倉林明子

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「働き方」法案 残業代ゼロ「人材逃す」 参考人質疑 経営者からも批判(2018/6/12 厚生労働委員会)

 「働き方改革」一括法案について、12日に行われた参院厚生労働委員会での参考人質疑で、5人のうち経営者の参考人も含め4人から「残業代ゼロ制度」(高度プロフェッショナル制度)への批判的意見が相次ぎ、徹底審議が必要であることが浮き彫りとなりました。日本共産党から倉林明子議員が質問に立ちました。

 全国過労死を考える家族の会の寺西笑子代表世話人は、「いまでも過労死認定の壁は高い。高プロは労働時間の把握義務がなくなり、認定されなくなる」と危険性を訴えました。

 日本労働弁護団幹事長の棗(なつめ)一郎弁護士は、「高プロは労働者に裁量があるか法文で明確ではない。仕事が終わっても新たな仕事が降ってくれば断れない」と問題視。連合の逢見直人会長代行も「高プロ創設は実施すべきではない」と明言しました。

 コンサルティング会社社長の小室淑恵(よしえ)氏は、「残業代ゼロ制度」導入について「いい人材を逃すだけになるだろう。私たちがコンサルタントしている企業では、できる状態ではない」と述べました。

 唯一、導入に賛成した経団連の布山祐子労働法制本部上席主幹は、法案への世論調査が「賛成」14%、「反対」32%、「どちらともいえない」44%(NHK)だと聞かれ、「なぜなのか答えにならないが周知に努力したい」と労働者の理解を得られないことに答えられませんでした。

 倉林氏の質問に、安倍首相への面会を求める寺西氏は「人として命の問題を考えてほしい」と話しました。

 導入で労働時間把握が困難になるかについて、逢見氏は「裁量労働制は、現に長時間労働の温床になり、しっかりした労働時間の把握ができなくなっている」と答えました。


議事録を読む

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 今日は、五人の参考人の皆さん、御意見ありがとうございました。
 この法案を審議するに当たって、やっぱり過労死をどうやってなくしていくのかと、そのために法改正どうあるべきなのかということを我々は本当にしっかり押さえて議論していく必要があるというふうに思っているわけです。
 そこで、最初に、全国過労死を考える家族の会代表の寺西参考人に伺いたいと思うんですね。
 高プロに反対だと、安倍総理にも面談をずっと要望されてきた、座込みなどもやられてきたというふうに伺っているし、やっぱり、こうした活動に取り組んでいるという思いを、何で取り組んできたのかという辺りも是非御紹介いただきたいと思います。

○参考人(寺西笑子君) ありがとうございます。
 私たちは、なぜここまで行動するのかということをお聞きいただいてありがとうございます。
 私たちは、大切な家族をある日突然、働き過ぎで命を奪われたわけです。朝、行っていらっしゃいと言った家族が夜になって御遺体となって家に帰ってくる、また、お休みと言って寝て、朝起こしに行ったら息をしていない、また、これは本当に痛ましいんですが、外出をして帰ってくると部屋で首をつっている、こうした形で大切な家族の命が奪われたわけです。こんな思いというのは本当に一般の方は理解していただけません。誰にもこのような苦しい思い、言えないんですね。ですから、私たちは、何も知らない初めての方でも同じ境遇の人と本当に励まし合って支え合うことをしています。
 こうした過労死をなくしたいということで、この度、この働き方関連についての、二月辺りには裁量労働制のデータ問題がありました。そのときにも衆議院予算委員会に呼んでいただきまして、意見陳述をさせていただきました。その思いを、この問題点を加藤厚労大臣にお伝えしたいという思いで面談をお願いし、そして、急遽調整をしていただいて、二月二十三日に加藤厚労大臣と面談することができ、非公開ではありますが、私ども家族の会から十四人の会員のお話を聞いていただきました。大臣からは、皆さんの深刻な思いを受け止めたと。で、どうしたことで改善をしていただけるのでしょうかと言うと、監督指導を徹底するという、具体的な対策としてはその一点でしかお聞きできなかったんですね。やはりもう採決ありきの返答だというふうに思いました。
 そうしたことで、この法案を左右する裁量を持っていらっしゃるのは、当初法案を、働き方改革の委員長をされた安倍総理しかおられないという思いがあって、急遽面談の申入れをいたしました。そこまでして私たちは、どうしても安倍総理にお話を聞いていただきたい、そして、文章や言葉だけではなくて、家族の亡くなった遺影を見ていただきたい、肌で感じていただきたい、人として感じていただきたい、その胸でもう一度人としての命の問題を考えてほしいという思いがあったんです。
 そういうことで、何度も、また国会の中でも審議をしていただきましたが、残念ながら、会っていただける、また、傍聴でその場にいても目線も合わせていただけませんでした。本当に冷たい態度で対応されたというふうに感じています。

