再生エネ抑制するな 全量受け入れ求める FIT法改定案(本会議)
日本共産党の倉林明子議員は18日の参院本会議で、再生可能エネルギー特措法(FIT法)改定案について、原発最優先・化石燃料偏重から、原発ゼロへの決断と一体に再生エネの飛躍的普及を図るエネルギー政策への転換を求めました。倉林氏は、現行法で電力会社に再生エネ発電との接続義務があるにもかかわらず、経済産業省が事実上、無制限・無補償で接続拒否できるようにし、さらに改定案で接続義務規定を削除するのは「再生エネの導入抑制をもたらす」と批判しました。
倉林氏は、各電力会社が示した接続可能量は、東日本大震災前の30年間平均の原発設備利用率(69.8~84.8%)で稼働することを前提にしており、その分、再エネの受け入れを抑制していると追及。動いていない原発のための“空押さえ”をやめ、再エネの全量受け入れへ系統の増強を求めたのに対し、林幹雄経産相は「特定の電源を優先していない」と強弁しました。
倉林氏は、再エネの飛躍的普及こそが地域経済の振興、雇用創出につながり、「真に持続可能な未来を切り開く」と強調しました。
電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法等の一部を改正する法律案
○議長(山崎正昭君) 倉林明子君。
〔倉林明子君登壇、拍手〕
○倉林明子君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法等の一部を改正する法律案について、以下、経済産業大臣に質問します。
二〇一二年七月にスタートした再生可能エネルギー固定価格買取り制度、いわゆるFIT制度は、電力会社に再エネ電気の全量を固定価格で買い取ることを義務付けるもので、再エネ導入促進策として一定の効果を上げてきました。
今回の法改正の契機となったのが、二〇一四年四月に改定されたエネルギー基本計画です。この中で、再エネは重要な低炭素の国産エネルギー源と位置付けられ、二〇一三年から三年程度、導入を最大限加速していき、その後も積極的に推進していくとされました。FIT制度で導入が一・二五倍化したとはいえ、我が国の再エネ比率は水力を除くと僅か三・二%にすぎず、OECD諸国の中で最低ランクです。スペイン二六%、ドイツ二三%など、再エネ普及が進む欧州各国と比較すると、その遅れは歴然としています。この現状を踏まえれば、再エネ導入のスピードは更に加速させるべきだと考えますが、大臣の見解をお聞きします。
再エネの導入を最大限加速していくとうたった僅か五か月後、二〇一四年九月に、九州電力が突然系統容量の不足を口実に再エネ事業者との新たな系統接続の保留を発表し、これに北海道、東北、四国、沖縄電力が続き、混乱は全国に広がりました。
そもそも再エネ電気を全量かつ固定価格で買い取るのがFIT制度の大原則です。現行法第五条で送電網を維持運営する電力会社に対し再エネ電源の接続が義務付けられている下で、電力会社の一方的な接続保留など認められるものではありません。
ところが、経産省は、各電力会社が算定した再エネの接続可能量を超える場合、これまで三十日以内に限っていた出力抑制の範囲を事実上無制限、無補償にするという省令改正を行いました。創設された指定電気事業者制度は十電力のうち七電力が指定を受けるというもので、法の原則を骨抜きにするものだと批判の声が上がったのは当然です。この省令改正が再エネ導入の大きなブレーキになったことは明らかではありませんか。大臣の認識をお聞きします。
接続可能量の算定方法も問題です。指定を受けた電力会社のうち原発を保有する六電力では、東日本大震災前、過去三十年平均の設備利用率で原発の稼働を見込み、その分再エネの受入れ量を抑制しています。稼働を前提としている原発は何基で、算定上の平均稼働率は何%か、見込んでいる発電電力量はどれだけか、あわせて、各社の東日本大震災後五年間の原発稼働率はどうか、明確にお答えください。
東京電力福島第一原発事故は、原発に対する国民の意識を一変させました。原発事故などなかったかのように、震災前の平均稼働率を用いて原発の発電量を算定するなど、とんでもありません。動いていない原発の稼働分を空押さえする仕組みを改め、地域間連系線を活用した全国的な電力融通を行えば、すぐにでも再エネの買取り量を増やせるのではありませんか。
