倉林明子

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感染症法改定案 参院委可決 医療抑制政策転換こそ(2022/11/24 厚生労働委員会)

 医療機関に対し罰則つきで感染症病床確保を義務づける感染症法等改定案が24日の参院厚生労働委員会で、自民、公明、立憲民主、日本維新の会、国民民主の各党の賛成多数で可決されました。日本共産党とれいわ新選組は反対しました。日本共産党の倉林明子議員は「医療・社会保障抑制政策の抜本転換こそ」と求めました。

 質疑で倉林氏は、厚生労働省が所管する国立病院機構と地域医療機能推進機構に対し、積立金(利益剰余金)の国庫返納の前倒しを求める方向で調整に入ったとの報道を取り上げました。「現場では積立金を活用した賃上げが検討されていたが、それもできなくなると怒りが広がっている。報道は事実か」とただしました。

 加藤勝信厚労相は「現時点で政府としてそうした方針を決めたものはない」と答えました。倉林氏は「報道では積立金返納の前倒しは防衛財源の確保に道筋をつけるためだとされている。医療を削って防衛費に回すなど納得できない」と主張。医療機関が安心して賃上げができる取り組みを求めました。

 倉林氏は、感染症法等改定案で罰則つきで感染症病床確保を義務付ければ、結果的に一般病床削減を義務付けることになると批判。コロナ禍でも病床削減を促進してきた消費税を財源とした補助金の中止、新興感染症から命を守るための看護師の大幅増員を迫りました。


議事録を読む(対総理質疑)

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 先ほどの質疑で、総理は、宛名もただし書も空白だった領収書の問題で、適正な支出だったということなんですけれど、適正な支出を裏付けるのが領収書ですよね。で、これ適正だと、適正な支出だったというのであれば、新たな証明する責任が出てくると思うんですよ。今日は求めませんので、きっちり国会に説明していただくように申し添えておきたいと思います。
 で、質問です。
 今年の三月十六日、総理は記者会見で、このコロナの出口ははっきり見えてきたと言明されました。その後、第六波、第七波と過去最悪の感染者数と死者数となったわけです。現在、まさに第八波が始まっております。私には出口は全く見えてきません。
 総理に見えていた出口というのは具体的にどんな姿だったのか、そして、今、総理には出口がどんなふうに見えているのか、簡潔にお答えいただきたい。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、委員御指摘の三月十六日の発言については、当時十八都道府県に適用されていたまん延防止等の重点措置を三月二十一日に全て解除する中で、第六波の出口、このように申し上げた次第であります。
 そして、今どう思っているかということにつきましては、この今の発言の後、今年夏の感染拡大において、政府としては、オミクロン株の特性を踏まえ、新たな行動制限は行わず、社会経済活動を維持しながら感染拡大の防止を図ることとし、九月にはウイズコロナに向けた新たな段階への移行の全体像をお示しし、社会経済活動の両立を進めてきたところです。
 引き続き、ウイズコロナに向けて、感染拡大防止と社会経済活動のバランスを取りつつ、できるだけ平時に近い社会経済活動が可能となるよう、専門家の皆さんの意見も聞きながら取り組んでまいります。

○倉林明子君 出口が見えたという話があったんだけれども、その後やっぱり感染拡大を本当に繰り返してきたわけですよね。で、第六波、第七波、医療の逼迫というのはコロナの医療だけじゃなかったわけで、一般医療にもかなりの制限を加えざるを得ない状況が生まれたと。参考人質疑でもこれリアルに報告ありました。
 医療の逼迫が起これば、より強い対策を打つとされていたわけですよ。だけど、一度も打たなかった。なぜなんでしょうか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 社会経済活動と感染拡大防止の両立のため、その時々の情勢に応じて、有識者の意見も踏まえつつ、適切な対応を行ってまいりました。
 第六波においては、全体像に基づいて、あらかじめ医療体制の強化を進め、最大三十六都道府県にまん延防止等重点措置を適用し、めり張りの利いた行動制限を行うなどにより、緊急事態宣言に至ることなく感染状況を改善する、このこと、こうしたことができたと考えています。
 第七波においては、更に強化された保健医療体制の下、病床の逼迫を回避するための取組を行いつつ、三年ぶりに行動制限を行わずに過ごすことができ、多くの国民の生活となりわいを支えることができた、このように思っています。
 感染防止、拡大防止と社会経済活動のバランス、これを取りながら、平時に近い社会経済活動が可能となるように、これからも専門家の意見を聞きながら取り組んでいきたいと考えております。

