看護師 日雇い派遣禁止に戻せ 利益誘導の仕組みやめよ(2021/5/11 厚生労働委員会)
日本共産党の倉林明子議員は11日の参院厚生労働委員会で、看護師の医療機関以外への日雇い派遣を4月から解禁した問題について、企業が自らの事業拡大につながる規制緩和を要望できる仕組みこそやめるべきだと迫り、安全リスクが高まる日雇い派遣は原則禁止に戻すよう求めました。
この間の国会審議で、国が個人や企業から提案を受ける「規制改革ホットライン」に解禁を提案したNPO法人日本派遣看護師協会の実態は、看護師派遣会社「スーパーナース」が担っていたことが判明。同社代表の滝口進氏が2016年まで規制改革会議で専門委員だった際、解禁提案を内閣府に相談し、「利害関係者からの提案は慎重に」とアドバイスを受けていました。
倉林氏の追及に、規制改革推進室の彦谷直克次長は滝口氏が利害関係者にあたることを事実上認め、「利害関係者だからこそ分かる規制改革の必要性もある」と居直りました。また、現在の規制改革推進会議でもメンバーが利害関係のある規制緩和を提案・決定関与できる仕組みだと認めました。
倉林氏は、同会議には利害関係者を排除する除斥規定がないと批判し、利益誘導が可能なホットラインをやめるなど「規制改革」の仕組みの見直しを求めました。
そのうえで、今回の解禁は労働条件の悪化・看護の質の劣化など「国民の利益を損なうリスク」があると追及。田村憲久厚労相は「審議会で議論いただいたうえでのことだ」と繰り返し、倉林氏は「原則禁止に戻し、議論をやり直すべきだ」と強調しました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林です。
まず、コロナです。
全国に感染が広がりまして、過去最悪というような重症者の数という状況になっております。もうこれ、新規感染者をどう抑制していくのかという点で、新たに抗原検査活用の戦略という、抗原検査の活用について戦略を専門家会議の皆さんから御提案、それ対処方針にも一部盛り込まれました。八百万回分の検査の対象、一体どこにしていくのか、範囲はどうするのか。費用負担について、提言では行政検査という提言でしたけれども、対処方針には記載ございません。そして、今後、これどこまで拡大するというお考えか。
○政府参考人(正林督章君) 政府の基本的対処方針分科会等の議論を踏まえて、五月七日に変更された新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針に、抗原簡易キットを最大八百万回程度分を五月中旬めどに確保の上、可能な限り早く施設への配布を進める旨が盛り込まれたところです。御指摘のとおりであります。
この検査対象、範囲としては、詳細は検討中ではありますが、基本的対処方針やこれまでの対策本部決定文書で示すように、主として、重症化リスクの高い方が多いと考えられる病院や特別養護老人ホーム、老健施設等の症状が現れた従事者等に使用することを念頭に置いております。
また、医療機関や高齢者施設等としてどこまで配布対象とすべきかは今後具体化していきたいと思っています。
また、費用負担について、抗原簡易キットは厚生労働省で買い上げた上で配布する予定であり、最大八百万回程度の、程度分の抗原簡易キットの購入費用は国が負担する予定であります。
このほか、検体採取の場面でも必要となる個人防護具については、需給状況を踏まえ、必要な医療機関に対して無償配布を行っているところであり、引き続き必要な支援を行ってまいりたいと考えております。
○倉林明子君 いや、八百万回分という数が今後の方向性としては見えてこない数ですよね。取りあえず確保していた分、インフル、同時期に使えるようにということで確保していた分があったということは分かるんだけれども、医療従事者だけで四百八十万人ですよね。医療従事者二回分で終わりです。足りませんよ。そのぐらいの規模感しか今用意できていないということです。
提言の方向で踏み込んで、抗原検査が有効だと、症状発覚、無症状というか初期の段階で有効だということで一歩踏み込まれたわけで、これ迅速性もありますので、このキット活用ということでは桁違いのキットが本来だったら必要になると、今の感染拡大の時期にこそ必要になると、そういう戦略明確にして早期に取り組んでいただきたいと、これは強く要望したいと思います。
次、医療の逼迫状態の下で、今日も議論ありましたけれども、同時進行でこれワクチン、必死になってやらんなんと、一日百万回と、こういう議論ありました。目標に掲げておられます。
