倉林明子

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重症度で選別やめよ 難病患者医療費助成 倉林氏が追及(2019/4/25 厚生労働委員会)

(資料があります)

 日本共産党の倉林明子議員は25日の参院厚生労働委員会で、指定難病患者への医療費助成制度をめぐり、軽症の患者を対象から外す「重症度分類」によって受診抑制が生じているとして、「重症度による選別はやめるべきだ」と主張しました。

 重症度分類は、2014年制定の難病法で創設され、3年の経過措置の後、18年1月から導入されています。

 倉林氏は、「医療費助成の対象疾患が14年から17年に6倍化する一方、法制定時に150万人まで増えると見込まれた対象患者は90万人だ。増えるどころか3万人減っているのはなぜか」と質問。厚労省の宇都宮啓健康局長は、経過措置終了を要因に挙げ、終了後に不認定となったのが8・6万人、申請なし・不明が6・1万人だと答弁しました。

 倉林氏は、厚労省の研究班による経過措置終了後の患者への調査で、助成から外れた患者の半年間の通院回数が5・3回から3・6回に低下していると指摘。「不認定・申請なしが4・4万人に上る潰瘍性大腸炎の患者団体から通院数減や治療中断の実態を聞いた。明らかな受診抑制が起きている」と迫りました。

 宇都宮氏は指摘を認めず、根本匠厚労相は「重症度分類は制度の公平性と安定のために必要だ」と強弁。倉林氏は、「難病は症状が安定していても、治療を中断すれば一気に重症化する危険がある」と、重症度分類の危険性を強調。今後の難病法の見直し議論に、患者や家族の参加を保障するよう強く求めました。


難病法医療費助成の対象患者数


難病の新たな医療費助成制度について


議事録を読む

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 今日は、難病問題について質問したいと思います。
 難病法が施行されてから間もなく四年ということになります。法制定時には、患者、家族の皆さんが、もっとたくさんの難病患者がいる、みんな困っている、その方々を一つでも多く同じ難病対策に入れるためには幾らか自分たちの負担が増えたってやむを得ないということで負担増を受け入れたという経緯がありました。
 そこで、確認をしたいと思います。資料一ということで配付させていただいております。この間の推移を表にしたものです。
 この資料にあるとおり、対象疾患というのは確かに増えまして、二〇一四年当時の六倍になっております。一方、対象患者数はどうかということですが、これは百五十万人まで増加するというふうに説明もされていたものですが、実際にはトータルで八十九万二千人にとどまっているんです。増えるどころか、二〇一四年比で三万人、これは減っているんですよ。特に注目していただきたいのが、二〇一六年から二〇一七年のこの一年間の減少幅というのは十万人近い。
 何でこんなことになっているのか、簡潔に御説明をお願いします。

○政府参考人(宇都宮啓君) お答えいたします。
 ただいま資料でお示しいただきましたように、二〇一四年末と二〇一七年度末を比較しますと約三万三千人減、二〇一六年度末と二〇一七年度末を比較すると約九万四千人減少しているところでございます。
 この受給者数の減少につきましては、確定的なことは申し上げられませんが、まず、二〇一五年一月の難病法の施行によりまして、医療費助成の対象となる疾患を大幅に拡大しますとともに、症状の程度が一定以上の方や症状の程度が軽症であっても医療費が高額である方を医療費助成の対象とすることとしたということがまずございます。
 この際、それまでの予算事業において医療費助成の対象であった方については、症状の程度にかかわらず医療費助成の対象とする等の経過措置を三年間に限り実施していたということでございまして、この経過措置が二〇一七年十二月末で終了したということにより、一定程度の方が不認定若しくは申請なしなどとなったことが要因の一つと推測されるところでございます。

○倉林明子君 そうなんです。この経過措置の終了が物すごい大きかったんですね。当初から懸念されていたということは現実になりまして、医療費助成が受けられない難病患者続出という事態になりました。
 これ、経過措置終了後、経過措置適用者のうち、二〇一八年一月時点の医療費助成である特定医療費の支給不認定となった件数及び申請なしとなった件数というのはどうなっていますか。数だけでお願いします。

