薬害C型肝炎救済を 倉林氏 新たな枠組み要求(2019/11/21 厚生労働委員会)
(資料があります)
日本共産党の倉林明子議員は21日の参院厚生労働委員会で、約1万人とされる薬害C型肝炎患者のうち、7割超がいまだ救済されていないとして、国の責任で新たな救済の枠組みをつくるよう求めました。
薬害C型肝炎患者の救済のための特別措置法では、原因である血液製剤の「投与の事実」の立証を患者側がしなければなりません。厚労省の樽見英樹医薬・生活衛生局長は、和解に至った患者は10月末現在で2390人と説明しました。
倉林氏は、「立証に必要なカルテの法定保存期間は5年で、カルテがない場合がほとんどだ。感染の判明まで30年かかる例もあり、証言できる医師が亡くなっている事例も少なくない」と立証の難しさを指摘。救済されずに亡くなる患者が増える危険性を訴え、「汚染された血液製剤が納入されていた病院で出産し、母子手帳に大量出血や輸血の記録がある場合は、投与の蓋然(がいぜん)性が高いといえるのではないか」と強調しました。
倉林氏は、特措法には政府の責任や謝罪が明記されていると強調。「厚労省がもつ和解患者のデータを類型化し、投与の蓋然性が高い場合は救済する枠組みを新たにつくるべきだ」と主張。加藤勝信厚労相は「運用上の工夫は引き続き検討しなければならない」と答弁しました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
薬機法の改定に当たりましては、大事なのは医薬品の安全性の確保に資するものであることだということを強調しておきたいとまず思うんです。
その上で、日本では、薬害エイズを始め、繰り返されてきた悲惨な薬害事件がありました。その歴史があり、その教訓から規制強化もされてきたという経緯があろうかと思います。
そこで、最初に、厚生労働省本庁正面玄関前にあります誓いの碑に記された決意を読み上げて、紹介していただきたい。
○政府参考人(樽見英樹君) 厚生労働省の玄関前に、薬害エイズ事件の反省ということで平成十一年八月二十四日に設けられたものでございます。そこの碑文にはこう書いてございます。命の尊さを心に刻み、サリドマイド、スモン、HIV感染のような医薬品による悲惨な被害を再び発生させることのないよう、医薬品の安全性、有効性の確保に最善の努力を重ねていくことをここに銘記する。千数百名もの感染者を出した薬害エイズ事件、このような事件の発生を反省し、この碑を建立した。このように書いているところでございます。
○倉林明子君 二度と薬害を繰り返してはならないという厚生労働省の決意を記したものだというふうに受け止めているわけです。
そこで、今日は薬害の一つでありますC型肝炎について質問させてもらいたいと思うんですね。
出産や手術などで多量に出血した際に止血剤として使用した血液製剤がC型肝炎ウイルスで汚染されていたということから、多くの人が感染し、慢性肝炎、そして肝硬変、肝がんなどを発症と。これ、企業推計では被害者は一万人だということで挙げられております。日本の薬害の中でも突出した規模の被害をもたらしたものだと言えると思うんですね。
訴訟を契機に、被害者を救済するC型肝炎救済特別措置法、議員立法で成立してからもう十一年になるわけですね。患者が裁判によって投与の事実をこれ立証しなければならないということになっているわけであります。
ところが、これまでにどれだけ和解に至っているんだろうかということをまず確認しておきたい。和解に至った患者は何人になるのか、そして、そのうちカルテ等医療行為の記録によって認定された患者、これは一体どのぐらいの割合になるのか、いかがですか。
○政府参考人(樽見英樹君) C型肝炎訴訟でございますが、これまで和解に至りました患者数は令和元年十月末現在で二千三百九十人でございます。このうち、C型肝炎特別措置法が成立した平成二十年一月以降に提訴された、いわゆる後続訴訟で和解が成立した患者数は二千百八十二人ということになっております。
この後続訴訟におきまして、先生おっしゃいますようなその立証といいますか、カルテあるいは手術記録、手術台帳、分娩記録及び分娩台帳など、製剤投与当時の医療行為の記録によりましてフィブリノゲン製剤等の投与が認定された患者は千五百七十七名ということでございますので、和解患者の約七割ということになっております。
