地域福祉 公助が重要 倉林氏に参考人「基盤弱い」(2020/6/2 厚生労働委員会)
参院厚生労働委員会は2日、地域福祉を住民や社会福祉事業者による「互助」に委ねる社会福祉法等改定案に関する参考人質疑を行いました。同法案は5日の参院本会議で可決・成立しました。
淑徳大学の結城康博教授は、住民によるボランティアや互助組織では対応に限界があるとして「自治体の役割が大事だ」と強調。「訪問介護ヘルパーは、正規職員でない人が7割と危機的な状況だ」と、地域福祉を支える基盤の弱さを指摘し、「介護保険とは別の枠で、公務員ヘルパーの制度を構築しないといけないのではないか」と提起しました。
認知症の人と家族の会の花俣ふみ代副代表理事は、新型コロナウイルス対策に追われる社会福祉の現場を念頭に、「なぜ、ゆとりのないこの時期に審議しなければならないのか。ウイルスとどう付き合いながら暮らしていくかの準備が、今求められている」と指摘しました。
日本共産党の倉林明子議員は、20年来の「給付減・負担増」政策に触れ、「コロナを経験し、この脆弱(ぜいじゃく)な社会保障体制で良いのかが大きく問われるのではないか」と尋ねました。
結城氏は「(社会福祉の)公共性をしっかり見直し、市場と公共性のバランスを考える機会だ」。花俣氏は「コロナにより、軽度の方への通所介護や訪問介護の重要性がはっきりした。ここの充実こそ、本当の意味での介護予防や共生社会の実現につながる」と力を込めました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林でございます。
今日は本当にこんな時間までお付き合いいただきまして、私、最後のバッターでございますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。ありがとうございます。
最初に、花俣参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、今本当にコロナの影響で大変な状況が広がっているというふうに思っております。先ほど御紹介少しありましたけれども、認知症の方、家族の方、当事者の方にお声を集めていらっしゃるということでもありますので、是非、生の、影響というのはこれから更に広がるかとも思っているんですが、生の声で是非知っておいてほしいという辺りを御紹介いただけたらなと思うんですけれども、お願いします。
○参考人(花俣ふみ代君) ありがとうございます。
非常に多岐にわたって実は寄せられています。一応一覧でまとめたものもお持ちしているんですけど、これをランダムに読むよりも、特徴的なものを御紹介できればいいかなというふうに思っています。
まず、これ、もう読ませていただきます。認知症の人を尊厳を守るためには優しい介護が不可欠です。家庭で介護する人々にとって、心と体の休息ができるデイサービスやショートステイ、訪問看護はそのために不可欠なものです。コロナ感染の影響で介護崩壊が始まっていますが、これらのサービスがなくなることは、家族の会が目指してきた理想や認知症の人の穏やかな最後の日々を奪い、本人及び介護家族は、ひょっとしたら死をも覚悟しなければならないような状況に追い込む危険性をはらんでいます。是非、介護崩壊を起こさないために、対応策を国にも申し入れてほしい。
あるいは、コロナのニュースで最後の救命法のECMOや人工呼吸器におけるトリアージのことが出ていますが、認知症を含む障害者の扱いがとても気になります。
また、感染した認知症の人の扱いが難しい。マスクを外すとか徘回するとか、手を洗ってもらえないというレポートもありました。こういったことがどのように広がって蔓延しているのかということについても把握してもらいたいという方ですね。
やはり、これまで特養に入所していて毎日のように通っていらした方が、もう三か月近く面会に行けていない。御飯ちゃんと食べているのかな、口腔ケア大丈夫かな、多分こういうところは家族さんが毎日出かけてフォローされていたんだと思います。
先ほどから出ている介護の人材不足のところもそうです。施設の中ではやはり手が足りない。ましてコロナ禍の中で、場合によっては、学校が休みになったから仕事に出れませんという介護職の方もおられたでしょう。ますます厳しい人員配置の中で特別な対応をするというのは、もう施設のケアワーカーさんにとっては過酷な現状があったと思います。
