国会レポート

介護離職・難民広げる 改悪介護保険関連法が成立 倉林氏反対討論(本会議)

2017年5月26日

 一定所得以上の人の介護利用料を現在の2割から3割負担へ引き上げることなどを盛り込んだ改悪介護保険関連法が26日の参院本会議で自民、公明、維新各党などの賛成多数で可決、成立しました。共産、民進両党、「希望の会(自由・社民)」、「沖縄の風」は反対しました。

 日本共産党の倉林明子議員は採決に先立ち「介護離職を拡大し、介護難民を拡大する危険を増大するものだ」と反対討論しました。

 倉林氏は、衆院での審議が22時間で採決強行されたばかりか、参院の審議は16時間足らずで、「徹底した審議が尽くされたとは言えない」と指摘。

 2015年の大改悪で一定所得の人の負担を2割に引き上げた影響についてさえ検証しないまま、3割負担導入は断じて容認できないと強調。さらに介護職員の人材不足解消策が不十分で、導入される「財政的インセンティブ(優遇)」が自治体間の給付抑制競争を加速させ「公的制度の信頼を土台から突き崩す」と批判しました。

 3割への引き上げの対象は、単身者の場合で年収340万円以上(年金収入のみで344万円)、夫婦世帯で年収463万円以上を検討。18年8月の実施を予定しています。

 40歳から64歳が支払う保険料に、これまでの人数割りから、収入に応じた「総報酬割」を導入。大企業などが加入する「健保組合」により多くの負担を求め、「協会けんぽ」に支払う国庫負担を減らす狙いがあります。

 長期療養の高齢者が入院する介護療養病床の廃止を、現在の経過措置からさらに6年延長し、新設する「介護医療院」へ移行を促します。質の担保への影響が懸念されています。


 日本共産党の倉林明子議員が26日の参院本会議で行った改悪介護保険関連法に対する反対討論(要旨)は次の通りです。

 法案は介護サービスの利用者に重い負担増を押しつけるものです。

 一昨年に導入した2割負担の影響調査の結果が出る前に3割負担に踏み切るなど論外です。この間の負担増が、サービスの利用抑制を引き起こすことは明らかです。

 質疑では、3割負担の対象には高所得とはいえない人が含まれる一方、株式配当で多額の収入を得ている人が税の優遇措置を活用することで負担増とならないことが明らかとなりました。

 「負担増は一部の高所得者」などの政府の論拠は破綻しています。要介護者や家族の苦しみに追い打ちをかける、根拠なき3割負担は断じて容認できません。

 介護職員の人材不足解消策が全く不十分です。介護現場では職員の離職が後をたたず、事業所では人材確保が困難です。要因は、介護現場の低い職員配置基準を見直さず、介護報酬の評価も効果的にされなかったからで、政府の責任は重大です。

 事業所が安心して賃上げに踏み切れるよう、配置基準の見直し、保証のための国庫負担の引き上げなど報酬全体を引き上げる方向への転換が求められます。

 財政的インセンティブ(優遇)が自治体による強引な介護サービスの取り上げをさらに拡大する危険は極めて高く、介護保険の本質をゆがめかねません。

 自治体の「給付適正化」の取り組みを国が評価し、認定率減や「給付費抑制」で成果をあげる自治体に予算を加算する優遇策を既存の調整交付金で実施すれば、「適正化」が遅れている自治体に対するペナルティーとなることは政府も認めました。

 厚労省が先行事例とする自治体では、「自立支援」と「卒業」の名でサービスの打ち切り、基本チェックリストを使った水際作戦、地域ケア会議での申請・更新はねのけの横行が明らかになりました。

 要介護度の低下と給付費の抑制を自治体に競わせる財政優遇策の導入が“介護切り”の拡大と過熱化をもたらすことは明らかです。

 負担増と給付の切り捨ては介護が必要な人に対するサービス利用を阻害するもので、公的介護制度に対する国民の信頼を土台から突き崩すことになります。

 「我が事・丸ごと地域共生社会」の名のもとに、高齢、障害、子どもなどの福祉に対する公的責任が大幅に後退しかねません。

 障害児・者と高齢者への支援を同一事業所で行う「共生型サービス」を創設するとしています。施設・人員基準が“低い方”にあわせられ、サービスの質が低下するのではないかという懸念に対し、政府からは具体的な答弁はありません。

 この導入が介護保険と障害福祉の統合への“突破口”となるのではないかという多くの危惧についてもまともな説明はありません。

 いま求められるのは、社会保障費の自然増削減という方針を転換し、国民の生存権と、社会保障増進に対する国の責務を定めた、憲法25条にもとづき、公的制度を抜本的に拡充することです。


