倉林明子

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助かる命が手遅れに 健康保険法改定案 倉林氏に参考人(2023/4/27 厚生労働委員会)

 75歳以上の医療保険料引き上げなどを盛り込んだ健康保険法等改定案の参考人質疑が27日、参院厚生労働委員会で行われました。日本共産党の倉林明子議員は、高齢者の能力を超えた負担増の実態などについてただしました。

 倉林氏は、受診の必要性があるのにほとんど医療につながれずに亡くなる高齢者がいることについて質問。参考人の山本淑子氏(全日本民主医療機関連合会社会保障政策部担当役員)は、貧困のなかで受診できずに「早期に治療を開始すれば助かるがんも手遅れになっている」と指摘。人生の最後に医療を受けることも「自己責任」とされている現状を批判し、「お金の心配なしに医療が受けられるようにしてほしい」と訴えました。

 倉林氏は、高齢者の負担能力について、年収だけでなく、介護や医療を受けることで生じる負担とセットで判断しなければ「生活実態が見えなくなる」と指摘しました。

 参考人の菊池馨実氏(早稲田大学理事・法学学術院教授)は、「個別に見ていった場合に、非常に厳しい生活状況になるということがないようにしなければいけない」と主張。データに基づく分析・評価をさらに精緻にしていくことが不可欠だと述べた上で、負担能力の評価に資産を含むことには反対の姿勢を示しました。


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○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 今日は、四人の参考人の皆さんの御意見いただきまして、ありがとうございます。
 最初に、山本参考人から伺いたいと思います。
 現場の実態などの紹介、ありがとうございました。最後の方に二事例だけ手遅れ事例ということで、受診の機会、必要性はあったものの、かかることができずに、結局最終的には亡くなってしまうと。助かるはずだった命じゃないのかということで、強く感じました。
 改めて、国民皆保険制度はどうあるべきなのかということ等も、医療が受けられない今のような実態ということでいうと、補足的に、最後、二事例だけでしたので、御説明いただければ、御紹介いただければ有り難いと思います。

○参考人(山本淑子君) 御質問ありがとうございます。
 先ほど御紹介しましたとおり、全日本民医連では、毎年、受診が遅れて手遅れで亡くなられた事例を全国から集約して記者発表等しております。集まってくる事例の死因のほとんど、六割、七割はがんで、しかも、早期に治療を開始すれば助かるがん、それも手遅れになっております。動けなくなるまで我慢をして、救急搬送されてきてようやく医療につながるといった事例も多くて、本当に末期まで我慢しているケースが毎回報告されます。特に女性のがん、乳がんや子宮がんなどは早い段階で自覚できるものですけれども、母子家庭であったりとか貧困の中で受診できずに、最後の最後に救急搬送されて亡くなられると、そういう事例が多いのを御紹介します。
 それで、昨年は四十六事例寄せられています。七十代、八十代の方の事例を二つ紹介します。
 七十代の独居の方ですけれども、六十五歳から老齢年金受給しましたけれども、月五万円弱ということで、生活費足りなくて介護タクシーの仕事を継続されていました。健診で肺がん見付かったんですが、経済的な理由もあって積極的な治療ができず、体調不良で仕事も辞めて、いよいよ動けなくなったところで搬送されて、入院して一週間で亡くなられています。
 八十代の男性。無職の次女の方と同居されていますけれども、大腸がんの手術をされたんですけれども、その後、お金が続かなくて受診を中断されています。自営業されていますけれど、家賃を払うとほとんどお金が残らないという状況で、二年後に骨転移、肺転移、化学療法ということで、ようやく入院されましたけれども、入退院繰り返しながら五回目の入院で亡くなられています。
 年金だけで暮らせない、いろんな事情で経済的に苦しい、そういう方々が、本当に受診を控えて、がんが悪化してようやく救急搬送で受診されると、そういう実態が、事実地域で起きております。人生の最後にこんな我慢をさせる、そんな、医療を受けることも自己責任というようなことでは本当に安心して暮らせないと、そのように思っております。
 全ての方が保険証を持ってフリーアクセスできる国民皆保険と、絵に描いた餅にしないで、本当に安心してお金の心配なしに医療が受けられるようにしていただきたいと、このように思います。
 以上です。

