倉林明子

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医師不足の実態深刻 倉林氏“健康のため増員を”(2018/5/17 厚生労働委員会)

(資料があります)

 日本共産党の倉林明子議員は17日の参院厚生労働委員会で、医師の人員不足と長時間労働の問題を取り上げ、医療の安全と医師の健康のために診療報酬引き上げと増員を求めました。

 経済協力開発機構(OECD)調査で、日本の人口1000人当たりの臨床医数は加盟国の下から4番目、病床100床当たり医師数でイギリスは日本の7・5倍、フランス、ドイツは3・7倍です。武田俊彦医政局長は、「日本は諸外国より病床数が多い。近年、医学部の定員を増やしている」などと言い訳しましたが、医師不足を否定できませんでした。

 倉林氏は、フランスの医師は、週の労働時間が48時間、当直後24時間休息の義務付けとなっていると紹介し「これが目指すべき医師の働き方ではないか」と指摘。厚労省が2028年には医師数が充足すると推計していることについて「時間外・休日労働も含めて推計しているのか。多くの医師は労働時間が自己申告制で正確ではない。推計をやり直し、医師を増員すべきだ」と主張しました。

 加藤勝信厚労相は「医師の養成数、時間外労働など、医師の働き方改革に関する検討会での議論を踏まえていく」と述べました。


OECD加盟国の人口1_000人当たり臨床医師数

病床百床当たり医師数(日本と諸外国)


議事録を読む

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 日本の医師数は、国際的に見るとどんな水準なのかということをまず確認させていただきたいと思うんですね。
 資料をお付けいたしました。これ、医師の需給分科会に示された資料となっております。これ、人口千人当たりの臨床医数ということで、OECDで平均が真ん中辺りの二・八、日本はということで見ますと下から四番目ということになっております。さらに、資料の二枚目見ていただきますと、これ病床百床当たりの医師数ということで、イギリスが日本の七・五倍、フランス、ドイツは三・七倍ということになっておりますので、圧倒的なこれ違いがあるんですね。
 国際的に見まして、日本の医師数というのは、人口比で見ましても病床数に対しても余りにも少ないと。客観的な事実だと思いますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(武田俊彦君) 今、人口当たりの医師数、それから病床当たりの臨床医師数についての御質問がございました。
 我が国の人口十万人当たりの医師数でございますが、平成二十八年時点では二百五十一・七人となっておりまして、現在の医学部定員数が平成三十一年頃まで維持されると仮定をしますと、平成三十七年頃には現在のOECD加重平均値二百九十人くらいに達する見込みでございます。これは、近年、医学部定員を増員をしております一方で日本の人口は減少に入っておりますので、そういった意味におきまして、ほかの国と比べて今後この人口当たりの医師数は伸びていく、そして現在のOECD加重平均値に達する見込みが示されております。
 また、病床百床当たりの臨床医師の数につきましては、平成二十八年時点で十八・五人と私ども把握をしておりますけれども、諸外国との比較が可能な平成二十六年、二十七年時点においては、御指摘のとおり、諸外国より少ないということでございます。ただし、これは人口当たりの病床数が我が国が非常に多いと、こういったことと併せて解釈が必要だと考えております。

○倉林明子君 先々の見通しまで御説明ありがとうございます。
 ただし、OECD加盟国の中でも現状では極めて医師数少ない、これ事実なんですよ。医師の長時間過重労働、これで支えられているのが日本の医療だということをしっかり認めるべきだと思います。
 そこで、病床当たりの医師数が日本の三・七倍ありますフランスの医師の働き方ってどうなっているかということで、参考人の松田晋哉教授が紹介されているし、二月の時点で、今年、フランスにも行かれたということで、報告の論文も読ませていただきました。これ、驚いたことに、フランスでは若手医師は病院志向が強いというんですね。それは背景に三十五時間労働法導入があったと。先ほど紹介あったとおりです。勤務医が対象、開業医は対象になっていないんですけれども、勤務医は対象になったと。
 そこで、松田参考人の報告見ますと、医療安全の観点から、これ当直を行った医師には二十四時間の休息も義務付けられたということなんですね。現在、さすがに現実的な見直しをせざるを得なくなった下で、週の労働時間は上限四十八時間、連続十二週の平均労働時間は四十八時間以内、いずれの週も上限で六十時間以内と、ここまでですよということにしたというんですよ。私、さすがに三十五時間労働というのは夢のような話だけれども、目指すべき医師の働き方ということでいうと、医療の安全を担保するという観点からも、このフランスの働き方というのは目指すべき方向じゃないかと、医師の働き方として。
 大臣、いかがでしょう、感想をお聞かせください。

