強制不妊 「一時金支給法」成立 倉林氏 被害者に向き合い法改正を / 強制不妊 「一時金支給法」成立 被害者の人権回復へ引き続き全力尽くす 穀田氏会見(2019/4/23 厚生労働委員会)
(資料があります)
旧優生保護法下の強制不妊手術被害者を対象とする「一時金支給法」が24日、参院本会議で全会一致で可決・成立しました。
日本共産党の倉林明子議員は23日の参院厚生労働委員会の質疑で、同法による一時金(320万円)は、ハンセン病患者への人権侵害をめぐる国家賠償(最高1400万円)や交通事故による生殖機能喪失への慰謝料(1000万円)より桁違いに低いとして、国会を動かした被害者の勇気ある願いを真に反映した被害回復と優生思想との決別のための法改正を目指す決意を表明しました。
倉林氏は、「全国優生保護法被害弁護団」の声明が被害者の声を十分聞くよう国会に求めているのに、同委での当事者らの意見陳述について「合意が得られなかったのは極めて残念だ」として、被害者に向き合うよう改めて強く要求しました。
倉林氏は、同法による一時金の金額では「優生手術等の人権侵害を小さなことだと評価していることになる」との「優生手術に対する謝罪を求める会」の指摘は「極めて重い」として、一時金給付後も損害賠償請求権は阻害されるべきではないと主張。厚労省の浜谷浩樹・子ども家庭局長も「特段制限されない」と認めました。
日本共産党の穀田恵二国対委員長は24日、国会内で会見し、同日、全会一致で可決・成立した旧優生保護法下の強制不妊手術被害者を対象とする「一時金支給法」の成立についての見解を表明しました。
穀田氏は、冒頭で旧優生保護法のもとで、強制不妊手術を強いられ、心身に多大な苦痛を受けた被害者に、国会が同法を制定し、長年にわたって存続させてきたことを、「立法府の一員として責任を痛感し、改めて反省とおわびを申し上げたい」と述べました。
穀田氏は、支給法は、昨年国家賠償を求める訴訟の提訴をうけ、超党派の議員連盟が議論を重ねて、現時点で全会派が一致できる内容でまとめたものだと指摘。被害者や弁護団から、国の謝罪が明記されていないなど、さまざまな批判があることを受けとめ、「これを第一歩として、二度と繰り返さないという決意のもと、引き続き被害者の人権回復のために、全力を尽くしていきたい」と強調しました。
穀田氏は、残された課題として、一時金の金額は、「重大性に向き合った補償額とは言えない、低い金額だ」とし、「損害賠償請求をする権利については阻害されないと政府も認めていることは大事なことだ」と指摘しました。
さらに穀田氏は、「2万5千人と言われている被害者に対する丁寧な説明と対応については今後とも求められる」と主張しました。
穀田氏は、日本障害者協議会が、今回の問題への対処について「乗り越え方を誤れば、障害関連政策や人権に対する基準値が低下したり、変質したりする」と警鐘を鳴らしていることを紹介。「被害者が納得できる人権回復となるのか、根深く残る優生思想と本当に決別することができるのか、これからの取り組みが問われている」と述べ、今後とも努力をすると表明しました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子でございます。
本委員会での質疑の後に、旧優生保護法に基づく優生手術を受けた者に対する一時金の支給に関する法案、委員長提案として議決される見込み、運びとなっております。度重なる議論の後に、現時点で最大限全会派が一致できる内容となっていることから、これを第一歩として我々も賛成したいと思っております。
しかし、これ衆議院での議論でも、与野党問わず、多くの委員から、満点ではない、いろいろな御意見もあると、こういう認識が表明され、当事者及び関係団体からも、三月十四日の法案の公表以来、多くの意見や声明が発表されております。
〔委員長退席、理事島村大君着席〕
その中で、資料として、今日は二つの意見と声明を資料としてお配りをさせていただいております。その一つが、優生手術に対する謝罪を求める会の四月九日の意見でございます。そして二つ目は、四月十日、全国優生保護法被害弁護団の声明を付けております。
この弁護団の声明の中で、今回の法案について、国会が、提訴という形で示された多くの強制不妊手術被害者への被害回復を求める声を受け止め、一九九六年に旧優生保護法が母体保護法に改正されてからもなお二十三年間も放置されてきた被害にようやく向き合ったものと評価できるとしていただいているわけですけれども、さらに、残された課題を指摘した上で、今後の審議又は国会決議等で、強制不妊手術被害者の声を十分に聞く機会を設け、不十分な点を更に見直すこと、これ求められているということなんですね。
さらに、当委員会の質疑に当たりまして、当事者や関係者の参考人による意見陳述について、私、求めましたが、合意が得られなかったというのは極めて残念であります。
