国負担率を本則に戻せ 雇用保険法改定(厚生労働委員会)
(資料はありません)
雇用保険法等の一部を改定する法律が31日、参院本会議で日本共産党を除く賛成多数で可決・成立しました。
採決に先立ち日本共産党の倉林明子議員は30日の参院厚生労働委員会で質問と反対討論に立ち、失業給付水準が極めて低いにもかかわらず、国庫負担率を雇用保険法制定以来最低の水準に引き下げる法改定は「国の責任を放棄するものだ」と厳しく批判しました。
政府は2000年以降、保険財政悪化を口実に給付を抑制。自己都合離職者の給付日数を最大300日から150日に短縮するなど給付期間や額を引き下げてきました。最大330日給付される事業主都合離職との格差も問題となっています。
倉林氏が、自己都合のなかにも事業主都合が隠れていることを示し、格差解消を求めたのに対し、塩崎恭久厚労相は自己都合と事業主都合の格差を「妥当な内容だ」と強弁。倉林氏は、長時間労働から身を守るための離職の抑制や質の悪い再就職を招きかねないものだとし、「実態をよくみて検討すべきだ」と迫りました。
厚労省は、今回の法改定によって国庫負担率が本則の1割となることで年間約2300億円も国が失業給付の負担を減らす一方、給付の日額最低は2460円にすぎないことを明らかにしました。
倉林氏は、給付額は失業者の生活保障には極めて不十分だとし、国庫負担率を本則に戻し「拡充に足を踏み出すべきだ」と主張しました。
質問に入ります前に、さきの二十八日に政府の働き方改革実現会議が実行計画を決定したと。一言申し上げておきたいと思うんです。月の上限時間は百時間未満とされたこと、さらに、指摘もあった年間最大九百六十時間、この残業が可能となる重大な抜け穴に対する歯止めもない、過労死ラインの長時間残業を容認する、こういう働かせ方改革は断じて認められないと。議論はまた改めてやりたいと思います。
そこで、最初の質問ですけれども、育児休業の拡充について私からも質問させていただきたいと思います。
参考人質疑で池田参考人からは、保育所等の整備を一層進めることが重要だというお話があり、駒崎参考人からは、育休の二年延長自体はいいことでもあるかなと思うがとされながら、待機児童問題からの逃げというのであれば本末転倒と、真正面から待機児童問題に取り組む、保育所を増やしていく、保育サービスインフラを拡充していく、それが一丁目一番地だと、こういう御意見もいただいたわけです。
そこで、大臣の受け止めをお聞きしておきたいと思います。いかがでしょうか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 今、保活をされている方々がたくさんまだおられるということでありまして、私ども政府として、希望する方が保育園などを利用できるようにしなければいけないと思っております。
各自治体による保育の受皿整備の前倒し加速化、そして、これ、企業が貢献することによって企業主導型の保育事業の創設、普及促進と幅広く今取組を行っておりまして、待機児童解消に懸命に取り組んでいるわけでございます。こういうことで、平成二十九年度末までの五年間で五十万人を超える保育の受皿拡大、これを進めることとしておりまして、これは民主党政権時代の二・五倍のペースで、今大車輪で受皿の拡大を進めております。
同時に、今、女性活躍ということで、二十五歳から四十四歳の女性の就業率、あるいは一、二歳児の保育利用率も、そしてさらには保育の申込者の数、それぞれ二倍近いペースで高い伸びとなっているわけであります。
こういう中で、待機児童問題というのがまだ二万人を超えておられるわけでありますので、政府としては、保育の受皿の整備、それから女性の就業率あるいは保育園の利用率、男性の育休取得状況、それと働き方改革の進み方、こういったことを併せ見ながら待機児童ゼロを絶えず実現することを目指してまいらなければならないというふうに思っております。
○倉林明子君 繰り返し大臣からも緊急避難的な措置なんだという認識についても語られたかと思います。緊急避難が恒久的な措置にならないように、あくまでも待機児童問題の解決は保育所を増設していくと、こういうことで対応していくんだということは強く申し上げて、私の方からも申し上げておきたいと思います。
そこで、続いて雇用保険について大臣に聞きます。
そもそもこの雇用保険制度の最大の目的、これは何か、御説明ください。
○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほども、前身の失業保険の法律ということでかつてあったという話がありましたが、雇用保険制度は、働く方が失業した場合や働く方について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に給付を行うほかに、働く方が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に給付を行うと。こういったことによって、働く方の生活や雇用の安定、就職の促進というものを図ることを目的としている制度だというふうに理解をしております。
