狙いは海外資本へ開放 倉林氏 水道法改定案を批判(2018/11/29 厚生労働委員会)
(資料があります)
日本共産党の倉林明子議員は29日の参院厚生労働委員会で、水道法改定案をめぐり、水道事業の運営権を民間企業に売却する「コンセッション方式」の危険性をただし、改定の目的は海外の大資本への市場開放だと批判しました。
倉林氏は、下水道事業にコンセッション方式を導入した静岡県浜松市では、運営会社のヴェオリア・ジャパンが関連企業に随意契約で工事を発注した事例を紹介。コスト削減のため、地元企業を優先せず自社の傘下・系列事業者を使うことで地域経済に悪影響があると懸念を表明しました。さらに、地元企業や自治体で技術や経験を蓄積した専門職の確保が担保されず、災害時の対応に責任をもてなくなると批判しました。
倉林氏は、導入を検討する宮城県への情報公開請求で「企業秘密」を理由に内容の3割が黒塗りとなっていた事実を示し、「事業の透明性が大きく後退する。(黒塗りでは)市民や議会の監視が行き届かない」と指摘しました。
厚労省はこれまで、「成長戦略」として自治体首長に働きかけを行ってきましたが、上水道のコンセッション方式導入を決めた自治体はありません。導入に関する条例案を提案した大阪市や奈良市では議会で否決されています。倉林氏は「料金は下がらない、議会のチェック機能も働かない、耐震化や老朽化対策が進む担保もない。市民の理解が得られないのは当然だ」と批判しました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
参考人の質疑、そして与野党の質疑も聞かせていただきましたけれども、聞けば聞くほど、なぜ水道の基盤強化のために運営権の売却であるコンセッションが必要なのか、ほんまに分からぬようになってきているというのは率直な感想であります。
それで、まず外資は排除されない、企業が確保した利益の使い道には規制は掛けられない、使用料の値上げも否定されない、これは答弁がそれぞれあったと思う。今日のところでも、抵当権の問題、違約金の問題、これ民間企業との契約、ここに大事なことが相当委ねられるということも私明らかになってきたと思うわけです。
これにとどまらず、国内への影響、とりわけ地域経済への影響というのも少なくないと私思うんですね。水道事業においても、これまで官公需法で中小企業発注優先、この縛りが掛かっておりました。地方自治体では地元企業を優先という仕事の出し方、対応をされてきたと思います。
そこで、確認したいと思うんですけれども、民間企業が発注する事業については官公需法は適用されないということになると思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(宮嵜雅則君) お答え申し上げます。
まず初めに、委員から契約の話がございましたが、官民連携、コンセッションに限らず、当然契約をしていくわけでございまして、その契約の中でどういうふうな形になるかということだと思います。
その中で、官公需につきましても御質問いただきましたが、官公需につきましては、中小企業の受注の確保に関する法律は、国等が物件の買入れ等の契約を締結する場合に中小企業者の受注の機会を確保するための措置を講ずることを定めておりまして、コンセッション方式を導入した場合、発注は民間事業者が行うため、議員からお話がありましたとおり、官公需法は適用されません。
○倉林明子君 そうなんですよね。これ、運営会社がコストダウン、こういうことをやろうと思いますと、自社の傘下や系列事業者、これ使うことになるというのは当然なんですよ。
そこで、下水道事業にコンセッションを既に浜松では導入と。結果、どういうことが起こっているかというと、運営会社であるこれヴェオリアが、ヴェオリア・ジャパンが受けたんですけれども、やっぱり関連企業に随意契約で工事発注と、こういうことになっているんですね。
地元企業に対して長期間にわたって仕事がないと、こういうことになりますと、水道インフラ、これに精通して地元企業が育たないと、こういう事態が懸念されますし、地域経済にとどまらない災害時の対応、こういう点でも大きな役割を発揮するというのが地元のこういう企業なんですよ。経験を蓄積した職員はいない、さらに地域で地元の水道施設を熟知した企業もいない、こんな事態になりかねないということをしっかり見る必要があるというふうに思うわけです。
