健保改悪 「国責任後退 撤回を」(2023/5/11 厚生労働委員会)
75歳以上の医療保険料や国民健康保険料の引き上げにつながる健康保険法等改定案が11日、参院厚生労働委員会で、自民、公明、国民の各党の賛成多数で可決しました。日本共産党、立民、維新は反対しました。共産党の倉林明子議員は、国の責任を後退させ、国民に負担増を迫る同法案の撤回を求めました。
倉林氏は、同法案が国保料水準の統一を加速させると指摘し、先行して来年の統一を目指す大阪府内の自治体では、国保料が他と比べて高騰していると告発。法案で推進する統一保険料は、市町村独自の負担軽減措置をやめさせ、さらなる値上げにつながると批判しました。
倉林氏は、国保料引き下げのための財源を提案。国保財政の安定化のため設置した財政安定化基金の使い道が限定され、年々積み上がっていると述べ、「保険料引き下げに活用できるよう取り扱いを見直すべきだ」と迫りました。
加藤勝信厚労相は、同基金は予期せぬ給付増などに備えたものだとし、見直しには言及しませんでした。
倉林氏は「予期せぬコロナや物価高が起きている」と強調。国保加入者の約半数を占める非正規雇用やフリーランスで働く現役世代などに負担増を迫る同法案の撤回を重ねて求めました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
国保加入者のおよそ半分が今非正規、フリーランスと、現役世代が占めているという実態になっております。
ここで紹介したいのは、京都府在住のシングルマザーの声なんです。一般社団法人シンママ大阪応援団というところがありまして、食料支援事業、シングルマザーに対して行っている団体、サポートしている団体の一つなんです。ここに寄せられたメッセージの一部なんですけれども、この夏、電気代が恐ろしくと、一度もクーラーを入れず、どんなに節約しても電気代は四千八百円、ガス代四千六百円、水道代四千三百円と。息をしているだけなのに死にそうですと。子供の洋服と靴、スポーツブラとパンツ、髪をくくるゴムが欲しいですっていうお手紙が入っていたんですね。どんどん大きくなり、どうにもなりませんというものでした。
このシングルマザーの世帯の一回の保険料は四千三百円、この世帯の一か月分の米代になるんですね。現役世代にとって国民健康保険料というものがこれ貧困をつくり出していると言ってもいい状況じゃないかと、私はこれお聞きして思いました。余りにも高い負担、重い負担ということだと言えるんじゃないでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) 今回の物価が高騰するなどの中で、低所得者世帯あるいは子育て世帯に対する一時金の支給等、そうした配慮もなさせていただいたところでもございます。
また、国保についていえば、もうこれまでも申し上げているとおりでありますが、給付費の五割の公費負担、低所得者への保険料の軽減制度、さらには、など、公費を他の制度よりも手厚く投入をする。また、市町村の、ごめんなさい、平成三十年の制度改革を踏まえて、低所得者対策の拡充など、毎年約三千四百の財政支援、こういったことも行って、その支援を行わせていただいて、さらには、今回、現役世代である子育て世帯の経済的負担の軽減を図るため、未就学児の均等各保険料を半額に軽減する措置、また、今回、産前産後期間に相当する四か月分の均等割保険料と所得割保険料の免除、こういったことを進めさせていただいておりますんで、まさにそうした実態にある方がおられるということ、ちょっとその方の場合の個別のことは承知はしておりませんが、やっぱりそういったところをしっかり認識をしながら必要な施策を進めさせていただくとともに、国民皆保険を支える国保制度の安定的な運営に努めているところでございます。
○倉林明子君 そういろいろやっているんだけれども、実態として重い負担になっているというところをしっかり見ないといけないと思うんですよ。
もちろん、子供の医療費助成制度、各自治体でやっているひとり親医療費助成制度と、これも活用しようと思ったらね、保険に加入していないと使えないんですよ。食費まで削ってでも保険、国保料を支払っているというのが実態なんですよ。困窮世帯にとって本当に余りにも高いというところをどうするのかということを問われると思うんです。
