健康保険法等改定案 情報漏えい 危険高い 参院厚労委 倉林議員が批判 (2019/5/9 厚生労働委員会)
(資料があります)
日本共産党の倉林明子議員は9日、参院厚生労働委員会で、健康保険法等改定案について質問に立ち、診療報酬明細などの医療データベース(NDB)と介護保険給付費明細書などの介護データベース(介護DB)などとの連結分析を認めて民間事業者の活用を可能にすることは、両DBに含まれる特別に配慮がいる個人情報の漏えいの危険性があると批判しました。
倉林氏は、NDBが155・6億件の膨大な情報であり、希少疾患や遺伝子検査など「機微性」の極めて高い情報が含まれていると指摘し、「情報漏えいは絶対起こしてはならない」と主張しました。
倉林氏は、情報漏えいのリスクが高まっているにもかかわらず、国がデータの連結解析・提供を委託することができる審査支払基金と国民健康保険保連合会はサイバーセキュリティー基本法の監視対象に含まれていないと指摘。「漏えいリスクを監視するシステムも担保せずにビッグデータを活用することはやめるべきだ」と主張しました。
倉林氏はデータの民間活用について、「個人が審査目的以外の利用を拒否した場合、データから個人の情報は削除されるのか」と質問。樽見英樹保険局長は、データを匿名加工していることを理由に「(情報の)収集や第三者提供にあたって同意を得る仕組みになっていない」と述べました。
倉林氏は、EU(欧州連合)では個人データを入手する場合はあらかじめ本人の同意がいることが原則だと紹介し、「民間業者の利益のためにビッグデータの民間開放はやるべきではない」と強調しました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
まず、介護納付金の算定誤りについて私からも質問させていただきたいと思います。
今回の事案もやっぱり大臣に情報が伝えられたのが大変遅かったということが他の委員からも指摘、繰り返しありました。大体二か月近くたってから第一報を大臣は受けたということになっていたかと思います。
〔委員長退席、理事そのだ修光君着席〕
大臣は、二月四日、衆議院の予算委員会で、毎勤統計のこれ議論のときでしたけれども、こんなふうに答弁されているんですね。私への報告については、危機管理の鉄則として、早い初動、特に良くない情報ほど早く上げよという観点からして、今回の事案は報告までに私は時間掛かり過ぎていると思うと。私もそうだと思いますけれども、これまたかぶって繰り返されるということになったわけです。大臣、改めて認識を問いたいと思う。
○国務大臣(根本匠君) 私は、常に仕事は緊張感を持ってやってもらいたいと、こう思っております。
今回の一連の事案、老健局長からも度々答弁させていただいておりますが、省内の情報共有の在り方など、組織としてガバナンスが不十分であったということが明らかになっております。
私は、一連の問題を、事案を発生した部局だけの問題として捉えてはならないと考えており、組織内で、また関係組織間でそれぞれの業務にどのようなリスクがあるのかをあらかじめ共有して、何かあれば意思疎通が円滑に図られる関係性を構築する、これはまさに管理職の仕事であると考えております。
再発防止の観点からは、このような組織管理を徹底していくのが極めて重要であると考えており、自覚を持って日々の業務に当たることが求められていると思います。
厚生労働行政の責任者として私が先頭に立って、厚生労働行政の重みに対応したしっかりとした組織の在り方、組織のガバナンスを確立していきたいと思います。
○倉林明子君 危機管理の鉄則が守られていないと、そういう組織になっているんだということを、極めて深刻な事態だということを指摘せざるを得ないと思うわけです。
そこで、年末年始、この時期というのは、厚労省は毎勤統計の不正対応に非常に追われて、組織を挙げて追われていたという状況でした。確かに、この介護納付金担当のところでも、介護保険計画課、ここでもやっぱり応援体制組んでいたというようなことも聞いております。今回の健保法の改正というのも控えていたわけですよね。そういうときに、誤りに気付いた担当者が速やかに報告できないような環境がなかったのかどうか、私は、そういう目で点検を掛けるということも大変重要だというふうに思っているわけです。
再発防止にやっぱりどう踏み込んで検証していくのか、指摘の点も含めていかがお考えか。どうですか。
○国務大臣(根本匠君) 私は、こういう事案が出たときには、どうしてこういうことが起こったのか原因をしっかり明らかにする、これが大事だと思います。
今回の事案については、その計画の中で、特に支払基金から厚生労働省に参考値の一部に誤りがあるとの一報があったのが一月二十三日の時点であります。この一月二十三日の時点及びその後の対応について、厚生労働省、支払基金双方の対応に問題があったと考えています。
厚生労働省においては、一月二十三日の支払基金の一報を受けた担当者、これは、その情報を課内や局内で共有せず、上司もこうした実務を担当者任せにしておりました。また、担当者は、係数が上がることによる保険者実務への影響度を十分に認識せずに、そのため上司や幹部にも情報が上がらなかった。その結果、厚生労働省として、参考値を修正して医療保険者に示す段取りを取ることができなかった、これが原因。これは、やっぱりここはきちんとクリアにしなければいけないと思います。
〔理事そのだ修光君退席、委員長着席〕
これは、当事者個人の問題ではなくて、業務ラインの中で、どのようなタイミングでどういう事務があり、それに伴ってどういうリスクが生じ得るのかをあらかじめ共有することができていなかったという管理者側の問題もある。
そして、四月二十二日に老健局において再発防止の取組を具体化いたしました。幹部職員が中心となって次の点を明確化して、業務ラインの職員と共有することといたしました。その上で、日常的な情報共有と幹部への速やかな報告を徹底する。各課室、業務ラインごとに……(発言する者あり)いや、これ大事なことですよ、生じ得るリスクを事前に具体的に特定、共有する。リスクに対応するための意思決定のレベル、内容、方法を整理する。
