倉林明子

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健診情報提供 収集の問題点を追及(2021/6/3 厚生労働委員会)

 日本共産党の倉林明子議員は3日の参院厚生労働委員会で、マイナンバーカードの拡大ありきで医療や健診情報等を収集・利活用しようとする政府の姿勢をただしました。

 「高齢者医療費2倍化法」では、保険者の求めにより事業主に40歳未満の健診情報の提供を義務付けています。オンライン資格確認にとどまらず、マイナポータルでさまざまな情報とひも付けされ、本人同意のもとで民間企業の利活用が可能となっています。

 倉林氏は、「同意すれば撤回や取り消しはできない。個人情報保護の基本的な法整備が必要だ」と主張。EUの一般データ保護規則(GDPR)では撤回やデータ消去が個人の権利として規定されているとして、「基本的な権利規定がないままのデータ収集が国民に不安を生んでいる」と指摘しました。田村憲久厚労相は「EUと比べても遜色ない権利規定のもと、丁寧な説明で取得をすすめる」との姿勢に固執しました。

 倉林氏は、マイナンバーカードありきでは情報漏えいのリスクを拡大しかねないと指摘し、「マイナンバーカードでなくても必要な医療データ等を共有することは可能だ。真に国民の健康増進につなげるデジタル化とすべきだ」と迫りました。


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○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 法案は、健診情報の活用促進ということで、四十歳未満の健診情報を、保険者が健診情報の提供を事業者に求めることを可能とすると。オンライン資格確認システムの本格運用に向けた改正ということになっております。本格運用するはずだったのは今年三月でした。しかし、加入者データの不備、システムの読み取りエラーが発生したということで、本格運用が十月に先送りということになっております。
 誤入力というこのマイナンバーの取り違いがあったということですけれども、一体取り違いって何人ぐらいあったのか、そしてセキュリティー上どんなおそれがあったのか、具体的な説明を求めたい。

○政府参考人(浜谷浩樹君) 御指摘の個人番号の誤入力につきましては、オンライン資格確認の稼働準備といたしまして、加入者情報の正確性について確認する観点から、昨年十二月にオンライン資格確認等システムを運営する支払基金におきまして、一括して住基ネットワークシステムに対しまして本人確認情報の照会を行いました。この結果、約三・五万件の個人番号の誤登録の疑いが存在することが判明いたしました。この誤登録につきましては、支払基金から各保険者へ修正依頼を行いまして、本年三月末時点でゼロ件となっております。
 なお、仮にでございますけれども、誤った個人番号がそのまま登録されていた場合でございますけれども、医療機関、薬局の受付等におきまして他人の資格情報等を閲覧する可能性があったということでございます。ただ、実態といたしましてはこのような事態は発生していなかったということでございます。

○倉林明子君 いわゆる発生はしなかったけれども、起こり得ることとして、他人の個人情報がいわゆる医療機関の端末に表示されると、こういうおそれも指摘されていたわけで、今御説明あったとおりだと思います。これは、極めてセキュリティー上、重大なエラーだと、こう言わざるを得ないと思うんですね。根本的なトラブルが起こっていたということだということです。
 そこで、日医総研が三月に調査を、今年三月、調査を行っております。これによりますと、オンライン資格確認を導入予定の医療機関でサイバーセキュリティー対策の脆弱さ、特に中小はあるということを指摘しております。
 この中小規模の医療機関におけるサイバーリスクというものをどうつかんでいるのか、そして対策はどう打たれているのか。いかがでしょうか。

○政府参考人(浜谷浩樹君) お答えいたします。
 まず、先ほどの件につきましては、加入者データの正確性の確保に向けまして、保険者の個人番号の誤入力をシステム的にチェックする機能の導入とか、あるいは住基ネットへの照会の個人番号の再確認等を引き続き行っておりまして、これ先般の委員会でも申し上げましたけれども、こういった誤入力が、ヒューマンエラーをチェックするシステム、システム的にチェックすることによって万全を期したいということでございます。
   〔理事石田昌宏君退席、委員長着席〕
 それから、今お尋ねのサイバーセキュリティー上のリスク関係でございますけれども、悪意ある第三者からの攻撃による情報漏えいを防ぐために、オンライン資格確認で用いる医療機関とのネットワーク回線でございますけれども、これは通信事業者が独自に保有する閉鎖、閉域のネットワーク、閉じたネットワークかそれに準じるようなセキュリティーを確保したネットワークを使うということでございます。
 また、加えましては、その電子証明書による認証、あるいはそのデータの暗号化を行いまして、データの滅失、漏えい及び改ざん防止を図りますとともに、ウイルス対策に万全な措置を講じ、安全性を確保しております。
 また、厚労省におきましては、個人情報保護法等を根拠といたしまして、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインを定めております。このガイドラインにおきましては、閉域ネットワーク等で接続する場合でありましても、医療機関等の内部ネットワークにおいてコンピューターウイルスの拡散等を防止するために、ウイルス対策ソフトやOSの更新等、リスクに対してセキュリティー対策を適切に運用すること等を医療機関等に求めております。
 これらにつきましては、オンライン資格確認を導入する際に改めてセキュリティーアセスメントを実施したところでございます。