○倉林明子君 そのとおりだと思うんですね。失業者の生活の安定ということで一番に来ているわけで、やっぱり失業給付の水準、これ本当にそれに見合ったものに確保していくということが雇用保険の根本的な課題とか制度の目的達成のために必要だと思うわけです。
失業給付の水準というのは十分と言えるのかどうかというところが問われているんだと思うんですね。参考人質疑でも、村上参考人から改善の余地はあると指摘がありました。二〇〇〇年、二〇〇三年、この改正で引き下げられたという水準になっているわけですけれども、その中身について主なものを改めて確認したい。
さらに今回、改定して引き上げるところもあるんだけれども、一体、一旦引き下げている中身についてはどこがどう改善されるのか、御説明ください。
○政府参考人(生田正之君) お答えいたします。
委員御指摘の、平成十二年、平成十五年の改正でございますけれども、この改正の考え方は、倒産、解雇等を理由にいたしましてやむを得ず離職した方への給付の重点化ということと、あと、基本手当の額が再就職した際の賃金を上回る方の多い高賃金層の給付率の見直しを行ったということでございます。
具体的な内容を申し上げます。
まず、平成十二年改正では、改正前は離職理由を問わずに最大三百日の所定給付日数でございました。これを離職理由によって給付日数を分けまして、自己都合離職者につきましては最大百八十日、倒産、解雇等による離職者は最大三百三十日といたしました。
それから、平成十五年改正の具体的中身でございますけれども、これにつきましては、短時間労働被保険者とそれ以外の一般被保険者の給付を統一するというところで給付日数が変わったわけですけれども、所定給付日数につきまして、短時間労働者以外の一般被保険者について見ますと、自己都合離職者について三十日分短縮しまして、最大百八十日から百五十日となってございます。それから、倒産、解雇等による離職者につきまして、一定の層につきましては三十日分を拡充するということにいたしておりまして、あわせて、基本手当の給付率を、給付と再就職賃金の逆転現象を解消するという考え方から、高賃金層につきまして給付率を下げるということで、給付率、六〇%から八〇%の給付率であったんですけれども、それを五〇%から八〇%に引き下げてございます。
今回の改正でございますけれども、まず、倒産、解雇等によって離職した方のうち、被保険者期間、被保険者だった期間が一年から五年の三十歳から四十五歳の層につきまして、所定給付日数内で就職した人の率が他の層に比較して非常に低いということも踏まえまして、三十歳から三十五歳未満につきましては三十日分を拡充いたしまして、九十日から百二十日に拡充いたしております。それから、三十五歳から四十五歳未満は六十日分拡充いたしまして、九十日から百五十日に拡充をいたしております。それから、基本手当日額につきましては、最近の賃金分布等も踏まえまして、下限額、上限額等につきまして引上げをいたしております。
○倉林明子君 いろいろ御説明いただいたんだけれども、実質、その給付日数の問題等、大きいところで二〇〇〇年、二〇〇三年、これ引き下げた水準、二〇〇〇年前のところには戻っていないと、復活できていないという状況にあるというのは、これ事実だと思うんですね。
これ、参考人から更に指摘がありました。特定受給資格者と自己都合の場合の格差があり過ぎると午前中議論もありました。これ、端的にお答えいただきたい。どれだけの格差があるということになっているんでしょうか。
○政府参考人(生田正之君) 基本手当の所定給付日数につきましては、就職の困難度を踏まえまして、年齢や離職理由を考慮するということと、給付と負担の均衡の観点から、被保険者であった期間を考慮して決定するという考え方でございます。
具体的な所定給付日数でございますけれども、自己都合離職者につきましては、被保険者であった期間に応じまして九十日から百五十日でございます。一方、特定受給資格者、倒産、解雇等による離職者につきましては、年齢や被保険者期間、被保険者であった期間に応じまして、九十日から三百三十日となってございます。
○倉林明子君 大臣に聞きたいと思うんですね。この自己都合というものの実態についてです。
よく聞くようにとハローワークでも指導しているという答弁もありました。この自己都合という中には事業主都合の離職が隠れていると、こういう実態があるんだということも厚労省からも答弁あったとおりだと思うんですね。さらに、事業主都合でなくて、本当に自己都合なんだけれども、過労死するような職場をやっぱり辞めざるを得なかったというようなケースというのも実は自己都合に含まれるわけですね。