これ、法案では、保険料水準の統一を加速するというものになっております。
来年の保険料統一を目指しております大阪府内の自治体では、二〇一八年と比べまして二〇二三年度の保険料というのは一五ないし一八%の値上げになっているんですよ。市町村、これ、他と比べても非常に値上がり率高いんです。市町村が独自に法定外繰入れで行ってきた保険料負担軽減措置、これが縮小、廃止迫られたことによるものじゃないかと思うんですけれども、これ、いかがですか。
○政府参考人(伊原和人君) お答えいたします。
御指摘の大阪府の保険料につきまして、大阪府の分析によりますと、市町村が賦課する国保保険料は上昇傾向にございます。これは、その理由としましては、保険給付費等の増加、それから高齢者割合の増加等によるものというふうに分析していると承知してございます。
実際、最近の大阪府下の保険料と保険給付費の伸びの状況を比較してみますと、平成二十九年度から令和三年度にかけて、一人当たり保険料調定額は平均約三・一%上昇しております。他方、一人当たり保険給付費額は九・七%上昇しておりまして、一人当たりの保険料調定額の伸び率は一人当たりの保険給付費の伸び率の三分の一ぐらいになっていると、このように承知してございます。
○倉林明子君 実際に大阪でどういうことでやられているかといいますと、保険料統一のために赤字解消措置と繰入れをやっているところに対して赤字解消・激変緩和措置計画というものの策定を求めているんですね。国が求めている赤字解消措置の範囲というのはあるんだけれども、それを大きく超えて、それを上回る規模で、独自にやっている保険料軽減のための独自繰入れのゼロ、解消まで求めていると。これが本当大きな値上げにせざるを得ないという要素になっているということを指摘したい。そういう構図になっているんですよ。
で、統一保険料を目標にするということにいたしますと、これ、市町村の、実際にはこれ、どういうことが自治体のところで起こるかというと、統一保険料に合わせるために市町村は黒字があっても基金積み上げるという現象起こっていまして、国保会計、自治体のところで見ると黒字なのに保険料の値上げが迫られると、こういうことになって、起こっているんですよ。
統一保険料を目標にするということになりますと、市町村のこれ自治権、要は保険料の減免と、独自の減免ということについても自治権侵害ということになるんじゃないでしょうか。いいですか。これ、大臣にお願いしたんだけど、答弁。
○国務大臣(加藤勝信君) 国民健康保険は、特に小規模な保険者では、高額な医療費が発生した場合、財政運営が不安定という課題があります。
このため、平成三十年度の国保制度改革で、財政運営の安定化を図っていく、まさに国保制度の持続可能性をしっかり担保していく、そういった観点から、都道府県と市町村が共同で運営する仕組みといたしました。その上で、財政支援を拡充するとともに、都道府県単位での保険料水準の統一に向けた取組を進めることとしたところでございます。
この法案でも、保険料水準の統一に向けた取組を加速化するため、事務の標準化、広域化の推進に関する事項などを都道府県が定める運営方針の必須記載事項として追加すること、あるいは保険料水準統一加速化プランを年内に策定をするということにさせていただいております。
国民健康保険法においては、都道府県が各市町村の納めるべき納付額の額を決定した上で、市町村において保険料を賦課し徴収する仕組みとなっております。保険料水準の統一に向けた取組においては、都道府県と市町村が住民等の関係者とよく議論した上で合意を得ながら進めていただくものであり、その上で、保険料を統一する都道府県では、都道府県と市町村とで合意した保険料を市町村が市町村の権限で賦課する、こういう形で取組を進めているところでございます。
○倉林明子君 いや、あのね、統一保険料の推進ということでやると、大阪で起こっているように、市町村の独自の負担軽減措置ということをやめさせるということにしないと計画達成にならないんですよ。これ、高過ぎる国保料を引き下げるために活用できる財源はあるということを私申し上げたいと思うんです。
