生活保護運用改善を 倉林氏 コロナで困窮者急増(2020/6/2 厚生労働委員会)
日本共産党の倉林明子議員は2日の参院厚生労働委員会で、新型コロナウイルス感染拡大の影響で生活に困窮する人が急増し、生活保護の重要性が高まっているとして、一層の運用改善と行政職員の拡充を求めました。
倉林氏は、生活保護の要件の一部緩和(4月7日付の厚労省事務連絡)が緊急事態宣言の全面解除後も継続しているものの、現場では十分に徹底されていないと指摘。自治体への周知徹底を強く求めました。
その上で、「申請のハードルを下げ、困窮者を速やかに保護につなげるためにさらなる改善が必要だ」と強調。(1)申請書類の簡略化、郵送やファクスでの申請を認めること(2)資産要件(住宅や車の保有など)の適用の一時停止(3)扶養照会の一律停止―を求めました。
加藤勝信厚労相は「どのような工夫ができるのか検討したい」と述べました。
倉林氏は、申請増に対応するにはケースワーカーの増員が不可欠だと主張。「受給世帯80世帯に1人」の基準が義務から目安に緩和されて自治体間格差が広がり、190世帯に1人となった自治体もあると述べました。
さらに、「生活保護相談窓口の面接相談員の非正規化が進んでいる。非正規率は2009年度の41%から、16年度に57%まで上がっている」と告発。「外部委託をさらに広げる議論も進んでいる。最も経験や能力を要する相談業務に、年収300万円未満で雇い止めの不安を抱えた労働者を当てるとはあまりに酷だ」と批判し、抜本的改善を強く求めました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林でございます。
この国の社会保障の水準、私、コロナの下で本当に問われているなということを痛感しております。仕事も住宅も失いましてホームレスに新たになったという方々の報道も届いておりますし、声も聞いております。今日明日の食費にも事欠くシングルマザーが急増していると。なかなか届かない特別定額給付金だし、そもそも住所のない人には届かないというものとなっております。生活福祉資金の活用も進んでいるわけですけれども、貸付けでありまして、据置期間の延長とかいろいろ措置とっていただきましたけれども、原則は返済が必要となるという性格のものですよね。
生活困窮者に対して、私、今最大限活用すべき、これが生活保護だと、最後のセーフティーネットがその力を発揮すべきときなんだというふうに思うんですね。
そこで、四月七日の通知で、あっ、事務連絡やったかな、稼働能力の判断の留保だとか、自動車保有などの資産要件の緩和ということで速やかな保護決定に結び付ける、これ画期的な指示を出していただいたなと受け止めております。四月のこれ生活保護申請件数、受給件数、これ前年同月比で、正確な数はまだつかめていないんだろうと思うんですけれども、動向、動きについてつかんでいるところ、分かっているところで御説明ください。
○政府参考人(谷内繁君) お答えいたします。
まず、生活保護の申請件数や生活保護世帯数等でございますけれども、毎月公表しております被保護者調査におきまして調査しておるところでございますけれども、直近で公表しているのは本年二月分でございまして、四月分については現在集計中でございます。
なお、直近の大まかな状況を把握するために、幾つかの大きな自治体に生活保護の申請状況を聞いているところでございます。今年の四月分につきましては、昨年の四月分より増加している自治体、それもあるというふうに承知しているところでございます。
引き続き、今後の動向、生活保護の動向には注視していきたいというふうに考えているところでございます。
○倉林明子君 最近のところの報道で、報道機関が調査した結果というのも出始めております。急増という経過が出てきているんじゃないかと。もちろん凸凹はありますけれども、今後も増えるということがはっきりしてきたのかなというふうに思っているんです。
そこで、五月の二十六日には緊急事態宣言は解除されたということになったんだけれども、四月七日の通知を継続すると、こういう事務連絡が出されているということを承知しております。私、この通知、もう非常事態終わったんだけれども、引き続き条件緩和で、いろんな要件もう緩和して、保護を速やかにというこの周知が現場際まで本当に届いているかなと。一部聞いていますと、対応が従前と変わらないとか、十分この事務連絡の徹底がされていないという事案も聞いております。周知の徹底を強くこれ求めたいと思いますので、これは要望にとどめておきます。