再エネの導入を促進するために、それまでのRPS制度からFIT制度に転換して四年、今述べたように、再エネ最優先の接続義務はいまだ果たされておりません。この現状を放置したまま接続義務を定めた五条を削除することは、再エネ導入の促進どころか、抑制をもたらすものです。電気事業法のアクセス義務で代替できるものではなく、削除すべきではありません。大臣の答弁を求めます。
接続義務とともに重要なのが接続拡張義務です。現行法制定時の審議の際、北海道電力が買取り量に上限を設けていた風力発電の接続量をどう拡大するのか、電力会社に接続義務をどう果たさせるかが重要な論点となりました。その当時の資源エネルギー庁長官は、法律の趣旨に鑑みると、当然系統の可能量を増やさなければいけないし、それは可能だと答弁しています。その後、再エネ電気を全量受け入れるために必要な系統の増強、拡張は図られたとお考えでしょうか。
本法案では、系統の増強対策は不十分なまま、事業者の認定を系統に接続契約した後に行うとしています。これまでも、再エネ事業者にとって、系統に接続するための工事費と工事期間が見通せないことが参入の障害となってきました。
日本の送配電設備は十電力が独占し、その接続に当たっては既に接続している発電所の利用が優先されています。新規参入者に求められる系統増強の工事費は、九州電力管内で最大で一キロワット当たり二十三・九万円、系統対策の工期も最大で百三十二か月と長期化している事例も確認されています。改正により更に電力会社の優位性が高まり、小規模で資金力の乏しい事業者ほど認定が受けにくくなることは明らかです。
一方、欧州では再エネの優先接続、優先給電がルールとされています。ドイツでは、さらに送電系統の運用者に対し系統増強義務を課しています。我が国のように系統の容量不足を理由にした接続拒否はできません。
大臣、FIT制度があるけれども使えない、この現状を打開するために系統増強を義務付けるべきではありませんか。再エネよりも原発を重要なベースロード電源として優先する運用ルールの見直しを強く求めるものです。
また、新たに導入する入札制度は、一定量の導入を低価格の落札者から順番に調達するもので、全量固定価格の買取りを原則とするFIT制度の本質を変質させかねません。しかも、入札の対象となる発電設備の規模は条文上明らかにされていません。無限定な入札制度の導入は、地域密着型、中小規模の再エネ事業者の参入を阻害する危険があるのではありませんか。大臣の答弁を求めます。
昨年十二月のCOP21ではパリ協定が採択され、平均気温上昇を産業革命前から二度未満に抑え、さらに一・五度未満に抑制するために努力すること、また、今世紀後半に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする長期目標に向けて対策を強化することを世界のほぼ全ての国が約束しました。世界第五位の排出大国である日本は、脱炭素化のための長期的な道筋を描き、実践していかなければなりません。そのためには、再エネの一層の飛躍的な拡大が不可欠です。
政府は、二〇三〇年までに温室効果ガスを二六%、九〇年比では一八%削減すること、二〇五〇年には八〇%削減するとの目標を掲げています。長期目標の実現を展望した場合、いかに早く再エネ中心のエネルギー政策に転換できるかが鍵を握ります。
日本共産党は、二〇三〇年の再エネ比率四〇%を目指すことを提案しています。原発最優先、化石燃料に偏重する時代錯誤のエネルギー政策を直ちに転換し、原発ゼロの決断と一体に再エネの飛躍的な普及を図る。この道こそ、地域経済の振興、雇用創出、エネルギー自給率向上につながるものであり、真に持続可能な未来を切り開くものであると主張して、質問といたします。(拍手)
〔国務大臣林幹雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(林幹雄君) 倉林議員から八つの質問がありました。
まず、再生可能エネルギーの導入加速化についてお尋ねがありました。
再生可能エネルギーの最大限の導入拡大を図ることは政府の基本方針です。ただし、その導入水準については、我が国の実情に合わせた検討が必要であり、一概に数値だけで諸外国と比較することは適当ではありません。