○国務大臣(加藤勝信君) 働き方改革については来年の三月に向けて検討を進めさせていただいておりますし、その中においては、諸外国における医師の労働時間規制の内容なども調査をし、また議論を反映していくということが必要だと思いますし、そういう中には当然、フランスの事例、今の、含めていくべきだと思っておりますから、私どもも文献等の調査をするとともに、別途それぞれの地域に対して、これは外務省経由ということになりますけれども、実態の調査についても行わせていただいていると、こういうことでございます。
 今のお話、この医師の働き方、今病院のお話があって、多分、松田先生のお話では、その結果として、診療所との関係等々ということがあったと、等々いろんな事情があると思いますので、その辺も総合的にはもちろん検討していかなきゃいけないというふうに思いますけれども、海外の調査結果もしっかりと踏まえて議論したいと思います。

○倉林明子君 そのとおりで、世界のスタンダードはどうなっているかということを是非研究もしていただきたいと思います。
 二〇〇〇年の三十五時間の労働法の導入以降、この医師不足、先ほどちょっと紹介されかかったけれども、大問題になったんです、さすがに。医師不足、病院機能の低下、社会問題になった。それで、改めてどうするのかというときにフランス政府がやったのが、医学生や若手医師の意識調査だったというんですね。彼らが労働時間の制限を望んでいると。こういうことを踏まえて一定の規制緩和、つまり四十八時間というところに医師はちょっと延びるんだけれども、そういうことで対応しようということになったわけです。
 これからの医療を担う医学生、若手医師、この意識という点でいいますと、今の働き方改革の検討会でもお呼びしてお聞きしているんですよね。提言をいただいています。その表題が「「壊れない医師・壊さない医療」を目指して」という、若手医師と医学生からの提言書がまとまって提案されているということです。
 そこで、膨大なもので量も多いものでもありますので、この提言の一のところだけで結構ですので、読み上げて紹介いただきたい。

○政府参考人(武田俊彦君) ただいま御紹介がありました「「壊れない医師・壊さない医療」を目指して」と題するこの若手医師と医学生からの提言書、私どもの医師の働き方改革の検討会において資料として提出をされております。
 御指摘でございますので、提言の一を読み上げさせていただきますが、「私たちは、医師が原則として国の定める労働時間の上限規制と労使協定を遵守する必要があると考えている。それは患者の医療安全と医師の安寧を保ち、医療の持続可能性を高めることにつながる。」。こういうことと承知をしております。

○倉林明子君 その提言の最後のところで、「決してこれまでのように医師にとって労働基準法があってないようなものになってはいけない。そして、私たちも無関心を装ってはいけない。」というふうにしているんですね。
 大臣、医師の働き方、これ改革を進めるに当たって、こういう若手の医師や医学生の提言って極めて重要だと、そう受け止めるべきだと思うんだけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(加藤勝信君) まさにこれからの医療を担っていただく若手の医師の皆さん、そしてさらに医師になろうとされている医学生の皆さん、そういった方々がまさに医師の働き方改革、ここに関心を持ってこのアンケート調査をし、こうして提言をまとめていただいたと、これは大変有り難いことでありますし、こういった期待に我々しっかり応えていかなきゃいけないというふうに思います。
 もう中身については申し上げませんけれども、今の働き方改革検討会議の中にも若手の医師にも入っていただいておりますし、この話もそこに出させていただいておりますので、こういったことを含めて更に議論を深めさせていただきたいと思います。

○倉林明子君 期待に応えたいという答弁はしっかり記憶しておきたいと思います。是非応えていただきたいと思います。
 こうした実態も示され、提言もされるという中で、四月十七日に医師需給分科会が開催されております。そこで出された中身はどうだったかというと、現行医学部の定員は維持したまま、そこで二〇二八年マクロの医師需要は均衡すると、こういう予想が出ております。二〇二八年、医師数は需要と均衡するんだと、この根拠は何でしょうか。

○政府参考人(武田俊彦君) 今御紹介いただきましたように、医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会という場におきまして、この医師の養成数の議論をしているところでございます。
 本年四月のこの分科会におきまして、医師の働き方改革に関する検討会の結論はまだ出ておりませんけれども、ここで行われている議論の中身も踏まえまして、労働時間、タスクシフティングが達成できる程度などにつきまして、一定の仮定、前提の下、幅を持って三つのケースについて推計を行った需給推計案をたたき台としてお示しをしたということでございます。
 その三つのケースといいますのは、労働時間について週六十時間に制限した場合など、一定の前提を置いて三つのケースについて試算がされております。

○倉林明子君 だから、二〇二八年で均衡するというのは、月八十時間を前提としているんじゃないでしょうか。三つの中のうち、八十時間を想定したのが需要と均衡バランスが取れる二〇二八年だという理解なんですよね。いいです、後で。
 医師の労働時間ということでいいますと、参考人からもいろいろ出ていました。当直、待機、研さん、これを労働時間とするのかどうか、これからの検討だということを聞いておりますけれども、物すごく大きな違いがここで生じてくるわけですね。植山参考人からも、当直問題と、月一回も休みが取れていない医師が結構いるんだというアンケート調査、実態の告発もありました。時間外・休日労働、これをしっかり含めての推計になっているのかどうか、これはいかがでしょう。