○倉林明子君 その最後の方におっしゃったところなんですよね。ガイドラインも作って、これ、セキュリティー対策、内部ネットのところは手打ってねということになっているんだけれども、先ほど紹介しました日医総研の調査でも、このガイドライン知らない、あるいは使用していないと。結構あるんですよ、こういうところも。
 そこの分の、要は、内部の情報、個人情報保護法のためのセキュリティーシステムについての予算は付いていないんですね。梅村委員からも若干指摘ありましたけれども、カードリーダーをただでもらえるんだけれども、セキュリティー対策に係る費用やその維持管理というところについても費用はなくて、そのサイバーリスクがあるということに対しても認識は非常に甘い。そういう部分は実は医療機関に丸投げになっているんですよね。やってくださいということになっているという状況なんです。
 私、このシステム設計ということでいうと、厚労省ほど信用ないところないと、もはや致命的な弱点ではないかと言いたいと思うんですね。十月本格運用ありきと。もう期限切ってやったときほどまた失敗してはりますねん。こういう本格運用ありきということで情報流出などは絶対起こしてはならないと。それは、その医療機関のところの対策も含めてしっかりやっていくことが国民の医療情報しっかり守っていくことになるということを強く申し上げたい。
 個人情報保護法では、病歴等は要配慮個人情報ということになっております。あらかじめ本人の同意なしに第三者への提供は禁止されている情報です。しかし、一旦同意すれば、これ日本の場合ですね、同意すれば取り消すことはできません、同意を。
 オンライン資格確認システムは、保険証の本人確認にとどまらず、手術、移植、透析、こういう医療情報、そして健診情報、これひも付けるということになるわけですね。システム内部にある自らの情報、これにアクセスすること、また訂正させること、これできるのかどうか。

○政府参考人(浜谷浩樹君) お答えいたします。
 今回のオンライン資格確認システムにおきましては、御指摘のとおり、利用する方御自身の保険資格情報あるいは特定健診情報等を、御自身のマイナポータルにアクセスすることで閲覧が可能でございます。このマイナポータルにアクセスする際には厳格な本人認証が必要でございまして、この本人認証のために御自身のマイナンバーカードが必要でございます。また、仮に御自身の情報が間違っていた場合には、例えば、その特定健診情報等については、情報を管理している保険者へ問い合わせるなどによりまして訂正することが可能でございます。

○倉林明子君 今おっしゃったのは、あくまでもマイナンバーカードを持っている人に限った話ですよね。だから、持っていなければ、まずその権利は行使できません。さらに、カード持っていたとしても、マイナポータルを開かぬとあきませんので、スマホとかパソコンないと、これ、見ること、アクセスすることできないというものだということは確認をしておきたいと思うんですね。
 訂正させる権利については、本人が気付いて言えばという話でしたけれども、権利としての規定があるわけではないというものだと思います。
 そこで、EUの一般データ保護規則というGDPRというものがあります。ここでは、保障された権利ということで、アクセス権、そして訂正権、これ、いずれも規定しているんですね。個人情報、プライバシーを保護するために基本的な制度整備、これを同時に行う私は必要があるというふうに思うんですね。
 自分の個人情報、データを提供する際、データ提供に今回なるわけですね。それを受け取る側、提供されたデータを受け取る側が一体何に利用しているのか、そして誰が監督するのか、そして透明性はどう確保されるのか。今回、どうなるんでしょうか。

