医師不足の観点が欠如 倉林氏 医療法改定案で主張(2018/5/15 厚生労働委員会)
(資料があります)
日本共産党の倉林明子議員は15日の参院厚生労働委員会で、医師の勤務地が地域ごとに偏る「偏在」の解消を掲げた医療法・医師法改定案について、「医師数が絶対的に不足しているという観点が抜けている」と述べ、抜本的な増員こそが必要だと主張しました。
改定法案は、厚生労働省が定める指標に基づいて都道府県内に医師の「少数区域」と「多数区域」を設定するなどというもの。厚労省の武田俊彦医政局長は「多数地域から少数地域に医師(の異動)が促される対策もあると思う」と認めました。
倉林氏は、医師が比較的多い地域でも過労死に至る長時間労働が深刻なのに、「厚労省のさじ加減で少数区域か多数区域かの線引きが可能になる」「多数区域になれば都道府県は医師の削減を迫られる」とし、「偏在対策」が診療所の開業規制につながりかねないことも示し、慎重な対応を求めました。
倉林氏は、財務省が示した75歳以上の医療窓口負担2割化案の問題も指摘し、「すでに負担は限界だ」と批判。窓口負担の自動引き上げの導入案については「負担の上限撤廃になるのではないか」と追及し、財務省案を撤回させるべきだと強調しました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子でございます。
質問に入ります前に、データの問題で、平成二十五年労働時間等総合実態調査については、裁量労働制の部分についての撤回に併せて、本日、一般労働者の部分についても一部の撤回をされたと新聞報道等で確認されました。データの信憑性が崩れたと、これ明らかだと思うんですね。改めて調査をし直す、労政審に差し戻すということが必要だというふうに思います。働き方改革関連法案については撤回を強く求めておきたいと思います。
それでは、法案の質問に入ります。
新たに都道府県が行うことになる医師偏在対策について私も質問したいと思います。
国が定める医師偏在の度合い、これを示す医師偏在指標、これに基づいて都道府県が医師少数区域と医師多数区域、これ二次医療圏ごとに定めると。それぞれの医師確保目標を達成しようと目指すことになると思うわけですけれども、医師少数区域では不足する医師の増員が目標となるわけですけれども、それでは、医師多数区域、ここではどんな目標になるんでしょうか。
○政府参考人(武田俊彦君) この医師多数区域につきましては、医師の偏在の是正を目的として、医療ニーズや人口構成、患者の流出入等を踏まえて二次医療圏ごとに設定した医師偏在指標を基に、医師が多いと認められる二次医療圏に対して、厚生労働省令で定める基準に従い都道府県が設定するものとなります。
毎年度、各都道府県へ希望に応じた医学部定員の臨時増員が図られているとはいえ、各都道府県全体の医師数が限られている中では、医師少数区域を中心に重点的な医師確保対策を講じる必要がある。したがって、結果的に医師多数区域から医師少数区域へと医師が促されるような対策が取られることもあると思います。
ただし、いずれにしても、各都道府県がどのような医師配置の方針を取るかにつきましては、都道府県、大学、医師会、主要医療機関など地域の医師確保に責任を有する関係者が参加する地域医療対策協議会における協議により決定されるものでございますので、都道府県には十分に地域の実情を踏まえた議論を尽くした上で取組を進めていただきたいと、このように考えております。
○倉林明子君 はっきりおっしゃらないんだけれども、少数区域を定めたら多数区域からは回すという流れになるんで、多数区域の目標というのは減らすということあり、ありの指定になることははっきりしていると思うんですよ。医師不足でこれ診療科がない地域とか医療過疎と、こういう実態解決しなければならないという点では言うまでもないことだと思っております。
一方、人口比で見れば医師数の多い地域、こういう地域でさえも勤務医のところを見ますと過労死が発生するようなもう長時間労働が蔓延しているという状況あるわけです。医師が果たして過剰だと言えるような地域が日本に存在するんだろうかと、これ極めて率直な疑問であります。
医師偏在指標、これは全国一律の指標となると、運用は実情に応じてというお話ありました。しかし、この指標をどう決めるかという場合、厚労省のさじ加減で、少数区域、多数区域、これ線引き可能になってくるんじゃないかというふうに思います。具体的な指標、これ様々検討していくと先ほどお話あったけれども、どうやって決めていくのか。いかがですか。
