倉林明子

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日・週の残業規制なし 倉林氏 「働き方」法案撤回求める(2018/6/12 厚生労働委員会)

 「働き方改革」一括法案めぐり日本共産党の倉林明子議員は12日の参院厚生労働委員会で、ソニーでは社員2人に1人が裁量労働制を適用されたうえ、1日23時間労働(休憩あわせ24時間)の残業協定を結んでいる実態を告発し、「過労死ライン」の残業を容認する同法案では是正できないとして「過労死容認の法案は撤回すべきだ」と追及しました。

 倉林氏は、ソニーでは裁量労働制の「みなし時間」を7時間45分としていながら、残業が「過労死ライン」の単月100時間の労働者が10人~55人、3カ月平均80時間が24人~37人(半年ごと集計)におよぶと指摘。「みなし時間と実労働時間のかい離は明らかだ」と強調しました。

 加藤勝信厚労相は、「かい離があれば指導する」というだけで、違法だとは言えませんでした。

 ソニーでの残業を決める「三六協定」は、1日の上限が15時間15分で、1日最長23時間労働になります。

 法案は残業の上限規制について月、年単位だけで、しかも単月100時間、平均80時間の「過労死ライン」を容認しています。倉林氏は「1日、1週単位の上限とインターバル規制が必要だ」とただしました。

 山越敬一労働基準局長は「(1日、1週の上限は)対応困難な場合があり、慎重な対応が必要だ」などと答弁。加藤厚労相は「インターバルは努力義務とした。上限はギリギリ実現可能なものだ」と弁解しました。

 倉林氏は、損保ジャパン日本興亜の裁量労働制について、営業職への違法適用が撤回されたものの、「事業場外みなし労働時間制」が適用され、実態は変わらないと指摘。「携帯電話などで時間把握は可能であり、法令違反だ」と迫りました。

 加藤厚労相は「しっかり行われていなければ、厳しく指導する」と答えました。


議事録を読む

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 柔軟な働き方を拡大していくと、それが一つ高プロになるわけです。しかし、労働時間の規制を外すと、これ更に外していくことにつながっていくわけです。そこで、裁量労働制、これ、労働時間の規制を外した働き方ですけれども、現状どんな働き方になっているのかということをしっかり検証していく必要があるんじゃないかというふうに思っております。
 そこで、具体的な事例を紹介したいと思います。
 一つは、損保業界最大手の損保ジャパン日本興亜です。これは、裁量労働制を営業職まで拡大し、違法適用しているということで昨年三月の厚生労働委員会で小池晃議員が指摘をした問題です。
 実際の残業時間はみなし労働時間手当の二倍と。いわゆるただ働き。当時の塩崎厚労大臣は、企画業務型裁量労働制といいながら法律の定めに合っていないものは不適切な運用だから、労働基準法違反ということが確認された場合は厳しく指導していかねばならないと、こういう答弁いただいているわけですね。
 事実確認として、指導されたんでしょうか。

○政府参考人(山越敬一君) 個別の事案に関することでございますので、また監督指導の円滑な実施に支障を来すおそれがございますことから、回答は差し控えさせていただきたいと思います。
 労働基準監督署におきましては、一般論でございますけれども、裁量労働制に係る不適正な運用等の情報があった場合を含めまして、各種情報から法違反が疑われるそうした事業場に対して監督指導を行っております。
 今後とも、各種情報から裁量労働制に係る不適正な運用が疑われる事業場につきましては、監督指導を徹底してまいります。

○倉林明子君 個別の事案だからそういう答弁になろうかと思うんだけれど、指導してもらったと思うんですね。なぜなら、昨年十月にはこの損保ジャパンは、営業職そして保険金サービスの職員への適用、これ撤回したんです。この営業職などは、労働時間の算定が困難だということで実は事業場外労働制に変更されております。しかし、現場の実態は何も変わっていないんです。
 一般論として聞きます。事業場外労働のみなし労働時間の対象にできない業務、これは何ですか。

