感染研の予算不足深刻 抜本的拡充求める(2023/5/25 厚生労働委員会)
日本共産党の倉林明子議員は25日の参院厚生労働委員会で、国立感染症研究所(感染研)と独立行政法人国立国際医療研究センターを統合して特殊法人化する「国立健康危機管理研究機構」創設をめぐり、感染症対策のための予算と人員の抜本的拡充を求めました。
倉林氏は、研究に必要な機材が買えないどころか、文房具やパソコンの費用も出ず、電気代不足で大切な検体を保管する冷凍庫の電源を止めることもあったなどの感染研職員が訴えた深刻な実態を告発。「あまりに脆弱(ぜいじゃく)な研究体制と予算だ。これで研究費が不足していないと言えるのか」とただしました。
加藤勝信厚労相は「研究遂行に支障が生じる状況にはないと認識している」などと無責任に答弁。倉林氏は研究職の話を一度聞くべきだと批判し、新機構で「予算・人員の拡充は可能か」とただしましたが、加藤厚労相は「検討を深める」としか答えませんでした。
倉林氏は、中期計画や目標を定めて新機構の効率化を求めれば、さらなる予算縮減につながりかねないと指摘。「現職の研究者が安心して研究できるよう基盤的研究費を増額すると明確に示すべきだ」と主張しました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
法案に入る前に、マイナンバーカードの問題について質問します。
マイナンバーカードをめぐるトラブルというのは、私、五月十六日の委員会でも指摘いたしましたけれども、それ以降も続発という事態になっております。
大臣は、全国の健保組合等に点検を指示したと報道ありました。通知を見ると、点検は一部なんですね。三情報のみで一致を確認した個人、一致で個人番号を取得したなど、条件を付けたところでの点検になっているということが分かりました。
誤登録は、新たに地方職員共済組合でも発覚しております。全ての保険者で全件の点検、これ実施すべきではないかと考えます。
もう一つ。点検結果の公表が八月以降ということになっているんですけれども、これ点検漏れのリスクというのは現状解消されていないわけですよね。
大阪保険医協会の調査によりますと、医療機関百四十三件のうち、五月の調査ですけれども、オンライン資格確認トラブルは五割以上の医療機関で発生していると。百四十三件のうちですよ、医療機関百四十三件のうち、何と誤った個人番号、氏名、これが八件あったというんですよ。だから、相当規模で点検漏れ、誤登録があるのではないかということが想定されるんです。
私は、こういった事態を受けたら、やっぱり直ちにシステムの運用中止すべきだと思います。で、原因の徹底究明と情報の修正、再発防止策までがきっちり求められるんですよ。それができないまま、これ、医療情報の閲覧を継続すると、こういうことはやるべきじゃないと思います。いかがですか。
○国務大臣(加藤勝信君) まず、このオンライン資格確認において間違ったデータがひも付けられた、またさらに、その結果として、御本人の薬剤情報等が他の方、他の形で閲覧される事案が生じたということ、まず、そうした当該の方に対して大変御迷惑をお掛けをしたこと、又は、これを通じて国民の皆さんにこのオンライン資格確認始めとしたこのシステムに対する懸念あるいは御心配をお掛けしていること、これに対して申し訳なく思っているところでございます。
ちょっと今委員がおっしゃったデータは共有できていないので、それに言及できないところでありますけれども、ただ、これまでの対応をしながら、また出てきた課題の分析をし、まず一つとしては、新規に入力する際、新にひも付けをする際に対しての対応を先般お示しをさせていただき、さらには、全保険者に対して、まさにこれまでの基本的な留意事項と異なる方法で事務処理をしていなかったということについてまず早急に点検をしていただいた上で、さらに、入力マニュアル等において現在登録されている全データを点検し、データ全体について住民基本台帳と照合して、そして不一致があるかないか、そうしたことをチェックすると、これも改めて指示を、お願いをさせていただいたところでございます。
○倉林明子君 システム中止すべきだというところ、回答いただいていないんですけど、継続するんですか。
