を行いつつ、地区担当制の推進に向けた支援を検討していきたいと考えております。

○倉林明子君 抜本的な増員、保健所を復活させるということを併せてでないと地区担当制への移行というのは無理だということは強く申し上げたい。
 やっぱり、どれだけ財源を確保するかなんですよ。異次元の少子化対策を口実にして社会保障切り崩すと、こんな話が一方であるわけですよ。断じて容認できません。
 軍事費拡大こそやめるべきだと申し上げて、終わります。

議事録を読む(反対討論)

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 会派を代表して、国立健康危機管理研究機構法及び整備法について反対の討論を行います。
 法案の最大の問題は、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、特殊法人化することです。
 法案は、感染症に係る国の重大な危機管理に直結する業務を行っているため国立として維持した感染症研究所を国の組織から外すものです。また、厚生労働大臣は、効率化、財務内容の改善等、機構が達成すべき中期目標を定めるとしています。
 国立感染研究所は、感染症から国民の命を守ることを使命とし、希少感染症研究やリファレンス、サーベイランス業務など、経済効率等から民間企業や大学、地方の独立行政法人では行うことができない業務を担ってきました。
 しかし、審議では、これらの業務が維持発展するのか、予算や人員配置、職員処遇については何ら明らかにされておりません。効率化を進め、時の政府による重点課題への選択と集中が強化されれば、感染症から国民の命と健康を守る業務が縮小、後退する危険は否定できません。
 二〇一〇年、新型インフルエンザ総括会議報告書は、国立感染研究所の体制強化を提言しました。しかし、人員も予算もコロナ禍直前まで減らされ続けてきたのです。研究費が不足していることはないとの大臣の発言に、現場から怒りの声が届いております。感染症研究の最後のとりでとして自負を持ち研さんする現場の研究者の声を聞くべきです。
 基礎研究を軽視し、目先の経済的利益につながる研究への選択と集中が及ぼした影響は、深刻な研究費の不足を生んでいます。機能の強化のためには、予算と人員を抜本的に増やすことが緊急に求められています。
 さらに、ワクチンなどの国家検定をPMDAに移管することは、安心、安全を守る体制が後退する重大な懸念があります。
 新型コロナ感染症により多くの命が失われ、いまだに多くの方が後遺症に苦しんでいます。しかし、医療費を抑制し、病床削減等により医療崩壊を招き、保健所を減らした結果として保健所崩壊を引き起こしたことに何ら反省はありません。
 今やるべきは、新型コロナへの対応の徹底した検証、そして、科学的知見に基づく対策の強化であり、必要な財源を確保することであると指摘し、討論といたします。