違法の通報 機能せず 倉林氏「安い労働力使用だ」(2018/12/6 厚生労働委員会)
(資料があります)
日本共産党の倉林明子議員は6日の参院厚生労働委員会で、外国人労働者の受け入れに関する、労働基準監督機関と出入国管理機関の間で労基法違反を相互に通報する制度について質問しました。
倉林氏は、実習制度の相互通報の実績を質問。坂口卓労働基準局長は2012年から17年の間に、労基の通報がほぼ横ばいである一方で、入管は556件から44件に激減していると明かしました。
倉林氏は、野党議員が失踪実習生の聴取票を調べた結果、最低賃金違反などの事例が過半数を占めたと指摘。「法務省は法令違反をつかんでいながら通報していなかった」と批判し、認識をただしました。根本匠厚労相は「通報があったうちの多くは是正勧告した。その意味では機能している」などと強弁しました。
倉林氏は、新制度で相互通報は有効な手段となるかと追及。根本厚労相は「有効になるよう法務省と相談して対応する」と述べるにとどまりました。
倉林氏は「国際貢献を建前に安価な労働力として使われてきたのが実習制度だ」と強調。技能実習の実態を放置したまま外国人労働者の受け入れを広げ「労働行政を守れるのか」と迫りました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
礒崎委員の続きのような質問になりますけれども、よろしくお願いいたします。
大臣は、衆議院の厚生労働委員会で、新たな制度の導入に当たって労働基準法令違反が減るのかと質問をされましたところ、新たに創設される出入国在留管理庁と相互通報制度もやりますから、緊密な連携を図ることによって減るように努力したいと、こういう答弁ですよ。現状の技能実習法の下で労働条件の確保を図ると。
それぞれの機関で発覚したこの労働基準法関係法令違反の疑いがあるものについての相互通報、こういうことは今でもやっているわけですね。先ほど来話があったとおりです。
先ほど、二〇一七年については入国管理庁の方からは四十四件の通報があったと。じゃ、二〇一二年と二〇一七年比べてみて、その数字を、二〇一二年と直近のところでそれぞれがどれだけ通報しているのか、数でお答えください。
○政府参考人(坂口卓君) お答え申し上げます。
今御質問の労働基準監督機関と出入国管理機関との相互通報の状況でございますが、まず、私ども労働基準監督機関から出入国管理機関への通報の件数でございますが、二〇一二年、平成二十四年は四百十三件でございまして、近時の状況は、二〇一六年、平成二十八年が四百三十一件、二〇一七年、平成二十九年が五百四十六件となっております。
また、出入国管理機関から私ども労働基準監督機関への通報の件数の状況でございますが、二〇一二年、平成二十四年、お尋ねの二〇一二年につきましては五百五十六件でございまして、近時の状況は、二〇一六年、平成二十八年が百十四件、二〇一七年、平成二十九年が四十四件ということでございます。
○倉林明子君 今お話もいただきました二〇一二年度から二〇一七年度分までのそれぞれの通報の実績というものをグラフにして資料としてお配りをしています。
これ、一目瞭然なんですけれども、トータルでの通報実績というのも減っていると。そして、今の現状を見ると、双方向じゃないんですよね。労働側からの片側通報、片側一方通報になっているんですよ。出入国管理機関からの通報というのはこの五年でもう五百件以上も激減しているんです。
失踪した技能実習生、先ほど来議論ありました。この中身というのは、本当に深刻な中身が改めて分かったというふうに思います。その結果、最賃下回る事例が千九百二十七人だと、さらに、過労死ラインを超えるような長時間労働も二百八十九名と、こういう結果が分かりました。これ、法令違反の疑い、もう明らかにそうであろうと思われる分も含めて、法務省は、この聴取票は取りながら、先ほどのお話では通報していなかったと。今から中身分析するというんだから、通報はあり得ないと思うんですよね。
これに対して大臣の認識を改めて確認したいと思うんだけれども、現状の入国管理機関との通報制度というのは機能していると、こう評価できるんでしょうか。
○国務大臣(根本匠君) 技能実習生の適切な労働条件の確保は重要だと思います。
そして、我々、例えば二〇一七年に法務省から四十四件通報されましたが、我々、既に直前に監督指導を実施したなどの理由によって監督指導を行わなかった四件を除いて、速やかに監督指導を実施しました、平成二十九年の四十四件は。そして、このうち三十六件については、労働基準関係法令違反が認められたため、是正勧告を行い、その旨法務省に回付をしました。