○倉林明子君 法案は、今、参議院での審議中ということです。徹底したやっぱり審議を尽くしていきたいと思っていますし、安倍総理に伝えたかったその思いを我々もしっかり受け止めて審議に臨んでいきたいというふうに改めて思っております。
 そこで、逢見参考人と小室参考人にそれぞれお伺いしたいと思っているんですが、裁量労働制、既に今行われているわけですが、ここでも実労働時間の把握というのが極めて困難な実態があるというふうに思っております。これは更に高プロ制度ということで出ているわけですけれども、長時間労働を助長する、労働時間の規制を更に取っ払うということになるわけで、この実労働時間の把握の困難性、長時間労働を助長するリスクを高めるのではないかと、こういうことについての見解をそれぞれお聞かせいただきたいと思います。

○参考人(逢見直人君) 今回、裁量労働制の拡大については法案から外れましたけど、既に専門業務型あるいは企画業務型の裁量労働制が入っているんですが、現に入っているところでやはりいろんな問題、指摘がなされております。やはりこれが長時間労働の温床になってしまっている、それから、きちんとした労働時間の把握ができなくなってしまっているということがあります。
 そういう意味で、裁量労働制については、拡大を止めたからこれでいいということではなくて、今ある裁量労働制についても、よりその厳格な運用を求めるための措置は必要であるというふうに思っております。

○参考人(小室淑恵君) 御質問ありがとうございます。
 私は、今回、この上限の規制と一緒に入れるということに非常に大きな意味があると思っています。今まで起きてきたことは、特に管理職が一番キーとなるかと思うんですが、管理職は今まで、上から降ってきた仕事を何も断らずに、取捨選択をせずにそのまま下に下ろしてしまうという仕事の仕方をしていました。そうすると、特に優秀で仕事を早くこなしてくれる人に全部乗っけてしまうということが起きていました。
 今回、この上限規制を入れるということで各企業で今盛んにやっているのが、上限規制が入ることによって、その上司に当たる人に、仕事を断る能力を付けなさい、取捨選択をしなさい、幾つかのことを断る方をむしろ評価しますというような、管理職の評価基準がこの上限が入ることによって大きく変わるんですね。今までは期間当たり生産性というか、月末、年度末までに一番積み上げた人を評価するというリーダーの評価基準だったんですが、そこに対して、短い時間で成果を出すということを管理職の評価基準にしていく。これが変化しないと、やはり一部の人に全部乗せていってしまうということが起きるわけですが、今回、これをセットで入れていくことによって、上司がいかに仕事を捨てるかというふうなところを、それから、経営者がいかにきちっとIT投資もして仕事を取捨選択するかというところが問われてくるのかなというふうに思っております。
 また、今ちょうどテレワークを入れたいという企業が非常に増えているんですが、テレワークを入れようとすると、これは企業側としても、いつ働いているのか働いていないのか分からないというところが同時に問題になっていまして、企業側もテレワークを入れたいから労働時間の把握をしなくてはならないというところのフェーズに進んでいるというのがあります。ここの部分をもう少し支援をして、テレワークと同時に労働時間の把握が自動的に進むような仕組みというところが支援するべきではないかなというふうに考えています。
 御質問ありがとうございました。

○倉林明子君 実労働時間の管理ということをきちっとしていくということは、本当に大事なところになっているというふうに思います。
 先ほど棗参考人の方から御紹介ありました、労働時間は今でも弾力的な運用は拡大していると。法案資料のところで御説明もあった、一般的な働き方は四割だという数字なんですけど、実はここに管理監督者が含まれていたということが分かったんですね。そうなると、実際にはもっと弾力的な働き方をしている人が多いんだということになると思うんですね。
 そういう意味で、やっぱり原則的な働かせ方を本当に原則にしていくということが大事なんじゃないかと思うんですけれども、コメントをいただきたいなと思います。

○参考人(棗一郎君) ありがとうございます。
 管理監督者も含むということで、私もそれ驚いたんですけれども、管理監督者イコール管理職じゃありませんので、大きく違うんですよね。労基法四十一条二号の管理監督者というのは、企業経営者と一体的な立場で重大な責務を任せられている人で、出退勤の自由、労働時間の裁量がある人、それから相当程度年収が高い人、この三つの要件が判例上確立しておりますので、そういう人たちのことをいうんですよね。
 ところが、それをそういう要件に当たらない人を管理職に上げてしまってやっているというのが現状でありまして、ここのところも併せて手当てしないと、管理職に、先ほど小室さんも言われましたけれども、仕事が取捨選択できるにしても、今どういうことが起こっているかというと、働き方改革でとにかく部下の時間を減らせと、そうすると管理職に集中しちゃうんですよ。おまえがやれと、仕事引き受けて、もうあっぷあっぷでどうにもなりませんという相談たくさんあります。ですので、ここのところも手当てしないと、管理職が倒れてしまいますよ、これ。
 なので、そこも一緒にやらないと、時間をきちんと管理職も把握して管理して一緒に下げていくと、みんなで下げていくということをやらないとまずいと思います。

○倉林明子君 ありがとうございました。