○倉林明子君 直近のところで二千三百九十人が和解に至っていると。被害患者の推定人数は一万人ということですから、そういう意味でいいますと、いまだ七割を超える被害者の救済ができていないというのがこれ実態だと思うんですね。
そこで、裁判では、被告である国は、カルテがない場合、先ほど七割はカルテ等の医療行為記録で立証されたということですけれども、国は、カルテがない場合は、医師等の証人尋問、これによる証明まで要求している、これが実態ですよね。で、カルテって、そもそも法定でいいますと保存年限五年ですから、ない場合がほとんどになっています。問題は、このカルテのないC型肝炎の救済が進んでいないということだと思うんですね。
血液製剤が利用されていたのは、売り出されたのが一九六四年ということで、一九九四年までということになっています。私、看護師時代、よく目にいたしました製剤です。で、自覚症状がこれ出ないということから、感染が判明するまでに三十年という例少なくありません。必要な証拠であるカルテ、これがもう既に廃棄されるだけじゃなくて、証言できるお医者さんも亡くなっているという場合も決して少なくないんですよ。
これ、患者が投与の事実、立証するという今の立て付け、極めて困難になっているんじゃないか、年数が経過するにつれてより困難性が増してきているんじゃないか、その認識はいかがですか。
○政府参考人(樽見英樹君) この裁判手続における事実の認定ということでございますけれども、御指摘の例えばカルテ等の医療行為の記録がない場合、先ほどのことでいいますと、後続訴訟の約三割の和解の方はカルテ以外で投与事実の認定を行われているということになるんですが、じゃ、この三割の方というのはどういうことで認定されているのかということでございますけれども、先ほど先生御指摘のように、当時のお医者さんに証言を求めるというようなことももちろんございますが、それ以外でも、例えば母子健康手帳、あるいは製剤投与に関わった医療従事者による証明、この中に証言も入るということだと思いますけれども、それから患者本人や家族による記録あるいは証言といったような、製剤投与を受けた事実を確認できる証拠というものを可能な限り提出していただいた上で、それら様々な証拠を総合してフィブリノゲン製剤投与の事実というものを認定するということが行われているということでございますので、そういうものについて、先生おっしゃるように、時の経過とともにこういうものがだんだんだんだん難しくなってくるというのはあろうかと思いますけれども、しかし、まさにそういう事実というものを確認するということについては必要性というものはございますので、そうした証拠になるような材料というものを提出をしていただくということをお願いをしているところでございます。
○倉林明子君 いや、聞いたのは、年数が経過するにつれて更に立証の困難性、これは増しているんじゃないかと思うんですよ。大臣、これ、認識どうですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 確かに、ずっと今日まで継続しているわけではなくて過去の事実ですから、一年一年たつごとに、今御指摘のように、関係者がいなくなるとか、そういった事情は当然出てくるだろうというふうに思います。
○倉林明子君 それはどう見たって立証が困難になるんですよ。そして、困難性が増しているというのは今の実態であることは明らかだと思います。
カルテのない患者が訴訟を提起してから九年になるんですね。全国で七百四十七人の方が提訴されておりますが、この中で和解できたのは僅か三十七人。だから〇・五%という水準なんですよ。いろいろ証拠として採用してくれているというのはあるとしても、もうこういう実態になっている。そして、少なくとも六十五人の原告が亡くなっているというんですね。このままでは救済されないままに亡くなる患者さんが更に増えるという可能性は、私、現実の問題として受け止める必要があるというふうに思うんです。
投与の事実を医療記録等で立証できなくとも、今おっしゃったように、汚染された血液製剤が納入されていた病院、そこで出産した、そして母子手帳には大量出血とか輸血の記録がある、こういう場合というのは極めて投与の蓋然性が高いと言えるんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(樽見英樹君) フィブリノゲン製剤というものが、先ほど先生御指摘のように、かなり広く使われていたというようなこともあります。