それと、これは法務省から答弁してもらった方がいいと思うんですけど、今回の聴き取り票は、法務省が情報収集のために聴き取り票というのをやって、実は、何で通報がないかといえば、これは法務省から答弁してもらいたいんだけど、各調査項目について明確な定義を置いていない、あるいは失踪した技能実習生から任意に聴き取りした情報を入国警備官がありのままに記載したものと承知していますから、法務大臣からは、聴き取り方法や記載方法について統一指針もなく、反面調査を行うなどして実態調査した結果を記載する性質のものになっていない旨の答弁がなされたので、だから、今回の問題については、まだ私は、精査した上で通報がなされるものと……(発言する者あり)いやいや、そんなことはないですよ、だって今回の聴き取り票について聞かれたわけだから、と思います。
あとは法務省に御答弁をいただきたいと思います。
○倉林明子君 いいですか、大臣は衆議院で答弁しているんですよ。今度も、通報制度あるさかいにこれ減るようになるんだという、これで頑張りますという頼りの綱のような紹介しているんですよ、これ通報。よう聞いておいてください。いいですか。この通報制度、現状の通報制度が今後も役に立つと、これで減るって、労働基準法関係法令違反が、そういう趣旨で御説明されているから、改めて、今の通報、この制度ですよ、こういう実態をお示ししました。これで機能していると言えるはずがないじゃないですか。はっきり答えてください。
○国務大臣(根本匠君) 相互通報制度というのは今までもやってきているわけでありますが、先ほど申し上げましたけど、さっきの通報されたものについては、最低賃金を下回る支払などの最低賃金法違反、あるいは賃金不払残業などの労働基準違反が認められた場合、これは是正勧告を行って、是正を徹底しております。相互通報制度については、これからも法務省とよく相談してしっかり対応したいと思います。
それから、厚生労働省においては、出入国管理機関からの相互通報をまつまでもなく、技能実習企業四万八千件のうち約六千件に監督指導を実施しておりますので、入国管理局からの通報だけが端緒となっているわけではありませんが、これからも更に相互通報制度、しっかりした運用ができるように頑張っていきたいと思います。
○倉林明子君 これからの決意聞いているんじゃないんですよ。今の通報制度というのが機能しているかどうかについて全く答弁できないってどういうことですか。私、このとおりで通告しているんですよ。だから、きちっと今の現状のこの相互通報制度が機能しているのかしていないのか、どっちか、明確に答弁いただきたい。
○国務大臣(根本匠君) 私が先ほど答弁したとおり、法務省からの通報があったものについては、さっきも申し上げましたが、四十四件のうち、要はほとんど是正勧告しているわけですから、その意味においては私は機能していると思うし、更に機能するように、法務省と十分連絡調整、そして連携を強化していきたいと思います。
○倉林明子君 いや、これで機能しているんだという説明がまかり通るようだったら、私は事実をきちっと踏まえた対応にならないと思うんですよ。
私、これ、聴取票の実態というのは本当に深刻なんですよ。労働行政を預かる者として姿勢を問うているんですよ。そこはしっかり受け止めていただかないと、法律を守らせるなんてことはできませんよ。
そこで、改めて、この新しい外国人の受入れ制度ですけれども、少なくない技能実習生が新たな制度により特定一号として就労継続と、こういう場合があるということが確認されてまいりました。
大臣に聞きますが、新たな外国人受入れ制度で創設される入国在留管理庁との通報制度、これ、労働基準法令違反に対して有効ですか。有効かどうか。どっちかだから。
○国務大臣(根本匠君) これ、相互通報制度という制度があるわけですから、その意味において、私は相互通報制度は有効な手段だと思います。
○倉林明子君 それはさっきのやり取りまでの話。今聞いたのは、新しく入国在留管理庁というのをつくった上で、新しい通報制度のところは有効になるのかと、有効に機能するのかと、次の話です。
○国務大臣(根本匠君) 相互通報制度は今までも運用していましたが、今回新たに創設される仕組みについては、外国人材の適正な労働条件確保に有効となるように、法務省とよく相談してしっかり対応したいと思います。
○倉林明子君 制度あっても四十四件しか通報してこなかったというのが法務省なんですよ。そんなところと相談してこの制度がうまく回るはずありませんので、相談する相手は間違わないようにと申し上げておきたい。
そこで、さらに、私、技能実習生の深刻な実態というのを改めて思い知らされたのは、今月二日の朝日新聞の報道なんですよ。「中絶か帰国か」、これ二枚目に資料を付けております、「迫られた実習生」という記事でした。妊娠が判明したら、実習先から中絶か強制帰国かということで迫られたと。で、逃げたと。少なくないという生々しい告発でした。恋愛禁止、こういう規則に実習生の署名まで求めていたという事例が紹介されておりました。
