倉林明子

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社会保障解体される 介護保険法等改悪 廃案迫る 参院審議入り(本会議)

(議事録は後日更新いたします)

 介護保険サービスの自己負担引き上げなどを盛り込んだ介護保険法等改悪案が17日、参院本会議で審議入りしました。日本共産党の倉林明子議員は「社会保障の解体につながるもので、廃案しかない」と迫りました。

 倉林氏は2015年に1割から2割に引き上げたばかりの負担割合を3割に引き上げれば、要介護3で平均的な居宅サービスを受ける人の利用料は月2・9万円、年間約34万円もの負担増になるとし「家計への打撃となり、必要なサービスの抑制につながるのは明らかだ」と批判しました。

 「医療費適正化計画」などの名で医療や介護の給付を“適正化”した自治体への財政的インセンティブ(優遇)の導入は、「給付費抑制の責任を負わせるもので、自治体に際限のない社会保障費の引き下げ競争をさせることになる」と強調。

 設置基準などに大きな違いがある介護や障害者支援、児童福祉のサービスを「共生型サービス」として単一事業所で提供できるようにすれば、人員や施設の基準が低い方に合わせられることになりかねないと訴えました。

 塩崎恭久厚生労働相は少子高齢化を口実に「負担増加は避けられない」と改悪を正当化しました。


議事録を読む(未定稿)
(この会議録は未定稿です)