そこで、生活困窮者を速やかに生活保護につなげる、これ、命を守るという観点からも急いでやらなければならないと思うし、改善してもらったんだけれども、更なる改善を私求めたいと思うんです。
一つは、申請書類の簡略化。郵送とかファクスで申請できるようにしてほしい。これ何でかというと、感染拡大の防止にも、お互いのですね、にもなりますので、これ検討していただきたい。
二つ目は、資産要件の適用を一時的に停止する、今部分的に止めてもらっているのあるけれども、一時的な停止をする。それで、是非今踏み切ってほしいのは、家族や親族に対する扶養照会のこれ一時停止。速やかな決定につながりますので、申請者がこれがあるから申請に行き着けないというハードルにもなっているものですので、一時的な停止というのは直ちにやるべきじゃないかと思います。
もう一つ、あわせて、特別定額給付金の生活保護受給者に対しては収入認定をしないという対応をしていただいたんだけれども、申請者、これから申請しようという人が受け取っている特別定額給付金がある場合は、これ資産要件に入っちゃっているんですね。こんなもの外して、直ちに必要な保護につなげるべきだ、いかがでしょうか。
○政府参考人(谷内繁君) お答えいたします。
先生から生活保護に関しまして幾つか御質問いただきました。
まず、申請書類の簡略化でございますけれども、申請に当たりまして、保護の申請書、収入申告書、資産申告書といった保護の要否判定に必要な書類の提出は省略が困難でございますけれども、先生が御指摘になりました四月七日に発した事務連絡では、申請の意思がある方に対しては生活保護の要否判定に直接必要な最小限の情報のみ聴取すること、その他必要な情報につきましては後日電話等により聴取することによりまして、現下の状況において申請手続、煩雑にならないように依頼しているところでございます。
また、郵送やファクスでの申請でございますけれども、生活保護制度上禁じてはおりませんけれども、導入に当たっての申請内容の確認方法等の課題があると自治体の方で認識されていると。また、いずれにせよ、本人確認などのために保護決定までに面談を行う必要があることから、実際に対応している自治体は少ないのが実態というふうに考えているところでございます。
また、資産要件、扶養照会につきましてお尋ねいただきました。
資産、能力その他あらゆるものを活用いただくこと、さらに、民法に定める扶養義務者の扶養は保護に優先することといった保護の補足性は生活保護法上の基本原理でございます。このため、資産につきましては無条件に保有を認めることはできませんけれども、自立の助長等の観点から適切に活用できる資産は保有を認めておりまして、例えば居住用家屋につきましては、処分価値が利用価値に比べて著しく大きいものでなければ保有を認めております。また、自動車につきましても、従来から地域の事情により通勤車として利用する場合などには保有を認めておりまして、四月七日付けの事務連絡では、現下の状況におきまして一時的な収入減少により保護が必要となる方につきまして、今般の事態の終息後、スムーズに就労を再開できるよう、柔軟な取扱いを改めて周知しているところでございます。
また、扶養照会についてでございますけれども、先ほど述べましたとおり、扶養を優先する法の基本法則は維持することが必要でございまして、必要な調査を実施する必要があると考えております。
一方で、保護が必要な方が適切に保護が受けられるよう、五月八日に発出した事務連絡におきましては、扶養が保護の要件であるかのごとく説明を行うこと等の保護の申請権の侵害に当たる行為が行われないよう、改めて自治体に対して取扱いの徹底を依頼しているところでございます。
最後に、特別定額給付金の手持ち金の話でございます。
委員から、保護の開始前に受給した特別定額給付金につきまして提案ございましたけれども、その他の手持ち金と区別することが困難であること、また、特別定額給付金を含めまして、他方他施策を活用してもなお最低限度の生活を維持できないことが保護の要件でありますことから、特別定額給付金だけを活用すべき資産から除外する取扱いはできないというふうに認識しております。
○倉林明子君 ゼロ回答のような答弁を長々とありがとうございました。