全省庁的な、先ほど申し上げましたが、全省庁的な取組も強力に推進することによって再発防止の徹底を図っていきたいと思います。
○倉林明子君 いや、その範囲で本当に再発防止ができるんですかということなんですよ。踏み込んでそういう言えない環境がなかったのかということも検証したのかということを改めて言っているわけで、その指摘に対する回答がないということについては指摘をしたい。重ねて、検討要るんだと私は思っているんです。検証要るんだと思っているんです。
厚労省も、毎勤も、介護納付金の問題も、そして支払基金も、今回のことについても内部調査なんですよ、全部。内部調査にとどめているというところが私は危機管理の鉄則としていかがなものかと。第三者による検証というのをこの点でも重ねて私は求めたいと思う。これ、繰り返すほどに国民の信頼は落ちるばっかりなんですよ。厚生労働行政全体への理解にも本当に支障を来している事態なんだと、そういう、大臣、自覚持って取り組んでいただきたいと強く申し上げておきます。
次、ビッグデータの問題なんです。
法案によりまして、NDBそして介護DB等の連結分析を認めて、民間事業者にもその活用が可能となるということになるわけですね。
ビッグデータの規模を、私、まず確認したいと思います。今回、NDB、介護DB、そして特定健診等、それぞれ何件で合計何件になるのか、規模でお示しください。
○政府参考人(樽見英樹君) お答え申し上げます。
まず、NDBでございます。NDBに入っているデータの件数ということでございますけれども、平成二十九年度末時点で、医療レセプトは約百五十三億件、それから特定健診等データが約二・六億件ということでございますので、NDBで計百五十五・六億件のデータを収納しております。
介護DBの方になりますけれども、介護DB、同じく平成二十九年度末時点で、介護レセプトが約九・二億件、それから要介護認定情報が約〇・五億件ということで、合わせまして約九・七億件というものを収納しているという形になります。
○倉林明子君 ざっとでも百六十、もうちょっと増えるかな、膨大なデータの規模だということは明らかだと思うんですね。
とはいえ、介護保険でいうと、高齢者のうちおよそ七人に一人が利用していると。さらに、個人の特定ということで、この懸念というのが繰り返しやっぱり指摘もされているんです。NDBでも、希少疾患あるいは遺伝子検査など機微性の極めて高い情報が含まれるというふうになるわけです。これ、膨大なデータ、これは絶対に漏えいを起こしてはならないデータだと思うわけですね。
そこで、確認したい。この新たに法で可能となるデータの連結解析、提供、ここはどこが担うことになりますか。
○政府参考人(樽見英樹君) 連結解析、提供を行う主体ということになりますと、当面、国、具体的には私ども厚生労働省が行うということの予定にいたしております。
なお、第三者提供の対象につきましては、行政や大学等の研究者、民間企業など、幅広い主体に提供するということになりますので、そこで医療・介護分野における学術研究や研究開発の発展につながるということを期待しているところでございます。
○倉林明子君 これ委託も可能ということにしていませんか。
○政府参考人(樽見英樹君) 委託も可能ということにはしております。今回の法案におきましては、支払基金又は国保連等への事務委託を可能とするという規定を設けております。まあ、これ……(発言する者あり)よろしいですか。
○倉林明子君 つまり、委託先も含めてこのデータのところで関わっていくという可能性あるわけですよね。これ、情報管理、この点でも責任を負うということになるわけです。
さらに、私、個人の特定に直結してリスクが高いなと思って懸念しているのは、市町村が活用するとしている国保DB、そして介護、後期高齢者のDB、この一体把握なんですね。このデータというのは名前付きですよね。漏えいすれば、直ちに個人への影響が懸念されるデータとなるわけです。これ、市町村ごとの活用というのが前提、閉鎖したところで使うということが前提だということになるのは当然だと思うんだけれども、このデータ活用は広域での活用の拡大の議論も衆議院でもあったというふうに議事録を読みました。
こちらの方のDB、データベースの管理責任、これ、どこが担うことになりますか。
○政府参考人(樽見英樹君) まず、恐縮でございます、先ほど支払基金等への委託ができるということだけ申し上げましたが、まさにこの支払基金等に委託ができるという条文になっていますけれども、これ実際にどうするかということについては、まさにそのデータベースの事務を委託するにふさわしい、支払基金はレセプト等を扱っておりますので、それにふさわしい組織であるということで入っておりますけれども、実際にどうするかということについては今後の組織改革を進めていく中で検討を進めていくということになります。
それから、今のKDBシステムということになりますけれども、これについては、国民健康保険、後期高齢者医療制度の保険者が効率的かつ効果的に保健事業を行うために、国保連合会において構築をされ、管理をされているというものでございますので、国保連合会が管理者でございます。
○倉林明子君 それでは、果たして、国民のこの機微の高い、絶対に漏えいさせてはならないという情報は確実に守ることができるのかということが問題だと思うんですね。国民が一番心配しているところだと思うんです。
そこで、これ共同通信によりますと、一八年の個人情報流出あるいはおそれのあるものを含めて二百六十八万件に上ると、こういう報道ありました。そして、民間情報サイトですけれども、サイバーセキュリティ・ドット・コムが報道を追っかけて統計をまとめております。これ見ますと、十年前は年間で二つの法人と団体しかなかったんですよ、漏えい事案というのは。そして、件数は三千件程度でした。ところが、これ二〇一九年、今年入ってから四月までの分を掲載、見ておりますと、たった四か月なんですけれども、二十三の法人、団体、流出したものは一千万件超えているんです。もう飛躍的に情報漏えいの規模というのは増えているというのがこれ言えると思うんですね。この情報漏えいの事案の詳細の報告見ておりますと、ここには地方自治体あるんですよ。紛失、不正で消えた、情報流出したというのはありますし、経産省の委託事業でも起こっております。
