ハンセン病家族補償 家族の請求促す仕組みを 倉林氏提起 厚労相「努力する」(2019/11/14 厚生労働委員会)
日本共産党の倉林明子議員は14日、参院厚生労働委員会で、与野党議員が共同提出したハンセン病家族補償金支給法案について質問し、家族の請求を促す仕組みの検討とハンセン病療養所の療養体制の充実を求めました。
倉林氏は、「国会および政府の責任を明記した法案が、(ハンセン病家族訴訟)原告団と政府の合意を踏まえ、議員立法として提出されたことは大きな一歩だ」と強調しました。
その上で、倉林氏は、元患者の家族だと知られることを恐れ請求に踏み切れない人が多数いることを指摘。「家族の補償金を受け取れない元患者家族が多数になるような結果になってはならない」と述べ、家族からの申請待ちではなく、「原告団の意見をよく踏まえて請求の仕組みを検討すべきだ」と主張しました。加藤勝信厚労相は、幅広く周知を図り、名乗り出ることができない状況を踏まえて「どういうことができるか弁護団から意見を聞きながら円滑な支給がされるよう努力をしていきたい」と述べました。
倉林氏は、ハンセン病療養所の療養体制充実について2020年度から実施される看護師などの定数削減計画が適用されれば、「看護・介護職員の削減につながり、療養体制の後退になりかねない」と主張。厚労省の吉田学医政局長は「体制は維持する」と答えました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
今回、ハンセン病元患者家族に対して国会及び政府の責任を明記した法案が、原告団、そして政府の合意を踏まえて議員立法として提出される運びになったと、本当に大きな一歩だと思っております。
一方、原告団長の林力さんが、この合意の後に、百八十万であがないましたと合点する者は誰もいないと述べられているように、家族の受けてきた人生被害、これ踏まえれば、苦渋の決断があったということを立法府に身を置く者として深く受け止めたいというふうに思っております。
まず、参考人に確認したいと思います。
先ほども紹介ありましたけれども、今回の法案によって補償の対象となるハンセン病家族の人数及び補償額、確認をさせてください。
○政府参考人(宮嵜雅則君) お答えいたします。
今般の補償の対象となる御家族の数につきましては、一定の前提を置いた上でということでございますが、約二万四千人、必要な経費としては約四百億円と試算しております。
○倉林明子君 先ほど来紹介もありましたけれども、十二日に視察させていただきました多磨全生園の視察の中で、全国ハンセン病療養所入所者協議会、全療協の事務局長から、家族は補償金が一億円あっても名のり出ないとおっしゃって、これ、大変胸にこたえました。
入所七十八年、九十二歳になるという平沢自治会長も、故郷に帰ることもお墓に入ることもできない、いまだに実家の敷居をまたぐことも墓参りもかなわないというお話もお聞きしました。入所者は本当の名前を名のれない、今も仮名だというお話も聞きました。元患者の家族だと知られることを恐れてやっぱり請求に踏み切れない人が本当に多数に上る可能性極めて高いんだということを、お話も伺って痛感したわけですね。
原告五百六十一人のうち、それでも名前を出して裁判に臨んだという方は僅か数人だったという現状です。今回、皆さんの本当に多くの努力で法が成立する見通しとなりました。しかし、これ実際の補償金を受け取ることのない元患者家族、これ多数に及ぶような結果になっては本当にならないというふうに思うわけです。
そこで、改めて大臣の認識を伺っておきたいのと、家族本人の申請待ちということではなくて、やっぱり先ほど来御紹介もあるけれども、原告団等の意見をよく踏まえて、こういう実情なんだということから、請求を促す仕組みということを是非早急に検討もしていただきたい。これ、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) まず、こうした制度が今回の法律によってでき上がるということ、それから、先ほどちょっと御説明しましたけど、いろんな事情含めて、この請求をする立場にある元患者の御家族の皆さん方にしっかりと情報が提供されていく、そういった意味においては、広報用のポスター、リーフレット、ホームページ、あるいは国における相談受付体制の整備をしっかり進めていく、また、原告団の方々に対しては弁護団を通じた情報提供、また、国立ハンセン病療養所においてそこの職員の協力を得て入所者の方にはお伝えをし、そしてその方々からそれぞれの御家族に話が行く等々のそんなことも考えていきたいと思っております。