ドイツでは、三月二十八日、実は社会保護パッケージ法というのが施行されたんですね。これ、政府は、コロナ危機対策としての社会的接触の制限による経済的影響が原因で誰一人として最低生活以下に陥ることがあってはならないと、こういう考え方に基づいてできたもので、生活保護の利用促進を進めております。申請手続は、電話、郵送、メール、これで可能なんですね。書式は問わないし、資産要件も六か月は停止すると、こういう機動的な対応をしているんですね。
私、今いろいろやってもらっているんですよ。これまで踏み込まなかったこともやってもらっているんだけれども、今、コロナの下でもっと踏み込んでほしいということで聞いたんです。大臣、どうですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 個々については今局長からお話をさせていただいたところでありますけれども、当面生活に困っている方については、もちろん最後のセーフティーネットは生活保護でありますけれども、生活困窮者自立支援制度を始めとした様々な支援政策をしっかりと活用していただけるように我々も努力をしていかなきゃならないと思います。
また一方で、保護が必要な方に対して速やかな保護決定の必要性については、これは委員御指摘のとおりであります。更に取組を進めていく必要があるというふうにも考えておりまして、どんな工夫ができるのか、様々な御意見やそれぞれの現場の状況等もしっかり伺いながら、引き続き検討していきたいと考えています。
○倉林明子君 福祉現場では、生活保護のこういう申請、相談というのも大きく増えておりまして、ただでさえケースワーカーというのは不足が常態化しているという中で、非常に今後人手不足深刻化するという声も聞いております。
改めて確認ですけれども、標準世帯数を超えて、もうそういう常態化した状況にあるので、五月、さらに六月はもっとというような状況も懸念がされるわけで、体制の強化は待ったなしだというふうに思うんです。国としても思い切った増員をすべきだと思いますけれども、大臣、いかがですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 生活保護、最低生活の保障を行うとともに、生活保護受給者の自立の助長を行うことを目的としているのがこの生活保護制度でありますから、それを担っていただくケースワーカーについて適切な配置がなされていくことが必要であります。先ほど局長からも答弁しましたように、我々が一部サンプルで調べたところ、生活保護の申請も増えていると聞いております。
そういった中で、第二次補正予算では、生活に困窮する方への面接相談、新規の申請から保護決定までの手続の迅速化を図るための事務等の補助のための臨時職員の雇い上げ費用を計上して、これを活用いただくことで、ケースワーカー自体の増員ではありませんけれども、申請増に伴うケースワーカーの業務負担の軽減を図ることができるんではないかと考えているところであります。
○倉林明子君 予算は三億程度じゃなかったかと思うんですね。さっきも持続化給付金で事務費七百七十六億という話ありましたけれども、こういったところにこそ不足のない予算も充てて、しっかり人員の確保を図っていただきたいというふうに思うわけです。
そもそもの福祉事務所の実態どうかということですけれども、ケースワーカーの定員を規定しておりまして、都道府県では被保護世帯六十五世帯に一人だし、市町村では八十世帯に一人と、地方分権推進法で標準数ということでなりました。これ、全国政令市、中核市、直近の充足率というのはどうなっているでしょうか。
○政府参考人(谷内繁君) お答えいたします。
ケースワーカーの充足率でございますけれども、平成二十八年度の福祉事務所人員体制調査によりますと、生活保護担当現業員の配置標準数に対します配置の割合、充足率でございますけれども、全国平均で約九〇%でございます。うち政令市では約八五%、中核市では約七八%となっているところでございます。
○倉林明子君 これ、平均ですると、一定の充足率あるというふうに見えるんだけれども、実は地域格差すごくあって、市町村によっては百九十世帯を超えるというようなところさえあるんですね。これ、一括法の改正で、二〇〇〇年からは法定数が標準数と、目安になったことが人員確保進まないということの一つの要因になっているんじゃないかという指摘をしたい。