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 ただいま議題となりました地域包括ケアシステム強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案について、日本共産党を代表して、以下、厚生労働大臣に質問します。
 安倍政権の五年間、医療、介護は負担増の連続でした。介護サービスの利用料に三割負担を導入するとした本法案に、これ以上の負担増はもう限界だと、不安と憤りの声が広がっています。
 医療では、七十から七十三歳の窓口負担の二割への引上げ、入院時の食費、水光熱費の負担増、高額療養費の負担上限引上げなどが実行に移され、介護でも、二割負担の導入、施設の食費、居住費に対する補足給付の対象の絞り込み、高額介護サービス費の負担上限引上げなど、負担増が波状攻撃のように強行されてきました。
 加えて、二〇一三年度から二〇一七年度の五年間、物価指標が三・八%上昇する中で、年金はマイナス〇・九%の引下げでした。その差マイナス四・七%、まさに大幅な目減りです。医療、介護の負担増に加えて、年金削減によるダブルパンチが高齢者世帯を直撃しております。
 衆議院での質疑で、社会保障の負担は制度の持続可能性を高める観点から不断の見直しが必要と総理が答弁されています。今後も負担増を続けていくということでしょうか。明確にお答えください。
 介護の利用料は、二〇一五年に所得百六十万円以上の負担が一割から二割に引き上げられたばかりです。三割負担の導入は二〇一八年とされており、僅か三年間で負担を三倍化するやり方には、社会保障審議会の介護保険部会でも異論が噴出しました。
 政府は、負担増の対象は現役並み所得者に限られるので影響は少ないとしていますが、例えば、要介護三で平均的な居宅サービスを受ける人の利用料は、一割から三割への引上げで、月二・九万円、年間三十四万円も引き上がるのです。家計への打撃となり、必要なサービスの抑制につながることは明らかではありませんか。
 介護離職はこの十年間で百五万人を超え、介護自殺、介護心中などの悲惨な事件が後を絶たず、介護基盤の再建、拡充は国民的な課題と言っても過言ではありません。
 ところが、安倍政権は、二〇一四年、特養ホームの入所を原則要介護三以上に限定する法改定を行いました。二〇一四年時点で特養待機者五十二万人が、一六年四月時点で二十九万人に減ったとしていますが、その要因の一つがこの制度改正にあることは明瞭です。待機者の列から外された人たちについて、政府は追跡調査や受皿の確保を行ったのか、入所抑制や介護度が下がったことによる退所など影響は出ていないのか把握しているのでしょうか。
 本法案に盛り込まれた財政的インセンティブ改革は、自治体の要介護認定率などの違いを見える化し、給付適正化の努力をした自治体に優先的に予算を配分するというものです。この財政措置は新たな交付金によって行うのか、それとも調整交付金を使うのでしょうか。
 追加財源なしに調整交付金をインセンティブに使えば、給付適正化の努力が評価される自治体は予算が増えるものの、努力が足りないとされる自治体は予算が減らされ、事実上のペナルティーとなるだけです。
 こうしたやり方は、結局、サービス利用の抑制競争を招くことにつながります。介護保険部会では、要介護認定を抑制する水際作戦になりかねないという声が出され、日本社会福祉士会などの専門家団体からも、要介護状態を悪とする偏見を助長するとともに、適正なサービス利用を阻害し、安心して介護サービスを利用できなくなるおそれがあるという声明が出されています。これらの懸念に政府はどう答えるのか、答弁を求めます。
 政府は、インセンティブ導入には公平な指標を設定し、適正なサービス利用を阻害しないようにするとしています。しかし、現実は、既に各地で自治体が要介護認定に独自の基準を持ち込み、要介護度が低く出るよう仕向ける事例や、要介護認定を更新しないよう自治体が利用者を説得し、強引に介護サービスを打ち切る事例などが起こっています。
 認定率の低下や給付費の抑制をペナルティー措置まで付けて競わせれば、こうしたローカルルールによる認定抑制やサービス切捨てが更に加速することは火を見るより明らかです。大臣の認識をお聞かせください。
 介護保険でインセンティブの導入を予定している二〇一八年度には、国保では都道府県単位化が始まり、保険者努力支援制度という新たなインセンティブが始まります。地域医療構想による病床削減、改定された医療適正化計画による給付費抑制なども二〇一八年度一斉に開始されることとなります。
 医療でも介護でも、自治体に給付費抑制の責任を負わせてインセンティブを導入すれば、自治体に際限のない社会保障費の引下げ競争をさせることになるのではありませんか。
 本法案が導入する共生型サービスは、介護保険法、障害者総合支援法、児童福祉法など、異なる法律体系に基づくサービスを特例的に一事業所で提供できるようにするとしています。それぞれの施設基準に大きな違いがあるものを単一の事業所で提供するとなれば、人員や施設の基準は低い方、安上がりの方に合わせられ、サービスの質の確保ができなくなるのではないかという心配の声が現場から上がっています。
 共生型サービスの人員・施設基準やサービスの質の確保についてどう考えるのか、説明を求めます。
 今回の法改正で、介護保険と障害福祉の事業所、資格、相談機関等を統合し、両者の垣根をなくすことで、介護保険と障害福祉の統合への突破口となるのではないかと多くの関係団体から懸念の声が上がっています。
 政府が自立支援法違憲訴訟団との基本合意を守る立場に立つのなら、対象や目的の違うサービスを強引に統合するのではなく、現行の介護保険優先原則を見直し、障害当事者の年齢にかかわらず必要なサービスを保障する法体系の構築に足を踏み出すべきです。答弁を求めます。
 政府は、我が事・丸ごとに地域福祉を転換するとしています。介護、育児のダブルケア問題、精神疾患患者、がん患者、難病患者の在宅生活の問題などを引き合いに出し、従来の縦割り型施策の転換が必要だとしています。
 しかし、ダブルケアの問題は、介護施設と認可保育所を増設すること抜きに解消はできません。がん患者や難病患者の生活困難も、医療や介護など公的保障の充実によってこそ解決できる問題です。医療、介護、保育の公的給付の拡充強化を抜きに地域の助け合いを呼びかけても、住民生活の困難の根本的な解決にはつながらないのではありませんか。
 安倍政権は社会保障費の自然増抑制を強行し続け、高齢者の負担はもはや限界を超えています。社会保障の解体につながる本法案は廃案にするしかありません。そのために全力を挙げて奮闘することを申し上げまして、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣塩崎恭久君登壇、拍手〕

