データは全部撤回を 「働き方」法案で倉林議員追及(2018/5/31 厚生労働委員会)
(資料があります)
日本共産党の倉林明子議員は31日の参院厚生労働委員会で、「働き方改革」一括法案の「出発点」となった労働時間データで「公的統計の品質保証に関するガイドライン」が守られていない問題を追及し、「データは全部撤回し、労政審からやり直せ」と強調しました。
倉林氏は、同データは統計法上の「統計調査」ではないものの、「公的統計」と位置づけられ、国民の合理的な意志決定の基盤として「ガイドライン」が定められていると指摘。「調査は、ガイドラインを守って行ったのか」とただしました。山越敬一労働基準局長は「ガイドラインの順守は、可能な範囲(でいい)とされている」と述べ、守ったとは言えませんでした。
倉林氏は、ガイドラインで統計が誤った解釈をされないよう適切に扱うよう求めているのに、厚労省自ら誤った裁量労働制比較データをねつ造したと追及。厚労省は不適切だと認めましたが、加藤勝信厚労相は「反省しないといけないが、全体の信頼性は別問題だ」などと弁明しました。
倉林氏は、残りのデータも統計として使えるものか、統計を所管する総務省の指導を仰ぐよう求めました。加藤厚労相は「統計法に基づいたものではないので、私どもの責任でやる」などと拒否しました。
倉林氏は「きちんとした調査をやり直せ。データは全部撤回し、労働政策審議会からやり直すべきだ」と強調しました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
二〇一三年度労働時間等総合実態調査、先ほど、どういう経過があったのかという説明だけでも随分時間掛かるほど、捏造、そしてでたらめなデータ、裁量労働制のデータにとどまらず一般の労働時間のこのデータについても削除せざるを得なくなったと。さらに、強行採決という衆議院での当日に、これダブルカウントの誤りが発覚と。事態はこれだけでも本当に深刻なんだけれども、昨日の時点でクロス集計での間違いも発覚、記載ミスも発覚したということで、さらにですよ、昨日の衆議院の厚生労働委員会、補充的な質疑の中でも新たな間違いの疑いがこれ指摘されているという事態になっているんですね。もはや、もはやですよ、これ統計としての信頼性というのは完全に失墜していると言わざるを得ないと思うんです。
ところが、大臣は、こうした経過をたどったデータなんだけれども、統計として御議論いただくに堪え得るものという御発言を繰り返されているわけです。しかし、大きな傾向に違いはないということなんだけれども、肝腎なところでの違いはあるということもこのデータの変更で出てきた。これ、事実だと思うんです。
これは、年間千時間超えの三六協定、年間千時間ということは、月八十三時間。こういう労働者のところで見ると、千時間超える残業があったというのが三・九%だった、修正前、それが四八・五%に跳ね上がっている。これ、労政審でも議論があったところですよ。さらに、研究開発業務、この大臣告示を超えた事業所はどれだけかというと、修正前三割、それが修正後五割。ここでも看過できない大きな変更があるということは、私は改めて指摘をしておきたいと思うんですね。
で、本当にこのデータが大臣が言うように統計として堪え得るのかどうかということを検証する必要があるというふうに思っております。
総務省にまず確認をしたいと思います。この労働時間等総合実態調査というのは統計法上の統計調査ではないと、これお聞きしています。しかし、位置付けは業務統計になると。この業務統計は公的統計、こういう理解でいいかどうか、確認させてください。
○政府参考人(横山均君) お答えします。
統計法におきましては、公的統計は、行政機関、地方公共団体又は独立行政法人等が作成する統計をいうと定義されております。委員御指摘の業務統計が行政機関が作成する統計であるならば、公的統計に含まれるものであります。
○倉林明子君 つまり、行政機関がやっている公的統計という位置付けになるものですね。
この公的統計というのは、国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報と定義付けられていると。適切かつ合理的な方法により、かつ、中立性及び信頼性が確保されるよう作成されなければならないと、こういうふうにされておる。よって、公的統計には、公的統計の品質保証に関するガイドラインが定められている。