議事録を読む

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 私は、日本共産党を代表し、地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案に断固反対の立場で討論を行います。
 本法案は、介護保険の三割負担にとどまらず、介護保険の負担と給付、地域福祉の在り方を大きく変え、高齢者、障害者、障害児、その家族など、国民の生活と権利に多大な影響を与えるものとなっています。
 こうした重大法案を、衆議院では二十二時間の審議で地方公聴会も開かないまま強行採決されたのです。本院での審議時間はこれを下回る僅か十六時間足らずであり、参考人質疑も一回のみとなっており、徹底した審議が尽くされたとは到底言えないことを厳しく指摘するものです。
 反対理由の第一は、介護サービスの利用者に重い負担増を押し付けるものだからです。
 一昨年八月の利用料二割負担の導入に続き、三割負担を導入する本法案の改正には、広範な国民から不安と懸念の声が上がっています。
 衆議院の議論を通じて、二割負担の影響調査の必要性を政府自身も認めていながら、その結果が出る前に三割負担に踏み切るなど、論外だと言わなければなりません。要介護一から三の平均的な居宅サービスの利用者で、一割負担から三割負担への負担増額は年間二十から三十万円となるもので、僅か三年間の間に三倍化という負担増が要介護者や家族の生活を圧迫し、サービスの利用抑制を引き起こすことは明らかです。
 しかも、委員会での審議を通じ、今回の三割負担の対象には、前年まで働いて給与収入があった人が、今は要介護となって仕事を辞め、所得も激減しているケースなど、高所得とは到底言えない人が少なくなく含まれること、その一方で、株式配当で多額の収入を得ている人が、税の優遇措置を活用することで負担増とならないケースも出てくることなどが明らかとなりました。負担増となるのは一部の高所得者、収入に応じた負担などという政府の論拠は破綻しているのではないでしょうか。要介護者や家族の苦しみに追い打ちを掛けるだけの根拠なき三割負担は、断じて容認できません。
 反対理由の第二は、喫緊の課題となっている介護職員の人材不足解消策が全く不十分だからです。
 介護現場では職員の離職が後を絶たず、事業所では人材確保に困難を極めています。このまま放置すれば、事業所存続の危機にあると言っても過言ではありません。人材確保を困難にしている最大の要因は、介護現場の低い職員配置基準を見直すことなく、介護報酬の評価も効果的にされてこなかったことにあり、政府の責任は重大です。
 この間、政府は、一連の処遇改善策による職員の賃上げは月額四万三千円だと説明してきました。しかし、基本給で見れば、その効果は僅か一万三千円にすぎず、この十年間、他産業との賃金格差は月額十万円、その格差を埋めるには至っていないのです。
 本気で賃上げというのであれば、事業所が安心して賃上げに踏み切れるよう配置基準を見直し、それを保証するために思い切った国庫負担の引上げを行うこと、介護報酬全体を引き上げる方向への転換が求められています。人材不足の悪循環を断ち切る改革こそ喫緊の課題ではないでしょうか。
 第三は、本法案が導入する財政的インセンティブが自治体による強引な介護サービスの取上げを更に拡大する危険は極めて高く、介護保険の本質をゆがめかねない重大な問題があるからです。
 自治体の給付適正化の取組を国が評価し、認定率の低下や給付費抑制で成果を上げる自治体に予算を加算するこの制度を既存の調整交付金の枠組みで実施した場合、適正化が遅れている自治体に対するペナルティーの仕組みとなることは政府も認めています。
 この間、厚労省が自立支援の先行事例として推奨する自治体では、自立支援と卒業の名による介護サービスの打切り、基本チェックリストを使った水際作戦、地域ケア会議を門番とする申請、更新のはねのけなどが横行していることが明らかになりました。参考人質疑では、自治体に公的サービスを止められた要介護者が状態悪化や重度化に至るケースや、自費サービスの購入を余儀なくされている実態が生々しく紹介されました。要介護度の低下と給付費の抑制を自治体に競わせるインセンティブとペナルティーの導入がこうした介護切りの拡大と過熱化をもたらすことは、火を見るよりも明らかではありませんか。
 年金天引きと過酷な滞納制裁で保険料を取り立てる一方、制度を改正するたびに給付が後退していく介護保険の現状には、有識者からも、このままでは介護保険は国家的詐欺になるという批判の声が上がっているんです。本法案による負担増と給付の切捨ては、介護が必要な人に対するサービス利用を阻害するものにほかならず、公的介護制度に対する国民の信頼を土台から突き崩すことにつながることは明らかです。
 第四は、我が事・丸ごと地域共生社会の名の下に、高齢、障害、子供などの福祉に対する公的責任が大幅に後退しかねないことです。
 法案は、改革の一環として、障害児者と高齢者への支援を同一事業所で行う共生型サービスを創設するとしています。この新サービスの施設・人員基準が低い方に合わせられ、サービスの質が低下するのではないかという現場の懸念に対し、政府からは、今後審議会で検討するというのみで、具体的な答弁はありませんでした。
 また、このサービスの導入が介護保険と障害福祉の統合への突破口となるのではないかという多くの当事者、関係団体の危惧についても、統合しようとするものではないというだけで、不安を払拭するまともな説明はありませんでした。
 政府は介護離職ゼロを掲げながら、本法案の中身は更に介護離職を拡大し、介護難民を拡大する危険を増大するものとなっています。
 今求められるのは、社会保障費の自然増削減という方針を転換し、国民の生存権と社会保障増進に対する国の責務を定めた憲法二十五条に基づき、公的制度を抜本的に拡充することであります。日本共産党は、介護、福祉の際限なき改悪路線と断固闘う決意を申し上げ、反対討論といたします。(拍手)