○国務大臣(塩崎恭久君) 倉林明子議員にお答えを申し上げます。
 社会保障の負担の見直しについてのお尋ねがございました。
 急速な少子高齢化が進行する中で、社会保障の給付とそれを支える負担の増加は避けられません。制度を持続可能なものとするためには、給付と負担についての不断の見直しが必要であります。所得の低い方々などにはきめ細かく配慮をし、十分な説明を行いつつ、国民の皆様の御理解を得ながら取り組んでまいります。
 三割負担の導入についてのお尋ねがございました。
 今回の法案では、介護保険制度の持続可能性を高めるため、世代内、世代間の負担の公平や負担能力に応じた負担を求める観点から、現役並みの所得を有する方の負担割合を二割から三割に引き上げることとしております。
 今回の三割負担の導入については、対象は二割負担者よりも一層範囲を限定した特に所得の高い層であり、負担の上限額として月額四万四千四百円を据え置くといった配慮を行っております。御指摘は当たらないと考えております。
 特養の待機者についてのお尋ねがございました。
 特別養護老人ホームについて、平成二十七年四月から新規入所者を原則要介護三以上に重点化しましたが、それ以前から入所されている方は要介護度にかかわらず引き続き入所することが可能であり、また、要介護一又は二であっても、一定の場合に特例的に入所が認められております。
 厚生労働省においては、在宅・施設サービスの整備を進めるとともに、入所申込みの手続の明確化を図っており、こうした取組を通じ、要介護一や二の方も含めて、必要な方に必要なサービスを提供できるよう取り組んでまいります。
 介護保険の財政的インセンティブについてのお尋ねがありました。
 本法案においては、市町村や都道府県に対し、自立支援や重度化防止の取組等を支援するため、予算の範囲内において新たな交付金を交付する旨の規定が新設をされています。
 財政的インセンティブについては、審議会において、追加財源を確保した上で実施すべきとの意見や、ディスインセンティブも組み合わせた上で財政中立で実施すべきとの意見もありました。また、自治体関係者からは追加の財源により実施すべきとの強い意見もあり、こうした意見も踏まえつつ、今後詳細を検討してまいります。
 財政的インセンティブが及ぶ影響についてのお尋ねがございました。
 市町村等に対する財政的インセンティブの付与については、取組の達成状況を評価できるよう、客観的な指標を設定することとしております。指標の設定に当たっては、適正なサービス利用の阻害につながらないことが大前提であり、アウトカム指標とプロセス指標を組み合わせること、アウトカム指標としては要介護認定率の高低を直接用いないことなど、公平な指標について関係者の御意見も伺いつつ検討してまいります。
 医療や介護におけるインセンティブの導入等についてのお尋ねがございました。
 国保の保険者努力支援制度や介護保険の財政的インセンティブは、自治体の予防、健康づくりや高齢者の自立支援、重度化防止に向けた取組を推進することを目的としております。こうした仕組みは医療や介護が必要な方に必要なサービスを適切に提供することを前提としており、これに反して社会保障費の引下げ競争をさせるものではありません。
 共生型サービスの基準や質の確保についてのお尋ねがございました。
 本法案では、高齢者と障害児者が同一の事業所でサービスを受けやすくするため、介護保険と障害福祉両方の制度に新たに共生型サービスを位置付けることとしております。共生型サービスの具体的な基準や報酬については、その質を確保することに十分留意をして設定される必要があり、関係する審議会などにおいて検討をしてまいります。
 介護保険優先原則等についてのお尋ねがございました。
 今回の共生型サービスの創設は、障害福祉サービスを介護保険制度に統合しようとするものではございません。また、現在の社会保障制度は保険優先の考え方が原則となっております。障害福祉制度と介護保険制度の関係につきましては審議会においても様々な御議論がありましたが、我が国の社会保障の基本からは、介護保険優先原則には一定の合理性があるとされており、これを見直すことは考えてございません。
 ダブルケアの問題など、住民生活の困難の解決についてのお尋ねがございました。
 御指摘のダブルケアの問題への対応や様々な疾病を患っていらっしゃる方の生活支援のために必要な公的サービスを拡充していくことは基本であると考えております。加えて、地域の助け合いや土台となる地域力を強化し、公的な体制による支援と相まって、個人や世帯が抱える生活課題を解決していくことが重要であると考えております。(拍手)