○政府参考人(山越敬一君) 労働基準法第三十八条の二に規定をいたします事業場外労働に関するみなし労働時間制の対象となりますのは、労働者が事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間を算定することが困難な業務でございます。

○倉林明子君 労基法三十八条の二第一項に言う労働時間を算定し難いとき、これに当たるのかどうかということが問題になるわけですね。
 営業社員の事業場外みなし労働の適用が争点となった判例がございます。これは光和商事解雇無効確認等請求事件。これ、朝礼に出席し、その日の行動予定を提出して外出する、外勤、で、会社に帰ってくる、午後六時に帰ってくる、そして終業と、仕事終わるという業態だったんです。これが労働時間を算定し難いとは言えないということで判決が下った、これ大阪地裁の判決です。
 さらに、会社が携帯電話で労働時間の把握は可能だということで事業場外労働には当たらないという、みなし労働時間、対象できませんよという判決も出ています。
 つまり、朝、出社すると、そして行動予定も確認して、行き先もはっきりしていると、原則会社に帰ってきて仕事を終わると。実は、損保ジャパンもこの光和商事とそっくりの働き方になっているんですよ。
 一般論として聞きたい。法令違反じゃないでしょうか。

○政府参考人(山越敬一君) 一般論としてお答えさせていただきますけれども、労働基準法第三十八条の二に規定する事業場外労働、このみなし労働時間制の対象となりますのは、先ほど御答弁をさせていただきましたように、労働者が事業場外で業務に従事し、かつ使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な業務でございます。
 したがいまして、例えばでございますけれども、何人かのグループで事業場外に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間を管理する者がいる場合でございますとか、事業場外で業務に従事するが、無線などによって随時使用者の指揮、指示を受けながら労働をしている場合、あるいは事業場において訪問先、帰社時刻等の当日の業務の具体的な指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後事業場に戻る場合などのように、事業場外で業務に従事する場合であっても使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合には労働時間の算定が可能でございますので、みなし労働時間制の適用はございません。

○倉林明子君 いや、だから法令違反に当たるんじゃないかと言っているんです。裁量労働制の違法適用をやっていて指導を受けて、さらに今度は事業場外労働のみなし労働時間、こういう適用でもないのに、これ使っているんですよ。あのね、業界代表するような大手企業が指導されても更に法令違反でただ働きをさせる、これはもってのほかだと思うんですよ。指導すべきじゃないか。どうです、大臣。

○国務大臣(加藤勝信君) 倉林委員の御質問は、一般論になったり個別論になったりするので、ちょっとなかなか答えにくいのでありますが、一般論については局長から申し上げたのでもう申し上げません。
 いずれにしても、個別の事案が事業場外みなしの適用になるか、またそれが適切に適用されているか、それは個々の事業場の状況において判断していく必要があるというふうに考えておりますけれども、私どもとしては、そうしたことがしっかり行われていないということであれば、それは前、塩崎大臣の答弁もございましたけれども、しっかりと厳しく指導していかなければならないと、こういうふうに考えております。

○倉林明子君 法令遵守、これをさせていくということが労働行政で非常に大事なんだということで、一般論でも御答弁あったとおりですので、業界最大手がこんなことやっているということを踏まえた対応を求めておきたい。
 次に、これ電機業界大手の話であります。ソニーです。ここは一万人を超える社員おります。で、この社員の二人に一人が実は裁量労働制の適用ということになっているんです。対象業務の適用は、これソニーの場合、法の範囲ということで確認できております。
 しかし、実労働時間との乖離を見てみますと一日平均二時間長いと。労基法を適用すれば、残業時間は一か月百時間を超えると、こういう労働者が十人から五十五人あったと。スパンで見てみますと、半期ごとに締めて見てみると、そういう推計出てくると。三か月平均で、月平均八十時間超え、こういう過労死ラインを超える労働者も二十七から三十七人いるんだと。これ、労働組合が調べて分かったんですね。
 こういう実労働時間として見るならば、労働時間から手当として評価している分から見たら、みなし手当といったら一律三十時間分程度しか出ていないんですよ。つまり、実労働時間が過労死ラインを超えるような働き方になっている、みなし手当は一律で三十時間分程度。これが実は違法でないんですよね。このこと自身が非常に問題で、こんなことを合法として認めるならば過労死なんてなくせないと思う。大臣、どうでしょう。

