高年法 働く貧困層の温床に 参院厚労委 水野参考人が警告(2020/3/30 厚生労働員会)
参院厚生労働委員会は30日、65歳以上の労働者のフリーランス化を促す高年齢者雇用安定法(高年法)等改定案についての参考人質疑を行いました。
同法案は、65~70歳の人への「就業確保」を企業の努力義務とするもの。その方法として、定年延長や継続雇用に加えて、業務委託契約など雇用によらない働き方も可能としています。
意見陳述した日本労働弁護団の水野英樹幹事長は、雇用によらない働き方では労働基準法や最低賃金法の保護を受けられないと指摘。企業側が成果型報酬を採用する例が多数見込まれる一方、経費負担に関する規制はなく、「働いても成果がなければ報酬ゼロ、経費負担だけが残る。ワーキングプアの温床になりかねない」と警告しました。
また、労災制度の対象外で、解約・解雇に関する規制もないと指摘。「雇用とは異質の『就業』なる働き方への転換を正面から認めるものだ。年齢を問わず転換を認める一歩となりかねない」「雇用とは異なる措置を選択肢として設けることには反対だ」と述べました。
連合の石田昭浩副事務局長も「事業主の責任を回避するために委託契約に変更するようなことはあってはならない」と指摘しました。
日本共産党の倉林明子議員は、継続雇用の場合でも、「他の事業主」による雇用も可能とされていると指摘。「派遣会社が雇用して元の企業に派遣する形も可能となり、(雇用の安定をうたう)法の趣旨に反するのではないか」と質問。水野氏は「それは制度の乱用だ」と答えました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
今日は、お忙しい中、そしてまた新型コロナで大変な対応の中、こうして御出席いただきまして、ありがとうございます。
初めに、七十歳までに就業確保措置をとるということ、就業機会を確保するということで、雇用によらない、以外の措置が盛り込まれたということは非常に大きな問題だというふうに思っておりまして、これが六十五歳以上の働き方で盛り込まれたことをきっかけというか突破口にしまして、雇用によらない働き方を他の世代にも広げることになるんじゃないかという強い問題意識と重大な懸念を持っております。
そこで、水野参考人にまずちょっと伺いたい、細かいところなんですけれども、教えていただきたいと思いますのは、今回、新たに七十歳までのところで、雇用以外のところではなくて雇用の中身のところで、他の事業主によるものも含むということで、これまでは系列とか子会社とかの範囲だったものが拡大されることになると。こうなりますと、派遣事業者での雇用もこれ可能になるという理解なんですけれども、それをまた雇用、派遣元から元々雇用していた企業に派遣される、そういうことも可能、法律の立て付けからすると可能になるのではないかと思って、問題提起なんですね。
これ、もう間接雇用もこれ可能になっちゃうんじゃないかという指摘があるんですけれども、これ法の趣旨からいってもおかしいんじゃないかと思うんですが、御意見をお聞きしたいと思います。
○参考人(水野英樹君) 重要な御指摘ありがとうございます。
申し訳ありません、そういう活用といいますか、の仕方までちょっと考えておりませんでした。今ぱっと思った、印象程度ですけど、もしかすると法的に可能になってしまうのかもしれません。
しかし、基本的に、この高年法の趣旨は、それまで雇用していた企業が七十歳まで支援する、雇用なのかどうかは別としてということですので、間接雇用にするというのは、まさに直接雇用すればいいだけの話ですので、ちょっと制度の少なくとも濫用的な使い方かなというふうに思います。
○倉林明子君 ありがとうございます。そういうことも可能である法律だと言えるのかどうか、よく研究したいと思います。
そこで、今日は、新型コロナの影響が非常に雇用や経済にもあらゆるところに及んできているというのが実態かと思うんですね。
そこで、湊元参考人にお聞きしたいと思うんです。
新型コロナウイルスで、今相談件数も非常に増えているのは雇用調整助成金ですよね。要望書も出されているということで見せていただきましたが、これ条件、受給要件大変厳しいということで、これ緩和、政府の方も緩和していくという方針も出されているんですけれども、私もいろいろお話伺っていると、この受給要件の緩和をしないと、手続により時間が掛かって給付が何か月も先になると、全く間尺に合わないんじゃないかと思っているんです。
具体的に、緩和すべき受給要件ということについて、参考になる御意見等がありましたら教えていただきたいと思います。
○参考人(湊元良明君) お答えいたします。
雇用調整助成金に関しましては、こうした厳しい状況の中、中小企業、特に小規模企業の雇用を支えるという意味では大変大きな役割があるというふうに思っております。