○政府参考人(浜谷浩樹君) お答えいたします。
 オンライン資格確認システムに格納されます薬剤情報、特定健診情報については、御指摘のとおり、本人の同意の下で医療機関等が閲覧することができる仕組みでございます。この点につきましては、個人情報保護法を根拠といたしました医療機関システムの安全管理に関するガイドライン、先ほど申し上げましたけれども、これにおきまして、医療情報のシステムの利用に際しまして、情報の種別、重要性等に応じた情報の区分管理、あるいは、その情報区分ごとの組織における利用者、利用者グループごとに利用権限の規定、利用権限の規定をすることを求めております。
 これを踏まえまして、オンライン資格確認等による薬剤情報、特定健診情報を本人の同意の下で医療機関等が閲覧するに当たりましては、医師、薬剤師等の有資格者等のみがこれらの情報を閲覧できることをシステム上担保するよう求めております。また、こうした薬剤情報、特定健診情報の閲覧につきましては、いずれの医療機関等がこれらの情報にアクセスしたか、ログ管理することとしております。また、本人もマイナポータルからいずれの医療機関等が自己の、御自身の薬剤情報、特定健診情報にアクセスしたかを把握できる仕組みとしております。
 なお、医療機関等における医療情報の取扱いにつきましては、個情法に基づく医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンスにおきまして、個人情報保護に関する規定を整備して、苦情への対応を行う体制も含めて院内等への掲示を行うなど、患者等に対して周知を図る等の組織的安全管理措置、それから個人データに対するアクセス記録の保存等、技術的安全管理措置等を講ずることを求めております。
 厚労省におきましては、都道府県に対しまして、医療機関等における個人情報の適切な取扱いにも留意しつつ、立入検査を実施するよう求めているところでございます。

○倉林明子君 脆弱さが残ったままだということを野村総研の三月の調査でも出てきているということ、深刻だと思っているんですね。こういう中で、要はセキュリティー対策あるいは安全対策ですね、情報を守るための、そういうところが不十分なままに踏み込むということについては本当に危険があるということは重ねて指摘をしておきたいと思います。
 EUの先ほど紹介したGDPRですけれども、ここでは、個人の権利として、本人が同意を撤回した場合などのデータの消去権、いわゆる忘れられる権利が規定されております。取扱いを制限させる権利、ここまでだったらいいと、これ以上は使ってほしくない、これも権利。そして、提供したデータを受け取り、他の管理者に送信できるデータポータビリティーの権利、そしてプロファイリング、これ含めて取扱いに対して本人が、個人が異議を申し立てる権利というところまで規定されているんです。こうした基本的な権利の規定ということが日本で極めて不十分だというふうに思っております。
 こういう権利規定なしの情報収集がどんどん進むということに対して、やっぱり国民の不安があるということだと思うんです。マイナンバーカード取得が進まないこの大きな要因にここがあると、ここが担保されていないということあると思うんですけれども、大臣の認識はいかがでしょうか。

○国務大臣(田村憲久君) 個人情報保護制度一般、これは我が省ではございませんので、御承知のとおり、所管しているものではありませんけれども、ただ、今国会でデジタル改革関連法案、これ、これによって、改正後の個人情報保護法でありますけれども、ここにおいては、今いろいろ言われたとおりでありまして、現行法と同様に、本人による行政機関への個人情報の開示、訂正、さらには利用停止等を可能とする規定を設けておりますので、そういう意味では、EUの今言いましたようにGDPR、これと比較しても国際的に遜色のない個人情報保護の水準、これを実現したものというふうに我々としては承知いたしております。
 健康医療情報、これは特に機密性の強いそういう情報でございますので、今ほど来局長からも話ありましたが、医療機関に対する医療情報システムの安全管理に関するガイドラインでありますとか民間PHR、パーソナル・ヘルス・レコード事業者ですね、これによる健診等情報の取扱いに関する基本的な指針、こういうようなもので個人情報に配慮した安全管理基準を定めております。
 今、マイナンバーカードに対するいろんな不安というようなお話もございましたが、形としてはこういう形で制度等々を担保するということをやっておるわけでありまして、我々としては、国民の皆様方にそういう不安というものを持っていただかないように、これを払拭していくためにこれからも丁寧な御説明をさせていただき、マイナンバーカードの取得、これを更に進めてまいりたいというふうに思っております。