○国務大臣(加藤勝信君) したがって、今申し上げた形で対応しながら、それからまた、新たにそうした問題が出てくれば、それをしっかりと受け止めて対応させていただく、窓口に対していろいろ御相談等いただいたものに対しては、特にこのオンライン資格確認、あるいは誤った形でひも付けがされていた、そういった事案については、それぞれ責任ある機関にしっかりとつないでそこで対応できる、そうした体制も今構築をさせていただいたところでございます。
一方で、オンライン資格確認等については、これまで申し上げてきた様々なメリットもございますので、むしろそうしたメリットを実感していただくためにも、今申し上げたシステム上の対応をしっかり進めることで、国民の皆さんの信頼を確保させていただきたいというふうに思っています。
○倉林明子君 出てくればって、これだけ出てきて、取り返しの付かないような被害を更に拡大するようなことあってはならないんですよ。でね、もはやマイナ保険証の信頼というのは大きく失墜しているという認識を私は持つべきだと思います。国民に広く使われ、そして長く信頼されてきた健康保険証、この発行継続ということを決断すべきだと求めておきます。
で、法案です。
平成九年、それまでの国立予防衛生研究所が改組されまして、国立感染研究所が発足いたしました。この平成九年の改組、新たな発足というときに掲げられた目標は何だったのか。
○政府参考人(浅沼一成君) お答えいたします。
お尋ねの国立感染症研究所への改組のときの目標、掲げられた目標につきましては、当時、感染症のグローバル化が進展していく中で、感染症に関する情報の収集、分析等について、より確実に対応できる体制の確立を目標にしていたものと、そう認識しております。
○倉林明子君 このとき、やっぱり新たにCDC的な機能を加えた新しい組織ということになったと思うんですね。再編された経緯がある。その議論ってなかなか本当に真剣に討議されたなということ、次の感染症法の改正につながっていったという経過だったと思います。
そこで、組織再編から十二年後、平成二十一年の新型インフルエンザ、これ経験された感染症情報センター長だった岡部信彦氏が、大規模流行に対して、スタッフ一人一人の能力は高いものの、人員、機材、予算の不足はいかんともし難く、全体の力不足は残念ながら隠しようもありませんでしたというふうに述べておられるんですね。
そこで、平成二十二年、新型インフルエンザ総括会議報告書、ここで、感染症危機管理に関する体制、これに対する提言もされております。その中身について御紹介を。
○政府参考人(浅沼一成君) お答えいたします。
御指摘の平成二十二年の新型インフルエンザ総括会議報告書におきましては、厚生労働省のみならず、国立感染症研究所や検疫所、保健所、地方衛生研究所を含めた感染症対策に関わる危機管理を専門に担う組織や人員体制の大幅な強化や人材の育成を進めることが必要であること、特に国立感染症研究所については、米国CDC、疾病予防管理センターを始め各国の感染症を担当する機関を参考にして、より良い組織や人員体制を構築すべきであることなどが提言されていると承知しております。
○倉林明子君 先ほど議論もありまして、比較するのは難しいんだというお話もありました米国CDC、ここの予算というのは九千億ですよね。だから、日本の感染研の百倍に匹敵すると。人員で見ますと、職員、米国CDCが一万五千人ということですから、感染研の非常勤職員入れた分も含めてでも二十倍規模と、そういう規模なんですね。余りにも私、桁違いだなというふうに改めて認識させられました。
そして、先ほど紹介いただいた提言、平成二十二年の提言から十年たって、令和二年、新型コロナというふうになったわけですね。
その平成二十二年との比較で、じゃ、体制はどうなってきたか、予算はどうなったかというところ注目しますと、平成二十二年との比較で、感染研職員定数は二十三人減っているんですよ。実数でいうと、その定員数を更に下回って僅か三百四十六人、コロナで増やしましたけど、コロナ直前はそういう状況だったんですよね。研究に不可欠な研究補助員、これは低賃金の派遣社員という実態になって、今でもそうですけれども、そうなっていたということです。予算で見ますと、令和二年は六十五億円でした。これ、十年で四十億減っているんですよ。
平成二十二年の提言が実行されたとは言えない、逆に減らされているんですよ。なぜ実行されなかったのか。これは大臣に答弁願います。
○国務大臣(加藤勝信君) 今の御指摘、国立感染症研究所の人員や予算についてありましたが、しかし、その時々の国内外の感染症に係る課題などを踏まえてそれぞれ対応してきたものと認識をしております。
