情報公表が信頼築く 薬機法等改定案 参考人質疑(2022/5/10 厚生労働委員会)
参院厚生労働委員会は10日、ワクチンなどの緊急承認制度が盛り込まれた薬機法等改定案について参考人質疑を行いました。
全国薬害被害者団体連絡協議会代表世話人の花井十伍氏は「薬機法は製販業者に対する規制法だ。製販業者が医薬品等を市販したいという動機から始まり、国が評価・審査し承認するものだ」と指摘。「国が主導権を持って早急に使用したいという動機で早期承認することになれば、薬機規律が機能しなくなる」として、「緊急承認は薬機法になじまない」と表明しました。
日本共産党の倉林明子議員は「制度の運用では国民の信頼をどう担保するかが重要だ」とし、運用にあたり必要なことを質問。森昌平日本薬剤師会副会長は「緊急承認の審査過程や既知のリスク、市販後に収集した安全性や有効性の情報を速やかに公表すること」だと述べました。
倉林氏が健康被害救済のあり方を問うと、薬害オンブズパースン会議メンバーの隈本邦彦江戸川大教授は「ワクチンは健康な人に接種するものなので、接種後の健康被害に対し国が責任をもって救済することが大事だ。そのためにも救済制度をしっかり運営してほしい」と主張しました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林です。
今日は、四人の参考人の皆さん、貴重な御意見本当にありがとうございます。
まず、私の方から、花井参考人と森参考人にお伺いしたいと思うんです。
今回のパンデミック等を経験して、やっぱり迅速に薬が使えるようにするという仕組みが要る、これは本当にそうだと思っているんですけれども、やっぱり迅速承認になるということでの安全性の限界というのを先ほど来お話あったかと思うんです。
しかし、国会質疑を通じて、何で承認にしたのかと、使用許可の議論もありましたけれども、なぜ承認にしたのかと、これ国民の信頼欠かせないということで御説明があるんですね。しかし、裏返して言うと、国民の信頼をどう担保していくのかということの方が、この緊急承認にとっては大事なことになっていくんじゃないかという問題意識なんです。
そこで、その国民の信頼をきちんと担保するために、緊急承認を運用するに当たって必要な点、御所見伺えればと思います。
○参考人(花井十伍君) ありがとうございます。
直接のお答えにはなっていないのかもしれませんが、結局、その緊急承認、例えば特例承認した医薬品を何千万人に使うなんて、もう今までやったことがない話なわけですね。
さっき判定不能の話がありましたけど、ワクチンというのは大量に使いますから、PMDAも、やっぱり少ないシグナルだったら、病院に問い合わせていろいろ細かいこと聞いているわけですよ。だから、そんな人海戦術幾ら駆使しても不可能になっているわけです。
しかも、これは国家的大事において政府がやっている話なのだから、その住民基本台帳も使って、若しくは国保のいわゆるレセプトデータも使って、ちゃんと国としてこの巨大な数をやっぱりマネージして、リアルワールドで副作用を検証するということをやってほしいと、それは国の責任でしょうというのを繰り返し申し上げていて、薬事行政のみでやるような話ではないでしょうというところが先ほどからの議論です。
だから、信頼という意味でおいては、やはりこれだけの未曽有のパンデミックに対して、だったらそのいわゆるもう国が挙げて副作用情報の検証をするという制度を、もうあるんだから速やかにやってほしいというのを繰り返し繰り返し言っているわけです。
だから、結局、その制度的な責任という問題も重要ですけれども、やっぱりその、こういう緊急事態のことなのだから、やっぱり政府がその責任を行動をもって示すということを速やかにやってほしいと願うばかりです。
以上です。
○参考人(森昌平君) まず、先生がおっしゃったように国民が安心して使えるということを考えると、やっぱりそこが自分たちの腕の見せどころかなというふうには思っています。
一つ、まずは国民が緊急承認された薬であることをきちんと理解した上で使用しなくてはいけないと。そのためには、緊急承認薬であること、それから緊急承認制度とはどういうものなのか、それから承認審査過程の内容であったり、その時点で分かっている既知のリスクなどを、国として公表できるものに関してはまず公表をすべきだと思っています。
その上で、その上で、市販後に収集した安全性、有効性についての情報も速やかに公表していくことが必要であります。で、国が公表しただけでは、なかなか国民はどういうことなのかというのは、非常にそこは難しいんだというふうに思っています。
そこは、現場の薬剤師として調剤時等に分かりやすく国民に説明するのが自分たちの役割であって、個々の患者に合わせた丁寧な説明をしていくことと、それから、使用後、未知のリスク等出てくることがありますので、フォローも重要で、そこに積極的に取り組んでいきたいというふうに思っています。
○倉林明子君 ありがとうございます。
緊急承認ワクチンによる健康被害の問題でも、救済制度についていろいろと御指摘もあったかと思うんです。今回の緊急承認でワクチンで救済するという場合、現状の新型コロナワクチンの健康被害の救済制度の実態があるわけですね、今。