○倉林明子君 総務省の情報通信白書二〇二〇が出ています。
 ここでは、企業等が提供するサービスやアプリを利用するときの個人情報の提供にとても不安を感じる、やや不安、これ合わせると七八%になります。プライバシーやデータ保護に関する規制、ルールについて、便利、快適性より安心、安全性、これを求めるというのが七九%。相当な国民のところに、やっぱり情報流出や、どう使われるんだろうかという心配、不安がある。それは、日々起こっていますから、そういう事案が。そういう意味での不安があるということだということです。
 更に進めるというお話でしたけれども、こういう不安があるということと、サイバーセキュリティー対策ということでは決して十分ではないと。指針を作ったから徹底されるというようなことでは実態ないんだということを踏まえて取り組まないと私は大変なことになると言いたいと思います。
 患者と医師、医師と医師の間で病歴などの個人の医療データを共有できる医療情報連携のためにネットワークを整備すると。これ、そういう整備ということは必要なことだと私も思います。
 しかし、オンライン資格確認システムというのは、これマイナンバーカードを健康保険証として利用し、本人同意した場合にこれ限られるというものです。これまでの健康保険証でも、レセプトデータ等も含めて加入者個人でひも付けしていくと、こういう使い方だって十分可能じゃないかと思うんですけれども、これどうでしょうか。

○政府参考人(浜谷浩樹君) オンライン資格確認システムでは、個人単位で設定された被保険者番号で薬剤情報、特定健診情報を管理するわけですけれども、それ、保険者移りますよね。その移った場合に履歴管理が必要です。その移った場合に履歴管理をするために、マイナンバー制度における個人番号をベースとした仕組みでそこをひも付けるといいますか、履歴管理ができるようにしております。そういったことで、個人ごとの医療保険の、保険者が移ったとしても加入履歴を把握できる仕組みとしております。
 また、これらの情報は機微な情報ですから、医療機関においても、閲覧するためには確実な本人確認と同意が必要だと思っております。そういう意味では、こうした機能がシステム的に備わっているのがマイナンバーカードと顔認証付きカードリーダーということで、これを活用することで確実かつ円滑に本人確認と同意ができますし、同意をしたことがシステム上残りますので、そういった意味では、個人情報の機微な情報を扱う、扱うためにもこういった仕組みが必要ではないかということでございます。

○倉林明子君 情報流出の事案で本当に多いのが、国交省だったりどこだったりという、行政官庁多いんですよね、すごく、流出事案。それも深刻な大量な事案。それは、値打ちのある情報を持っているからですよ。サイバーセキュリティー、サイバー攻撃の対象になりやすいし、受けやすいというのが今の日本の行政官庁の特徴でもあるというのは言いたいなと思うんです。同様に、この個人の情報というのは、様々突合すればいわゆるプロファイリングが可能になって、特定にもつながっていくというリスクがあります。
 私、一体、今、何のために、そして誰のためのオンライン資格確認システムをつくっていくのかというところ、本当に問われていると思うんですよ。マイナンバーカード拡大ありきというような進め方で、情報漏えいのリスク、これ拡大するようなことないのかと。私は危険があるというふうに思うんです。国民の、真に国民の健康管理につながるようなデジタル化であるべきだというふうに指摘をしたいと思います。
 それでは、次ですね、私も前回の質疑を聞いていてちょっとびっくりしたんですね。それは、大臣が、更なる現役世代の負担軽減策を問われました、足立議員から。そうしたら、安定的な制度にするにはびほう策ではなかなか難しいとおっしゃったんですね。これ、びほう策というのは二割負担の導入のことですか。何を指してびほう策とおっしゃったんですか。

○国務大臣(田村憲久君) 先ほども田村委員の御質問にお答えいたしましたが、二割負担のこれ負担をお願いすることは大変な重い話でございますので、それ自体が軽いとかという意味で言っているわけじゃありません。
 問題は、根本的に、この二〇四〇年に向かってもう高齢化のピーク迎える、そういう中においてもこの医療保険制度、国民皆保険制度を維持をしていかなきゃならない。しかし、今これやっていることは、二年先、三年先に何とか維持できるようにということをやってきたわけでありまして、そういうことをもってそういう表現の仕方をしたわけであります。
 二割を負担をお願いすること自体は、非常にこれは御負担が上がる方々に対しては御負担が多くなるわけでありますから、非常に我々としては心苦しいことではありますけれども、しかしながら、これをもってして二〇四〇年安泰になるかというとそうではないわけでありまして、これからも更なる大きな制度改革というものをやらなきゃならないという意味合いで申し上げたわけでございますが、お気を召さないということでございますれば、この表現の仕方は撤回をさせていただきたいというふうに思います。

○倉林明子君 いや、よく分かっているなと思ったんですよ、逆に。給付と負担のバランスだと繰り返し説明されてきましたよ。つまり、給付を減らし更に負担は引き上げていくと、これで終わりじゃないんだという宣言されたというふうに聞こえました。
 さらに、金融資産、大臣は金融資産の捕捉、これも一つの大きな方法だとおっしゃったんですね。つまり、介護保険と同様に後期高齢者医療でも自己負担と連動させていくと、こういうお考えですか。