○倉林明子君 行動制限は緩和、社会活動を回していかないといけない、これ否定するものじゃありませんよ。だけど、今後も大規模な流行を繰り返す可能性極めて高い。で、脆弱な医療体制の下で感染者数が増えれば、高齢者を中心に死亡者数が増加する、これも避けられないわけですね。社会経済活動を維持しながら感染者数をどうやって減らしていくのかと。具体的に。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 十一月十日の日に四人の専門家の皆さんと意見交換をさせていただきました。
 これまでも申し上げてきているように、国民の皆様には、是非早期のワクチン接種をお願いしたいと思います。また、寒い地域で感染が拡大する傾向にありますので、十分な換気、上手に行っていただくようお願いをしなければならないと思います。
 こうした国民の皆さんの御協力をいただきながら、政府としては、発熱外来、電話・オンライン診療の体制強化など保健医療体制の確保に先手先手で取り組んでいく、こうした方針を進めております。
 是非、こうした取組、国民の皆さんの協力も得ながら、社会経済活動を維持しながら感染拡大防止を図っていく、こうした取組を緊張感を持って進めていきたいと考えています。

○倉林明子君 いや、国民には後手に映っているんですよ。感染拡大を本当に招いてきたと、その責任が問われると思います。
 私ね、救急の受入れができずに涙した職員がいたんですよ。救急受入れがされずに施設に留め置かれて命失ったという高齢者いたわけで、支えた福祉の現場、もうぎりぎりで支えてきたんですよ。こういう、医療も介護も福祉の現場も、このままやったら、第八が感染者数が第七波のときと同様増えたらね、またこれ崩壊に陥ることは火を見るより明らかだと思うんです。
 このまま崩壊させるわけにはいかないわけで、総理にはその覚悟が問われると最後申し上げて、終わります。


議事録を読む(対政府質疑)

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 本法案では、協定を締結した医療機関に対し、罰則付きで病床確保を義務付けると。参考人からは、コロナ病床一床を確保するのに一般病床でいうと二床分の人手が必要となったと、一般病床を閉鎖してコロナ患者の受入れを行ったという状況についてのお話ありました。
 これ、コロナ病床の確保を義務付けるということになりますと、併せて一般病床を減らさざるを得ない、一般病床の削減も併せて義務付けるということに実態としてはなるのではないか。いかがでしょう。

○国務大臣(加藤勝信君) 今般、おっしゃるとおり、これまでの対応の中で、コロナ感染症の病床を確保するために一般病床を潰していただいて確保していただいた、それに対して病床確保の補助、支援金も出させていただいた、こういう背景であります。
 他方で、今般の改正案で、都道府県が策定する予防計画と医療計画に基づいて感染症病床を受け入れる病床確保を担う医療機関だけではなくて、こうした医療機関に代わって感染症患者以外を受け入れて通常医療を提供する医療機関、これについても計画の中に入れていただき、また協定を締結していただくということになっておりますので、医療資源、いずれにしても限られておりますから、その中であらかじめそれぞれの医療機関の地域における役割分担、連携を明確化することによって、通常医療の提供を継続しながらまたコロナ等への感染症対応が行っていける、こういう体制の構築を目指していきたいと考えております。