そういう中で、フィブリノゲン製剤がこういう患者さんに投与されたかどうかの認定ということについて、患者の具体的な病態あるいは治療を行った医師による投与方針といったものによって様々であるというのがこれまでの経験でございまして、フィブリノゲン製剤が納入されていた医療機関で出産された、あるいは母子健康手帳に大量出血あるいは輸血があったというような、そういう記録があるということであっても、それだけで直ちにフィブリノゲン製剤が投与されたという推認というところにはまだ、恐縮でございますけれども、距離があるというふうに考えざるを得ないというふうに思っているところでございます。
そのため、実際の裁判では、母子健康手帳の記載に加えまして、当時の患者の病態や主治医の証言といったようなものを総合的に評価するということを行っているということでございます。
○倉林明子君 そんなこと言っていると、次々とやっぱり亡くなっていくんですよ。七千人救われていないんですよ、救えていないんですよ。それが、今の特別措置法を作った、議員立法で、その限界に来ているんじゃないかということを私は強く訴えたいんですね。
厚労省にはこれまでの和解患者のデータがありますね、三千人余りの。つまり、今、蓋然性がどう高いのかという類型化は可能だと私は思うんですよ。投与の事実を立証できない、これは全て立証できない患者の責任だというのは余りにも酷じゃないかというふうに思うわけです。
C型肝炎救済特措法は二度の延長をしてきました。今日、資料で付けていますのは、当初、成立した当初は和解成立件数も非常に伸びているんですけれども、訴訟が係属しているので、これ延長、延長ということで取ってきたんだけれども、提訴もそして和解も本当に伸びがない、ほとんど横ばいというようなことになってきているわけです。
つまり、本当に今踏み込むべきじゃないかと思うんですよ。このまま救えない患者を残したまま進むんじゃなくて、蓋然性の高い、そういう場合について、やっぱり救済できる枠組みというのを今度は政府の責任でつくるべきではないかと。いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) C型肝炎、特に特定製剤の投与によってこうした事態になってきている。もう委員御承知のように、様々な裁判があって、裁判内容もちょっとばらばらで、しかしそれを待っていたのではということで、早期一律の救済ということで議員立法が作られて、今日の制度ができた。
そのときの幾つかの問題の一つは、やはりC型肝炎を実際に感染をされている方の数が推計で百九十から二百三十万と言われ、特定製剤を受けた方による感染が、さっき委員おっしゃった一万人程度ということですから、そこをどう特定していくのかというところがなかなか難しいということで、今日、議員立法において、こういう今委員御指摘のような、裁判所におけるこういう仕組みができ上がったということでありまして、残念ながら、その状況、その状況には変化がない、変わることがないんだろうというふうには思います。
ただ、委員が御指摘のような、これまでのいろんな蓄積とか、その辺をどう処理していくのかという、その制度というよりは、制度を変えるというよりは、運用のことをおっしゃっておられるんだろうと思います。ですから、運用というか、まあ、広い意味での運用、そういったことについてどういう工夫があるのかということは、これまでもいろんなところから御意見もいただいておりますので、我々ができるものが何なのか考えながら、引き続き検討はさせていただかなきゃならないと思います。
○倉林明子君 いろいろ運用上で、踏み込んでどこまでの検討ができるのかということは、是非深く検討していただきたいと思いますが、今自身の裁判で国が求めている証拠の水準というのは変わっていないんです、やっぱり。高いハードルになっている、高いハードルに裁判上はなっているというのは実態であります。
先ほど申し上げましたように、蓋然性の高さを測るということでのデータを厚労省持っているので、それを、もちろん個人情報等は隠した上で、公開で検討するということだって本当にしていったらどうかと思うんです。患者さんの被害の救済を本当に残らずやるんだと、薬害で生んだ肝炎について救済するんだということで、やっぱりしっかり取り組むべきだと思います。
法律にも、国は責任を認めて、そして謝罪が明記されているわけです。最後の一人まで救済するという立場で、運用も含めて、法的整備も含めて、強く検討を求めまして、終わります。