このガイドラインの目的というのは何か、総務省。
○政府参考人(横山均君) お答えします。
委員御指摘の公的統計の品質保証に関するガイドラインは、行政機関が利用者のニーズに対応しまして公的統計を作成、提供し、その品質を表示、評価、改善することを通じて、公的統計の有用性と信頼性を確保し向上することを目指す品質保証の活動を推進することを目的としたものでございます。
○倉林明子君 そうなんですね。公的統計だから勝手にやったらいいということではなくて、統計法上も、このガイドラインという、統計法上も大事なので、ガイドラインに沿って公的統計の有用性、信頼性、これ確保、向上させるために、これ守る努力が求められている、こういうものだと思うわけです。
そこで、厚労省に確認したいと思います。この二〇一三年度の労働時間等総合実態調査、この公的統計の品質保証に関するガイドライン、これ守って行われたものなのかどうか、確認させてください。
○政府参考人(山越敬一君) 公的統計の品質保証に関するガイドライン、これは、適用する公的統計の範囲が統計法に基づく基幹統計及び一般統計とされておりまして、この二つに該当しない公的統計につきましては、本ガイドラインに準じて可能な範囲で取り組むということとされております。
この平成二十五年度の労働時間等総合実態調査は、統計法に基づく基幹統計又は一般統計には該当しない業務統計でございまして、そのようなことを踏まえまして、この実態調査に関しましては、政策決定に不可欠な情報としての統計を作成するとか、標本設計に当たって、業種、規模別に一定の精度を確保するとか、調査から半年ほどで公表する、そういったこと、可能な範囲のことに取り組んで実施したものと認識をしております。
○倉林明子君 いや、公的統計やからこのガイドライン守ったんかと聞いたのに、何にも答えへんっておかしいと思うよね。
この公的統計のガイドラインを守ったのかどうかということを聞いているんですよ。さっき確認したように、総務省はこれは公的統計だとはっきり言ったんですよ。業務統計は公的統計ということで今御説明いただいたと思う。
資料一を付けています。これが公的統計の品質保証に関するガイドラインということで、主要要素、そして補足的要素が定められております。統計の品質の要素というのは、主要要素が四つあるんだけれども、その二枚目に付けたのは、要素ごとに観点と評価事項が記載されているものになっております。
品質評価の要素に沿って検証したいと思うんですけれども、主要要素の正確性、ここで出てくる観点というのは、統計で明らかにしようとしている実態についての真の値にできる限り近い集計値となっていることというふうにしていますよね、観点。厚労省が行った労働時間等総合実態調査、これ、明らかにしようとしたのは何なんですか。
○政府参考人(山越敬一君) この平成二十五年度の労働時間等総合実態調査でございますけれども、これは二十二年四月施行の労働基準法の改正におきまして、中小企業におけます月六十時間を超える時間外労働の割増し賃金率について、施行後三年を経過した時点で、施行の状況でございますとか、時間外労働の動向を勘案し、検討を加えることとされておりました。このことを踏まえまして、今後の、その二十五年の後の労働時間法制等の検討の際に必要になるということで、時間外・休日労働の実態でございますとか、割増し賃金の状況等を把握する目的で行われたものでございます。
○倉林明子君 先ほど紹介したように、この正確性という観点で見ると、出てきたデータというのは本当にでたらめばっかりやったというのが現状だと思うんですね。
これは、目的は時間外労働、裁量労働制の実態を把握するということでやられたということになるんだけれども、これ、明らかにしようとしたことを、真の値にできる限り近づくと、こういう点でどうなのかと。今回の調査手法そのものについては問題はなかったというふうに言えますか。
○政府参考人(山越敬一君) この調査でございますけれども、全国の労働基準監督署におきまして、監督官が臨検監督の一環として事業場を訪問して、事業場からの聞き取り、それから書類の確認などをしながら実態を調査しているものでございます。