○政府参考人(武田俊彦君) 今御指摘をいただいております医師少数区域、医師多数区域でございますが、医師偏在対策ということで、この偏在是正を目的といたしまして、医療ニーズ、人口構成、患者の流出入などを踏まえて二次医療圏ごとに設定した医師偏在の指標を基に、医師が少ない又は多いと認められる二次医療圏に対して、厚生労働省令で定める基準に従い都道府県が設定をするもの、こういうことでございます。
この医師偏在指標に基づきと、厚生労働省令で定める基準に従いということですので、こういうことをどういうふうに定めていくのかということでありますが、この医師偏在指標を始め、医師少数区域及び医師多数区域の設定の在り方などの詳細な制度設計につきましては、法案成立後速やかに医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会の場で議論をしていただきまして、その結論を得て、平成三十年度中に医師確保計画の策定方法を都道府県にお示しする中で明らかにしていく予定としているところでございます。
この検討に当たりましては、客観的な議論に資する適切なデータ、こういったことを用いて、しかも医療関係者、有識者にも参加をいただき、この場で十分議論を尽くすということでございますので、可能な限り現場からも納得感の得られるものとなるよう十分検討してまいりたいと思っております。
○倉林明子君 いや、どういう方向に向かっていくのかというところが本当に問われると思うんですよ。
これは、骨太二〇一五でどういう提起していたかというと、都道府県別の一人当たりの医療費の差を半減させると、これを目指すんだというふうに掲げていたんですね。既に、厚生労働大臣、塩崎大臣でしたけれども、当時、二〇一六年の段階で経済財政諮問会議に資料を提出しています。その一部をこれ資料一枚目に入れました。
これ見ますと、医療費の増加要因は何かというと、はっきり書いてあるんです、赤い棒、右のところです。つまり、入院では病床数と医師数が医療費を引き上げる要因になっているし、外来では医師数だとはっきり出しているんですね。つまり、医療費の地域差縮減のために、医師多数区域、こうなりますと、医師数減らすという対策を都道府県迫られることになるんじゃないかと、私はこういう方向にならざるを得ないと思うんですね、この方針上。
多数区域になったら医師減らすというようなことは、機械的にはもちろんだけれども、絶対やるべきじゃないというふうに思うんだけれども、どうでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) まず、今の医師の多数区域また少数区域、この医師偏在指標、これはこれから具体的に検討させていただくわけでありますけれども、いずれにしても、医師が偏在をしているという中において、少数区域と多数区域やっぱりそれぞれあるわけでありますから、その地域差を縮減していくということは、縮減をすることを通じて少数区域というものを解消していくということが非常に大事だろうというふうに思います。
ただ、都道府県ごとにそれぞれ医療ニーズが違うわけであります。年齢構成も違いますし、流出入等もいろいろあります。そういったことを踏まえて一定の客観性を持って適切に講じていくことができるよう、管内の医師偏在を是正し、患者の医療アクセスの改善を図るということが大事でありますから、それに資するように取り組ませていただきたいと思います。
○倉林明子君 医師数が本当に足りているのかどうかということで、参考人の質疑でもあったように、やっぱり絶対的な医師数の不足があるんじゃないかと、ここが観点として全く抜けていると私は思うんですね。医療費削減ありきということで進められているというこの中身については、やっぱり医師の抜本的な増員こそ必要だということを改めてこれ次回にも議論したいと思います。
そこで、確認したいのは、今回の法改正で、医療計画に新たに外来医療に係る医療提供体制の確保に関する事項、これ記載するとしておりますけれども、その目的というのは何か、端的にお願いします。
○政府参考人(武田俊彦君) 外来医療に関する、その確保に関する事項の記載の目的ということでございます。