我々も、当初は中国関係のが激減したときに適用するということ、これ我々も要望して、その中国要件を外してくれということ、これは政府の方でやっていただいて評価しております。あるいは、売上高が減少している要件とかありますので、そうしたところも柔軟にやっていただきたいというふうに思います。
あと、助成の率ですね。率も、今般、総理からの表明もありましたように、中小企業九〇%ですか、それから大企業でも七五%、こうしたことに拡充していただいていると。これは非常に大事なことであるというふうに思っております。
また、今お話ありました、実際には、やはりこの制度を使って中小企業、小規模企業のところに届くことが大事だということだと思っておりますので、今非常に時間が掛かっていると、現場では、という話も聞いておりますので、この辺は、我々としても、これがスピーディーにいくようにということを思っておりますし、手続も書類もなるべく簡素化して、これがスムーズに通せるように我々としては要望していきたいというふうに思っております。
○倉林明子君 受給要件の撤廃までおっしゃっていたか、申入れの中ではされているかと思うんですけれども、そのぐらいやっぱり思い切ったことをやっていかないと、雇用を守るという中小企業の努力支えられないと思っております。大企業に七五%本当に要るのかというのはちょっと疑問なんですけれども、それは意見だけです。
そこで、次に湊元参考人と水野参考人に同じ質問したいと思うんです。
やっぱり、このコロナの影響に関わってですけれども、フリーランスや自営業者に対しても融資や給付金にとどまらない十分な損失補填が求められると思うんですね。感染防止、これ今、外出規制等々出ております、イベント中止等出ております、夜のところに行くなというようなことで出ているわけですけれども、これ、ほんまに実効性を上げていこうと思いましたら、損失補償とセットでやるという考え方が大事になってきているんじゃないかというふうに思います。この点についての御意見をそれぞれ伺いたいと思います。
○参考人(湊元良明君) お答えいたします。
御指摘ありましたとおり、この外出自粛といいますか自粛のものによりまして、特に飲食店等、非常に大きな影響が出ているというふうに思っております。また、フリーランスとかそういう働き方、多様な働き方の中でも大きな影響が出ているんではないかなというふうに思います。特に飲食店等に関しましても、政府の方で無利子融資とか小口現金の給付とか、あるいはこれから現金給付も検討するということであると思いますので、そうしたもの、しっかり期待して見守っていきたいというふうに思っております。
○参考人(水野英樹君) イベントの自粛の関係で、イベントを支えてきたフリーランスの人たちの悲鳴が聞こえてきております。融資とか支払の繰延べということになりますと、いずれは払わないといけない、返さないといけないということになりますが、彼らが断たれているのは収入ですので、その収入をどうやって補填するのかって、国の制度としてやる場合には難しいんですが、完全なものでなくても、そこを補填していかないと結局彼らを救えないというふうに思いますので、やはりセットでする必要が高いと思います。
○倉林明子君 給付金への期待ということでおっしゃっていただきましたし、損失補填ということで確保していくことも大事だという御指摘かと思います。やっぱり、この感染防止策をしっかり取ってこそ、次の経済再生といいますか次の一歩につながっていくものだと思いますので、その点では、給付金にとどめず、損失補填をしっかり求めていきたいというふうに思っております。
続いて、水野参考人にお伺いしたいと思います。
三月十一日に、これは労働弁護団だったかと思うんですけれども、新型コロナウイルスに関する労働問題についての緊急声明出されていますよね。これの中で、使用者の判断ないし責任によって労働者が休むことを余儀なくされた場合には、使用者は休んでいる期間に対応する賃金の十割を支払うべきである、こういう指摘があるんですね。おっ、そうや、元々十割ですよねと、私もこの声明見せていただいて改めて気付かせていただいたんですけれども、この十割を支払うべきであるということを記載されている法的な根拠について御説明いただければ有り難いと思うんです。
○参考人(水野英樹君) それは、民法に基づく契約責任ということになります。(発言する者あり)はい、改正民法でも旧民法でも同じでございます。
厚生労働省さんのQアンドAの方では、休業補償ということで労働基準法による説明をしています。もちろん、その説明は正しいわけですが、労働基準法による責任の前に、使用者は労働契約に基づいて民法上の使用者としての契約責任を負っております。それに基づいて、契約の中身、職場の実情、その休業をするに至った理由や経緯、これらの事情によっては十割を払わなければいけないケースもあるだろうということで、こういう指摘をさせていただきました。