課題の御指摘もあったかと思うんですけれども、この新たな緊急承認を運用していく上で、救済制度の在り方ですね、こうあるべきだという辺りで具体的に更に踏み込んで御所見いただければと、済みません、隈本参考人にお伺いしたいと。
○参考人(隈本邦彦君) その予防接種の健康被害救済制度が使われるかどうかについては、緊急承認された後、それが予防接種法の臨時の定期接種になるかどうかというところが問題だと思います。それになった場合、今と同じように、新型コロナと同じように、緊急承認、そういうふうになってそして予防接種法の臨時接種になれば、当然ある程度の副反応については必ず国が補償しますと言ってやっと国民が安心して打つということになると思うんですね。そういう意味では、緊急承認であろうと通常の承認であろうと、ワクチンというのは健康な人に打つわけですから、その後何かあれば国がちゃんと責任持ちますよというその信頼感がとても大事なことで、そのためには制度をしっかり運営していただかないといけないと思っています。
そういう意味では、今現行の例えばHPVワクチンでも、承認は出る、まず被害救済を申立てをするんだけれども、非常に時間が掛かる、もうたくさんの書類を出さなきゃいけない、もうすごいハードルが高いんですね。さらに、出したものの半分近くが認められない。ほかのワクチンだと大体八割方認められているのに、HPVワクチンは認められていない。さっき花井先生がおっしゃったように、何となく政策的にそうなっているんじゃないかなという感じなんですね。やっぱり、絶対に何かあったら必ず国が面倒見ますよということを言って初めて健康な人たちがある程度のリスクを考えてワクチンを打ってくれるわけで、この制度をしっかり運用してみせるということが国民の信頼を勝ち取ることだと思います。
まさに、今おっしゃるように、緊急承認制度というのは当然、安全性の治験データが少ないわけですから、少ないデータでも有効だというデータがあるよ、国を信頼してくださいというのがこの制度であるとしたら、やはりそれ約束はちゃんと守っていただかないと、亡くなったら四千万、四百万、四千四百万円出しますよということはちゃんとやっていただきたい。そして、しっかり副反応はちゃんと見ますと、探します、一生懸命探しますということを国民に信頼してもらえるように今の運用を進めていただきたいなと思っております。
○倉林明子君 ありがとうございます。
最後、森参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、緊急承認における市販後の安全性の確認及び有効性の検証、これは当然必要なんですけれども、今回の緊急承認における取組は、通常承認と比較した場合、どういう取組が具体的に追加的に必要だということをお考えか、御紹介ください。
○参考人(森昌平君) 先生、ありがとうございます。
通常であれ緊急であれ、医薬品というのは、通常に承認されたにしてもその後やっぱり未知のリスクというのもありますし、既知のリスクを最小化しなきゃいけないということもあります。ですから、緊急であろうとなかろうとやることは同じだと思いますけれども、より丁寧にフォローするというのが重要なんじゃないかというふうに思っています。
また、特に、緊急だということで、リスク管理計画等もきちっと作成した上で、何を現場として見ていかなければいけないのか等も示していただきながらしっかりとフォローしていくことが重要だというふうに思っております。
○倉林明子君 ちょっと時間残りましたので、同じ問いかけを花井参考人にしたいと思いますけれども、もう一回繰り返した方がいいですか。大丈夫ですか。済みません。
○参考人(花井十伍君) 先ほども言ったように、技術的な問題と統治政策的な問題があって、技術的な問題としては、今あったように、リスク管理計画というのは作られるんですね、そこにかなり特別な場合は特別なことをいろいろ書き込むということになっていて、だから、緊急承認の場合はやっぱりRMPはかなり特別に書き込んで安全対策に使っていただくと。
それから、それが現場で使えるようにするという意味においては、やっぱり薬剤師さんの数って、調剤薬局はいいんですけど、病院とか絶対的に不足していまして、やっぱりそういうことで、本当に患者に対してちゃんとリスクコミュニケーションができるかというと、今の医療体制自体にちょっと脆弱性があるというところで、もちろんお医者さん重要なんですけれども、やっぱりお医者さんは忙しいし、やっぱり薬剤部のサポートが必要ですし、やっぱりそういう医療政策面の不備というのが今回のパンデミックの一つのポイントで、薬機でいろいろやっても実際その情報を活用できなかったら意味がないので、やっぱり使う環境というのをこの機にやっぱり考えていただきたいと。具体的には、もうもっと人を増やせとかそういう話にはなると思いますけれども、そこのところはあります。
だから、特段というよりも、やはり日頃からそこは薄かったというふうに私どもは考えています。
○倉林明子君 同感です。
終わります。