さらに、そうした中で、何が進んでいるかというと、面接相談員の非正規化が顕著に進んでいます。非正規化率を見ると、二〇〇九年、二〇一六年、比較すると、兼任の職員を外して見てみるとどの程度になるか。二〇〇九年は大体非正規率四〇%程度です。で、二〇一六年度五七%程度ということで、大変比率も上がってきております。これ、権限を伴わない部門での非正規化にとどまっていないんですね。法改正も視野に入れて、更に外部委託を広げようという議論進んでいるというふうに認識をしております。
最も経験やスキルが求められるというのが相談業務になると思うんですね。それが、年収三百万円未満、雇い止めの不安を抱えた労働者に担わせていると。私は、これで専門性を発揮しろというのは余りにも酷な働かせ方ではないかと思うんですけれども、大臣、どうですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 生活保護の面接相談等のこれは地方自治体の実務において、組織的に適正な事務が実施できる体制を確保していただいた上で、どのような任用や勤務形態の職員を配置するのか、これはそれぞれの自治体の御判断、いかに効率的に効果的な行政サービスを提供するのか、職務の内容に応じて責任持って判断いただくべきものと考えておりますし、当然、今お話がありました臨時・非常勤職員のこれは処遇についても、任命権者として地方公共団体が責任を持って適切に対応すべきものだと考えております。
厚労省として、適切な人員配置が行われるよう、関係省庁と連携しつつ、毎年度のこれは地方交付税措置でありますから、それについては引き続きしっかり対応していきたいというふうに考えております。
○倉林明子君 いや、自治体の御判断なんやけれども、その交付税措置も含めて、三位一体の改革で地方自治体は職員の定数削減、社会福祉の担い手さえも非常勤とか委託とかに置き換えざるを得ないと。これ、自治体が判断せざるを得ない状況に追い込んできたのは、私は政府がやったことなんだという自覚を持つべきだというふうに思います。社会福祉に係る業務の慢性的な人手不足、非正規、委託の拡大、これは公的責任の後退にほかならないと思うわけですね。
その上で、さらに、社会保障制度に経済効率性というのを持ち込んで、制度があっても利用できないと、こういう人たちを増やしてきたというのも私は政府じゃないのかと思うんですけれども、大臣の認識というのはどういうものでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) 厚労省としても、これまで、例えば生活困窮者自立支援制度を創設するなど、セーフティーネットの強化、予算の充実も図ってきたところでありますし、また、平成二十九年の社会福祉法改正においては、市町村に対して地域生活課題の解決を図るための包括的な支援対策を構築する努力義務が規定をされたわけでありまして、これも踏まえて、今回の法案では、地域福祉の推進の目的として地域共生社会の実現を目指す旨の規定を追加をし、それぞれ国及び地方団体の責務として、例えば住民生活の問題の解決のための支援が包括的に提供される体制の整備を推進する等々規定をし、加えて、国及び都道府県の責務として、市町村において新たな事業の実施など包括的な体制の整備が適正かつ円滑に行われるよう必要な支援を行う旨も規定をしているところであります。
こうした責務を適切に果たして、全ての住民を対象とした包括的な支援体制が構築され、複雑化、複合化した支援ニーズに対応できるよう努めてまいりたいと考えております。
○倉林明子君 制度からこぼれ落ちる人がいるから、それに対して地域で力を合わせて解決していこうねと、そういうふうに対応していくというのがこれの、地域共生社会の実現ということを目指した今度の法改正だという今の説明なのかなと思って聞いていたんですが。
それで、本当にこぼれ落ちる人がいるというのはどういうことかと思うんですね。制度の対象を縮小、負担増、これが結局は利用できない人たち、制度からこぼれ落ちる人というのを増やしてきたということなんじゃないかと思うんですね。
私、今回改定されます社会福祉法の第四条の一、これ見て驚いたわけです。なぜかというと、社会福祉を互助すなわち助け合い、地域住民に義務付け、その責任を義務付けるという、明記されているわけですよね。そういうことで理解よろしいですよね。
○政府参考人(谷内繁君) お答えいたします。
今先生が御指摘になったのは、今回提案しております社会福祉法の第四条一項の話かというふうに理解しております。