○倉林明子君 確かに、使用者だけの責任で十割補填はできないという場合は当然あるだろうと、そこはやっぱり国がしっかり支援していくということで、十割給付を支えるという考え方、とても大事だなと思いましたので、参考にさせていただきたいなと思います。
ちょっと時間が来てしまいまして、石田参考人に、高年齢者のアンケートなんかされているのでそこら辺実態聞きたかったのと、玄田参考人には、ジェンダー平等の視点から雇用政策についての御提案もあったのでそこら辺聞けたらと思ったんですが、残念です。聞けずに申し訳ありませんで……(発言する者あり)済みません、時間がありました。ありがとうございました。
それでは、仕切り直して、もう時々やるんで、済みません、時間がありましたので質問します。
石田参考人のところで、私、これは面白い調査だなと思いましたのが、六十歳以降の方々に、適切な働き方ということで、それ聞いているんですよね。労働時間や労働日数、賃金ということで具体的に平均も出されていると。これらについて是非御紹介もいただいて、やっぱり労働者、働いている人たちの要求水準というのはどういうところなのかということを共有できればと思います。お願いします。
○参考人(石田昭浩君) 適切ないわゆる七十歳以降、七十歳以前の働き方ということなんですけれども、労働日数についても、やっぱり高齢者という意味では、フルタイムがいいのか、あるいは日程を一定的に切った方がいいのかという、それぞれの体力も含めていろんな環境があるんだというふうに思っています。総じて申し上げれば、それに適応した適切な働き方というメニューについてはやっぱりつくっていくべきだというふうに思ってはいます。
やっぱり、雇用の維持という意味で、先ほどから申し上げておりますけれども、安全、健康面、そしてどうしても介護の問題と、こう含めれば、働きやすい環境という意味で、全てフルタイムということではなくて、やっぱり適切な日数、あるいは適切な賃金水準、まずそういうものをしっかりと、いろんな方に聞いてそういうものをしっかりつくり上げていくことが大事だというふうに考えています。
○倉林明子君 やっぱり、働きやすさの選択というか、そういう環境も、高齢者になっても働き続けるためにとても大事な調査だなと思いましたし、そういう意味での選択の幅が広がり、賃金も担保されるというところを進めていくべきだなということを改めて思いました。
それでは最後に、済みません、玄田参考人にお聞きしたいと思うんです。
いろいろ読ませていただく中で、氷河期世代のところに焦点を当てた御意見ではありましたけれども、私はやっぱり、ジェンダー平等の視点から今の日本の働き方を変えていくという考え方、非常に共感して読ませていただいたんですね。変えていく方向としてというよりも、今働く現場でそのジェンダー平等でないという環境、確かにあるというふうに思っているんですね。それはやっぱり乗り越えるべきものだというふうにお考えなんだなと思ってお読みしたんですが、その考え方、紹介いただければと思います。
○参考人(玄田有史君) 御質問ありがとうございました。
私自身は研究を始めたのがもう三十年以上前ですけれども、その当時と比べると、大分いろんなジェンダーに関する問題は変わってきた面もあるなと思う反面、そうじゃない面もあるということもつくづく感じております。非正規雇用問題というふうなことが浮かび上がったものの大部分は実はジェンダーの問題にも関係しているということで、非正規問題を解決していくということはジェンダーの問題の解決でもありますし、あと、やっぱりこれも問題解決には、草の根的な職場全体での盛り上がりと、あとトップの決断ということの両方がないと問題解決していかないというふうなこともやっぱりこれは変わらない面だと思っております。
あとは、やはり先ほどの問題も関係して、いろんな問題を変えていこうとすると、いい面が出る反面、いろいろトラブルが起こるというのは今回の高齢者も含めて当然でありまして、やっぱり、例えば総合労働相談コーナーのようなところに問題があったときにすぐ相談に行ける、今やっぱりハラスメントが非常に大きな問題になっておりますから、そこにジェンダーの面もなきにしもあらずなので、それこそ性別問わずに、何かあったらちゃんと相談に行ける、何かおかしいんじゃないかというふうに感じたら相談に行ける体制を、やっぱり性別にかかわらずまずはつくっていくということがこれからの働き方にとっては重要だと思っておりますし、そういう意味では、ジェンダーの取組というのがこれからの日本の社会の働き方を考える上での重要な参考になるのではないかというふうに思っております。
以上となります。
○倉林明子君 本当に終わります。ありがとうございました。