四月十日、衆議院厚生労働委員会の採決の後開かれた当事者による記者会見で、被害者・家族の会の共同代表である北三郎さんはこんなふうにおっしゃっているんですね。私たちに向き合ってください、向き合わずに勝手に決めないでください、私たちの納得できる法律を作ってください、体の傷は消えなくても、心の傷は幾らかでも癒えるかもしれません、こう述べられております。
私は、引き続き、当委員会として参考人の声を聞く機会を持つよう重ねて求めたいと思います。お諮りください。
○理事(島村大君) 後刻理事会で協議させていただきます。
○倉林明子君 そこで、当事者や関係団体の意見の第一というのは、国の謝罪が明記されていないということであります。資料の一、優生手術に対する謝罪を求める会の意見にありますとおり、責任を明らかにして国に謝ってほしい、国による反省と内容の明確化、被害者への謝罪が人権回復の第一歩だというものなんです。
我々立法府には、優生思想に基づき憲法違反の旧優生保護法を立法した責任、そして、その後も被害の回復に向き合わなかった立法不作為があるわけです。本法案では不十分だという当事者の声を私は真摯に受け止めなければならないというふうに思っております。
そこで、大臣に聞きたいと思います。法の前文は、謝罪の主体として我々と規定しております。そして、我々とはということで、衆議院厚生労働委員会の委員長は、国会と政府を特に念頭に置くものという説明をされております。
政府として、じゃ、いつ明確な謝罪を行うのか、ずばりお答えください。
○国務大臣(根本匠君) 今委員からお話がありましたように、この法律の趣旨説明の中で、衆議院の趣旨説明の中で、委員長から、「我々は、それぞれの立場において、」とあるのは、旧優生保護法を制定した国会や執行した政府を特に念頭に置くものであると発言がありました。今委員の御紹介のとおりであります。
〔理事島村大君退席、委員長着席〕
旧優生保護法は旧厚生省が執行していたものであって、厚生労働大臣として委員長の御発言は真摯に受け止めたいと思っております。
○倉林明子君 それが今の謝罪に当たる言葉だということでしょうか。
私は、求められているのは明確な国の謝罪だということを深く自覚すべきだと言っているんですよ。つまり、いつ明確な謝罪をされるのかということに対する答弁いただけていないと思うんだけれども、これ、いつするおつもりか、どうですか。
○国務大臣(根本匠君) 国会における成立前の法案について、今委員からお話がありましたが、政府としてコメントすることは差し控えたいと思います、成立前の法案ですから。
いずれにしても、私、繰り返しになりますが、真摯に受け止めたいと思っております。
○倉林明子君 いや、当事者が納得していないんですよ。謝罪されたというふうに受け止められていないんです。だからこそ、いつきちんと明確な謝罪をするのかという質疑をさせていただいたんです。私は、きちんとした謝罪が求められているということを深く自覚してほしいと強く求めておきたいと思います。
次に、一時金です。
資料一、謝罪を求める会のところでも触れられております。現状の金額では優生手術等の人権侵害を小さなことだと評価していることになる、この指摘は私は極めて重いと思います。
そこで、国による人権侵害を認めたハンセン氏病における補償金の根拠、そして支払最高額はどうなっているか、説明ください。
○政府参考人(宇都宮啓君) お答えいたします。
ハンセン病療養所入所者等を対象といたしました補償金の根拠でございますが、平成十三年六月に成立いたしましたハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律でございます。この法律に基づく補償金の額につきましては、平成十三年の熊本地方裁判所判決で示された額を踏まえましてハンセン病療養所に初めて入所した時期及び退所期間に応じて設定されてございまして、その最高額は千四百万円でございます。
○倉林明子君 各地の提訴の状況等も紹介ありましたけれども、原告が求める賠償金の額ということでいいますと、一千万円以上、最高三千万ということです。
交通事故による生殖機能を失った場合の慰謝料でも、最高一千万円という数字も出てきております。私は、法案の一時金ということでいいますと、残念ながら桁違いに低いと、決して被害の重大性に向き合った補償額とは言えないと思うんですね。
そこで、確認したいと思います。原告団は、資料二にあるとおり、被害回復の裁判を継続するというふうにされております。今回の一時金の給付を受けた者が損害賠償請求する権利、これは阻害されないものと考えますが、いかがですか。
○政府参考人(浜谷浩樹君) お答えいたします。