現在、外来医療につきましては、無床診療所の開設状況が都市部に偏っている、また夜間救急連携等の医療機関間の連携の取組が個々の医療機関の自主的な取組に委ねられているなどの課題があったところでございます。入院については、医療計画において、地域医療構想、基準病床数制度など医師資源の不足、偏在を解消する制度が存在をしましたが、外来についてはこのような仕組みがございませんでした。
そのため、今回の法案では、地域ごとの診療所の開設の状況等を含めた外来医療機能の可視化を行い、新規開業者への参考情報とするとともに、可視化された外来医療機能の不足、偏在等に対応するための方針を地域ごとに策定する、こうした内容について地域の医療関係者が参画し議論する協議の場を設置する、こういう取組を通じて外来医療に係る医療提供体制の確保を進めていく、こういうことが目的でございます。
○倉林明子君 都市部で過剰だというお話あったとおり、その無床診療所の偏在を解消しようということになると、無床診療所の開業規制に、いや、現段階がじゃないですよ、次には無床診療所の開業規制につながっていくんじゃないかというのが現場から上がっている懸念の声でもあります。医師免許ということになりますと開業免許と同じということになりますから、医師の開業の自由、これやっぱり憲法上の権利だという指摘は、私は重たいというふうに思います。大臣、認識どうでしょう。
○国務大臣(加藤勝信君) 今御指摘のように、この無床診療所の開業規制の是非についても医師需給分科会において議論が行われたわけでありまして、実際、その中においては、無床診療所の開設に対する新たな制度上の枠組みを設けるべきとの意見がある一方で、今委員お話がありました憲法上の営業の自由との関係の整理、あるいは駆け込み開設の懸念など、法的、施策的な課題を全てクリアしなければそのような枠組みの実現は困難だと意見があり、賛否が分かれ、そして今回の法案改正でもその導入ということは見送っているわけでありまして、御指摘のように、今回のものは別に開業規制というものでは全くないわけであります。
いずれにしても、そうした中で、今回のこうした対応を通じて、この外来医療の偏在の解消、これにまずは努力をしていきたいというふうに思います。
○倉林明子君 四月二十五日の財政審の分科会で、これ更なる医療提供体制の改革だということで、高額医療機器の配置等と併せて外来医療のコントロールもこれ新規項目に上がっているんですよね。医師の開業の自由も侵害するような対応については慎重の上にも慎重であるべきだということは重ねて指摘をしておきたいと思います。
びっくりしたのは、この四月二十五日の財政審で、財政制度分科会ですけれども、財務省の提案、後期高齢者の窓口の負担を二割に引き上げるということは従来からも言われていた。さらに、介護保険の利用者負担は原則二割だと。入院医療費負担に金融資産等も考慮し、介護保険の補足給付と同様の仕組みを適用する。大幅な高齢者の負担増、引上げと、全く容認できないということは表明しておきたい。
後期高齢者の窓口負担二割の引上げに対して、全国老人クラブ連合会の理事から、経済的に苦しい人ほど医療にかかるのが遅くなる実態がある、患者の孤立化、重症化につながると、こういう懸念の声が上がっております。こういう声というのは本当にしっかり受け止めるべきだと思います。大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) 後期高齢者の窓口負担の在り方については、もう委員御承知のように、経済・財政計画の改革工程表において、平成三十年度末までに結論を得るということにされておるところでありまして、昨年の十一月八日にも社会保障審議会の医療保険部会において議論を行っているところであります。
これは、高齢者の負担に係る大変重要なテーマであります。高齢者を取り巻く環境、あるいは高齢者医療費の動向、特性、そうしたことを踏まえてしっかりと議論することが不可欠であるというふうに考えております。
○倉林明子君 厚労大臣だという答弁をしてほしいなと思うんですね。年金は減って、介護保険料って今年度も上がるんですよ。高齢者の負担というのは本当に限界だということをしっかり現実見るべきだと思います。これ以上の負担増というのは、医療、介護を受ける権利、これ低所得者から取り上げることにもつながると、余りにも私は高齢者いじめだと思います。負担増計画については、強く撤回を求めておきたい。