○倉林明子君 いや、何か代わりにね、病床に余裕があるようなところは日本の医療機関ないですよ。ぎりぎり九〇%ぐらいの稼働率を回して何とか日常医療を支えてきているところにコロナが来て、六波、七波のような状況になったわけですよ。コロナ病床を増やすっていうことはね、一般病床を減らすということで成り立ってきたというこれ事実をしっかり踏まえた計画にしていく必要がある、あるからこそ申し上げているんです。
 で、コロナ禍の二年間で削減された一般病床、これ五千六百十六床になりました。これ、一般病床の削減っていうのをコロナ禍でもやったわけですが、コロナ病床の確保を更に困難にしたというふうに思うんですよ。で、コロナの出口が今見えないという状況の下で更に病床削減を加速する、これ消費税財源を、補助金はやめるべきだと本会議でも求めました。
 私はね、第八波がここまで拡大も想定されている下で、今、一般病床の削減やるべきではないと思いますけれども、いかがでしょう。

○国務大臣(加藤勝信君) まず、地域医療構想、何度も、何回も申し上げているように、中長期的な人口構造の変化、地域の医療ニーズに応じて、病床機能の分化、連携により質の高い効率的な医療提供体制の確保を目指しているわけでありまして、そういった意味において、今回、感染症もその中に入れ込んでその体制を構築していく。
 そのためには、今おっしゃった病床機能再編支援事業、これは単なる病床削減を目的としたものではなくて、地域の合意を踏まえて必要とされる医療提供体制の構築を進めていく、それに対する支援策であります。
 厚労省としては、地方自治体ともしっかり連携を取りながら地域医療構想を着実に進め、今後の高齢化社会の中でですね、の様々な課題、こうしたものに取り組んでいきたいと考えております。

○倉林明子君 中長期的な話はね、議論は、議論は必要だと思うんですよ。ただ、今々コロナ病床を、コロナ感染拡大期において一般病床潰すなんていうことを加速しているんですよ、結果的に減っていますから。こういうことはやめるべきだと強く申し上げておきたい。今やることではないということです。
 加えて、厚生労働省が所管する国立病院機構及び地域医療機能推進機構に対して、これ積立金の国庫返納の前倒しを求める方向で調整に入ったと、こういう報道が一部ありました。
 通常なら積立金の返納は令和六年になります。積立金を活用した賃上げの検討も現場ではされていたんだけれども、それもできなくなるということで、現場では怒りの声が広がっております。
 この報道、事実でしょうか。厚労省は具体的に検討しているんでしょうか。

○国務大臣(加藤勝信君) そうした報道があることは承知をしております。当該、名前が上がっていたのは独立行政法人国立病院機構、いわゆるNHOと、独立行政法人地域医療機能推進機構、JCHOでありますけれども、それぞれのその法律によって、今委員お話しのように、一定の条件の中で積立金については国庫納付にするという規定はあるというのはそのとおりでありますが、現時点で政府としてそうした方針を決めたものはございません。

○倉林明子君 それを、その報道を基に、現場で賃上げはストップだというような影響が実際に出ているんですね。ないならないできちんと現場に説明しないと、来年の予定した賃上げということに踏み出せないというような状況になっていますから、よく現場の実態つかんで取り組んでいただきたいと思います。
 この報道を見ますと、防衛費財源確保に道筋を付けるためだというような説明までされているんですね。医療を削って防衛費に回すなどは本当に納得できないと申し上げたい。病床を減らし、賃上げ財源まで奪うと。これから八波ですから、立ち向かえという現場の労働者にとったら私はあんまりだというふうに思います。罰則まで付けるということで、こういう対象にもなっている病院です。よくよく、現在では考えていないということじゃなくて、安心して賃上げに向かえるように取り組んでいただきたい。強く要望いたします。
 新興感染症にどう立ち向かっていくのかということなんですけれども、感染症を受け入れる病院はもとより、一般病床の確保、これはやっぱり絶対数としても必要だし、私は、今度の第七波でも本当に明らかになったように、看護師ですよね、看護師がいなかったら病床は動かないという事態になったんですよね。改めて、九割の病床を稼働させないと利益が上がらないと、利益率が一%出たらいい方ですよ。そういう配置をぎりぎりのところにやらせてきているという状況では、本当に限界が見えたんだということだと思うんです。
 看護師基準、配置基準について、やっぱり改めて、この新興感染症を経験した上で、大幅な増員、配置基準見直して、大幅な増員必要だと。いかがでしょう。