○国務大臣(加藤勝信君) 一般論としてお答えをさせていただきますけれども、裁量労働制はその時間配分、仕事の進め方を働く方の裁量に委ね、自律的で創造的に働くことを可能にする制度ではありますけれども、対象労働者が過労死するようなことがあってはならないのは当然であります。
 裁量労働制においても、みなし労働時間と実労働時間の間に乖離がある場合、また協定や決議で定める労働時間の状況に応じた対象労働者の健康確保が適切に講じられていない場合などには、その適正化に向けて労働基準監督署においてしっかりと指導を行うことにしているところであります。
 また、今回は、労政審の建議を受けて、法案でも裁量労働制の対象労働者も含めて労働時間の状況について客観的な方法により把握する義務を規定をし、さらに、法定労働時間を超える労働時間が長時間労働となった場合の労働者本人の申出に基づく医師の面接指導についても、その基準、これは省令改正ですが、月百時間を月八十時間を超えた場合に改正するということにしているところでありますので、そういった措置等も含めて、裁量労働制が適正に運用をされていけるように取組をさせていただきたいと思っております。

○倉林明子君 いや、今適正になっていないんですよ。適正じゃない働かせ方、過労死生むような働き方というのが、これ裁量労働制であろうとも許しちゃならないと、そういう姿勢で私は臨む必要があるというふうに思っています。健康確保措置も、結局、結果としては何の歯止めにもなっていないという現状をお聞きしています。そこもしっかり押さえていかないと駄目だと、過労死なくせないと言っているんですよね。
 このソニーなんですけれども、裁量労働制と三六協定の関係を私、見てみたいと思うわけです。本法案で規制強化される労働時間の上限規制、これはあくまでも三六協定の特別条項になるわけです。一般論としてお聞きします。裁量労働制の場合、この上限規制の対象となるのかどうか。いかがですか。

○政府参考人(山越敬一君) 裁量労働制で働く方につきましても、今回の時間外労働の上限規制の対象となりますけれども、みなし労働時間に対して上限規制が掛かることになります。

○倉林明子君 最後、なりませんって答弁されたんですよね。

○政府参考人(山越敬一君) 裁量労働制で働く方についても……

○倉林明子君 最後だけでいいよ。

○政府参考人(山越敬一君) みなし労働時間に対して上限規制が掛かることになります。

○倉林明子君 ソニーは、実は所定内労働時間である七時間四十五分をみなし労働時間と規定しているんです。そうなるとどうなるかというと、三六協定はあくまでも法定外の長時間労働の労基法違反を免除すると、こういうものになってきたわけですよね。一般に、みなし労働時間を法定内に設定した場合、これはどうなるんでしょうか。

○政府参考人(山越敬一君) 裁量労働制でございますけれども、業務の遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関して、使用者が具体的な指示をすることが困難な業務、これは専門業務型裁量労働制でございます、又は使用者が具体的な指示をしないこととする業務、企画業務型裁量労働制でございます、これを対象といたしまして、労使で定めた時間、労働したものとみなす制度でございます。
 労使で定めたみなし労働時間が七時間四十五分など法定労働時間以内に設定されていた場合は三六協定の締結や割増し賃金の支払は必要ございませんが、裁量労働制の下ではみなし労働時間と実労働時間の乖離を生じないようにすることが必要でございます。
 御指摘のようにみなし労働時間と実労働時間の間に乖離が認められる場合は、各種記録を確認するとともに、必要に応じ労働者等からの聴取を行うなどによりまして実態を把握し、必要な見直しを行うよう指導しております。