私、参考人の指摘もありました、議論もありました、こうした自己都合、事業主都合ということで大きな格差を付けているという合理性がないんじゃないかと思うんです。格差解消、必要だと思いますよ。いかがでしょうか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 長時間の中でもひどいケースにつきましては、これは自己都合ではなくて特定受給資格ということになる扱いをしているところでございまして、自己都合離職者に比べて特定受給資格者、これの給付日数を手厚くしているというのは、倒産、解雇などあらかじめ再就職の準備をする余裕がなく離職を余儀なくされた方はやはり再就職までの一定の期間を要すると想定をされるためでございまして、こうした現行の仕組みはそれぞれの方の必要に応じた給付を行う観点から妥当な内容ではないかというふうに考えているところでございます。
○倉林明子君 いや、妥当やとは思いませんよ。身を守るために退職したら、次、やっぱり自己都合だということになって、格差があるということで、次に就職ということでいうと選んでられないという、また質の悪い就職につながる危険かてあるわけですよ。
そういう意味で、私は実態を踏まえて考えるべきだというふうに思うんですね。そこは実態を見て、よく給付の改善、引上げに向けた検討をこれは求めておきたいと思います。
そこで、重ねて質問しますけれども、賃金日額が先ほどあったように引上げするということになっています。月額、最低どれだけの給付水準になるのか、御説明ください。
○政府参考人(生田正之君) お答えいたします。
今回の法改正によりまして、賃金日額の下限額につきましては二千二百四十六円から二千四百六十円に引き上げられることになります。賃金日額が上がるものですから、それに合わせまして基本手当として受け取る金額、日額も上がりまして、それが日額千九百六十八円になるところでございます。
○倉林明子君 月額で計算してみても、私は、決して失業者の生活保障に十分な水準と言えるのかと、これは本当に検討が必要だというふうに思っています。私は決して十分ではないというふうに思うんですね。離職前の生活保障がこれでできていると言えるのか、生活安定の水準と言えるのかと、こういう検証必要だと思うんですね。抜本的な拡充が求められる水準だということを強く指摘しておきたいと思います。
〔委員長退席、理事島村大君着席〕
そこで、私、具体的な解決すべき課題として今回提起したいと思いますのが、季節労働者の問題です。積雪寒冷という気象条件から、冬期、冬場の産業活動に著しい制約があり、北海道を中心に冬期に失業する労働者というのが現在でも全国で十万九千人いらっしゃいます。こうした季節労働者に対する雇用保険が適用されるわけですけれども、これ雇用保険制定時の給付水準どうだったのか、そして現状の給付水準どうなっているか、御説明いただけますか。
○政府参考人(生田正之君) お答えいたします。
まず、雇用保険法の前身の失業保険法が昭和三十年に改正されまして、それで九十日の一時金という形で給付が設定されました。現在は季節労働の方に対する給付である特例一時金といたしまして、基本手当の日額の四十日分の給付となってございます。
○倉林明子君 そうですね、雇用保険が制定されたときに、それまで失業保険で九十日だったのが五十日になったんですよね。それが今四十日だということになっているわけですよね。
これ、二〇〇七年には二十日間の講習で七万円が受け取れたという季節労働者冬期援護制度というのもあったんだけれど、これも廃止された経過があります。今あるのは、通年雇用促進支援事業、これ実施しているんだというんだけれど、使えているのは二千七百人程度にとどまっているんですね。
私、昨年二月に北海道がまとめた季節労働者の調査結果報告書というものを見せていただきました。これ北海道だけで季節労働者は六万六千人おられます。家計の中心、平均年齢五十二歳ぐらいです。この家計の中心となっている季節労働者による平均年収というのは二百十二万円なんですよ。とても厳しい状況です。厚生労働省は、その二事業、支援事業も使って通年雇用を促進、支援するんだというんだけれども、実は事業主の意向調査もしているんです。これ、今後も季節労働者の雇用を維持、拡大する、つまり冬期は使いませんよという雇用を維持、拡大すると答えた事業主が八九・五%、傾向としては増加傾向にあるんですよ。通年雇用、これも特に考えていませんという事業主は三八・五%、結構な数なんですね。
現状を踏まえますと、通年雇用というのはうまくいっていないんです。引き続きこの季節労働という実態が続いていくと。その場合、失業給付及び支援事業というのを、このままでいいんだろうかと。私、拡充の方向で見直すべきではないかと思うわけですけれど、いかがでしょうか。
〔理事島村大君退席、委員長着席〕
○政府参考人(生田正之君) 済みません、最初に先ほどの答弁の訂正をさせていただきます。
昭和三十年のときに、九十日につきまして一時金と申し上げましたけれども、当時は一時金ではなくて、一般の求職者と同じように失業の認定をして払うというやり方でございましたので、訂正をさせていただきます。済みませんでした。