○国務大臣(田村憲久君) 自己負担とその金融資産等ですか。金融資産、金融資産と自己負担とを連動させていくという。
 負担能力に応じた負担というものも今までいろんな形でお願いしてまいりました。これ、負担という形でそれに対して連動させていくのか、ほかの部分で金融資産というもの、つまり負担能力というものを見ていくかというのはこれから審議会でもいろんな御議論をいただかなきゃいけないというふうに思いますが、実際問題、金融資産というものも一つ大きなその負担能力の物差しであるということは、これは審議会でも御議論をいただいているところであります。
 問題は、金融資産を正確に把握することがなかなか難しいという中で、公平性を担保する中で、そこが今のところはまだできないという話でございます。これは、これからまた審議会等々でも御議論をいただくということになってこようというふうに思います。

○倉林明子君 五月二十一日に財政審の建議が出されました。後期高齢者医療の更なる見直しということで、保有資産の額が多い高齢者に応分の負担をしていただけるよう、資産の保有状況等も勘案した負担の在り方を検討すべきだと。明確です。
 方向性は大臣も一致しているという答弁に今聞き取れたんですけれども、介護保険の補足給付の見直しのようなことを後期高齢者医療でも可能にしたらどうなるかということです。資産の取崩しなしに病院にかかれないということになるのははっきりしていると思うんですよ。受診抑制、更に加速させることにつながります。断じてこんなことを認めるわけにはいかないと強く申し上げておきます。
 財政審は、さらに、可能な限り広範囲で後期高齢者の二割負担の導入と、二〇二二年と、これ期限を切って実施することを求めております。法案で導入される二割負担の範囲、二百万ですね、これ政令で決められるようになりました。直ちに上げる考えないと、見直す考えないとおっしゃいましたけれども、二百万円年収の基準の見直し、現時点では考えていないとしても、これ二〇二二年度までには見直す、そういうことですか。

○国務大臣(田村憲久君) まだ施行される前、前ということですよね。ですよね。
 まだこの法律の成立もさせていただいていない中でこんなことを言うのも口幅ったい話でございますが、施行もされないうちにここを見直すなどというのは現時点で毛頭考えておるわけではございませんので、御理解をいただきたいというふうに思います。

○倉林明子君 答弁はそうなるかもしれないけれども、政令で決められるというふうにしたということが、二〇二〇年度までにはできる道がつくられたということだと思います。そういう意味で、財政審が示した方向ということは本当に酷な話だということは申し上げます。
 さらに、財政審の建議ってこれで終わっていないんですね。現役所得並み所得の判定基準の見直しも、これ求めています。現役世代との公平性を図り、世帯収入要件の見直しということです。現行の世帯収入要件を定めた基準、これって公平性欠いていると言えるんでしょうか。これ、大臣に振りました。

○国務大臣(田村憲久君) 公平性を欠いていると言えるのかどうかということですか。これ、財政審の建議での話ですよね。そうですよね。
 それはいろんなお考え方があるんだというふうには思いますが、我々とは若干今のところ考え方が違うということであります。

○倉林明子君 やっとほっとする答弁が返ってきましたけれども、これ、高齢者に対する税制上の控除を積み上げた上での現役並み所得ということでも、これぎりぎりで対象となる世帯にとっては物すごく過重な負担になってくるんですね。所得だけで現役世帯との、世代との公平性を図るというようなやり方は余りにも乱暴だと、厚労省も、ちょっと違うと言っていただきましたので、そこは是非頑張っていただきたいと思います。
 そこで、大臣は、昨日の質疑で、もっと大きな制度上の負担の変更について、他の収入の在り方などを議論していかなければならないと個人的には思っていると表明されました。
 その考え方ですよね。どういう改革の方向としてお考えなのか、中身をお示しいただきたい。

○国務大臣(田村憲久君) 個人的な話でございますので、大臣としてここで詳細申し上げるわけにいきませんが、基本的に保険財政ですから、保険料収入、公費、それから言うなれば自己負担、これが収入で、あとは給付というもののバランスどう取るかという話であります、今のところは。それに他に収入を考えるのか考えないのか、いろんな方法はあると思いますので、そこは全体としてどうあるべきかというのは、多くの方々の御意見をいただきながらこれから検討してまいりたいということであります。