今回の法案に基づく一時金を受給した場合でありましても、訴訟を提起すること自体が特段制限されるものではないと考えております。
○倉林明子君 法が成立しても被害回復に至らないという率直な被害者の声というのを私たちはしっかり受け止めなければならないと思います。さらに、一時金の対象者につきましても、弁護団から、遺族や配偶者が含まれておらず、被害者への通知を定めていないことから、多くの被害者の被害回復が図られるのか疑問があるというふうに指摘があります。当事者からも、対象の範囲の更なる拡大ということが要請されております。
法に基づき厚労大臣が速やかに認定するとしている一時金支給の対象者というのは、現時点でどの程度見込まれているのか、お答えください。
○政府参考人(浜谷浩樹君) お答えいたします。
本法案におきましては、一時金の支給認定につきまして、対象者に該当することが明らかな場合には厚生労働大臣が速やかに支給認定を行うとされております。
法施行後に請求される方のうち、どの程度の方が認定審査会の審査を経ずに認定される見込みかをお答えすることはなかなか難しいわけでございますけれども、与党ワーキングチームと超党派の議員連盟の間でおまとめいただきました審査会の判断等に係る基本的な考え方におきましては、認定審査会の審査を求めることなく認定を行う場合の例が示されております。
この具体例でございますけれども、一つは旧優生保護法施行規則に基づく優生手術実施報告票など、手術を受けたことを直接証する資料がある場合、もう一つは、手術を受けたことを直接証する資料はないけれども、当時、手術実施について、審査の結果、適とされたことが分かる資料があり、かつ、当該請求者が手術を受けたことが分かる資料がある場合、この二つが例示されております。
このうち、手術を受けたことを直接証する資料がある場合につきましては、例えば厚生労働省が実施いたしました都道府県等における優生手術に関する個人記録の保有状況の調査結果におきましては、個人が特定できる実人数五千四百人のうち、手術実施が確認できる人数は三千七十九人となっております。これらの方々から請求があった場合には、認定審査会の審査を経ずに速やかな認定が可能であるというふうに考えております。
○倉林明子君 今の数字お聞きしたとおりで、やっぱり二万五千とも言われている中で、直ちに申請、特定されていて可能だというのが三千七十九人、これが最大数ということに現時点ではなろうかと思うんです。そういう意味でいいますと、極めて低い数字じゃないかというふうにも思うんです。
今回の厚労省の調査というのは、あくまで回答は任意ということで寄せられたものから推計されるということになっているわけです。この任意でやったことによりまして、実態、じゃ、どのぐらいつかめているのかというと、回答そのものもやっぱり半数だったし、個人記録ということでいいますと、出てきたもの〇・三%程度だということになっているんですね。
私は、改めて徹底した洗い出し、もちろん保存年限過ぎているという限界がある数字ではあるけれども、徹底したやっぱり当事者、該当者の洗い出しということについて求められているということを改めて指摘をしておきたいと思います。
そこで質問です。五月二十八日に仙台地裁で初の判決が出る見通しとなっております。当事者そして原告団、いずれも判決見極めての対応を求めておられました。この判決後についてという意見、声明でも述べられていることに対して、大臣の受け止めというのを聞いておきたいと思います。
○国務大臣(根本匠君) 今回の法案については、旧優生保護法が全会一致で成立した議員立法であることや、当事者が御高齢であること等に鑑み、立法府の責任においてできるだけ早期に結論を得るべく、与党ワーキングチームや超党派の議員連盟で議論が行われてきたものと承知をしております。
そういうことでありますので、この法案の内容や提出の時期などについて厚生労働省としてはコメントする立場にはないものと思っております。
○倉林明子君 当事者は納得していないということだと思うんですね。私たち国会、そして政府は、障害者権利条約、私たち抜きに私たちのことを決めないでと、この原点に立ち返って被害当事者に向き合わなければならないと思うんです。
日本障害者協議会は、今回の問題の対処について、乗り越え方を誤れば、障害関連政策や人権に関する基準値が沈下したり変質したりすると、こういう警鐘を鳴らしておられます。被害者が納得できる人権回復となるのか、そして、再三指摘もありました根深く残る優生思想と本当に決別することができるのか。判決後の見直しも含めて、私、これからの取組が本当に問われているんだというふうに自覚しております。
ここまで国会を動かしていただいた被害者の勇気に感謝するとともに、その願いが真に反映される法律となるよう法改正につなげていく、そういう決意も述べまして、質問を終わります。