近年、この情報漏えいのリスクというのは極めて高くなっているし、日々進化している、悪い方にですよ、漏えいの技術というのは進化していると、こういう状況にあるという認識は、大臣、お持ちでしょうか。
○国務大臣(根本匠君) まず、今回のNDBと介護DB、これは患者本人を特定できない匿名のデータベースであります。そして、情報漏えいのリスクに適切に備える、これはこのような匿名のデータベースであるNDBあるいは介護DBにおいても当然に重要なことと認識しております。
これまでも、データベースシステムの適切なセキュリティー水準を確保するとともに、データ利用者における必要なセキュリティー対策を求めることなどによってデータの安全な利活用に最大限努めてまいりました。そして、今回の法改正においては、幅広い主体による利活用が進むことを考慮して、データ利用者に漏えい防止等の安全管理義務を課す、そして国による検査の実施や義務違反に対する罰則も盛り込んでおります。
このような対応を含めて、情報流出などがあってはならないということを考えておりますので、引き続き安全性の確保にしっかり取り組んでいきたいと思います。
○倉林明子君 いや、聞いたことは、一般論としてですよ、今の法案の話じゃなくて聞いたので。繰り返しませんけれども、質問趣旨をしっかり聞いてつかんで答弁する努力をしてほしいと思いますので、よろしくお願いします。
そこで、情報漏えいリスクは非常に高まっているというのが一般的な事実だと思うんですね。そこで忘れちゃならないと思いますのは、厚労省は二〇一五年五月、これは百二十五万人分の年金機構での情報漏えい事件を起こした。同年八月、このときにはサイバーセキュリティ基本法、これに基づく初の原因究明調査というものの対象になった事案でもありました。年金機構もサイバー攻撃の監視対象にこれを契機として加えられたんです。新たな監視対象とされた理由は何だったのか。
○政府参考人(山内智生君) お答え申し上げます。
今委員御指摘の事案を踏まえまして、その翌年、平成二十八年の一月にサイバーセキュリティ戦略本部で議論が行われております。当時、政府機関のみがまず監視対象でございましたが、政府と一体となって公的業務を行う特殊法人等を国による不正な通信の監視、監査、原因究明の調査の対象に含めるという対象拡大をする方針をまず決定をいたしました。これに基づきまして、その所要の措置といたしまして、同年の四月にサイバーセキュリティ基本法改正をしております。
この改正をしたときに、この拡大の対象とする法人について、どこまで含めるのかという議論もしております。国民生活、経済活動への影響を勘案をしてこれサイバーセキュリティ戦略本部が指定をするということでございましたが、具体的には四つの要件をそのとき定めております。
一つ目、当該法人の業務と国の業務との一体性、その次が保有情報の機微性ですとかそれからサイバー攻撃を受けた際の国民生活、経済活動に与える影響、それから、法人が自主的なセキュリティー対策に、それに委ねてよいのかどうかと、それから、私どもサイバーセキュリティセンターの技術的能力、知見を活用できるのか否かと、この四つの要件を踏まえてどのような法人を指定をするかという検討をしております。
その結果といたしまして、平成二十八年の十月、御指摘の日本年金機構を含む九法人を指定をしたという経緯がございます。
○倉林明子君 内閣に確認です。
それでは、先ほど委託できるということで確認しました審査支払機関、そして国保連、これは新たに監視対象と加えた法人、団体の中に入っていますか。
○政府参考人(山内智生君) 国保連でございますね。九法人の中に入っていないかと思います。一応、念のためにそのときの九法人を申し上げます。(発言する者あり)はい。
○倉林明子君 これ、漏えいのリスクということでいうと、年金以上に漏れた場合の国民生活への影響、個人への影響、極めて大きいというところに踏み込むということになるんです、今度ね。これは委託できるという規定になっているけれども、委託したらそういうリスクというのは本当に高いんですよ。だけど、サイバーセキュリティ法の対象に入っていないという状況が今改めて確認したところなんです。
これ、データの民間活用について、データの保有者である国民の承認は、じゃ、得られているのかという問題なんですね。
法案によりますと、相当な公益性を有すると認められる事業、事務等としておるわけですけれども、衆議院で新谷政務官はこう言っているんですね。連結解析によって、製薬企業やヘルスケア事業者等が効果的な医薬品や健康維持、介護予防に役立つサービスの開発につながると、こう明確に答弁しているんです。
民間企業が自らの利益の確保のために利用できるようなデータになるということですか。
○政府参考人(樽見英樹君) NDB、介護DBのデータの第三者提供でございます。
今回の法改正によりまして、提供の基準や審査等の規定を整備した上でこれまで対象外としてきた民間企業も対象とするなど、基本的には幅広く利活用を認める方針ということで取り組みたいと思っているところでございます。
ただ一方で、まさにNDB、介護DBのデータは、公的社会保険制度の請求に用いられるレセプトということで集めたデータでございます。これを二次的に利用するものであるということを考慮すれば、一定程度の公益性というものはやはりその利用に当たって必要になるものだというふうに考えているわけでございます。
したがいまして、明らかに個別企業の利益のみを追求するようなもの、例えば自分の製品がどう売れているかというマーケティングの目的というようなところは、これは対象外というふうに思います。
関係者の意見も踏まえて、法施行までの間に具体的な検討を進めます。
○倉林明子君 これは株式会社富士経済が試算をしているんですね。二〇二五年、医療関連業界向けの医療ビッグデータ分析の市場、これが二〇一六年には四倍にも拡大するという、こういうデータの開放を見込んだ分析になっているんじゃないかというふうに思います。今後はカルテデータの活用も進むんだというような分析までしております。公益性の確保というデータ活用の目的からはやっぱり逸脱していくんじゃないかと、この危険については極めて厳しく指摘をしておきたいというふうに思うわけです。
