倉林明子

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社会保険料負担軽く 倉林氏 国保条例に減免規定を(厚生労働委員会)

(資料があります)

 日本共産党の倉林明子議員は8日、参院厚生労働委員会で国保料・社会保険料の負担増をさらに進めれば、「社会保障制度が生存権を侵害することにつながりかねない」と述べ、負担軽減を求めました。

 倉林氏は、来年度から都道府県単位化に伴って改正される市町村等の国保条例に、生活困窮の減免規定を盛り込むこと、滞納処分の停止要件の額(月10万円、その他親族1人につき4.5万円)の周知徹底を求めました。
鈴木康裕保険局長は「徴収に当たっては、困窮の場合には滞納処分の停止の制度が適切に運用されることが重要。具体的な額も含め市町村に周知徹底していく」と述べ、塩崎泰久厚労相も「滞納処分の停止の制度を適切に活用することが重要だ」と答弁しました。

 さらに倉林氏は、社会保険料を滞納した介護保険事業者の介護報酬が差押えられている実態を告発。
介護事業者の費用の大半を人件費が占めており、報酬の差し押さえは「労働者に対する賃金を丸ごと差し押さえることになり、介護保険の利用者にも被害が出かねない。公的制度を担う事業者への差し押さえは、実態を踏まえた慎重な対応が必要だ。機械的な取り締まりはすべきでない」と迫りました。


医療・介護制度改革の視点と具体的な検討項目


議事録を読む

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
先月二十五日に財政制度等審議会が建議をまとめました。来年度も社会保障の伸びは目安である五千億円に抑えて改革工程表の検討項目等を全て着実に実行することを求めていると。けしからぬと私はまず言いたいと思うんですけれども、その中身ですね、これ、医療、介護の分だけをまとめたやつを財政制度等審議会の資料、出しております。この赤字のところを注目していただきたいんですけれども、まず左から、かかりつけ医の普及の観点からの外来時の定額負担、さらに、市販品類似薬に係る保険給付の見直し、軽度者に対する生活援助サービスその他の給付の在り方、さらには後期高齢者の窓口負担の在り方等、もうこれまでもいっぱいやってきたんだけれども、これからもやろうとしているということがもうずらっと並んでいるわけですよね。これはいずれも負担増と給付の削減というメニューになっております。
財政審の求めに応じて、改革工程表どおり、さらにこの流れ進めていくということでよろしいんでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 経済・財政再生計画改革工程表は、持続可能な社会保障制度の構築と財政健全化を同時に達成していくために必要なものとして定められているというふうに理解をしております。
厚生労働省としては、社会保障制度を持続可能なものとして次世代に引き渡していく、そのために、改革工程表に盛り込まれた改革事項については十分に議論をし、検討してまいりますけれども、その際に大事なのは、世代間、世代内の負担の公平を図るとともに、所得の低い方々などにはきめ細かな配慮を行っていくべきと、このような考えでございます。

○倉林明子君 明確には否定しないんですね。これまでもやってきた流れで進んでいくという考え方を基本的に示されたのかなと思うんですね。問題は、もう中身が本当にぼろぼろになってきている、維持して手渡すと言っているその中身がもうぼろぼろになってきているということを私は指摘したいと思うんですね。
民医連が、毎年、経済的事由による手遅れ死亡事例というのを報告しています。それ見てみますと、経済的事由で保険料が高過ぎて支払ができない、そういうことで資格証明書になって受診が遅れたと、これ肺がんの方でした。病院に来られてから六か月後でもう亡くなったという事例。あるいは、国保証は持っていたんだけれども、自己負担、これがとても払えないということで手遅れになった事例ということで、肝臓がんの患者さんの事例。結局、歩行困難になって、家族もいらっしゃったので保険料を払って国保証だけは持っていた、しかし、自分は病院に行ったら支払が恐ろしいということで、結局来られたときはもう末期の状況で、この方も結果としては亡くなるということになったわけです。
私、ここに、現状でもこういう事例が相次いである中で、更に負担増を進めたらどうなるかということです。社会保障制度が生存権を侵害することにつながりかねない、それを更に拡大することになるんじゃないかということを厳しく指摘したいわけです。
そこで、この高過ぎる国民健康保険料の負担の軽減について、三月の予算委員会で私質問しました。この際、大臣は、生活が困難な低所得者の場合について、市町村が必要と認める場合、市町村の条例で定めて減免することが可能という説明をされまして、この制度が積極的に活用されるよう、保険者たる市町村がしっかり対応していただくよう呼びかけるという答弁をいただいたわけです。
それでは、現状で条例による低所得者に対する減免の実施実績というのはどうなっているのか、御説明ください。