○政府参考人(宇都宮啓君) 件数というか、人数で把握してございます。
 平成二十九年末に終了しました経過措置が適用されていた患者の経過措置終了後の認定状況につきましては都道府県の協力を得て調査を行ってございますが、経過措置適用者約七十一万七千人のうち、経過措置終了後も引き続き認定された患者さんは約五十七万人と、七九・六%でございます一方で、経過措置終了後に不認定となった患者さんは約八万六千人、一一・九%、申請なし若しくは不明などの患者さんは約六万一千人、八・五%となっているところでございます。

○倉林明子君 つまり、申請なし、不明ということも合わせますと、医療費助成が受けられなくなったという難病患者さんが実に十五万人という数に上るわけですね。申請なしには、これ軽症であることから医師から止められたり、あるいは、やっても軽症で外れるよということで申請しなかったという方や、初めからもう諦めたという方もあるというふうに伺っております。
 問題は、この不認定、申請せずという方々、患者に出ている影響なんですよ。これ、厚労省の補助事業であります難治性疾患政策研究事業の難病患者の総合的支援体制に対する研究班、これ、経過措置終了後の難病患者の状況について調査報告をされています。まだまとまった段階ではありませんが、約二割の患者が軽症、経過措置終了後に不認定、申請せずとなって、同じ半年間で五・三回から三・六回に通院頻度、これ低下していたという結果が出ております。これ、明らかな受診抑制が起こっているんじゃないかと思いますが、どうですか。

○政府参考人(宇都宮啓君) お尋ねいただきました調査研究を含みます厚生労働科学研究事業につきましては、研究報告書の提出期限をおおむね翌年度五月末までとしているところでございまして、本調査におきましても、御指摘ありましたが、現時点ではまだ研究班から最終的な報告を受けてはいないところでございます。
 そのため確定的なことは申し上げられませんが、この調査は、元々、難病法施行後の難病患者全体の支援ニーズなどの生活の実態を把握するための調査でございます。これを活用しまして、今般、経過措置対象者の経過措置終了後の生活状況の変化を把握しているということでございますため、調査の回答率や調査対象である経過措置対象者の割合が低くなってございまして、統計的な観点から調査結果の有意性を検証する必要があると考えているところでございます。
 また、御指摘の受診頻度の減少には日常生活の自立度や症状の改善が一定程度寄与している可能性も推測されるということでございますため、一部の軽症患者が医療費助成の対象から外れたことによって受診抑制が起こっているかどうかについては一概に言えないものと認識してございます。
 そのような点も含めまして、現在、研究班において調査結果の有意性の検証も含む詳細な検証、分析を実施しているところとの報告を受けてございます。
 いずれにしましても、本調査の結果につきましては、研究報告書が提出され次第、厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会に報告することとしてございまして、厚労省としては、難病対策委員会における議論も踏まえながら対策の推進に努めてまいりたいと考えているところでございます。

○倉林明子君 確かに最終報告ではないということなんだけれども、症状の安定も否定できないという部分を引用するかなと思ったらしっかり引用されていて、そこだけはしっかり報告書を利用しているなと思いました。
 私、重大だと思うのは、数字として半年間で五・三回から三・六回に通院頻度落ちている、こういう数字の結果が出ているということをしっかり受け止めないと駄目だと思うんですよ。どの程度受診抑制が起きていて、そしてそれがどんな影響を与えているのか、私は、しっかりつかむということで臨んでいただきたいと思うんです。
 不認定と申請せず、この合計が実に四万四千人、最も多かった疾患、これ潰瘍性大腸炎であります。発症のピークというのが二十代の後半ということで、就労世代が大変多いんですね。これ、治療の進展によって、社会参加、働くことは十分可能になっている疾患でもあるんです。ところが、やっぱり生涯にわたって難病であるということから、治療の継続、これ必須なんですよ。
 経過措置終了後、通院回数を減らす、そして治療を中断するという患者が出ているんだという患者団体からのお話をお聞きしております。これ、中断すれば症状は悪化するというのは明らかでありまして、重症化して治療再開となるんですけれども、重症化すると集中治療ということになりまして、負担もすごく跳ね上がる、月三十万ほどになるというんです。ところが、この申請した日にしか認められない。重症化すれば認定されるということになるんですけれども、そういうこともありまして、大変負担になっているんですね。
 こういう実態を見ますと、軽症になれば認定から外すというふうにしたということが、難病患者の社会参加、これ阻害しているんじゃないかというふうに思うんですけれども、その認識については大臣からどうぞ。