この手法でございますけれども、今申しましたような手法で行ったわけでございますけれども、調査におきまして、調査担当課でデータを集計する際にエラーチェックを適切に行う人員体制が必ずしも十分でなかったとか、調査票設計、それからエラーチェック、公表資料の作成等のそうした工程におきまして、調査担当部局とそれから統計作成部局の連携が必ずしも十分でなかったということがあったかというふうには認識をしております。
○倉林明子君 まあ、いろんな問題があったという現時点での分析の説明だと思うんだけれど、私は、これは、調査に入っているのは、監督的調査ということになるので監督官入っていますよね。大体、違反があれば監督指導する、是正勧告も行うと、こういう人が調査を一緒にやっているんですよね。
どういうことが考えられるかというと、事業主はその指導をやっぱり回避するという動機が働くのは、これ当然だと思うんですよ。違反行為がある場合、正直に事実としての労働時間を報告するだろうかと。ここは、私、極めて疑問だと思うんですよ。つまり、真の労働時間、実態をつかむと、この調査手法としてもそもそも疑義が生じるということを指摘をしたい。
更に問題あると思っているのは、この公的統計のガイドラインの主要要素で、解釈可能性・明確性では観点どういうところ挙げているかというと、統計が誤った解釈の下に利用されることがないよう、集計値について適切な説明が行われていることと、こういうふうにあるんですね。誤った解釈の下に利用されることがないよう配慮すべきは厚労省なんですよ。ところが、自ら誤った解釈を持ち込んだというのがこの件ではあったんじゃないですか、どうですか。
○政府参考人(山越敬一君) 御指摘の事項でございますけれども、これは公的統計のガイドラインにおきまして、その主要要素として解釈可能性・明確性に関しまして、統計の作成過程でございますとか統計情報の利用上の注意、そうした情報が明らかにされていること、統計が誤った解釈の下に利用されることのないよう適切な説明が行われていることといった観点から評価をするということとされているわけでございます。
そういう中で、平成二十五年度の労働時間等総合実態調査につきましては、一般労働者の平均的な者の労働時間について、一日及び一週の法定時間外労働の最長時間数を記入することになっていたわけでございますけれども、この点が明らかになるような利用上の注意、そういった情報の明示を行っていなかったところでございます。
結果といたしまして、これらの異なる数値を比較すると、そういった不適切な行為につながったということでございまして、御指摘のガイドラインの観点からは適切なものとは言えないものだというふうに考えております。
○倉林明子君 そのとおりだと思うんですよね。厚労省自身が公的統計を扱う資格が問われる、これ重大な誤りをやったということだと思うんです。このまま残ったデータを公的統計として使っていいのかどうか、大臣、どうですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 今御指摘の点は本当に謙虚に反省をしなければなりませんし、逆にそれがなかったということもあって、私どもが間違った使い方をし、そして間違った使い方をしたことすらなかなか分からなかったと、そのことは謙虚に反省をさせていただかなければならないというふうに思います。
確かにそういう落ち度というのはもちろん御指摘、これはしっかり受け止めなきゃいけないというふうに思いますけれども、しかし、その部分があったということによって全部が、先ほどから申し上げているように、その統計的な信頼性がないかというと、それはまた別の問題なんだろうというふうに思います。
○倉林明子君 そこまで認めて結論がそうなるというのが全く理解できないんですよね。
これ、五月二十四日に、参議院の総務委員会で山下芳生議員がこの問題、質問しているんですね。この統計法を所管する野田大臣が答弁しております。今般の国の作成する統計において不適切な取扱いが見られたことについては、統計制度を所管する総務省として極めて残念、これに尽きますと嘆いているんですよ。そして、やり取りの最後に、厚生労働省が統計法に基づく統計調査として再調査を行った場合には、総務省としても専門技術的な観点からしっかり審査するとともに、厚労省の求めに応じて相談に乗るよう職員に指示したいと。