○政府参考人(鈴木康裕君) 国民健康保険の保険料の低所得者に対する減免についてお尋ねがございました。
所得の低い世帯につきまして、現行制度におきまして、世帯の所得に応じて最大七割の保険料を軽減する措置を設けておりまして、平成二十六年にはこの軽減措置を拡大をいたしまして、負担の軽減に努めております。
さらに、御指摘のように、生活が困難な低所得の方について、市町村が必要と認める場合、市町村の条例で定める保険料減免の仕組みにより保険料を減免することが可能となっております。この制度、千七百三十四自治体が条例で定めておりますけれども、低所得を理由とする減免につきましては、平成二十七年度におきまして八百四十九の自治体で約二十七万世帯を対象に実施をしておりまして、保険料減免額は約三十九億円になっております。

○倉林明子君 全体の中で見ると、この低所得者に対する減免、条例を持っている、条例で規定しているという自治体は今あったとおり八百四十九ということで決して多くないんですね。さらに、特徴的にこの活用というのは減少傾向にあるわけです。しっかり対応できているというふうに私決して言えない状況だというふうに思うわけです。
そこで、質疑で確認させていただいたとおり、国民健康保険は、国税徴収法を根拠としていることから、滞納処分の執行、つまり取立てや差押えを行うと、こういうことで、その生活を著しく窮迫させるおそれがある、こういうときは滞納処分の執行を停止することができるという規定を確認させていただきました。これを判断する金額についても、納税者本人は月十万円、家族、生計を一にする家族一人につき四・五万円を加算ということになっているということです。こうした額も含めて、生活困窮の規定、これを明確にして市町村に周知すべきだと、そう思うんですけれども、いかがですか。

○政府参考人(鈴木康裕君) 国民健康保険の保険料の実際の徴収に当たりましては、低所得の方の生活に影響が及ばないよう、困窮の場合には滞納処分の停止の制度が適切に運用されるということが重要と思っています。
国税徴収法施行令に準拠をいたしまして御指摘のような基準で今やっておりますけれども、今後、御指摘を踏まえまして、自治体向けのブロック会議、それから関係課長会議等の場も活用をいたしまして、滞納処分の執行停止ができる具体的な金額も含めて、市町村に対して必要な広報、周知を行ってまいりたいというふうに思います。