こうした実習先企業の行為をまずつかんでいるのか。そして、雇用均等法違反に私は明確に当たると思いますけれども、いかがお考えですか。
○政府参考人(吉本明子君) ただいま委員の方から御指摘のありました報道については、私どもも承知をしております。
私どもは、外国人技能実習機構による実地検査、また、新制度におきましては実習生の方々からの申告だとか相談だとかいったことがございますので、そうしたものを端緒としてこうした実態把握に努めているところでございます。
こうした事例が実際に法に違反するかどうかにつきましては個別に判断する必要があるというふうに思っておりますけれども、一般論といたしましては、まず、男女雇用機会均等法との関係になりますが、事業主に対しまして、第九条一項で、妊娠したことを退職理由として予定する定めを禁止しているところでございまして、また、第九条三項におきましては、妊娠等を理由とする解雇その他不利益取扱いを禁止しております。また、同法の第十一条二及び同条に基づく指針におきましては、妊娠や出産をした女性労働者に対しまして、上司が解雇その他不利益な取扱いを示唆することや、上司や同僚が繰り返し、また継続的に嫌がらせ等の言動を行う、いわゆるハラスメントの防止措置を義務付けているところでございます。
さらに申し上げれば、技能実習法におきましても、技能実習生の私生活の自由を不当に制限するような取扱いは技能実習法に抵触するものでございます。
○倉林明子君 そのとおり、法違反、そして技能実習法で新たに定めた技能実習生の保護の規定のところにも反する中身になるという説明はそのとおりだと思います。私、重大な人権侵害行為ですよ、こういう報道にあった事例は、こういう状況が放置されているということが非常に問題だというふうに思っています。
こういう実態があるということと改善されていないということは非常に問題だということを指摘した上で、この技能実習法には、技能実習生自らが労基法、労働基準法関係法令の違反の是正を求めるということで申告権が規定されました。まだ実施されて間もないということになろうかとは思いますが、この実績はどうなっているでしょうか。
○政府参考人(吉本明子君) 技能実習法が施行されました昨年の十一月から今年の十月十一日までの状況を取り急ぎ集めましたところ、技能実習機構の方に寄せられた申告件数は二十件でございました。
○倉林明子君 違反の状況、厚労省が調べたところでも、調査入ったところで七割の違反実態があるというところから見ますと、極めてまだこの申告という制度も機能が不十分だというふうに言えるんじゃないかなと思います。
今、新たな出入国管理法については、技能実習法で特別に保護規定というのを設けたんですね、申告制度も、申告権も明記をしたということになるんですが、こういう技能実習法のような労働者を保護する規定、これが新たな入管法に入るのかどうか、あるのかどうか、いかがですか。
○政府参考人(佐々木聖子君) まず、法律における規定につきまして、具体的に改正法案におきましては、外国人であることを理由として報酬等に関して差別的な取扱いをしてはならないということを規定をしておりまして、日本人と同等以上の報酬が支払われることなどを確保しています。また、同じく法案の中に、五年以内に出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をしていないことを規定をしておりまして、悪質な受入れ機関を排除することとしております。
その他、省令におきましても、外国人から保証金等を徴収する悪質なブローカーの介在を防止するため、保証金を徴収するなどの悪質な紹介業者の介在がないことなどを求めます。
それから、受入れ機関の欠格事由といたしまして、これは技能実習法にありますように、外国人に対して暴行、脅迫又は監禁をする行為をした者、外国人の旅券又は在留カードを取り上げる行為をした者、外国人の私生活の自由を不当に制限する行為をした者などを定め、特定技能外国人の受入れをできないこととする予定でございます。
○倉林明子君 いや、そういう規定ぶりなんだけれども、私が聞いたのは、技能実習生の現状があるから、今の技能実習法には特別に、外国人だって日本人だって日本で働いている労働者には労働基準法等関係法令が適用されるんですよ。だけども、それでは技能実習生の現状を解決できないということで、上乗せして労働者の保護規定、申告権までわざわざ書き込んだという経過があるわけですよ。そういう労働者保護、この規定がないんじゃないですかということを言っているんです。
技能実習生の延長線上に特定一号というのはあるわけですよ。技能実習生でなくなった翌日から働いている場所が変わらないという可能性はあるわけですよね。むしろ、そちらの方が多いと思う。そうなったら、特定一号になった途端、こういう技能実習生で課されていた保護規定、これが掛からなくなると、こういうことになると思うんですね。