そこで、データの活用について、個人が審査の目的外の利用を拒否した場合、審査だけに使ってほしいと、連結解析データからは、これはそういう本人からの希望があった場合、データ削除は可能なのかどうか。どうですか。
○政府参考人(樽見英樹君) 午前中のやり取りでもちょっとだけ申し上げましたが、NDB、介護DB、高齢者医療確保法や介護保険法というそれぞれの根拠法に基づいて、医療費適正化計画や介護保険事業計画の作成を目的として、匿名化した上で収集し、構築されているというものでございますので、そういう形で個人情報保護法の対象外というふうになっておりますので、この収集や第三者提供に当たって、患者本人の同意を得ることや個人の求めに応じてデータを削除するという仕組みとはなっていないということです。
○倉林明子君 これは、要は、大丈夫だからそういう希望をしても外さないという立て付けですよね。
ところが、匿名加工したデータは安全かということです。匿名加工したデータでも、AIに読み込ませればほかの情報と組み合わせることで簡単に特定できる、こういう時代に今なっているんですよ。EUでは、個人データを入手する場合、あらかじめ本人の同意を得るオプトインというのが原則になっています。日本はこういう点でも個人情報保護というのは大変遅れていると言わざるを得ないというふうに思うんですね。
情報保護の監視体制も、先ほど言ったように、サイバーセキュリティ法でも監視掛けないまま踏み込んでいく、こういうビッグデータの民間開放というのは国民の不安に応えていないし、現時点でこういうところに踏み込んでいくということはやるべきじゃないということを強く申し上げたいと思います。
次に、支払基金の改革について質問いたします。
レセプト点検業務を全国四十七か所から十か所程度の審査事務センターに集約するというふうにしているわけですが、その理由として説明を受けている部分が、コンピューターの審査を九割方できるようになったからだと言うんだけれども、でも、四十七か所に審査委員会は残すということになるわけで、何のために十か所にするのか、議論を聞いていてもはっきりしないと。いかがですか。
○政府参考人(樽見英樹君) まさにその審査、要する費用、皆さんの、国民の拠出する保険料、みんなで負担している保険料で賄われているわけでございますので、業務の効率化ということは喫緊の課題でございます。
そういう中で、レセプト事務点検業務について、ICTも最大限活用して効率化を進めるというふうにしたらばどういうことができるだろうかということで、今日もいろいろ話出てきておりますけれども、以前はレセプトは紙だったものが、電子的に来ています。これを、要するにコンピューターの仕組みを使いながら点検を効率化をすることができる、それについてはまさに事務の効率化ということで、集約することによって効率化できるところはできるだけ効率化をしていきたいと。
ただ一方で、具体的な審査の結果、査定ということを行って、医療機関にもそういうことで納得を得てもらわなければいけない、そういう言わば医療というものの個別性と一般的なルールである画一的な請求ルールというものとの折り合いをどう付けるのかということについては、まさにピアレビューという形で、顔の見える関係で四十七都道府県の審査委員会でお願いしたい。
○倉林明子君 不合理な審査の解消のために合理化していくんだという話だったんだけれども、一昨日の審議でも、これ、ローカルルールって十四万項目あったというお話ありましたよね。それが、統合しなくても五万項目まで減っているんでしょう。二万項目ぐらいまでは減らせる見込み立っているんでしょう。だから、合理的な説明になっていないんじゃないかと私は思うんです。
その上で、これ、要は、不合理な審査の差異を解消していくといった場合の不合理ということについての認識が私は問題だというふうに思っているんです。
これ、医療行為というのは、説明もあったとおり、患者の個別性が高いし、医師の総合的な判断の下で行われると。だからこそ四十七都道府県残すということになったけれども、私は、医師の裁量権というのが尊重されるべきものであって、そして、その知見が現場に近いところで合理的に集積されていって、審査というのも、査定ということもやられてきたと思うわけです。本部をつくったことで、この不合理な審査の差異の解消の基準を上から押し付けると、こういうことが合理的と言えるのかどうかというふうに思うんです。本部が上から決め付けるものであってはならないと思うし、医師の裁量権というのは尊重されていくべきものだというふうに思う。大臣、いかがですか。
○国務大臣(根本匠君) 患者の状態などに応じて個別性が高い医療に対して保険診療ルールを画一的に適用するという相反した要請に対応するために、医学的必要性、妥当性を見極め、折り合いを付けていくということが審査の基本的な役割だと思います。
これまで、もう省略しますけど、これまで審査をより効率的に……(発言する者あり)いや、簡潔に、簡潔にですね。要は、各支部において独自のコンピューターチェックルールの設定を進めてきましたが、そのことが結果的に支部間の不合理な審査結果の差異の一因として指摘されております。個別の医療の提供に当たって、議員御指摘のとおり、医師の裁量権が尊重されることは当然でありますが、それを保険診療に当てはめる際に支部間で不合理な差異が生じることについては、医療を受ける国民の公平性の観点から、その解消を図っていくことが必要であると考えております。
今回の改正法案では、審査委員会を本部の下に設置するなど、本部の調整機能を強化した組織体制に見直して審査の平準化を図ろうとするものであって、医師の裁量権を制限するものではないと考えております。
○倉林明子君 いや、平準化の際に、平準化が目的となって、これ医師の裁量権を侵害すると、こういうことをやったら駄目だよということなので、くぎを刺しておきたいと思います。