さらに、財務省というのはすごいなと思ったのが、医療保険の給付率をこれ自動調整する仕組みを導入しようという提案があったと。本当に驚きました。これ資料二を入れておきました。これ考え方、イメージとして財政制度等審議会分科会に配られたものになっています。これ見ますと、医療費が伸びた場合、保険料と公費は抑制する、そうなると何が増えるか、専ら患者負担増ということで賄っていこうという考え方、イメージですよ。つまり、こんなことやったらどうなるかと。患者負担の上限撤廃ということになるんじゃないかと思うんです。厚労省、見解いかがですか。
○政府参考人(鈴木俊彦君) 御指摘の四月二十五日の財政制度等審議会の資料でございますけれども、これ読んでみますと、支え手の負担能力を超えるような医療費の増加があった場合に、ルールに基づき給付率を自動的に調整する仕組みということで、そう書かれているだけでございます。
したがいまして、どのような形でこれを調整するのかというのは必ずしも明らかに示されておりませんので、上限撤廃ということに本当につながるような制度設計を考えておられるのかどうかというのは今の段階では一概にお答えできないかなと思っております。
○倉林明子君 いや、少なくとも三割上限と、健康保険法の附則第二条一項で将来にわたって百分の七十を維持すると、これは法律で定めたことですよ。医療保険の給付率を自動調整する、こういう仕組みの導入というのは健康保険法と明確に矛盾すると、そういうことになりませんか。
○政府参考人(鈴木俊彦君) 財政制度等審議会で示された制度設計がどういうものかというのは、ただいま申し上げましたように一概に申し上げられませんけれども、その上で、仮に例えば、今御指摘ありましたように、現在法定されております給付割合を自動的に調整するというものであれば、これは、御指摘の平成十四年改正法附則の第二条に抵触する問題が生じ得るものと考えております。
いずれにしましても、この平成十四年の改正法附則第二条の趣旨、これ踏まえまして、公的な医療保険制度がしっかりと保障機能を維持していけるように必要な取組をしていくというのが最も大事じゃないかというふうに思っております。
○倉林明子君 検討中の骨太二〇一八、間もなく出されることになろうかと思うんですけれども、今後三年間の社会保障費の伸び、これまで以上の抑制を盛り込もうと、こんな動きさえ伝わってきております。
今回の給付率の自動調整、この狙いは何なのかと。やり方を変えた総額管理につながっていくものじゃないかと私は思うんですね。医療は必要に応じた現物給付、負担は能力に応じて支払う、これ原則ですよ。既に高齢者の負担というのは限界を超えているんですよ。給付率の自動調整、これは優しく見守っている場合ではありません。断固阻止すべきですよ。私は、大臣、その立場で大いに頑張っていただきたいと思う。認識いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) これまでも、医療保険制度の持続可能性を確保していくという観点で、その時々の医療保険制度の課題、また社会経済情勢を踏まえて、診療報酬、保険料、患者負担、公費、こういった見直し方策を適切に組み合わせて総合的に対応してきたということでありますから、そうした中で、今回の財政制度等審議会での提案されている中身、まだ詳細は必ずしもよく分からないというところではありますけれども、患者の受診行動や家計といった医療や生活の実態が考慮されないまま患者負担が過大になるおそれがあるということ、また、医療費というのは、インフルエンザ等様々な流行、あるいはこの間いろいろ新薬が導入されてどんと上がるといったこともあります。そうした変動がある。そうしたことが、医療費の変動、そして景気の変動等に応じて頻繁に患者負担が変わるということになりますと、将来の医療に対する国民の安心をどう保っていくのかという懸念もあるわけでありまして、この財政制度審議会の議論にはこういった課題があるというふうに考えております。
○倉林明子君 国民の医療を受ける権利を保障してきた、保障する、これが国民皆保険制度に対する国民の信頼だと思うんですよ。本当にこれを崩壊させるような総額管理、自動調整などという考え方は本当に撤回してもらうように、頑張れ厚労省と申し上げて、終わります。