加えて、申請書類の入手の仕方ですね。今言ったように、これまでもお話がありましたように、それをいかに簡便にするか、あるいは余り、秘匿的に取れるというんですか、そういう人にそういった自分の個人情報をさらさずに入手できる方法。あるいは書類の書き方、手続を分かりやすく周知する。
そういったことを含めて、いずれにしても幅広くこうしたことの周知を図るとともに、今まで御意見ありましたように、さはさりながらなかなか名のり出れないというそういうお立場、これ、ただ、請求していただかなきゃならないという制度でありますから、その中において、そうした方々の状況を踏まえてどういうことがやれるのかということも、引き続き弁護団等々からもお話を聞きながら、円滑にこの補償金が支給されていけるように努力をしていきたいと思っております。
○倉林明子君 手続上の問題でいかにやっぱり申請しやすくするのかというところで、とことん仕組みについては工夫と柔軟な対応を求めておきたいと思うんですが、やっぱり非入所者も含めて今も根強く残っている差別、偏見、この解消の取組と併せてやっていかないと、家族が申請できる環境というのはつくれないというふうに思うんですね。
そこで、改めて差別解消の取組についても質問をしておきたい。
一九九六年、差別と偏見の温床となっておりましたらい予防法が廃止をされる、隔離主義、この歴史がようやく終わりまして、国会ではらい予防法の廃止に関する法律、これ制定と。この附帯決議で、一般市民に対して、また学校教育の中でハンセン病の正しい知識の普及啓発に努め、ハンセン病に対する差別や偏見の解消について更に一層の努力をすることというふうに付しているんですね。これ、二〇〇二年にはさらに人権教育・啓発推進に関する基本計画が策定されて、その中にハンセン病元患者も位置付けられたと。だから、もう十数年、二十年近くたっているんですね。ところが、差別意識は今も根強く残っているという現状があるわけです。
そこで、大臣に伺いたい。
国会でのこの附帯決議、そして国が作った基本計画、これ踏まえた取組というのは十分だったというふうに言えるのか。いかがですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 厚労省としても、今御指摘あった附帯決議あるいは基本計画、これを踏まえて、全国の中学校などへのパンフレットの配布あるいは国立ハンセン病資料館の運営など、普及啓発を通じた差別解消には取り組んではきたところではありますけれども、今回の法案の中にも特にハンセン病元患者の御家族ということが明示をされ、この問題の重大性が認識されずに国会及び政府においてこれに対する取組がなされてこなかったと、こう明記をされておりますし、まさにそうした患者の皆さんのみならず御家族ということまで明示的に念頭に置きながら対応してきたのかということ、もちろん元患者の方々を含めた全般的な取組もこれまでどうだったのかということも含めて、今、原告団家族代表、元患者の方々と我々厚生省、法務省、文科省との協議の場を立ち上げ、この場において御家族や元患者の皆さんからもお話を聞かせていただいているところでございますので、そういった声もしっかり聞きながら、差別解消について具体的な取組、改善すべきところは何か、そういったことを明らかにしながら更に進めていきたいというふうに思っております。
○倉林明子君 らい予防法廃止以来、やっぱり差別解消の取組必要だということだったんだけれども、やっぱり現状、この間の取組ということは不十分だったと言わざるを得ないと思うんですね。
国が誤った強制隔離政策を長期にわたって続けてきたと、このために、大多数の国民が、ハンセン病の病歴者、そして、その家族に対して差別、偏見してもいいというか、そういう認識を多くが持つといういわゆる社会構造ができ上がっているという状況だとやっぱり認識すべきだと思うんですね。そして、それ変えられてこなかったという状況あるわけです。要は、その強制隔離政策を誤って長く続けてきた政府の責任というのは極めて重大で、この差別解消、本気でこの間の取組の総括も踏まえて責任を果たしていくということを強く求めておきたいというふうに思います。
そこで、先ほども指摘ありましたけれども、ハンセン病療養所入所者の療養体制の充実についても質問したいと思います。