これ、こういう時期に現場に怒りを広げているのは何かというと、オリンピックのためにボランティアで医師、看護師を要請されると、これですよね。オリンピックは中止してくれと、こういう署名が短期間の間に三十二万、ネット上で今朝確認しましたら広がっていました。ツイッターでもということで、現場の看護師さんや医療従事者の方が五月十二日、看護の日ですよね、この日に、このオリンピック派遣要請やめてという行動を取られていました。本当に切実な声だと思います。そういう、こういうオリンピックのために要請掛けられたって応えようがないという現場の逼迫度だというふうに思うんです。国民の命を守ることが最優先されるべきだと。
私は、厚労省から、現場の状況を踏まえたら派遣要請というのは一旦やめるようにと求めたらどうかと思います。どうでしょう。
○国務大臣(田村憲久君) コロナに携わっていただいている医療関係者の皆様方、この方々はしっかりとコロナの対応をいただかなきゃいけませんので、そのオリンピック等々の対応をしていただくというわけにいきません。今、非常に逼迫している地域に関しては、様々な地域から看護師の方々中心に支援という形で派遣もいただいております。これからもコロナの対応を頑張っていただきたいというふうにお願いいたしたいと思います。あわせて、一般の医療も、必要な医療、これは提供いただかなきゃなりませんので、ここで従事いただいている方々もしっかりと必要な医療を提供いただかなきゃならない、そこも割いていただいたら我々困るわけであります。
一方で、これ業務としてずっとやるわけではございませんので、オリンピックの場合は、ボランティアという形でスポットで入られるわけでございますので、そういうものの要請に応じられる方々もおられると思いますし、あわせて、今、実際看護の現場で働いておられないですけれども資格をお持ちの方々、潜在看護師の方々、よく推計ですけど七十万人以上おられるというふうに言われております。こういう方々の中で、そのボランティアで何日間かの間入っていただくという方々もおられると思います。そういう方々中心に多分これは募集をされて対応いただくものだというふうに我々としては認識いたしております。
○倉林明子君 ちょっとオリンピック開催ありきということで思考停止になっているん違うかと私は思うぐらいです。感染は拡大していると。医療従事者のところでさえワクチンはこれからというところでしょう、二回目で言うたらね。
オリンピックが開催できるような状況なのかと、医療提供体制そういう状況になるのかということをしっかり、やっぱり命を守るということを所管もしていると、担当もしているというところだからこそ中止の決断ということをしっかり声上げるべきだと。これは答弁分かっていますので答え求めません。強く言うておきます、はい。
次、看護師の日雇派遣の問題です。
これ、今日の議論を通じましても、いただいた資料を見ましても、はっきりしてきたのはNPO日本派遣看護師協会の実体です。見えてきました。これ、看護師派遣会社であるスーパーナースがしっかり支えて、実態としてはそこが担っていたというような実像です。そのNPO法人の目的は何だったかというと、看護師の日雇派遣を可能とする規制改革の実現だったと先ほど政務官も説明ありました。
このスーパーナースの代表滝口進氏、この方は、先ほどの答弁で、二〇一三年から二〇一六年、規制改革会議の委員を務めていたという方であります。その当時に相談をしたというわけですね。ホットライン、規制改革ホットラインを知ったので、ここで提案したいと相談したと。それに対して、先ほどの答弁では、利害関係者からの提案は慎重であるべきという回答をしたということでした。
聞きたいのは、当時は、相談を受けた当時は、この滝口進氏に対して利害関係者であると明確に認識していた、そういうことではありませんか。
○政府参考人(彦谷直克君) お答え申し上げます。
先ほど答弁申し上げましたとおり、当時の担当者ですね、当時の担当者に確認したところ、そういった、滝口、当時の滝口専門委員との間でそういった、会議の公正性への観点からそういった提案については慎重になるべきではないかという議論をしたという記憶があるというふうに聞いているところでございます。
そういった観点で、当時の担当者、その担当者は、滝口さんがスーパーナースという派遣会社と密接な関係があるということは承知していたんだと思います。
○倉林明子君 つまり、当時の担当者は、相談を受けた人は、滝口進氏は利害関係者であるという認識をしていたということだと思うんですよ。そうでなかったら、そんな話しませんよね。
その上で、一般論として私確認したい。
規制改革会議のメンバーが、自らの事業拡大につながる規制緩和、これ、することが可能な仕組みになっているのかどうか。さらに、提案者であるメンバーがその規制緩和の決定に関与することが可能なのかどうか。これ確認です。
○政府参考人(彦谷直克君) お答え申し上げます。