支部の集約、統合について、実はこの実証テストがやられています。そして、この検証結果を踏まえて法案提出という説明もされてきたんじゃないかと思うんですね。この場合、検証結果はどうだったのか、それがどう反映されたのかがよく分からない。特に、業務の連携。実証テストの結果、業務の連携はどうだったか。全国で百五十万件という、いまだ紙レセプトあるんです。これの業務というのが二割にもなっているという説明あったとおりで、今の紙レセプトの状況についても大きな課題ということになっていたかと思うんです。
実証テストの結果、課題、どうなったのか、説明求めたい。簡潔にお願いいたします。
○政府参考人(樽見英樹君) 簡潔にお答えいたします。
支払基金において、平成三十年六月から十二月までの間に、審査事務の集約に伴う実際上の課題を把握するということで実証テストをしました。
実証テストで整理されました課題。審査委員と職員の緊密な連携が審査の質を維持する上で非常に重要だけれども、現行システムでは審査委員と職員がレセプトを同時に見ることができなかったなどによって十分な連携が取れなかったという反省がある、それから、紙レセプトの支部間の送付に要する手間や時間が想定以上に掛かった、集約支部に新たに勤務することとなった職員の官宿舎あるいは通勤時間といった問題が増えたということでございまして、業務の集約に当たりましては、この結果を踏まえて、審査委員や職員の声をよく聞きながら、こうした課題も踏まえて検討を進めていくということで、厚生労働省においても適切に連携して進めていきたいと考えています。
○倉林明子君 実証テストの結果を見ると、統合することによって実務が逆に、結論から言うと、不合理なことになっていないかというんです。
私は、このレセプト審査というのは、正確で合理的な実務、迅速性、ここが担保される必要がもうあると思うんですね。ここに支障を来すようなことがあってはならないというふうに思います。実務の集約、統合、これ十か所程度ありきということで進んでいないかと、改めて、私は、検証結果を踏まえた慎重な対応が必要だということを申し上げておきたいと思います。
次に、介護保険と後期高齢者の一体的実施についても質問したいと思います。
本来、高確法によりまして、被保険者に対して健康教育、健康相談その他の健康の保持増進のため必要な事業を行う努力義務、これ広域連合に求められておりますね、後期高齢者のところ。現状、この努力義務の実施状況はどうなっているでしょうか。
○政府参考人(樽見英樹君) 高齢者に対する保健事業の実施は保険者である広域連合の努力義務でございまして、全ての広域連合において実施されているということになっております。
また、平成二十七年の医療保険制度改革において、広域連合が行うこの保健事業の、何というか、中身といいますか、メニューといいますか、高齢者の心身の特性に応じて保健事業を行うんだ、それから、保健事業のメニューとして、健康教育や健診に加え、保健指導、健康管理、疾病予防に係る本人の自助努力に対する支援などを行うように努めるんだというふうに定められたのでございます。しかしながら、保健事業として実施されている内容の多くは健診でございまして、健診以外の事業展開がなかなか広がっていないという実情がある。
それから、七十五歳以上の高齢者の保健事業と市町村が実施している国保の保健事業が実施主体が異なるということで効果的に継続できていない、あるいは、広域連合は都道府県単位で規模が大きいため、個々人の状態に応じたきめ細やかな対応が困難であるといったような課題があるということでございます。
したがいまして、今回の法案では、高齢者により身近な市町村で一体的な実施ということを行うということを盛り込んだものでございます。
○倉林明子君 後期高齢者医療制度ということで、移行してもう十年ですか、努力義務ということで課しながら果たされていない。これを放置してきたということ、極めて責任は大きいというふうに言わざるを得ません。その上で、唯一実施できてきたという健診事業についても、これ市町村に委託していると。これが実態だし、そうしないとできないというふうに思います。
そこで、更にこの市町村に委託する事業が今回増えるということになろうかと思うんですね。議論もありました。市町村に対して過重な負担になるんじゃないかという指摘です。私もそう思います。問題は、一体誰がその事業を担うことになって、そして、その財源、財政負担はどこが担うのか。どうですか。
○政府参考人(樽見英樹君) まさに高齢者の特性に応じた支援というものを、保険者は広域連合ですけれども、住民に身近な市町村で介護予防の事業あるいは国保の保健事業と一体的に実施してほしいというものでございます。実施は、したがって市町村。その中で具体的にどのような方がやるのかということになりますと、医療専門職ということが重要だということになるわけでございます。
医療専門職を市町村に配置できるようにした上で、医療、介護、健診等の情報を一体的に分析して、フレイル予備軍の抽出、あるいは重症化予防、医療・介護サービスへの接続、あるいはアウトリーチによる保健指導というものを実施をするということで、介護の通いの場といったところにも医療専門職が積極的に関与しながら、市民自ら担い手となって積極的に参画する機会を充実するということを考えているわけでございます。
財源ということになります。こうした取組を行う医療専門職の配置を各市町村で進めていただく必要があるということで、まさにその後期高齢者の保健事業を市町村に委託するということで、後期高齢者保険の広域連合が徴収する保険料財源というものをそれに入れるということになりますが、あわせて、国としても特別調整交付金を活用してこれを支援したいというふうに考えているところでございます。
また、実際の、例えば分析をしてアウトリーチするとかサービスへの接続をするとかと言っていますけれども、そういう分析能力の向上あるいは市町村における保健事業の取組の支援、そのための国保連による支援、取組でありますとか、そういったものについてもバックアップできるように体制を整えていきたいというふうに考えておりまして、それを厚生労働省において支援したいと思っています。
○倉林明子君 専門職の確保ということになると、もう小規模な自治体ほど大変やと思います。それは指摘もありました。私もそう思います。