その中で、こういった家族の支援、目に見えない支援も出入り禁止で受けられていない。あるいは、地域の方がボランティアで簡単な洗濯物を畳むとかって、そういったボランティアもたくさん入っている施設さん大勢あった、たくさんあったと思うんですけど、そういうところも出入り禁止になってしまっている。中も結構シビア、それでいて家族も行かれない、心配というのはもう圧倒的に多い声としてあります。
あるいは、急激にBPSDというか、困った症状、ばっと引き込まれたために、施設のスタッフだけでは対応し切れないので、どうしても精神科の薬をもらってきてくれと。これもまた家族にとっては倍心配なところなんですね。そんなような声等々がたくさん寄せられているところです。
長くなるのでこの程度で、申し訳ございません。以上です。
○倉林明子君 リアルに伝わる中身教えていただいて、ありがとうございます。
経営的な側面から、介護事業所の経営的な側面からいうと、お話もあったとおりで、通所系だったり訪問系だったりというところが本当に大きな減収ということで、介護崩壊ということが経営的な側面からも広がるというような状況を大変懸念しているんですね。
そこで、結城参考人にお伺いしたいと思うんですが、公的ヘルパーの導入については、本当にそういうこと考えないといけないなと、なり手も含めてなんですけれども、サービス提供者がいなくなっちゃうということで、一つの提案として受け止めさせていただきました。
今、コロナで、二次補正で評価できるところも書いていただいたんですけれど、最も大事だと思っているのは、こういうほっといたら潰れてしまうような訪問系や通所系のところをやっぱり損失補填するというような支援をきっちりする必要があるんじゃないかと思うんですけれども、そこら辺、どんなふうにお考えでしょうか。
○参考人(結城康博君) ありがとうございます。
先生のおっしゃるとおり、ある程度損失補填は予算的に必要だと私も思っています。特に、やはり一番は、ヘルパー事業所のところは非常に危機的だと思いますので、そこは重点的に必要かなと思います。
以上でございます。
○倉林明子君 ありがとうございます。
花俣参考人にも同じようなことなんですけれども、やっぱり介護サービスが現状では受けられないというか、利用の抑制もあって、その影響もすごく懸念されると。施設のところでの、家族が面会できないから影響出るというところ辺をリアルに語ってもらったんですけれども、今、その受けられていたサービスが在宅でも受けられないということがどんな影響が懸念されるでしょうか。
○参考人(花俣ふみ代君) ありがとうございます。
受けられない、例えば営業所が休止、事業所が休止になって受けられない方ももちろんいらっしゃいます。だけど、コロナ感染でもし何かあったら困るというので利用を自粛されている、御家族さんの意思でというところも結構あるんです。
それから、三密を避けるために事業所さんが一日の定員を減らしていらっしゃるところもある。つまり、一日の定員を減らすということは、マルメ勘定のサービスでない限りは減収になっていますよね。それがずっと続いていったら結構厳しいかな、ましてや小さい事業所さんは大ダメージかな。それと加えて、感染症対策もしなくちゃいけないわけですから、それの経費も相当かさんでいるだろうというふうに思います。
それから、利用できないサイドにとってはもうまさに、特に認知症ケアについては、人とソーシャルディスタンスなんて、距離を保てというのは、これはもう大ダメージですよね。そばに寄って、正面から向き合って、目と目を合わせてと言っているのに、それ全部アウトなわけですから。それから、ふだん家族さんが施設に行って、外のお散歩を連れ出してとか、手が回らないところを補助、フォローしてみたいなことをやっていたのも全部アウト。それから、ただでさえも外に出るのがおっくうになる、通所に行くことで何とかそのADLを維持されていた方も、利用回数を減らす、あるいはだんだん意欲がなくなってしまうということもありますので、こういう意味でもかなりシビア。
それから、さっき老老、ヘルパーさんが高齢化しているというお話も出ました。ヘルパーさん高齢化している。つまり、高齢者はコロナ感染するとすごく重篤化するリスクが高いと言われている。今度はヘルパーさんの家族さんが、もうそろそろいいんじゃないの、もうそろそろ辞めればと言って、人がいないにもかかわらず、そういうベテランのヘルパーさんが今回お辞めになったり、休業されている方も実はいらっしゃるんです。