○倉林明子君 ありがとうございます。
 続いて、井上参考人、そして菊池参考人に同じ質問したいかと思います。
 井上参考人の方からは、能力をどう見るかという場合に、資産も含めた能力として評価していくということで、マイナンバーカードの利用等の紹介もありました。我々、断固反対の立場ではありますけれども、改めてお聞きしたいのは、要は収入額だけで負担能力を見ると、今回もそうですけれども、介護保険料の二割の引上げの際、三割を導入した際、利用料の分ですね、した際も、額面で、いろいろですけれども額は、収入額で負担能力を測ってきたというのが経過だと思うんですね。
 ただ、そういう場合、実際に、介護を利用していると、医療も利用していると、そういうところに、二割、二割、二割がまた二割追加になると、三割のところがまた二割の医療費の負担になるということで非常に負担が集中して、年金だけでは到底払えないという実態があるということを質問でも紹介したんですけれども。
 これ年収、負担能力をどう見るかといった場合に、要は、既に介護や医療を受けることによって生じている負担とセットで見ていかないと、負担能力見誤るんじゃないかというか、生活実態が見えなくなるんじゃないかという疑問を持っているんですけれども、いかがでしょうか。

○参考人(井上隆君) 社会保障制度全体で考えるか個別の制度で考えるかと。今のその負担の制度というのは制度ごとに成立しているということでございまして、収入でしか今判断をしていないということになります。
 私ども、先ほどの繰り返しになりますけれども、収入、まずはその負担能力という場合には、収入のみならず資産も勘案した負担能力というものを判断することが必要であるというふうに思いますし、また、この負担の在り方につきましても、税でやるのか社会保険でやるのかというのは、中長期的な課題として、社会保障全体の中で今後真摯に検討していかなくてはならない課題だというふうに考えております。

○参考人(菊池馨実君) 先生御指摘のとおり、個別に見ていった場合に、非常に厳しい生活状況になるということがないようにしなければいけないと思います、基本的には。そのためには、制度の議論をする際にも留意はしていますが、やはりデータに基づく分析を行いその評価を行っていくという作業を更に精緻にしていくことが不可欠だと思います。
 あわせて、私は、社会保険の仕組みの中に、資産もその拠出の評価の中に入れることには基本的には賛成していません。それは、社会保険の原理というか、その仕組み自体を瓦解させる、社会保険に対する支持を失わせる可能性、危険があるのではないかと思っているからです。公的扶助化するというんでしょうかね。
 そういう方向性よりは、むしろやはり低所得の方、困窮者の方に対するその所得保障、所得保障が足りているのか、今の仕組みで十分なのか、あるいは生活保護の制度の、何というか、利用あるいは仕組みがどうなのか、そういった、どちらかというと所得保障制度の見直し、そこの、何というんですか、上乗せすべきものは上乗せしていくという形でその生活を支えていくという、私はどちらかというとそういった考え方に立ってございます。

○倉林明子君 ありがとうございます。
 三原参考人に、済みません、最後質問したいと思います。
 直接法改正とは関係ないんですけれども、介護保険法、介護保険の見直しの中で、今後の課題ということで先ほど先生からも先送りの課題のことを紹介ありました。いろいろ先生の書かれたものを見ていましたら、ケアマネジメント、居宅介護支援費の有料化についての論点示された文章読みました。現時点でいうとメリットよりデメリットの方が多いのではという結論だったかと思うんですけれども、その考え方について、もう時間がなくて申し訳ないんですけれども、御紹介いただければと思います。

○参考人(三原岳君) 御質問ありがとうございます。
 ケアマネジメントの有料化をすると、大体国費で百五十億円ぐらい、給付ベースで五百億円ぐらい浮きますが、それを上回る私はデメリットがあると思っています。むしろ二割負担の対象者を拡大した方がいいと思います。
 なぜかというと、ケアマネジメントを有料化すると、恐らく所得の低い人の利用控えが起きる。それから、区分支給限度基準額という基準額の中には、外に入れるのか中に入れるのかという判断がありますが、中に入れた場合というのは、ほかのサービスを削ってそれを使うことになる。その結果、ケアマネジメントの有料化をすると、所得の低い人と重度な人が割を食うことになります。それは、私は社会政策としてどうなのかと思っています。
 その選択肢は最終的に、何年か後に、否定は、全否定はしませんが、現時点ではやはりやることはほかにあるのではないかというのが私の意見でございます。

○倉林明子君 ありがとうございます。是非議論を深めていきたいと思います。
 時間がないですね。ちょうど時間が来たようですので、終わります。ありがとうございました。