特別調整交付金充てることできるよと言います。しかし、本来これ災害時などに特別な事情で交付するというもので、決して恒常的な財源とは言えないと思うんです。国の支援も考えているということですけれども、基本はこれ、広域連合、いわゆる保険料で賄っていくという事業になるんじゃないかというふうに思うわけです。
そうなると、結局その分はじゃ誰が負担するかというと、保険料に跳ね返らざるを得ないということだと思うんです。どうですか。
○政府参考人(樽見英樹君) まさに医療保険の保健事業というものが、これに限らず、言わばその保険者が健康づくり、疾病予防に保険料財源を使って取り組むという性質のものでございまして、それによって将来的な医療費の負担の軽減ということにもつながってくるということも期待をしながら、また、加入員、構成員である被保険者あるいはその家族の健康状態を維持改善するというための保険者の取組でやるわけですので、そういう意味では、保険料財源がそれに入ってくるというのはある意味自然なことでございます。
ただ、まさにそれを今回広域連合から市町村に委託をして、市町村という枠で一体的に強力に新たに行っていただくということで、言わば保険料財源をつぎ込むのに劣らない金額を国の方から補助できないかといったようなことを考えているということでございます。
○倉林明子君 将来の医療費負担の軽減に医療費全体がつながるんじゃないかと、その期待は期待として受け止めますけれども、後期高齢者保険料というのは今々の負担が大変になってきているんですね。軽減特例が廃止されたということに伴いまして、対象者だった高齢者に大幅な保険料の負担増ということになっているんです。更にここに負担増を迫るというようなことは到底容認できるものではありません。
高齢者の保健事業の財源、これは公費でまず確保するということが必要だと思う。大臣、どうですか。
○国務大臣(根本匠君) 医療保険者が実施する保健事業、これについては、被保険者の健康の保持増進に寄与することから、受益者負担の観点から被保険者全体で拠出し合うことが適当であること、また、こうした保健事業の取組は保険財政の安定化にも資するものであることから、保険者が自ら責任を持って保健事業を実施するべきであることということから、保険料財源を活用することが基本であると考えております。
よろしいでしょうか。
○倉林明子君 高齢者の負担増についてはやっぱりしっかり考えるべきだと思うんです。消費税の増税まですると言っているし、年金は上がらないどころか実質的には下がるという状況にあるわけで、トリプルパンチになるんです。そういう実態を踏まえて、この事業について保険料負担で賄うと機械的な答弁にとどめずにしっかり受け止めて考えていただきたい、これは強く要望しておきます。
この保健事業の中身として具体的に挙がっている通いの場について、これ確認ですけれども、八六%の市町村で設置、そして利用は高齢者で四・九%にとどまっているということでした。果たして全ての高齢者の保健事業となり得るのかと。通いの場などに参加しない、これ、できない高齢者にこそ支援が必要だというふうに思うんですね。
ちょっとアウトリーチの話ありました。私、基本はやっぱりアウトリーチ支援、保健事業は、アウトリーチ支援でこれを強化していくということが本当は求められているというふうに思います。専門職が地域に入って、支援に拒否的になって孤立している、こういう高齢者とつながるということが保健事業としては本当に担わなければならない分野じゃないかというふうに思っているんです。援助、ケアに結び付ける仕組み、これ、自治体、援助、ケアに結び付けるという役割が果たせるような支援にしていく必要があるということ、これ指摘にとどめておきたいと思います。
そこで、一体的に実施するとしている介護事業、これ、導入強化されようとしているのがインセンティブですね。このリンクという方向がすごく強調されております。
四月二十三日の財政審でも、財務省が次期介護保険計画に盛り込むということでインセンティブの中身を出してきておりますが、それを御紹介ください。
○政府参考人(大島一博君) 四月二十三日の財政審の資料の中では、このインセンティブ交付金に関連いたしまして、介護の地域差に係る要因を検証の上、問題と考えられる介護費の地域差の縮小に向け、インセンティブ交付金への適切なアウトカム指標の設定、活用やそのPDCAサイクルの確立、調整交付金等の活用を通じて保険者機能の一層の強化を進めるべき。それから、インセンティブ交付金について、より適切なアウトカム指標の設定、活用や配分のめり張り付けを行うことで給付費適正化等に向けた財政的インセンティブを強化すべきといった記述がなされております。
○倉林明子君 調整交付金の活用、二号保険料負担の配分、これも傾斜付けるということで、予防健康管理を強化し、健康寿命の延伸を図ると、こういうことも盛り込まれていたかと思うんです。
そこで、三月二十日に未来投資会議が開かれておりました。ここで安倍総理は、病気予防や介護予防、この保険者インセンティブ強化は私が二十年来執念深く取り組んできたが、今回は是非実現したいと考えていると強い意欲を表明されたと思っております。資料としてお付けしました。これは、未来投資会議に示された介護、医療のところでのインセンティブ強化の中身ということです。健保、国保、後期高齢者医療、介護保険、それぞれにインセンティブの強化メニューとなっているわけですね。これによって給付費の抑制というのは図られるというふうに大臣お考えなのか、確認したい。
○国務大臣(根本匠君) 予防、健康づくりなどの取組についてでありますが、これは、個人のQOLを向上して将来不安を解消する、健康寿命を延ばして社会保障の担い手を増やす、地域社会の中で高齢者の活躍促進を図る、こういった多面的な意義があると考えております。また、その上で、社会保障制度の持続可能性にもつながり得るという側面もあると考えています。
三月二十日の未来投資会議、このような考え方に立って、私から二〇四〇年を展望した取組について発表いたしました。そのうち、保険者インセンティブ制度については、加入者の健康の保持増進や医療費適正化等に係る保険者の取組を支援するため、昨年度より制度を強化、実施しているところであります。現在、厚生労働省に設置した、私を本部長とする二〇四〇年を展望した社会保障・働き方改革本部において、健康寿命の延伸に向けた取組を議論しているところであります。