二〇年度から実施されます新たな国家公務員の定数削減計画について見ますと、五年間で一〇%の削減と。これ、今回ハンセン療養所、ここにもそのまま当てはめられることになりますと、看護・介護職員の削減につながる、療養体制の後退になりかねないと。これは全療協の事務局長からの御指摘も、その一点に限っての御要望があったと、先ほど紹介のとおりだと思います。絶対後退になるようなことがあってはならないと思いますけれども、いかがですか。
○政府参考人(吉田学君) お答えいたします。
ハンセン病療養所の定員につきましては、入所者の皆様の高齢化が進んで、職員の看護、介護によらなければ日々の生活を維持することが困難となっておられる方々も増えているという実情にございますので、定員合理化の対象ではございますが、平成二十六年八月に統一交渉団と今後の定員の取扱いについて締結いたしました合意書に基づいて取り組んでおります。
この合意書では、平成二十七年度から三十年度までの間の毎年度の定員を対前年度プラス一人ずつとする。その結果、介護等の支援を必要とする入所者一人当たりの介護員、看護師数を平成二十一年度の定員一・〇人から三十年度までにおおむね一・五倍程度に拡充する。二つ目として、平成三十一年度以降は定員を継続的に減少させていくが、その際の入所者一人当たりの定員については平成三十年度時点の水準を維持するという形になってございます。
ハンセン病療養所の定員につきましては、この合意書、そして入所者の療養環境の状況等を踏まえまして、医療、介護等の質を確保していくことが重要であると認識しておりますので、引き続き療養環境の充実に努めてまいりたいと思っております。
○倉林明子君 一九年までのところでいいますと維持すると、体制維持するということだったんだけれども、今後、全体としてはハンセン療養所も含めて職員を減らす計画だと、こういうことになっているということにやっぱり重大な危機感が示されているんだと思うんですね。私は、基本法の三条、安心して豊かな生活が入所者に確保されると、これが問われると思うんですね。
そこで、入所者の平均年齢というのは九十歳を上回る、認知症も視力の低下などもあって、終末期をこれから迎えていくという段階に入っております。夜間の対応には介護職員の三交代、これ実施は欠かせないという状況になっております。夜間の介護職員の三交代制を取ると、今度は逆に昼間の方が手薄になるというような状況にもなっているというふうに伺っているんですね。
そこで、平成二十五年度の定員を定める際には、国立ハンセン療養所の定員が毎年度連続して大幅に減少している状況に歯止めを掛けるとともに、期間業務職員の配置を含め充実した介護体制を確保するという基本方針、さっきも紹介ありましたけれども、これ堅持して、私は、体制強化、今回法にも盛り込まれた整備、充実ということで取り組んでいくべきだと思いますが、これ大臣、いかがですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 今の平成二十五年度の定員に関しては、当時、そうした方針で定員の確保が、それまでずっと定員が減少してきたんですね、それを止めたという認識であります。その後、入所者の方々からも大変強いお話がありまして、たしか当時はハンストをするとかいう話もある中で、平成二十六年八月に統一交渉団との間で取扱いをしたと。中身についてはさっき局長から答弁をしておりますから申し上げませんが。
したがって、当然、これは二十六年八月あるいは二十七年以降の話でありますから、これはしっかり踏まえていくというのはこれは当然のこととして、加えて、今委員御指摘のように、入所者の高齢化あるいは認知症等、そうした、何といいますか、状況の変化、そうしたことを踏まえた、まさに入所者の療養環境をどうしていくのか、そうしたことも踏まえて決定していくことが必要だというふうに考えております。
引き続き、入所されている方が安心して暮らしていただける、そうした施設において暮らしていただけるよう、医療、看護体制の充実も含めて取り組んでいきたいと考えております。
○倉林明子君 今御紹介あったように、入所者がハンスト行為にまで及んで勝ち取ってきたのが今の体制なんですよね。
先ほど来、全生園、資料館での見学の状況も御紹介いただきましたけれども、当初から、軽度な、軽症な入所者については、もう御飯を作ることから始まって、療養環境を自らが担ってやってきたんですよね。その方々が今本当に高齢で最期を迎えるという事態に、やっぱり安心して最終的な終末を迎えられる体制というのはどういうものなのか、絶対後退があってはならないということを強く申し上げたいし、それを担保するためにも介護職員の手当の増額というのは本気で検討していただきたい、これは要望にとどめて、終わりたいと思います。
ありがとうございます。