具体的には、先般御指摘がありました報告書を、今御指摘があった報告書を踏まえて、新たな動物由来感染症に係る基礎的、応用研究、薬剤耐性菌感染症の研究事業など、必要性の高い対策や研究に対して重点的に人員や予算を投入する、こういったことで感染症対策の強化にも取り組んできたというふうに承知をしております。
○倉林明子君 そうやって対策はしてきたと言うんだけれども、実際として予算も人も減っていたというのが実態なんですよ。
この間、何度も私は、この感染症対策の強化ということでいうと、教訓示された、具体的に道筋も示されたのに、必要な人員、機材、予算措置がとられなかったと、こういうことが続いてきたと、そこでコロナになったんだということなんですよ。
いざ、じゃ、今、感染研の現状はどうかとお話伺いますと、令和五年度、これ予算が増えてはいるんですけれども、基盤的研究費は僅か一億円と、競争的な研究費は三十億円ということで、結局、必要な、不足分は競争的研究費で賄っているというような状況があって、余りにも予算が不足する中で、研究に必要な機材が買えないどころじゃないんですよ。文房具さえ枯渇すると、パソコンだって基盤的な研究費では補えないと。
驚いたのは、過去には電気代が不足ということで、大切な検体を零下八十度で保管するようなディープフリーザーの電源止めるということまでしていたというんですよ。余りにも私は脆弱な研究体制であり、余りにも脆弱な予算だと言わざるを得ないと思います。
ところが、大臣は衆議院で、必要な予算は措置しているって答弁されたんですよ。これでね、これで研究費が不足していないと言えるんでしょうか。改めて大臣にお聞きします。
○国務大臣(加藤勝信君) 前にも申し上げましたように、国立感染症研究所では、感染症に関する情報収集、解析及び基礎研究、感染症危機時における検査対応や薬学調査などを行っておりまして、そうした研究業務を遂行するのに必要な予算を確保してきたところであります。
また、今、基盤的研究費についてお話がありましたが、これについても例年一定の水準の予算額を確保しておりますが、それ以外も含めた国立感染症研究所の研究予算としては、新型コロナ対応を踏まえ、令和三年度に大幅に増額するなど、必要な予算の確保に努めてきたところでございます。
したがって、同研究所の研究予算が全体として不足し、研究の遂行に支障が生じるという状況にはないものと認識をしております。
○倉林明子君 いや、一回ちゃんと研究職の話聞かはった方がいいんじゃないかと改めて思いました。競争原理には乗らない希少感染症の研究等を担うと、感染研は最後のとりでになっているんですよ。競争的研究費のみではその役割を本当に果たしていただけるということにはならないということを強く指摘したい。
法案では、新たな機構に統合することで六年間の中期計画と目標を定めると、そして厚労大臣の認可を受けることとなるわけですね。予算の総枠、大臣が最終決定権を持つということになります。新たな機構で、予算、人員の拡充は可能になるんでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) まず、その前の競争的研究費もありますけど、そもそもこの感染研に対する研究費というのは、ここ、例えば令和四年度でいえば三十三億付いているということでございますので、そうしたことも含めて、(発言する者あり)いやいや、コロナ前も一定程度予算は付いているわけでございますので、そういった意味で、必要な予算額の確保に努めてきたところでございます。
それから、機構発足後の予算、人員の御指摘がございました。機構の具体的な予算、機構成立後の具体的な予算や人員の確保については、機構に期待される役割を踏まえながら、例えばどういう部署にどういう研究者等を配置し、予算と人員をどのぐらい確保するのかといった具体的な検討を併せて行う必要があります。
その際、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターが現在もいろんな研究をしていただいているわけであります。そうしたことも生かしつつ、基礎から臨床までの一体的な研究開発などの機能強化を図る必要があると考えております。