今回の改正法案で追加した社会福祉法第四条第一項に地域住民と記載している趣旨につきましては、地域共生社会の実現の推進主体としまして専ら地域住民を位置付けたものではなく、むしろ自治体全体とか、また専門職を含めた方、そういったこと全体を位置付けたものでございまして、地域住民が相互に尊重され、参加する地域共生社会の実現を目指して地域福祉の推進を行うことを規定したものでございまして、議員御指摘のように、助け合いを地域住民に義務付けた趣旨ではございません。
○倉林明子君 これ、主語と述語と目的語ってちゃんと読んでみると、やっぱり地域住民が主語で、それで、共生する地域社会の実現を目指して行わなければならない、これは地域住民に係っているわけですよね。住民の助け合いというのは、私、日常的な信頼関係に基づくものであって、法律で国や自治体から強制されるものじゃないと思うんです。専ら位置付けているものではないと言うんだけれども、義務規定になっているということは間違いないと思うんですね。
そもそも、ある住民の福祉や生活に係る問題、これをほかの住民が把握して解決を図るということになりますと、プライバシーの侵害の危険があるんじゃないかと。さらに、生存権、幸福追求権、これを国が保障するという憲法の規定からも逸脱しかねないと思うんだけれども、これは大臣、いかがでしょう。
○国務大臣(加藤勝信君) まず、第四条は、地域福祉の推進は、途中飛ばせば、地域社会の実現を目指して行わなければならないということが書いてあるわけでありまして、その地域社会の実現は何かということで、今委員御指摘の地域住民云々と、こういうことでありまして、さっき局長から申し上げたように、助け合いを地域住民に義務付けたということにはならないんではないかというふうに考えております。
また、地域社会の実現は、専門職による本人や世帯の課題に寄り添った支援とともに、お互いを尊重し合う意識の下に、地域住民同士の支え合いや見守り、この双方を充実させていくということが必要でありまして、そういった意味で、これまでも委員会で御議論されておりますけれども、福祉の専門家、職の役割も非常に重要であり、そうした方々の人員を確保したり、研修等を通じて資質の向上を図る、そのための予算を確保することが非常に大事だというふうに考えております。
また、一般的に支援を行うに当たっては、本人の個人情報の適切な保護に配慮する必要は、これは当然でありまして、この法案においても、本人の同意の下、多機関の専門職が支援に当たることが基本であり、こうしたプライバシーの侵害が生じないように配慮しているところであります。
○倉林明子君 いや、公的責任が極めて後退する危険があるというふうに改めて指摘したいと思うんですよね。
コロナで、この地域共生社会で象徴的に言われていたあの集いの場、事実上もう今できないという状況になっていますよね。この担い手になる人たちというのは主には高齢者ですよね。リスクが高いということから、活動の制限という状況広がっているんですね。やっぱり住民を当てにした社会福祉の構築ということには、もうこのコロナで限界あるというのもすごく見えてきたと思うわけですよ。公的責任を放棄すると、そういう規定になりかねないということを改めて重ねて指摘をしておきたいと思います。
加えて、社会福祉の責任を民間の自助努力に委ねる方向を一層強化しているんじゃないかと思っていますのが、社会福祉連携推進法人の制度であります。地域福祉推進に係る共同した取組、災害発生時の福祉サービスの利用者の安全確保のための事業ということを位置付けているんですけれども、これ、その財源は一体どこが負担するんでしょうか、簡潔に。
○政府参考人(谷内繁君) お答えいたします。
社会福祉連携推進法人でございますけれども、具体的な業務につきましては、例えば地域課題の把握、分析……(発言する者あり)はい。基本的にはそういう社会福祉法人の業務でございますけれども、直接的な福祉サービスの提供ではございませんで、各社員の運用をバックアップするものでございます。
したがいまして、社員、参加する社会福祉法人でございますけれども、そういったことが便益を受けますことから、その費用は主としまして社員たる社会福祉法人、社会福祉法人がメーンになると思いますけど、社員からの会費や委託費等により賄えるものということでございます。
○倉林明子君 だから、社会福祉法人がつくるということになるわけですよね。元々、でも非営利なんですね、社会福祉法人そのものは。原資というのははっきりしているわけですよ。本来事業で公益活動の財源もつくれと、つくれる担保というのが一体どこにあるのかと思うんです。