○倉林明子君 私、本当に徹底してほしいと思っているんです。減免規定は確かに設けている市町村がほとんどです。しかし、この生活困窮に関する規定が明確にないというところも少なくない。減免規定はあっても、これが活用できてないという実態もよく御承知だと思うんです。減免の財源は、これ国が八割負担するという規定になっていることですし、ここには悪名高きペナルティーというものもないわけですね。自治体が活用したらその裏もしっかりあるんだということも含めて、積極的な活用という観点から周知をしていただきたいということです。
そこで、大臣にお聞きしたいと思うんですね。来年度からは国保が都道府県単位化ということになります。そこで、各市町村でも国保条例の改正というタイミングを迎えると思うわけです。そこで、保険料の引上げということが起こるという試算なんかも出ています。下がるところもありますけれども、上がるというところは大騒ぎになります。大臣、私、この高過ぎる国保料、これ生存権を脅かすような事態というのは絶対回避すべきだと思いますけれども、いかがですか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 国民健康保険料につきまして、この国民健康保険が無職の方も含めた被保険者全体の相互扶助で支えられているわけでございます。所得の低い方であっても基本的な御負担、一定程度の御負担をいただくということがこの相互扶助の中での仕組みとして必要な要素と考えるわけでありますが、一方で、国保は退職をされた高齢者の加入が多いために、年齢構成が高くて、結果、医療費水準が高くなる、その一方で所得の低い方が多く加入すると、こういう構造的な問題を抱えているわけでございますから、相対的に保険料水準が高くなっておりまして、これまでも低所得者の保険料軽減措置などを講じてまいったところでございます。
また、今回の国保改革におきましても、毎年約三千四百億円の財政支援の拡充を行うこととしておりまして、それによって国保の財政基盤の強化を図るということを行うとともに、保険料の伸びの抑制などの負担軽減につなげて、保険料を納めやすい環境を全体として整えるということにしているわけでございます。
先ほど局長から答弁もいたしましたが、実際に保険料を徴収するとき、このときには低所得の方の生活に影響が及ばないように、生活困窮の場合の滞納処分の停止の制度を適切に活用することが重要であると考えているところでございまして、今後とも低所得の方々には配慮をしたきめ細かな対応を行うよう市町村にも徹底をしてまいりたいというふうに思います。

○倉林明子君 じゃ、局長、確認したいんですけど、条例改正の時期になると周知もしていくという御答弁いただいたんだけれども、具体的にやっぱり生活困窮の規定を条例減免に入れるということ、額は含めて周知するということなんだけれども、改正の時期をタイミングとして捉えて、生活困窮の規定をきちんと入れるということも是非徹底していただきたいと思うんだけれども、どうですか。

○政府参考人(鈴木康裕君) 基本的には、条例でございますので市町村の御判断だと思いますけれども、そういう趣旨がきちっと市町村で実施できるような体制というのが必要だとは思います。

○倉林明子君 本当に生存権を脅かすような事態というのが現場側ではやっぱり起こっているという実態を踏まえて、この機を捉えて低所得者が生活困窮に陥るということを絶対避けるような取組をやっていただきたいと、これは強く申し上げておきたいと思います。
さらに、国税徴収法の滞納処分の停止について確認をしたいと思います。
これ、社会保険料の滞納についても同様に適用されるべきものとなります。国税徴収法の改正によって、申請による換価の猶予制度が導入されたわけです。そこで確認をしたいと思います。数字でお答えください。取組の実績、制度周知の取組状況、どうなっているでしょうか。

○政府参考人(伊原和人君) お答え申し上げます。
申請による換価の猶予制度は、国税徴収法の改正によりまして平成二十七年四月から実施されております。実績につきましてですけれども、平成二十七年度は、二万四千三百事業所に対しまして三万五千七百五十件実施いたしました。平成二十八年度は、二万五千百七十四事業所に対しまして三万五千七百二十五件実施したところでございます。それに対して、申請による換価の猶予の実績でございますけれども、初年度である平成二十七年度は十四事業所、平成二十八年度は九十七事業所となっております。
それから、換価の猶予制度の周知と取組ということでございますけれども、猶予制度の概要を記したリーフレットを年金事務所の窓口に備えるほか、また、納付相談のあったケースにつきまして、猶予制度の説明を行うとともに、必要に応じて申請書等をお渡しする等の勧奨を行っております。

○倉林明子君 私、税との違いはあるということは前提としながらも、これ中小企業なんかは、従業員が多い、人件費率が高いというところほど本当に早く対応しないと、もう雪だるま式に増えちゃうという特徴もあると思うんです。早め早めの滞納相談、きめ細やかにやって申請を促していくという取組が求められると思うんですね。
そこで、周知についてはリーフレットを置いているということでした。これも字ちっちゃいのでよく見ていただきたいと思うんですね、大臣。督促の周知は必ずします。ですから、そこに対象事業所に猶予制度のリーフレット、現在あるもの、改善もしてほしいけど、現在あるもので結構です、通知を併せて行うということは十分可能だと思うんですけれども、その取組、進めるべきじゃないでしょうか。