おうちに来てもらわないと何が困るって、デイに行ったり、ヘルパーさんのおかげで御家族さんは仕事に出れていたんです。これも駄目になっちゃうんですね。子供さんが学校行かれなくておうちにいなくちゃいけないレベルじゃないんですね。ふだん専門的なところで専門的なスキルを持って見てもらっていた方が、今度家族だけが向き合うと。もう摩擦の起き方というのは半端じゃないですから、これで状態も悪くなる。
もう実際、身体面も、それからもう物の面でも、まさに事業者にとっても利用者にとっても、もうこのままだと崩壊するのは時間の問題かなという危機感は確かに持っております。
以上です。
○倉林明子君 余り時間がなくなってきたので、最後、お三方に是非伺いたいと思いますのは、医療も介護もそうなんですけれども、今度のコロナを経験して、給付と負担のバランスだと、持続可能な社会保障が必要だということでずっと行われて、政府によって行われてきたのが、給付を抑制し、そして負担は増やすという、介護保険は二十年その連続だったと思うんですけれど、コロナを経験し、この脆弱な社会保障体制でいいのかという辺りが大きく問われるんじゃないかという思いを強く持っております。
是非、それぞれの方、余り時間なくて申し訳ないんですけれども、コロナの後、日本の社会保障というののありようをどんなふうに考えていこうと思っているか、いくべきだと、御教示をいただければと思います。よろしくお願いします。
○参考人(菊池馨実君) ありがとうございます。
いろいろありますけれども、私は、今回のコロナ禍の中で大きく浮き彫りになったのは、支援者支援の必要性という視点だと思います。ともすると、そのサービスの受け手に焦点を当て、そのための質の良いサービスを提供するために何が必要かという観点からの供給体制の整備という面がやはり強かったのではないかということを改めて思い知ったというか、支援者をどう支えていくかという視点ですね、それは、家族も含まれるかと思いますが、相談支援の支援者、あるいはその様々な事業者ですよね、それをしっかり、労働条件も含めていかに支えていくかということをこれから真剣に考えていかなければいけない。
特に、医療・保健分野で言えば、やはり公衆衛生的な観点が疾病構造の変化の中でちょっと抜け落ちていたというか、それは日本の社会保障の進歩でもあったんだけれども、もう一度、戦後の感染症対策、伝染病予防というところに立ち上った対策がもう一度求められているということを感じる次第であります。
ただ、一つ期待したいのは、私のテーマでいうと、地域の中に、今まで地域と職域というのは分かれていたんですけど、これを契機に地域の中に職場というのが入ってきて、若い現役世代も含めた地域というのがもう一度つくり直される可能性があるかなという、そこは期待しているところであります。
以上です。
○参考人(結城康博君) ありがとうございます。
一点だけ。疑似的市場で介護保険や契約主義である程度福祉って成り立っているんですけれども、今回のような問題を機に、市場もメリットは非常にありますが、やはり公共性というか公共財というんですかね、そういうところをしっかり見直して、やはり市場と公共性のバランスを今後考えるいい機会だったと思います。
以上です。
○参考人(花俣ふみ代君) やはり、介護保険の改正に伴って、いつもいつも軽度の方の支援というのは軽んじられてきたというふうに思っているんですけど、まさに今回のコロナで、いかに在宅を支える基本的な通所介護であるとか、それからホームヘルパー、訪問介護のサービスの重要性というのはもうはっきりしてきたというふうに思っています。この二つはターゲットにされてきたんですけれども、ここの充実をこそ、本当の意味での介護予防であったり共生社会の実現につながる、重度化防止につながるというふうに考えています。
全ての議論の前提になっていた持続可能な制度という数字のデータもちょっと根底から覆っているような気もいたしますので、この辺りについてもう一度根本から考えていただければというふうに考えております。
以上です。
○倉林明子君 御三方、本当にありがとうございました。参考に質疑に臨みたいと思います。
終わります。