○政府参考人(武田俊彦君) 三つの推計でございますけれども、具体的なケース一、ケース二、ケース三といたしまして、月平均六十時間の時間外労働、月平均八十時間の時間外労働、月平均八十時間の時間外・休日労働、こういう三つのケースについて試算を行いまして、今御指摘のありました二〇二八年需給均衡ケースといいますのはケース二でございますので、労働時間を週六十時間に制限をした場合、すなわち月平均八十時間の時間外・休日労働に相当するものでございまして、こういう前提の中で、もちろん休日勤務につきましても是正が図られるケースではないかというふうに考えておりますが、いずれにしても、引き続き検討会で詳しく議論していきたいと考えております。

○倉林明子君 答弁短くする努力もお願いしておきたいと思います。
 現在も多くの医師が労働時間は申告制となっているわけです。実労働時間の把握、これさえも正確にはできていないという医師、少なくありません。どこまでが医師の労働時間も明らかでない、これが現状なんですよ。そういう時点なのに、二〇二八年には医師数は均衡する、充足すると。こういう結論というのは私はあり得ないと思うんですよ。
 医師の増員なしで現場の働き方が改善するなんということは到底考えられません。少なくとも、三十六時間連続勤務と、この異常を解消するために一体どれだけ医師数が必要になるのか。私は、最低こういう数値を盛り込んで需給見通しの推計というのはやり直すべきだと思います。いかがでしょうか。

○政府参考人(武田俊彦君) 簡潔に答弁をさせていただきます。
 先ほどお話しいたしましたように、分科会での検討、その場でのたたき台として出されたものでございますけれども、一定の前提の下で幅を持った需給推計ということでございますので、御指摘の点も含めて、引き続き検討会で十分議論をさせていただきたいと思います。

○倉林明子君 大臣、いかがですか。私、しっかり見直すべきだと思う。

○国務大臣(加藤勝信君) いずれにしても、今後の医師の養成数をどうするかということについては、委員から御指摘ありますように、時間外労働規制の在り方あるいは連続勤務時間等について、今議論を行っていただいております医師の働き方改革に関する検討会、そこでは、どこまでを労働時間とするかといったことも当然含めていかなきゃいけないと思っておりますけれども、そういったことを踏まえて見込んでいく必要があると思います。

○倉林明子君 医師にも労働法は適用される、これは一致していると思うんですね。
 昨年十月に、世界医師会が医師の倫理規範であるジュネーブ宣言を改訂しております。その中では、医療職は最高水準の治療を提供するため、自身の健康、安寧、そして能力に配慮しますと、こういう一文が入ったんですね。世界の流れというのは医師の労働環境改善に向かっている。
 医師の増員を保障する、私、診療報酬の引上げと併せた増員へのかじを切るべきなんだということを最後申し上げまして、終わります。

議事録を読む(反対討論)

○倉林明子君 私は、日本共産党を代表して、医療法及び医師法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
 本法案に反対する第一の理由は、地域医療構想の達成のために、病床削減のより強固な権限を都道府県に与えることです。
 法案は、既存病床数が基準病床数を下回っていても、将来の必要病床数に達している場合には都道府県知事が医療機関の新設、増床を許可しないことができるとしています。民間病院であっても、勧告に従わなければ保険医療機関の指定をしないことが可能という強力な権限です。地域医療の受皿も不十分なまま入院患者の押し出しにつながる病床削減を強権的に進めることは、患者、家族をますます窮地に追い込むものであり、容認できません。
 第二に、絶対的な医師不足という現状認識を抜きにした偏在対策では、地域医療の危機と過労死を生み出す過酷な勤務環境を解決することはできません。偏在対策は必要ですが、医師養成数の抑制を前提とする限り、効果は限定的と言わざるを得ません。
 本法案は、都道府県が、医師少数区域だけでなく、多数区域を定め、確保すべき医師数を定め、目標達成を図るとしています。医療費の地域差半減を求める厚労省が示す偏在指標を基に、多数区域とそこで確保すべき医師数を定めれば、医師を減らす方向に進むことは否定できません。勤務医の命と健康が脅かされることなく、医療の質と安全を確保するために、長時間労働の是正を始め、労働基準法に基づく労働環境を確保することは、一刻の猶予もない課題です。その解決のためには、医師の抜本的増員が不可欠です。
 都道府県には、地域医療構想に加え、医療費適正化計画、地域医療計画と医療費抑制の責任と権限が集中する体制がつくられてまいりました。本法案は、病床数と医師数をコントロールする新たな仕組みを都道府県に与え、医療費抑制に一層駆り立てるものにつながります。地域の実情を無視し、機械的な地域差縮減に向けて病床、医師数を管理、抑制すれば、地域医療の一層の疲弊を招き、医療難民を増やすことは避けられません。
 住民の命と福祉を守る地方自治体を医療切捨ての司令塔とする改悪は許されないことを指摘し、討論といたします。