○国務大臣(加藤勝信君) 看護職員についての医療法上の人員配置基準、これは衛生規制として医療機関が有すべき最低限の人員の基準を示したものであります。実際の人員配置については、配置標準以上とすることも含め、個々の病院の規模、機能に応じて判断されることが適切であり、実際、診療報酬の入院料については看護職員の配置に応じて評価しており、医療機関が入院患者の状態や地域の医療ニーズの変化に柔軟かつ円滑に対応できるようにしているところであります。
 今お話がありましたこの最低基準の引上げについては、現に運営されている各医療機関の診療体制、ひいては地域医療の提供体制にも影響があることが想定されるため、慎重に検討する必要があると考えております。

○倉林明子君 日本医労連が毎年のようにアンケートを取っているんです。そこで看護師の声を集めているんですよ。是非聞いていただきたいと思う。私たちがやりたいのは業務じゃなくて看護だと、ちょっと待ってがない看護がしたいと。いい看護がしたいんですよ、現場の看護師はね。増員なくしてこの看護に取り組めないという声です。
 社会保障費の抑制ありき、削減ありき、これじゃ新興感染症から国民の命守れないと、こういうことを教訓とすべきだと申し上げまして、終わります。


議事録を読む(反対討論)

○倉林○ 日本共産党の倉林明子です。
 私は、日本共産党を代表して、感染症法等の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。
 本法案に反対する第一の理由は、病床確保に関する協定の履行確保措置として、医療機関が正当な理由なく協定に沿った対応ができていない場合は、勧告し病院名などの公表、とりわけ特定機能病院や地域医療支援病院には承認取消しという重い罰則を科している点です。
 参考人からは、コロナ対応で通常医療を制限しなければならない中、断らない救急を誇りに働くスタッフがどうしても心肺停止の搬送依頼を受けられず救急を断り、余りの悔しさに涙したという告発がありました。
 コロナ病床を確保すれば、一般病床のみならず、手術や一般救急も制限に追い込まれます。その結果、介護福祉事業所でクラスターが発生しても入院できずに施設に留め置かれ、必要な医療が受けられずに亡くなる人が増加したのが第七波でした。
 政府は、コロナ病床確保を求める一方で、病床削減を促進する消費税を財源とした補助金によってコロナ禍で五千六百十六床もの病床を削減し、地域医療機構本部から発出されている地域医療機構病院の人員削減計画推進については容認するなど、コロナ対策と矛盾する病床削減や人員削減を進めています。
 新型コロナの経験を踏まえて、感染症対応の抜本的強化を目指すのであれば、これまでの医療、社会保障抑制政策の抜本的な転換こそ必要です。
 第二に、初動対応等を含む特別な協定を締結した医療機関に財政支援を行う流行初期医療確保措置の費用負担割合を保険者にも負担させる。そもそも感染症対策の費用は公費負担が原則であり、保険者に負担をさせるべきではありません。また、対象を初動対応の医療機関に限定していますが、コロナの下で一般医療の支えがなければコロナ受入れ病床も回らなかったことを踏まえれば、全ての医療機関に対する減収補填こそ必要です。
 これまでの社会保障費の抑制政策によって日本の医療、公衆衛生体制は弱体化されてきました。社会保障費の抑制ありきでは新興感染症から国民の命を守ることはできないと厳しく指摘し、討論といたします。


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