○国務大臣(塩崎恭久君) ただいまの通年雇用促進支援事業、この御指摘でございますけれども、これは季節労働者の通年雇用化が効果的に進むように、地域の要望を踏まえながら、働く方向けの技能講習あるいは事業所向けの経営労務管理講習、こういったことなどの支援に取り組んできた事業でございまして、季節労働者が減少する中でも本事業によって通年雇用化した季節労働者は増加傾向にございまして、着実にそれなりの成果を上げているというふうに思っております。
厚労省としては、今後も地域における通年雇用の促進、これは今先生から御指摘のとおり大事なことでございますので、この取組をしっかりと後押ししてまいりたいと思っております。
それから、季節労働の方につきましては、一定時期に失業が事実上予定をされているというふうに考えられるわけでありますので、そして循環的な給付ということになりますから、一般の被保険者とは異なる給付内容とした上で、受給者の給付と負担の均衡、これを考慮しつつ、既に最大限の配慮を今日まで行ってきているというふうに考えているところでございます。
○倉林明子君 いや、後押ししたいと今おっしゃった通年雇用、仕事の確保という点で、北海道はそれなりに、夏場に本当だったら公共事業打つところを、冬場でもできるものは冬場に回してその賃金については割増ししたりとか、仕事も出すし、かさも増すと、賃金の、そういう努力しているんだけど、地元に言わせると、国の姿は見えないというわけですよ。後押しするんやったら冬場の仕事くれと、こういう声に正面からやっぱり国全体として応える、こういう点でも強く努力を求めておきたいというふうに思います。
そこで、これまでいろいろ紹介してきた給付の水準、季節労働者の問題ありました。改めて大臣の認識をここで総括的に伺っておきたいと思うんですけれども、現状の給付水準で雇用保険法上定めているような国の責任、これ十分に、責任は十分に果たしているというふうにお考えでしょうか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 雇用保険制度というのは、働く方の生活の安定と、それから先ほど申し上げたように就職の促進ということを図ることが目的であるわけでありますので、これらのバランスを取った給付水準とすることが必要だというふうに思っております。
今回の改正におきましては、若年層について、所定給付日数内の就職率が他の層と比較をして、年齢層ですね、他の層と比較をして低くなっているということを踏まえて、基本手当の給付日数を引き上げるなどの失業等給付の拡充を行っているわけでありまして、こういった見直しを含めた雇用保険制度の給付水準は制度目的を十分に果たしているのではないかというふうに考えているところでございます。
○倉林明子君 私は全く不十分だと思うんですよ。本当に失業者が生活の見通しを持てるようなやっぱり失業給付の水準を目指すべきだと思うんですよ。そういう水準からいって、二〇〇〇年や二〇〇三年の引き下げた水準さえも復活できていない。さらに、余裕があるというわけでしょう、積立金もあって。そういうときに拡充へ足を踏み出すということが私は強く求められていると思うわけです。そこで、問題だと思うのは、こうした給付水準の改善が不十分なまま、更に更に国庫負担を大幅に引き下げるということになっているわけですね。
そこで、確認したいと思うんです。国庫負担の本則を確保した場合の金額、さらに改正後の国庫負担額、数字でお答えいただけますか。
○政府参考人(生田正之君) お答えいたします。
まず、雇用保険の国庫負担を本則どおり付けた場合でございますけれども、平成二十九年度予算ベースで考えますと二千五百三十六億円でございます。それから、今回一〇%になってございますけれども、本則の一〇%で計算いたしますと二百五十五億円でございます。
○倉林明子君 私、こういうときに国庫負担をここまで引き下げるというのは本当に国の責任放棄だと、この批判免れないと思うわけですね。この水準というのは、雇用保険法制定以来過去最低の水準なんですよ、改めて確認しませんけど。雇用保険に対するこうした責任放棄というのは許されないということ。雇用保険制度は、私、雇用のセーフティーネットであり、安定した就職先を探す失業者の生活維持を可能とする水準に引き上げるべきだと、引上げの方向を目指すべきだと思いますけれども、最後、大臣の決意を聞いて終わりにしたいと思います。
○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほど申し上げたように、今回三年間の限定ということで引下げをさせていただいているわけでありますので、法律どおり三年間で終わらすということが大事だというふうに思っております。
○倉林明子君 こういうときにこそ失業給付がどうあるべきかという議論こそ行い、そのふさわしい水準の引上げに向けた議論こそやるべきときなんだということを強く申し上げたいと思います。
終わります。