健康無関心層も含めた予防、健康づくりの推進に資する個人の行動変容を促す仕掛けとして、保険者インセンティブ制度において加減算双方向での評価指標の導入など、めり張りを強化していきたいと考えています。
○倉林明子君 私、大臣に聞きたかったのは、そういうことをやって結果として給付費抑制につながると考えているのかと。これ、答弁ありましたか。
○国務大臣(根本匠君) 先ほど、予防、健康づくりへの取組の多面的な意義について申し上げました。
やはり、これから健康寿命を延伸することによって誰もが元気で活躍できる、そういう社会をつくりましょうと。ですから、結果として給付の抑制につながるケースもあるし、そこは、大事なのは、健康で誰もが活躍できる、そういう予防、健康づくりの取組を推進していきたいと思っております。
○倉林明子君 結果として給付費の抑制につながる場合もあるということは、結果として抑制につながらない場合もあるというふうに考えておられるのか、ちょっとここ大事なところだと思うので、はっきり答えていただきたい。
○国務大臣(根本匠君) 私が申し上げたかったのは、社会保障制度の持続可能性にもつながるという側面もある。要は、給付費の抑制を目的にしてこういう取組をやるわけではないということを私は申し上げたかったわけであります。
やはり個人のQOLを向上して将来不安を解消する、あるいは健康寿命を延ばして、これは社会保障の担い手を増やすことにつながる、これはつながると思います。そして、地域社会の中で高齢者の活躍促進を図る、こういう大きな多面的な意義を踏まえてその保険者インセンティブ制度も活用していきたいと、こういう趣旨で申し上げました。
○倉林明子君 趣旨はよく分かりました。
ただ一方で、新しい研究が進む中で、健康寿命の延伸が直ちにやはり結果としての給付費の抑制につながるかどうかということについての疑問も呈されているということはよく踏まえる必要があるというふうに思います。短期的な医療費の給付抑制にはつながっても長期的には医療費の先送りにしかつながらないんじゃないかということも指摘もあるということを付け加えて表明しておきたい。
そこで、介護保険で進んでいる介護予防、これ、一体実態はどうなっているかということなんです。
これ紹介したこともあるんですけれども、二〇一四年から、要支援一、二ということで介護保険給付から外されて、予防を目的とした市町村の総合事業に移行したわけです。これは、三重県の桑名市で総合事業の評価指数を卒業件数というふうに位置付けまして、総合事業を卒業して半年間介護保険を利用しない場合にインセンティブが独自に出されているんですね。その場合、事業者には一万八千円、ケアマネ実施機関には三千円、頑張った利用者本人には二千円と、こういう露骨なインセンティブになっているわけです。
結果どうなったかと。進んだのは、介護保険、これの利用抑制なんですよ。いわゆる通いの場、ここなどに、住民主体のサービスの利用につながった、今目指そうとしている方向ですね、こういう結果としてつながった人はどれだけあったかって、一六%にとどまったという調査出ています。重症化、そして死亡の増加につながっているという指摘、これ重いと思うんですね。
要介護状態の改善、アウトカム指標の配点を高める、こういうインセンティブの強化というのは、私、介護保険からの卒業の強要、これ拡大することにつながるリスクというのは高いんじゃないかと。実際のこういうインセンティブ強めているところで起こっている事案も本当に懸念されることだと思うんです。高齢者の孤立化、重症化のリスクを増やす、自立の強制がですね、そういうことにつながりかねないと思うわけです。
こんなインセンティブというのは、強めるんじゃなくて立ち止まってもう一回検証する、こういうこと必要じゃないかと思う。どうでしょう。
○政府参考人(大島一博君) 平成二十六年に総合事業に移行した趣旨は、あくまでも、既存の介護サービス事業者に加えましてNPOや民間企業等の多様な主体が介護予防とか日常生活支援のサービスに参入してくれて、市町村が実情に応じたサービス提供を行えるようにするということでありまして、水際で認定をはじく等といった趣旨ではございません。
この結果、今、平成二十九年三月から平成三十年三月というこの一年間、移行前と移行後の利用の状況を比較したところ、総合事業への移行前後で、サービス日数については変わらない、むしろちょっと増えているという状況になっております。
一方、元々の趣旨である住民主体のサービスとか多様なサービスを導入している市町村は六、七割にとどまっておりまして、まだまだそういう新しい住民参加型の形態等が少ないといった課題はあるかと思います。
ただ、先ほど申し上げましたように、これは要支援が必要な方に対して行うサービスを切るという趣旨ではなく、より柔軟で実態に合ったものを市町村の実情に応じて提供するという趣旨でありますので、その点には十分注意してまいりたいと考えます。
○倉林明子君 趣旨はそうだと言うんだけど、実態、桑名のようなことが、三重県の桑名市にとどまらず起こっていると、そういう実態があるということをしっかり逆につかむ必要あると思うんですよ。
短期的な確かに給付抑制にはつながるかもしれないけれども、実際、大東市でも、元気でまっせ体操で、みんな頑張ってねといって体操の勧めやっている総合事業もあります。しかし、そのでまっせ体操をやっているところに行けないと。結局、閉じこもってしまって重症化したという事案も起こっているんです。
だから、結局そういうことで、総合事業への移行というのが、サービスは、利用は減っていないとおっしゃるんだけれども、重症化ということも一方で起こしているわけです。やっぱり長期的に見れば給付費の増加という点での懸念は私はあるということを改めて指摘したいと思います。
財政審は、これ要介護一、二も介護給付から外すと、総合事業に移行させると、これはっきり提案をしております。加えて、生活援助サービスについては支給限度額を設ける、さらに利用者負担割合の引上げまで検討しているということです。
