倉林明子

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特許法・不正競争防止法案改正案(経済産業委員会 反対討論)

第189回国会 経済産業委員会 第21号 2015年7月2日(木曜日)

特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
不正競争防止法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

議事録を読む
〇委員長(吉川沙織君) 特許法等の一部を改正する法律案及び不正競争防止法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
両案に対する質疑は既に終局しておりますので、これより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。

〇倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 私は、日本共産党を代表し、特許法等の一部を改正する法律案及び不正競争防止法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。
 特許法等の一部を改正する法律案は、職務発明に係る特許を受ける権利の原始的な帰属先を発明を行った従業者から使用者へ百八十度転換しようとするもので、容認できません。
 そもそも、二〇〇四年の法改正が適用される事件の発生もほとんどなく、法改正を行わなければならない立法事実はありません。にもかかわらず、経団連を始めとする産業界からの長年の要請に応えた本法案は、発明者のインセンティブをそぎかねず、優れた発明を生み出す環境の後退ともなるものです。
 同時に、発明の対価について、これまで相当な対価としてきたものを相当な利益と変更することは、従業者と使用者の間に圧倒的な力関係がある下で、発明者への報奨水準を後退させる危険があるものです。さらに、大学等研究機関の研究者にとって自由な研究継続を阻害しかねない問題があることを指摘しておきます。
 不正競争防止法の一部を改正する法律案に反対する第一の理由は、非親告罪化が営業秘密侵害を口実とした捜査当局の過剰な介入を引き起こすおそれがあるからです。
 非親告罪化により、警察や検察の独自捜査が可能となることで、捜査や裁判の過程で被害企業の意に反し営業秘密が流出する危険性が高まります。また、労働者の日常業務や労働組合活動、内部告発などの当然の権利の萎縮や、役職員の転職、退職を制約しかねません。憲法が保障する職業選択の自由にも関わる重大な問題であり、見過ごすことはできません。
 第二は、未遂行為に対する処罰の拡大が、実行の着手の解釈によっては処罰の対象を不当に拡大するおそれがあるからです。営業秘密侵害罪に対しては既に他の経済犯罪や企業犯罪の重い量刑が科されており、更なる罰則強化は罪刑の均衡を逸することとなります。
 第三は、営業秘密侵害行為を受けた企業の立証負担の軽減策として、被告企業に対する推定規定の創設が、被告の反証を困難にするだけでなく、正当な事業活動を行う企業が濫用の被害者となる危険があるからです。
 また、更なる厳罰強化を進める新法の制定を求める動きがあることは重大です。権力が市民社会を監視する米国の経済スパイ法のような新法は目指すべきではありません。本来、営業秘密を守る責任は企業にあります。営業秘密流出の背景には、電機産業に代表されるような大規模リストラや、下請事業者の知的財産を親事業者が奪い取るような下請いじめを改めることこそ抑止効果を高めることにつながることを指摘し、反対討論といたします。