技能実習法三条二項、ここでは、「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。」、これも技能実習法での規定です。新たな特定技能の在留資格、これによりますと、人手不足が解消したとされれば新規の受入れは中止が原則ということになりますよね。さらに、リーマン・ショックのような事態が発生したら、余剰となった特定技能の外国人労働者の雇用、これ確保される担保ないと思うんです。
こういうことで考えますと、新たな制度で受け入れた外国人の労働者は、労働力の需給調整の手段となりかねない。これ明らかに技能実習法では禁止しているんですよ。ところが、こういう技能実習から特定一号に行った途端、この人たちは需給調整の手段になりかねないという、これリスクだと思いますよ。大臣、どう認識されていますか。
○国務大臣(根本匠君) 今回の受入れは、基本的には、何度もお話をしておりますが、法務省からも、生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお当該業種の存続、発展のために外国人材が必要と認められる分野に限って行うと。その上で、外国人材を受け入れた分野においては、人手不足の状況について継続的に把握して、必要に応じて受入れを停止する措置を講ずることとされていると承知しております。これは、必要とされる人材が確保されたにもかかわらず外国人材が国内の労働市場に流入し続けることがないようにするための、そういう仕組みであると私は理解しております。
一方、法務省においては、外国人の受入れを一時停止する措置を講じた場合であっても、既に特定技能の在留資格を持って在留している外国人について、その在留を直ちに打ち切り、帰国させることは考えていないと承知をしております。
厚生労働省としては、新たな制度で受け入れる外国人を含め、日本で働く外国人労働者の適正な労働条件の確保と雇用管理の改善を図る、そして、日本で働くことを希望される外国人に対しては、在留資格で認められる範囲においてできる限り希望に沿った就職が実現するように、必要な支援を行っていきたいと思います。
○倉林明子君 大体、人手不足に対応するという目的が出た途端に、やっぱり、人手が余ったときにどうなるのか、だから需給調整になるんじゃないかと。それ禁じているのが、説明したとおり技能実習法なんですよ。そういうことになったらあかんということで、技能実習法には定めをしたんですよ。ところが、その延長に行ったらそのリスクは極めて高くなる、当たり前じゃないですか。
国際貢献を建前にして実態は安価な労働力として使ってきた、これが技能実習制度にほかなりませんよ。建前のために外国人労働者が負わされてきたリスク、コスト、これが現状でも解消されていない。昨年の聴取票の結果というのは、本当にそのことを示していると思います。
新たに外国人労働者を受け入れることになるわけです。労働行政を所管する大臣として、このリスク、本当にどう考えるのかと思います。この制度、受入れ拡大に対して、本当に労働行政をしっかり守れるのかどうか、その点、どうですか。
○国務大臣(根本匠君) 外国人労働者の皆さんが日本で安心して働いて、その能力を十分に発揮する環境を整備、確保することは本当に重要だと思います。
技能実習制度については、一部の監理団体、受入れ企業、労働関係法令違反、様々な問題がありました。そういう指摘を受けて制度を見直して、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律を昨年十一月に新たに施行して、取組を強化しております。
新たな外国人受入れ制度においても、日本で働く外国人材の適正な労働条件の確保と雇用管理の改善を図るために新たに創設される出入国在留管理庁と相互通報制度の運用など緊密な連携を図る、そして、労働基準監督署においては、労働基準関係法令が遵守されるように事業者への監督指導を行って違反があれば是正を図らせる、さらに、ハローワークにおいても、事業主が講ずべき措置を定めた指針に基づいて外国人材の雇用管理の改善に向けた助言や指導等を行ってまいりたいと思います。
○倉林明子君 技能実習生の問題というのは、紹介したような人権侵害及び働き方ということで、一向に改善していない。新たにこういう外国人を本当に労働者として受け入れるということであれば、私は、技能実習制度という仕組みそのものをやっぱり廃止すると。そこから国民的な、外国人労働者の受入れの拡大どうあるべきなのか、国民的な議論をし直さないといけないんじゃないかというふうに改めて申し上げたいと思います。
この問題、日本の国民の働き方、ここにも大きな影響を与える問題でもあります。改めて、この入管法についての連合審査を重ねて求めると同時に、やっぱり入管法については廃案として出直すべきだということを申し上げまして、終わります。