○国務大臣(根本匠君) 先ほど健康局長からお答えしたとおり、研究班からの調査に関する最終的な報告を受けていないため、前段の話は確定的なことは申し上げられないと思います。受診頻度の減少、これは日常生活の自立や症状の改善が一定程度寄与している可能性も推測されますので、御指摘のような症状の悪化が生じているかどうか、これは一概に言えないものと思います。
 いずれにしても、難病患者の社会参加を促進することは重要であると考えています。これまでも、都道府県と協力して、難病相談・支援センターやハローワークを中心とした生活就労支援などに取り組んできたところであります。このような取組を通じて、難病患者の療養生活の質の向上を始めとする難病対策の推進に取り組んでまいります。

○倉林明子君 いや、実際に患者団体からそういう実態あるよと、実際にその研究班での結果も、まだ成果、意見出ていないということだけれども、注目すべきことだと思っているんです。
 難病法の第二条、基本理念、ここには、難病患者に対する医療等は、難病の克服を目指し、難病の患者がその社会参加の機会が確保されること及び地域社会において尊厳を保持しつつ他の人々との共生を妨げられないことを旨として、難病の特性に応じて、社会福祉その他の関連施策との有機的な連携に配慮しつつ、総合的に行われなければならないとしているわけですから、認定外しということの影響というのは、重大なこうした基本理念にも逆行するような事態になっていないかということについてはしっかりつかむ必要があるということは重ねて指摘したいと思います。
 潰瘍性大腸炎にとどまらないんですね。難病は、治療によって軽快、寛解という状況にすることできるんです。ところが、増悪しますと一気に重症化する、こういう可能性も高いものが多いです。治療継続によって確保できている症状安定が軽症と判断されて医療費助成が受けられない、そういうことで治療が中断するということになりますと、就労などの社会参加、これ実際に支障を来しているというお話をこの潰瘍性大腸炎だけじゃなくてたくさん伺っているし、政府にも要請されているはずなんですよ。
 私は、この重症度分類基準、つまり軽症という人を外していくというやり方、これやめるべきだと思うんです。いかがですか。

○国務大臣(根本匠君) 難病患者の社会参加を促進することは重要であると考えております。
 一方で、今の御指摘の難病患者に対する医療費助成、これについては、社会保障と税の一体改革の議論を踏まえて、公平かつ安定的な制度を確立するために、平成二十六年に国会での議論を経て難病法が制定され、消費税を財源とする法定化した制度として位置付けられたところであります。
 その際、医療費助成の対象患者については、公平性を確保し、広く国民の理解を得る観点から、症状の程度が一定以上の者という考え方に基づいて、全対象疾病に重症度基準を導入することとされたものであります。
 このような経緯を踏まえますと、重症度基準というものは公平かつ安定的な医療費助成の制度を維持するために必要不可欠なものと考えております。