○政府参考人(伊原和人君) お答え申し上げます。
日本年金機構が保険料の納付が滞った事業者に対しまして督促を行う際には、指定期限を設けて督促状をお送りしております。督促状に記載された指定期限を過ぎてもなお納付されていない場合に初めて延滞金が発生するんですけれども、この督促状を通知する段階ではまだその滞納金が発生しているという状況ではございませんので、この段階で一律に猶予制度の周知を行うということが効果的かどうかにつきまして、ちょっと現場を、よく意見を聞いてみたいと思っております。
ただ、いずれにしましても、先生御指摘のように、猶予制度の周知の重要性につきましては我々もそう思っておりますので、これまでの取組に加えて何ができるかよく検討していきたいと、このように思っております。

○倉林明子君 まだ発生していない時点からこういう制度があるということをしっかり知らせるということは、滞納させないという点からも、相談に乗っていくきっかけを与えるという点からも、私、有効だと思います。是非、検討して前に進めていただきたいと思います。
そこで、社会保険料の滞納分の差押えについて確認したいと思います。
これは私もお話何件か聞いている中で、介護保険事業者が社会保険料の滞納という場合がございます。この場合、介護報酬を差し押さえている、こういう件数、実態つかんでいるでしょうか。

○政府参考人(伊原和人君) 日本年金機構におきましては、不動産とか無体財産権といった、滞納処分に当たっていろいろノウハウを必要とするような財産が何件あったかというような区分の集計は行っておりますけれども、今先生から御指摘のありました介護保険事業者など業種別の件数は把握しておりません。したがって、ちょっと分かりません。

○倉林明子君 実態としてはあるんですよ。まして、介護保険事業者という、規模が小さいところ、ヘルパー派遣とか、ほとんどが人件費というところが多くて、資産もないというところが圧倒的なんです。こういう場合どうなるかといいますと、その圧倒的な部分、介護報酬の圧倒的な部分が人件費相当ということになるわけですよね。介護報酬の差押えというのは、銀行に入ってしまえば債権だという考え方は国保でもあるんですけれども、労働者に対する賃金を丸ごと差し押さえるということになってしまうんです。つまり、これは介護保険の利用者にも直接やっぱり被害が出かねないという問題でもあるんです。
製造業とこういう介護サービス提供事業という質の違いもあるんですよね。まして、介護保険事業者というのは公的制度の運用を担っているという事業者でもあるわけで、私、この介護報酬の機械的な差押え、まあ全部機械的に押さえているとは申しませんけれども、その上でも更に慎重な対応が必要なんじゃないかと。実態をまずつかんで、どうなっているのかということを踏まえた検討というのをしていくべきではないかと思うんですよ。大臣、どうでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 従業員の方々の年金あるいは医療を支える社会保険料を納めていただくというのは、これは助け合いの仕組みである以上は事業主の義務ということになっているわけでございます。御指摘の介護保険事業者の場合には、介護報酬がこれは主な収入源となっておりまして、滞納保険料を解消するという取組の中で、介護報酬を差押えの対象から除外をするというのは、この収入構造上からも現実的ではないというふうに思う一方で、介護保険事業者の滞納処分に当たりましては、介護サービスの利用者に与える影響、これが一番我々の心配するところであるわけで、個々の実情を十分に配慮した上で慎重に行って今もいるわけでございまして、今後とも適切に対応をしてまいりたいというふうに考えております。

○倉林明子君 社会保険料が高いというのもあるんですよ。介護報酬が低いというのもあるんですよ。で、しっかり払えないという事態に事業所が追い込まれていると。実際に倒産している件数というのも、この間、介護報酬改定の後、増えているんですよね。そういう点から、本当に限界に来ている負担というのが国保でも社会保険料でも見えてきているんじゃないかと思うわけです。
改めて、生存権を保障する、そういう観点から一層負担軽減に頑張ると、財政等、改革工程表が前提だというようなことでは駄目だと申し上げて、終わります。