これ、京都ヘルパー連絡会が行った調査でも、生活援助が減らされるとどうなるか。買物も調理もできない、食事を取る機会が減る、服薬、水分補給もままならない、トイレの処理ができない、生命の維持が危機にさらされる、自宅の生活、困難になる、こういうことになっている例が示されております。
区分支給限度額の中で、利用者の置かれた状況に合わせ、その人らしい生活を送るために必要なサービスを選択できる、これ、介護保険の原則だったと思うんですよ。これ、生活援助だけをやり玉に上げて利用を制限する、こんなことはやるべきじゃないと思う。どうですか。
○政府参考人(大島一博君) 財政審での記述もございますが、政府としては、骨太方針二〇一八におきましても、介護の軽度者への生活援助サービスについて給付の在り方を検討するといった記述がございます。また、昨年十二月のいわゆる工程表と呼ばれております新経済・財政再生計画改革工程表におきましては、軽度者に対する生活援助サービスやその他の給付について、地域支援事業への移行を含めた方策について、関係審議会等において第八期介護保険事業計画期間に向けて検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずると書いてございます。
こうした記述もありますので、今、次期計画期間に向けた介護保険制度の見直しを始めたところでございますが、実施主体である市町村、あるいは利用者、関係者等の意見を十分お伺いしながら、適切な判断に至るよう、関係審議会でまずは検討を始めていきたいと考えております。
○倉林明子君 いや、今回の高齢者の保健事業と介護予防事業の統合、これ、結局、今から進めようとしている、財政審での提案にもある、要介護一、二、これも介護保険から外していくと、これ地続きの話になっているんじゃないかと懸念が広がっているわけです。もう給付費を抑制しようということで、こういうふうに軽度者をどんどん総合事業に持っていく、保健事業という枠もくっつけて受皿にしていくと。これを進めるということについてはやっぱり考え直すべきだということは強く申し上げたいと思います。引き続き検証が必要だし、このまま進んで重症化を招くようなことがあってはならないと申し上げておきたいと思います。
そこで、総理の発言に私非常に違和感を感じました。執念を持つと。疾病予防、介護予防、インセンティブ強化、これは、生活習慣病は個人の不健康な生活に責任がある、介護予防に取り組めば介護からの卒業ができると、これ、自助努力を促すという方向になっていると思うんですね。健康であることのみが良いと。障害や病気のある人への差別につながらないのかと。病気や要介護となることは自己責任、こういう考え方を推進しかねない。それ非常に懸念を持っているんですけれども、大臣、その懸念、いかがお考えでしょう。
○国務大臣(根本匠君) 私、先ほども申し上げました、予防、健康づくりの取組、これは、個人のQOLを伸ばして、向上して将来不安を解消する、健康寿命を延ばして社会保障の担い手を増やす、地域社会の中で高齢者の活躍促進を図る、こういう多面的な意義があると考えております。また、その上で、社会保障制度の持続可能性にもつながり得るという側面もあると考えております。
予防、健康づくりなどの健康寿命を延伸させるための取組、これは、保険者や個人にインセンティブを付与して自助努力を促すということであって、健康であることは良いことで病気や要介護となることは自己責任という考え方を推進しているものではありません。あくまでも自助努力を促すというところにポイントがあるということであります。
要は、国民誰もがより長く元気に活躍できるように、全世代型社会保障の構築に向けた議論を進めておりますが、その中で、二〇四〇年までに健康寿命を三年延ばすという目標に向けて取組を推進していきたいと思います。
○倉林明子君 義務としての健康、これ国家のスローガンにしたのがナチス政権なんですね。一九三四年、保健事業統一法、これによって、民族、国家のために健康でいることはもはや各個人の義務となったと。これで福祉コスト削減、そういう状況迫られておりましたが、これ契機となって、人間を福祉に値するか否かで選別する、啓発や罰則でコントロールを掛ける。優生施策が急速に進展した。これ、歴史の事実なんですよ。
私は、こういうインセンティブで自己責任を迫っていくというやり方は、そういう危険、歴史に学ぶべきことがあるんだということは最後紹介にとどめまして、今日は終わりたいと思います。
○倉林明子君 私は、日本共産党を代表して、健康保険法等の一部を改正する法律案に反対討論を行います。
反対の第一の理由は、機微性の高い個人情報を含む医療、介護、ビッグデータを連結解析し、民間企業に開放する点です。
今や匿名加工情報でも様々な情報と結び付けることができれば個人が特定される時代です。NDBや介護DBのビッグデータに集約される個人情報は、提供の拒否もできず、個人が目的外利用を拒否しても情報は削除されません。このような形で集約される個人情報を民間企業に提供して、利益のために活用できるようにすべきではありません。
第二の理由は、診療報酬支払基金の支部の集約、統合によって、平準化の名の下に地域の事情に見合った診療内容が考慮されなくなるおそれがあります。
医療行為は患者の個別性が高く、医師の総合的な判断の下で行われます。審査の合理性は医師の裁量権の集積によってつくり上げられるものです。審査基準の統一化ありきで医師の裁量権を侵害することがあってはなりません。
第三に、高齢者の保健事業と介護予防の一体化では、地方に負担を押し付けることになり、後期高齢者の保険料負担増を招きかねません。
第四に、マイナンバーカードの普及拡大のためにマイナンバーカードによるオンライン資格確認を導入する点です。
保険証でも資格確認ができるにもかかわらず、なぜマイナンバーカードによるオンライン資格確認を導入するのか。普及率僅か一三%程度のマイナンバーカードをこの機に一気に普及しようとする意図があることは明白です。医療機関からもマイナンバーカードの取扱いに多くの懸念が示されており、マイナンバーカードによるオンライン資格確認は撤回すべきです。
以上を指摘し、反対討論といたします。