労働者には、ここに公益活動への参加義務ということも生じてくるんじゃないかと思うんですね。そうなったら、本来業務に上乗せされるということにもなるんです。ただでさえ厳しい労働条件のこの福祉現場のところに、条件悪化につながりかねないということは指摘をしておきたいと思います。
社会福祉法人に対して、社員である他の法人が出資して資金を貸し付けることができるようになるわけですね。これは新たなスキームなんですけれども、つくる目的、狙いは何なのか、ずばり。そして、経営難に陥った場合の助け合いも、これ想定しているのかどうか、イエスかノーかで。
○政府参考人(谷内繁君) お答えいたします。
多少長くなりますけれども、社会福祉連携推進法人が行います貸付業務でございますけれども、社会福祉法人の経営基盤の強化が図られるようにしていくために、社員である社会福祉法人に対して社会福祉事業に必要な資金を支援するために認めるものでございます。
具体的な使途につきましては、メーンは貸付けでございますので、福祉医療機構や民間金融機関による融資等がメーンとなると思いますけれども、その補完的な位置付けといたしまして、例えば内装のリフォーム等の比較的小規模な施設整備の改修とか、あとICT機器等の設備費用の導入費用など、一時的かつ社会福祉事業の継続に必要な最低限の資金需要に充てることを想定しております。有識者会議の中でも、既に実施した社会福祉法人のヒアリングを受けましてもこうした具体的使途に対するニーズの声を聞いているところでございます。
また、社員である他の社会福祉法人からの貸付金の拠出でございますけれども、法人の運営に大きな影響を与えない規模としますとともに、貸付けごとに所轄庁の認定を受ける仕組みを考えております。施行までに詳細な運用ルールを検討してまいりたいと考えております。
また、委員お尋ねの個々の社会福祉法人の経営が悪化した場合ということのお尋ねでございますけれども、自主的な再建とか、また金融機関の融資など様々な対応があり得ますけれども、あくまでもその経営が悪化した当該社会福祉法人の自主的な判断によって対応を決めることになるというふうに考えております。
○倉林明子君 いや、大規模化という、共同化というようなことで、合併等も進められるようにとやってきたけどなかなか進まないという経過でこれ出てきたので、よりそういう懸念というのを持っているんですね。
じゃ、大規模化でスケールメリットが出るのかといったら、今の状況というのはコロナの下でただでさえ赤字のところが今どんどん赤字、経営が厳しいという状況も物すごい広がっているわけですよね。今経営危機と直面している社会福祉法人は決して少なくありません。こういうときにお互い助け合えというのは、私はあんまりやというのは言うておきたい。
最後に、このコロナというのは、やっぱりこの国の社会保障の基盤の脆弱さというのを浮き彫りにしていると思うんです。制度からこぼれ落ちる人をいかに減らすのか、制度の網の目をいかに細かくするかということを考えるべきだと思うんですね。最後の受皿である生活保護から排除されるような生活困窮者をなくすということを今本当に正面から考えるときだと思います。
最後、大臣に答弁いただいて、終わります。
○国務大臣(加藤勝信君) 今回の新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、経済、雇用あるいはそれぞれの国民の皆さんの生活にも様々な影響が生じております。
これまで我が国もリーマン・ショックとかあるいは東日本大震災とか、様々な災害やそうした経済的な影響を受けてきたわけでありますが、またそれとも異なる今回のこうした影響だと。そうした認識の中で、これまでも様々な措置が講じられてきているわけでありますけれども、それでは必ずしも十分ではない、そういったことを常に念頭に置きながら、委員の御指摘もそういった点だったんだろうというふうに思います。まず、そういった点をしっかり認識をしながら、引き続き、そうした、制度と制度の間に入ってしまうことがないのか、あるいはせっかく制度があるのにそれを利用していただけない方がいないのか、そういったことも含めてしっかりとやらせていただきたいというふうに考えております。
○倉林明子君 法案は、やっぱり自己責任、自助、共助ということを強化するということにつながりかねないものだと思います。
こんなときにこんなことやるべきじゃないと申し上げまして、終わります。