これはこれからのことだけじゃないと思うんですね、言っている中身に含まれているのは。今回のデータのところでもこれを問われていると思うんですよ。残るデータを統計として使うと言うんでしょう。じゃ、使えるのかどうか、ここを統計を所管する総務省にまず相談すべきだ。どうです。
○国務大臣(加藤勝信君) これ、今、統計法に基づくというふうに大臣がおっしゃっておられたわけでありまして、これ元々、先ほど委員の御指摘があったように、そもそも統計法に基づいた統計ではないということでありますので、たしかここでのやり取りの中でも、総務省の方から、いや、元々相談も受けていなかったので、今の段階でそれについてコメントするのは難しいと、たしかそういうような答弁もあったように記憶をしております。
○倉林明子君 そんなすり替えたらあかんと思うんですよ。
正面から、やっぱりこれだけの誤りがあって、これだけ信頼が持たれない、つまり公的統計としては品質保証ができないという代物になっているんですよ。ところが、それでも使うと言うんでしょう。それだったら、統計法を所管する総務省にこの統計データは使ってもいいものかどうかというのを客観的に見てもらうべきだと思う。そのぐらいやらないで、どうやって信頼性が回復できるのかと思うんですよ。
総務省に、まずこのデータは使えるものかどうか、評価を仰いだらどうでしょう。
○国務大臣(加藤勝信君) ですから、元々統計法に基づいていないわけでありますから、したがって、(発言する者あり)いやいや、したがって、だから、したがって、統計法に基づいていればこれは総務省に御相談をする、しかし、統計法に基づいていない以上、それは私どもの責任でやっていかなきゃいけないと、こういうことだと思います。
○倉林明子君 だから、統計法上に位置付けられていないデータでも公的統計として行う場合に、これ守るようにしてねというガイドライン示されているということ、最初紹介したとおりなんですよ。これがことごとくこの品質保証の観点からいえば逸脱しているんですよ。それを使うと言うから問題だと言っているんですよ。
統計法上の位置付けがないデータだったら、厚生労働省がこれだけの間違いがあったデータでも使ってもいいと、逆に論拠示してほしいと思う。
○国務大臣(加藤勝信君) まず一つは、委員のおっしゃっているこの公的統計の品質保証に関するガイドラインそのものは、ここで言われている基幹統計と一般統計に適用するということで、それ以外については、(発言する者あり)いや、だから、準じるということでありますから、それにのっとって我々が対応すると、対応していくということであります。あくまでも我々の責任においてそれを実施し、そして我々の責任において、それがどれだけ信頼に堪え得るか、このことをしっかり説明をしていかなければならないと、こう思います。
○倉林明子君 ここまで統計データとしての信頼性が失墜しているということを本当に本気で受け止めているとは到底思えないですよ。いまだに間違いがぼろぼろぼろぼろ出てくるわけでしょう。まだあるかもしれぬ言うて、委員から、議員から指摘されて、その間違いを修正していくと、繰り返してきているわけですよ。昨日の段階でも幾つかの指摘があった、それについてはまだ確認ができていないということだから、まだ起こるかもしれないというやつなんですよ。
要は、でたらめなデータを前提にした法案審議なんというのはあり得ないと思う。このデータが信頼に足るかどうか、品質保証の観点から、せめて総務省にチェックしてもらって、立証責任を果たすべきだと言っているんですよ。どうです。
○国務大臣(加藤勝信君) いや、ですから、総務省に、当初からこの統計法に基づく統計であれば、その観点から見ていただかなきゃなりませんけれども、そういうわけではないので、それは我々が公的統計として、今委員御指摘のある点、したがって、これが信頼に足るかどうか、それについてはしっかり説明をさせていただきたいと、こう思います。
○倉林明子君 調査としては、制度設計の段階から私は間違っているというふうに言いたいし、その取扱いについても信じられないようなミスが続発している。これ、統計を取るということについてもう一回きちっと総務省の指導を厚労省は受け直すべきだと思っているぐらいなんですよ。改めてきちんと制度設計したものとして調査やり直す、そのことからしか始まらないと思う。
今回のデータについては全部撤回、その上で労政審からやり直す、このことを強く求めまして、終わります。