国会でのいただいた御審議あるいは両機関の関係者あるいは有識者の御意見なども踏まえながら、令和七年度以降の創設ということになりますので、それまでに鋭意検討を深めていきたいと考えております。
○倉林明子君 いや、拡充できるんですかということに、残念ながらストレートに答えていただけていない。それは心配があるからですよ。
独法の下で、独立法人法の下でこの中期計画や目標を定めるということになると、効率化ということで実態としては予算の縮減に、縮減傾向が見られます。効率化でそういう縛りを掛けてきたという経過は多くの方からも指摘されていることだと思うんです。
今回、この特殊法人にするということで、海外の研究者を呼び込むこともできるという話が事例として紹介されていましたけれども、それにふさわしい給与、報酬が必要になると思うんですね。そうした場合、総枠としての予算が縛られれば、今、そのツケはどこに行くかというと、今いる研究職や職員の賃下げにも連動しかねないという心配があるんです。現職の研究者が安心して研究できる基盤的研究費をやっぱり増額すると、こういうことを明確に示されるべきだということは強く指摘しておきます。
その上で、新型コロナ感染症の経験を踏まえまして、現在の感染研の役割を発揮するために、新たな機構、ここにはやっぱり政府から独立した科学的中立性が私は担保されるべきではないかと考えますけれども、脇田参考人、いかがでしょう。
○政府参考人(脇田隆字君) これまで国立感染症研究所が新型コロナウイルス感染症対応、あるいはほかの感染症の対応として行ってまいりました疫学調査あるいは検査対応、さらにはリスク評価などで収集をいたしましたエビデンスに基づいた科学的な対応を行ってきたものでございます。その際に、科学的な中立性が損なわれたことはないというふうに認識をしております。
その上で、新たに設置される国立健康危機管理研究機構でも、政府に対して科学的知見を提供する重要な役割を担っており、引き続き感染症に関する科学的な知見の収集に努め、そのエビデンスに基づいた科学的知見の提供において中立性が確保されることは重要と認識をしております。
○倉林明子君 私は、コロナで科学者と政府の関係がどうあるべきだったのかと、これ十分な検証がされたとは言えないというふうに思っているんですね。
平成二十二年、先ほども紹介した報告書策定に当たっては、七回の会議が開かれて約四十名の特別ゲストを招いて検証が丁寧に行われたという経過があります。そういうことは今回ほとんどできていないって言っていいと思うんですね。
これ、特殊法人にするということで、感染研も中期計画、目標を定めて、厚生労働大臣が最後決定するということになってくると、これ、政府の関与ということが非常に強まりかねないという懸念があります。
最後に確認しておきたいんです。今日の最後に確認しておきたいんですけれども、感染研には、生死に関わる重篤な事態を引き起こすエボラウイルスなど研究が可能なバイオセーフティーレベル、BSL4ということで、この指定の施設があります。最高水準の安全が求められる施設になるわけです。
私、この施設にとどまらず、この新たな機構の下での施設整備、ここに対しては、国がやっぱりしっかり責任を持つべきだと思います。現在の国立国際医療研究センター、NCGM、病院は独立採算なんだけれども、それ以外については特定償却資産ということに指定して、建物や施設は整備補助、機材について運営交付金が全額国費なんですよ。これ、少なくとも、新たな機構でも継続、対象としては、特定償却資産として国が責任を持つということにすべきだと思います。いかがでしょう。
○国務大臣(加藤勝信君) 現在の国立感染症研究所については国の施設等機関でありますので、今委員お話がありましたように、国立国際医療研究センターは、特に病院部門などは医療収益等の自己収入で賄っておりますが、そういったものがないため、国の一般会計予算により施設整備等を行っているところでございます。
機構になった後における施設整備等については、現在のこの国立感染症研究所、また国際医療研究センター、ここでも、自己収入が見込めない病院以外の研究部門などは全額国費の運営交付金や施設整備費補助金によって施設整備が行われている、そういった取扱いも踏まえつつ、先ほどから申し上げておりますが、機構が期待される役割をしっかりと発揮できるよう、必要な予算の確保に努めてまいります。
○倉林明子君 そこは是非検討願いたい。続きはまたやらせていただきます。
終わります。