○倉林明子君 いや、そうは思わないんですよね。
 財源面のこともおっしゃったので次に質問しようと思うんですけれども、私、この重症度分類で軽症者を外したことが財政的なことでの公平かつ安定な運営のためだとおっしゃるんだけれども、実際にこの医療費助成拡大して何をしようとしていたかといったら、難病患者の社会参加を促進すると、医療費の助成対象の疾患を増やすということだった。基本理念の達成が目的なんですよ。その目的がしっかりやられているかどうかということが私は問われている今の実態があるということから申し上げているんです。
 重症度分類の導入ということが、実は毎年申請必要になった。これ、費用負担も生じているんです。同時に、二十ページも書かなあかんのですよ、書類。これで医療機関にも大きな負担になっております。こういう点でも私は見直ししていく必要があるということは、これは指摘にとどめたいと思います。
 その上で、財源、お金の話なんですけれども、難病法制定当時の対象疾病の拡大と医療費助成の事業規模というのを、これ、二枚目に入れています。当時の見込みはどうだったかということなんですよね。要は、消費税を財源にするとしながらも、平成二十七年度の事業費の規模を見ていただきたいんだけれども、これ、九百十億円見込んでおりますね。
 じゃ、経過措置終了後の二〇一八年度の実績はどうなっているのか。この事業費の国費のところだけ、額だけ答弁してください。

○政府参考人(宇都宮啓君) 現在の最新のデータでは、二〇一八年度はまだございませんで、二〇一七年度の国費、決算ベースでございますが、これにつきましては約七百七十七億円となっているところでございます。

○倉林明子君 今の答弁、難病だけですか、小慢は含んでいませんか。

○政府参考人(宇都宮啓君) 現在の数字は、指定難病の三百三十一疾病についてということでございます。

○倉林明子君 これ、疾病の指定でいいますと六倍に増えたと。先ほど紹介したとおりです。ところが、受給者数で見ますと見込みの六割というところにとどまっております。結果、見込んでいた二〇一五年度の公費投入額よりも大幅に少なくなっているんですよ。私は、大きな乖離が出てきていると言わざるを得ない。増えたのは対象疾患。対象。もっと多くの人に使ってほしいさかいということで患者を受け入れた負担、あるわけですよ。ところが、利用できる患者さんというのは増えていない、減っているんですよ。これで法の目的が達成できているとは私は言い難いというふうに思うんです。
 パーキンソンの方々からも、人口の〇・一%という希少要件、これについても、高齢化が進んでいるので、超えたら外されるんじゃないかと、こういう不安についてもお聞きいたしました。
 これ、難病法は、五年以内の見直しということで規定しております。来月からの見直しのスタートも始まるように聞いております。指定難病の基準を見直して、全ての難病を医療費助成の対象とする。低所得者の医療費負担の軽減、これらも含めて私は抜本的な見直しが必要だと。法の目的、基本理念、これに照らして検証して見直す、これを求めたいと思います。いかがでしょうか。

○国務大臣(根本匠君) 難病については、難病法第一条で、発病の機構が明らかでなく、治療方法が確立していない希少な疾病であって、長期にわたり療養を必要とするものとされております。
 このうち、指定難病については、関係審議会の議論を踏まえ、公平かつ安定的な制度を確立する観点から、対象となる疾病の範囲を明確にするため、次の要件、要は、患者数が人口の〇・一%程度以下であること、客観的な診断基準が確立していることに限定しているところであります。
 また、医療費助成における患者負担、これについては、現行において既に患者の所得に応じた医療費の負担上限額を設定しており、低所得者に対する医療費負担の軽減が図られております。いずれにしても、医療費負担の軽減が図られております。
 いずれにしても、難病法施行五年後の見直しについては、委員から今お話がありましたが、今後、関係審議会において制定時の経緯なども踏まえながら御審議いただくものと考えております。

○倉林明子君 法の執行の責任というのが、所管しているのは厚労省ですから、やっぱり法の執行状況というのをしっかり見て、審議会についても抜本的な見直しということで始めていただきたいと思います。
 難病患者、家族の長年の運動、これによって成立したのが難病法であります。見直しに当たっても、当事者参加、よく家族や患者会の思いも反映されるように、これは強く要望いたしまして、終わります。