○倉林明子君 びほう策にとどめず審議会では議論してもらうと、それこの間もおっしゃっていました。しかし、厚労省として何を提案していくのかと、その中身というのは、本当にしっかり今示す必要があるんじゃないかと思うんです。
 何でってですね、財政審は言いたい放題ですよ、はっきり言って。(発言する者あり)ありがとうございます。いわゆる財政審のメンバーを見ると、もう財界の方々しっかり入って、そこで自分たちの負担の軽減につながるような提案をどんどんしてきているわけですよね。私、ここの言いなりにずるずると高齢者福祉の後退が、それに厚労省まで加担すると、そんなことあったらあかんと思うんですね。
 そこで、改めて聞きたい。大きな改革の方向について現時点で言えることは何ですか。

○国務大臣(田村憲久君) この法律、まだ今日御可決いただくかどうかも分からない中で、今ここで言えることは何もないわけでございまして、まずはこの法律をよろしくお願いをいたしたいということであります。
 なお、財政審は財政審でいろんなお考え方があろうと思いますけれども、厚生労働省は厚生労働省でいろんな考え方がございますので、そこはいろんな考え方同士、いろんな調整もあるでしょうし、ぶつかることもあるでありましょうし、いろんなことがあって物事は決まってまいりますので、我々としては、多くの国民の皆様方の御意見を伺いながら、これからも持続可能な制度をつくってまいりたいというふうに思っております。

○倉林明子君 そもそも今回の負担増が高齢者の暮らしにどれだけの影響を与えるのかと。紹介もしてまいりました。年収二百万円なら年間十二万円の負担は可能だというふうにおっしゃるんですよ。一体、その根拠というのが、幾ら見ても分からない、どこにあるのかということです。
 今回の配慮措置というのは、外来だけ、三年だけで終わりですよ。入院には全くこれ配慮ありません。じゃ、入院費用というのが今どうなっているかというと、保険外の負担というのは当たり前に付いてくるんです。おむつ代、洗濯代、何々代と、これ付いてくるんですよね。それ、その負担も十二万円で大丈夫なんということが言えるわけがないと思うんです。
 こうした実態について、要は入院の自己負担、一体どのくらいになっているのかと、そして今度の二割負担が与える影響についてということは真面目に検証されたんだろうか。説明いただきたい。

○国務大臣(田村憲久君) 様々なものが入院されると掛かるというのは、私どもも当然その理解をさせていただいております。一方で、今般のこの支出見ますと、入院されておられると支出されないような支出もございます。いずれにいたしましても、いろんな形で、入院されると支出をされないような支出もございます。
 要は、何を言いたいかというと、当然のごとく、この中において、いろんな費用が掛かったときにはそれぞれ他の支出を減らしていただいたりなどしながら、それぞれの方々が御生活をされる中において、我々としては、今回の負担の、まあ負担が増える部分ですね、これに関しては、今般対象になられる方々の中においては対応していただけるものということで御提案をさせていただいておるものということで御理解いただければ有り難いというふうに思います。

○倉林明子君 僅かな調査のデータだというような議論もありましたけれども、実態として、入院した際に、一回入院しただけでも十二万円というような額は吹っ飛んでしまう額ですよ。そういうような実態としての検証も踏まえずに負担をしていただけるというのは、余りにも私は無理があるんじゃないかと思うんですよ。思います。
 負担能力に応じた負担ということが到底言えるのかということを最後申し上げたい。大きな改革の議論こそ、私は厚生労働委員会としても大いにやるべきだと思いました。思います。保険の範囲でということに限界出てきて、公費をどう投入していくのか、その財源をどう見ていくのかと。
 総理にもぶつけましたけれども、この間、コロナの下でも超富裕層、富裕層は増え続けております。大企業の内部留保、増え続けております。こういう格差の配分をするのも大きな政府の仕事ではないかと思いますけれども、最後、大臣に答弁をいただきまして、終わりたいと思います。

○国務大臣(田村憲久君) でありますから、先ほど来から大きな議論が必要になってきておるということを申し上げたわけでありまして、やはりこの国、社会保障のみならず、いろんな分野でやはり費用は掛かってくるという中において、それをどういうふうに負担をしていくのか、していただくのか、こういうことは政府全体でしっかりと負担ができる方々にお願いをしてまいるということになるというふうに思います。

○倉林明子君 もう法案通る前から怨嗟の声が上がっているのがこの法案ですよ。
 負担増こそ撤回するべきだと。もうこれで審議終わるなどということは到底納得できないと最後申し上げて、終わります。