これ、国保財政の安定化のために都道府県に設置された財政安定化基金残高、今どうなっているかということです。これ、今、令和三年度末の新しい数字を見ます、が直近のものとして示されておりますが、三千三百五十三億七千百万円、これ全国規模で。ここまで残高膨らんでいるんです。
なぜかというと、これ使い道が限定されているために、年々積み上がっているんですよ。都道府県が保険料を、都道府県が、要は保険料を今大変だから引き下げようと思っても引き下げられないというような、統一保険料の取組の中で起こっているんだけれども、都道府県が、この納付金総額ですね、これを圧縮しないと、自治体で下げるということに踏み出せないわけですよね。
だから、この都道府県に蓄積している財政安定化基金を保険料引下げのために活用できるよう取扱いをこれ見直すべきじゃないか、物価対策としても今見直すべきじゃないかと思います。いかがでしょう。
○国務大臣(加藤勝信君) まさに財政安定化基金の趣旨は、平成三十年度の国民健康保険の都道府県単位化に伴って、国保財政の安定化を図るため、予期せぬ給付増や保険料収納不足が生じた場合に貸付け、交付等が行われるように設けられたものであり、国費で二千億円を措置し、各都道府県に設置をしているというものであります。
加えて、都道府県単位化の円滑な施行のため、平成三十年に特例基金が設置をされたところであります。本年度以降、この特例金の一部の二百五十億円については、都道府県の保険料水準の統一に向けた各市町村における保険料の急激な上昇を抑制するなど、国保財政の安定化に活用することを可能としたところでありますので、こうした財源も活用していただいて、都道府県単位での保険料水準の統一、そして安定的な保険財政の運営を図っていきたいと考えています。
○倉林明子君 予期せぬ事態は市民、国保加入者のところにも起こっているんです。予期せぬコロナだったし、予期せぬ物価高なんですよ。
非正規、フリーランス、こういう現役世代に負担増を求めるということにつながる法案については撤回すべきだと。
終わります。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
日本共産党を代表して、健康保険法等改正案に対し、反対の討論を行います。
本法案に反対する最大の理由は、七十五歳以上の高齢者の保険料を引き上げることです。負担増となるのは、年収百五十三万円以上の高齢者です。来年度は一人当たり平均八千四百円もの負担増となり、激変緩和措置の対象とならない年収二百二十万円の場合、保険料が年間十一万二千円にもなります。到底、能力に見合った負担などと言えるものではありません。
この所得層では、昨年十月から医療費窓口負担も二倍になりました。日本高齢期運動連絡会が行った家計調査では、一か月の赤字が単身で十万円を超えています。税金、社会保険料が四万円、介護費が四万五千円、保健医療二万二千円。既に、医療、介護に係る費用が家計を大きく圧迫しております。各種調査でも、受診控え、食費を削り、貯金の目減りにおびえる高齢者の姿が報告されております。ただでさえ過重な保険料をこれ以上引き上げ、家計を脅かすことは到底容認できません。
出産一時金のため他の医療保険へ拠出することは、制度創設以来初めての措置であり、制度の根幹に関わる問題です。後期高齢者医療制度は、五割と法定化された公費負担は三割負担導入に伴い四七%まで減少しています。現役世代の負担軽減は国庫負担比率を引き上げることで実施すべきです。
また、法案は、国民健康保険の保険料統一を加速させ、高過ぎる国保料の引上げ圧力を高めるものです。全国に先駆けて保険料完全統一を掲げる大阪府では保険料が大幅に引き上げられるなど、国保の都道府県化は全国の自治体の保険料を高騰させてきました。国の圧力で自治体を住民負担増、給付削減へと駆り立てる仕組みは撤廃すべきです。
参考人質疑では、若い世代に申し訳ない、長生きし過ぎたと高齢者に言わせる社会であっていいのか、高齢者が身を縮めるように暮らしている姿を見て現役世代が明るい未来を描くのは無理だろうとの指摘がありました。
国の責任を後退させ、世代間の助け合い、相互扶助制度として強要するこの本法案の撤回を求めまして、討論を終わります。