規制改革の議論では、提案を取り上げて会議における議論の俎上にのせるかどうかということは、提案内容を見て判断がなされるわけでございます。またさらに、規制改革推進会議は有識者会議でございまして、委員、専門委員が自由に議論を行い、その議論の過程をできるだけ公開する中で透明性のある議論を行うとともに、答申等の決定に当たっては、個別の委員というよりは会議体としての意思決定をしているというところでございます。
したがいまして、利害関係者であるからこそ分かる規制改革の必要性というものもございますし、規制改革の効果が社会全体にどのように波及するかということが規制改革の議論では重要な論点でもございますので、利害関係のある委員や元委員であるからといって直ちに規制改革の提案や議論を行うべきではないという結論にはつながるものではないと考えております。
他方で、現在、元委員ではなくて現在委員、専門委員をされている方は、当然のことながら会議において有識者として発言をすることが期待されているところでございます。(発言する者あり)はい。
したがって、その誤解を受けないようにしなきゃいけないということで、そういった観点から、規制改革推進会議におきましても、この令和元年十月に決定した運営規則において、直接の利害関係を有する場合等に委員を審議及び議決に参加させないことができるといった規定を置いて審議の公正性の担保に努めているところでございます。
○倉林明子君 結局できるという話ですよね、それやったら。
会議令を見ても運営規則を見ても、利害関係者の除斥などの明確な規定がないんですよ。つまり、できるんです。在任中の提案であっても法的には問題ないということになるわけでしょう。私、それが問題だと言うんですよ。提案者は反社で、先ほどの議論ですよね、反社でも排除する仕組みがないということが判明したわけですね。
私、これ、規制改革ホットライン、この仕組み自身が利益誘導を可能にすると、こんな仕組みこそやめるべきだと思いますよ。いかがです。
○政府参考人(彦谷直克君) お答えします。
規制改革ホットラインは、幅広く規制改革に関する要望を国民の皆様からお伺いするための仕組みでございますので、そういった仕組みも活用しながら規制改革の議論をしていくことも一つの方法だというふうに考えているところでございます。
○倉林明子君 答弁は明確に、聞いたことにきちんと答えていただきたいと思います。
重ねて、こういうホットラインというような利害関係者の事業拡大につながるような仕組みというのは見直すべきだということを重ねて申し上げます。
その上で、私、看護師の日雇派遣の解禁という規制緩和は、看護師の労働条件を悪化させるということははっきりしていて、これ禁止事項になっていたんですよ。これ、チームで提供する、そういう看護の質の劣化にもつながるこれ重大な規制緩和なんですよね。利用者、これ、看護師だけにとどまらず、利用者や患者の安全リスクもこれ極めて高くなります。
国民の利益を損なうリスクが伴う緩和だと、こういう認識は田村大臣、ありますか。
○国務大臣(田村憲久君) 基本的には、前も申し上げたと思いますけれども、福祉施設で働いていただいておられる看護師の皆様方、これはやはり常勤の方々中心であるということは、これはもうそういう考え方であります。ただ、どうしても体調管理等々いろんな理由で休まざるを得ないという場合、配置基準等々があるということもありまして、そういうところにスポットで入るということはこれはあり得るんであろうなと。
今回、言われるとおり、雇用管理上のいろんな御意見もいただきました。いただきましたけれども、そういう中において、おおむね妥当というような御評価をいただいたわけでございますので、最終的には審議会の御議論をいただいた上でのことでございますが、雇用管理上御不安があるということもございますので、しっかりと、当局といたしましては、そのような御不安な点が顕在化しないように対処してまいらなければならないというふうに思っております。
○倉林明子君 そもそもの入口のところでこんな利益誘導につながる、つながりかねないと、疑惑が本当に深まったわけですよ。
改めて、この規制緩和がどうだったのかということについては、先ほどもありました、私は議論のし直しが必要だと。少なくても、国会の理解は得られているという私は議論になっていなかったと思いますよ。国民抜き、国会抜き、こんな規制緩和については、やっぱり一旦原則禁止に戻して議論のやり直しを求めたいと思う。いかがですか。
○国務大臣(田村憲久君) いや、閣議決定した上での調査にのっとって、一定のニーズがあるということで審議会にもお諮りをして、おおむね妥当というような御評価をいただいた上でのことでございますので、しっかりと雇用管理の方は進めていただくように我々の方も、派遣会社等々いろいろなところに、そこはこれからも十分に注意喚起してまいりたいというふうに思っておりますので、どうか御理解いただければというふうに思います。
○倉林明子君 理解できないと強く申し上げて、終わります。