我が国のエネルギーミックスで示した二〇三〇年度時点で再生可能エネルギーを二二%から二四%導入するという水準は、導入拡大の余地が大きくない水力の八%を除けば、足下の四%から四倍も導入拡大するという極めて野心的なものです。この水準の実現に向け、FIT制度の適切な見直しとともに、研究開発や規制改革などの施策を総動員し、しっかりと取り組んでまいります。
指定電気事業者制度が再エネ導入のブレーキになったのではないかとのお尋ねがありました。
停電を起こさないためには、発電量が需要量を上回る場合に出力制御が必要です。我が国では従来から再生可能エネルギーについて出力制御を年間三十日以内とするとのルールを設けてきました。
一方で、再生可能エネルギーの導入が進み、このルールでは受入れが困難になった地域に対し、指定電気事業者制度を設けました。これは、三十日を超えた出力制御を受け入れていただくことと引換えに再生可能エネルギーの更なる導入を可能とすることとしたものです。この制度は、再生可能エネルギーの最大限の導入を図るためのものでありまして、これを抑制するものではありません。
接続可能量、すなわち三十日等出力制御枠の算定と原発との関係についてお尋ねがありました。
三十日等出力制御枠は、御指摘の六つのエリアで各社から提示された二十五基の原発に関し、震災前の過去三十年の平均稼働率を用いて算出しています。これらのエリアの平均稼働率は六九・八%から八四・八%の間です。また、発電電力量は年間千百七十四億キロワットアワーとなります。さらに、六つのエリアの震災後五年間の平均稼働率は、北海道エリアは一二・六%、東北エリア及び北陸エリアは〇%、中国エリアは一〇・五%、四国エリアは七・五%、九州エリアは一〇・四%です。
動いていない原発の稼働分を見込む仕組みを改め、連系線を活用した電力の融通を行えば買取り量が増やせるのではないかとのお尋ねがありました。
FIT制度は長期間にわたり電気の買取りを保証する仕組みであることから、各電力会社は原子力を含めた各電源の長期的な稼働の傾向として、震災前三十年間の稼働率の平均値を用いて、接続可能量、すなわち三十日等出力制御枠を算定しています。なお、その算定に当たっては、連系線を利用した電力融通を行うことも勘案して算定しています。
FIT法第五条の削除についてお尋ねがありました。
今回の法改正による新たな認定制度の創設に伴い、電力系統への接続協議が認定前に行われることに変更されます。このため、認定後の接続協議について定めた同条の規定は法技術的に不要となり、削除することとしたものです。
他方、同条で定めている接続義務については、電気事業法第十七条において同様の内容を定めています。このため、再生可能エネルギーの系統接続については現状と何ら変わらない仕組みが確保されています。
再生可能エネルギーの受入れに向けた系統の増強、拡張についてお尋ねがありました。
例えば、地域内の送電網の整備については、複数の事業者が工事費を共同負担して系統の増強を行うためのルールを昨年四月に電力広域的運営推進機関において整備したところです。現在、九つのエリアにおいて入札の準備が進められています。また、広域機関では広域系統長期方針を策定中であり、今後この方針に基づき増強を進めることとしています。こうした取組を通じて系統の強化が着実に進捗するよう取り組んでまいります。
電力会社への系統の増強の義務付けと系統接続のルールについてお尋ねがありました。
仮に、系統の増強を義務付けた場合、増強工事費用の高い場所に発電設備が設置され、結果として社会全体としてのコストが増大し、その費用を国民で負担することになる可能性があることから、適切ではないと考えます。
系統接続のルールに関しては、再エネや火力、原子力等の電源の種別によらず、先着優先で系統の容量を確保できることになっており、特定の電源を優遇し、再エネ導入を抑制しようとするものではありません。
入札制度についてお尋ねがありました。
今般導入する入札制度は、再生可能エネルギーの早期の自立化に向けて、買取り価格の設定を競争を通じて低減させることを促すための制度です。
具体的な運用については、地域密着型、中小規模の多様な事業者が参入できなくなるという懸念も踏まえ、大規模な太陽光発電を入札制度の対象とすることを想定しています。さらに、多様な発電事業者が入札に参加できるよう、入札制度に関する情報を分かりやすく発信するなど、きめ細かく対応してまいります。(拍手)
○議長(山崎正昭君) これにて質疑は終了いたしました。