○倉林明子君 いやいや、裁量労働制ではみなし労働時間が三六協定の対象になるんじゃないですか。だからそういう答弁になるんですよ、乖離があると問題だから。それで指導するというわけだと思うんだけど、実際には過労死水準で働いていても、みなし労働でしか規制の対象にならないということなんですよ。三六協定の上限規制、これを歴史的にやるんだ、罰則付きでやるんだというんだけれども、裁量労働制の長時間労働の歯止めにはならない危険があると、これは現実のものとして指摘をしておきたいと思うんです。
 こうやってただ働きさせてきたのがソニーなんですよ。驚いたのが、二〇一八年三月の決算、二十年ぶりの過去最高益ですよ。しっかり払える能力があるのに、こういうことで残業時間を払わないというようなことを私は天下のソニーやってええのかと言うておきたいと思います。
 更に聞きたい。法案では、三六協定の上限、これ月、年、これ上限のみです。一日、週の上限がありません。その理由は何でしょうか。一日八時間、そして週十五時間、この法定時間を超えるような三六協定の実態というのをつかんでいますか。つかんでいるか、つかんでいないかだけで結構です。

○政府参考人(山越敬一君) まず、実態をつかんでいるかということでございますけれども、一日についての協定時間数、詳細な実態については把握をしておりません。それから、一週の延長時間について定めている事業場についてでございますけれども、平成二十五年度の労働時間等総合実態調査によりますれば、三六協定を定めている事業場のうち一・七%でございます。

○倉林明子君 ソニーの三六協定に戻りますけれども、一日の労働時間、この上限設定が十五時間十五分なんです。所定の七時間四十五分と合わせると二十三時間の労働が可能になっているんです。一日上限を徹夜勤務可能。私、ソニーのことばっかり言いましたけれども、大企業で少なくないんです、この二十三時間とか徹夜可能だっていうところ。
 本法案でも、徹夜可能な三六協定というのは、これ違法にならないと思うんですけれども、イエスかノーかで。

○政府参考人(山越敬一君) 今回の時間外労働の上限規制でございますけれども、月四十五時間、年三百六十時間でございます。その上で、臨時的に特別な事情のある場合にも上限七百二十時間、それから、複数月八十時間以内、単月では休日労働を含んで百時間未満ということでございます。
 他方で、一日単位の上限でございますけれども、この一日単位の時間外労働の上限規制につきましては、企業現場において業務の繁閑などの対応が困難となるおそれがあるところでございまして、慎重な検討が必要であることからこういった一日の単位の上限は設けていないところでございます。しかし、他方で、一日単位についても三六協定は締結をしていただく必要がございますので、その範囲内の労働時間としていただくということです。

○倉林明子君 合法にできるということなんですよ。一日、週の上限規制がないと、私はやっぱり過労死というのは防げないと思うんです。
 インターバル規制、これは義務規定になっていない。インターバルは努力義務となったんだけれども、この辺は完全にやっぱり義務化しないといけない。さらに、週の上限規制も規定しないといけないと思う。どうでしょうか。大臣に聞いています。

○国務大臣(加藤勝信君) 勤務間インターバルの必要性は我々も必要だというふうに考えておりますが、ただ、もう委員御承知のように、現在、その勤務間インターバルを制度を導入している企業は、平成二十九年の就労条件総合調査でも一・四%と、こういう状況であります。
 そういった意味で、認知度が低い、労務管理上の課題があるということも指摘をされているわけで、しかし、今回、努力義務として課し、また、昨年度から制度を導入する中小企業に対する助成金も創設をし、また好事例の周知を努めることによって、これがしっかりとそれぞれの企業において導入されるように、実際、今回の春闘でもこれを新たに導入する企業が見受けられたというところであります。
 それから、一日、一週のお話がありました。今回の中身、時間外労働の上限規制、これは本当に実効性があり、かつぎりぎり実現可能なものとして、これまでなかなか合意ができないものを労使がやっと合意をしたということでありますから、まずはそれに沿った中身を法定させていただいたと、こういうことであります。

○倉林明子君 法定ラインが過労死ラインなんですよ。過労死容認ということにつながっていくものだと。
 過労死を本当になくすためにどうしたらいいのかと、本当にその点から改正はあるべきだと思う。
 この法案については撤回を求めまして、終わります。