災害対応を担う専門職を、これどうやって自治体、確保していくのか、具体的にどうやって確保していくのかというのが議論聞いていても見えなかったんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(宮嵜雅則君) お答え申し上げます。
今般の水道法改正案におきましては、コンセッション方式を導入した場合、災害時の対応をどこまで民間企業に委ねるかについては、あらかじめPFI法に基づく実施方針と実施契約で決めることとなります。また、厚生労働大臣は、地方自治体と民間事業者の間の役割分担が定められていることを確認した上で許可することとしております。
また、地方自治体におきましては、平常時においてもコンセッション事業に対するモニタリング業務を行うことから、引き続き水道事業の専門的なノウハウ等を有する職員が配置される必要があり、そうした職員がいなくなるということはございません。
さらに、コンセッション事業の選定に当たりまして、災害時の復旧作業の担い手となる地元企業の参画や活用という項目を募集要項に加え、地元に密着した事業となる提案を行った候補事業者を高く評価するなどして、引き続き地元企業の協力を得ながら事業を実施していくという工夫も可能でございます。
こうしたことから、人材を確保しつつ、コンセッション事業者と役割分担を行い、適切に災害対応を行うことができるものと考えております。
○倉林明子君 契約でそれも確認する、可能だということでの説明にはなっていると思うんだけれども、現行、公営で担保してきたそういう職員や専門職を保全するということについては、むしろ担保を失うリスクが高いということは指摘せざるを得ないと思うんですよ。
モニタリング、監視、これについても企業秘密というのが私大きな壁になり得ると思うんです。実際に、コンセッション導入を検討している宮城県、コンセッション導入に関する調査、これ情報公開請求をいたしましたところ、開示された文書四百九十七枚のうち三割を超える百六十枚がいわゆるのり弁状態で公開されました。理由は、全て企業秘密ということになるんです。
事業の透明性、これ大きく後退する、こういうことになると思う。認識はいかがですか。これ大臣に振ってます。
○国務大臣(根本匠君) 自治体はコンセッション事業者に対して、日、月次、四半期等のモニタリングを行うことになりますが、その際、モニタリングに必要な財務状況で事業運営に係る情報等については、これは確実にコンセッション事業者から自治体に提出されなければならないとなっております。そして、そのため、実施方針や実施契約においてモニタリングに必要な情報の提供について定めておくことが重要だと思います。
このような点も含めて、運営権設定の認可申請時に留意すべき事項、これについては今後ガイドラインにおいて詳細を示していきたいと思います。必要な情報はしっかりと自治体が把握するということであります。
○倉林明子君 契約で自治体には情報公開され、もちろん監視できるという仕組みはあるんだけれども、今御紹介したのは、市民や議会に対してそういうのり弁のような状態での情報公開になっているということ。つまり、議会、市民、水道事業に対して監視が行き届かなくなると。これが企業秘密ということで今起こっていることですからね。これ、宮城の情報公開で起こっていることですから。
海外でも、私、これ、企業秘密が後から分かったということで、失敗の要因ですね、この、経営が不透明、企業が不正を見抜けない、これに企業秘密という壁が立ちはだかるというところが物すごく危険だと思うんです。気付いたときには元に戻すことは極めて難しいと。その違約金の問題、高額な違約金を突き付けられて、戻したくても戻せないという御紹介、参考人の方からもあったとおりだというふうに思うわけです。
厚労省は、官民連携の選択肢を広げるものだと、これ何度も説明ありました。あくまでも導入の可否は自治体が決めると、こういう説明ですよね。しかし、そもそもこのコンセッションの導入を望んだ、希望した、こういう自治体というのはどれだけあるんでしょうか。
○政府参考人(宮嵜雅則君) お答え申し上げます。
現段階でということで申し上げますと、宮城県、それから宮城県の村田町、静岡県浜松市、静岡県伊豆の国市、大阪市、奈良市の六団体におきまして、資産評価に着手するなど、コンセッション方式の導入の具体化に取り組んでいると承知しております。
○倉林明子君 私、大変気になりましたので厚労省に確認しましたところ、要望書という形で御提出があったのは宮城県一件だけですよ。あとは各種会議で聞いているという報告を受けただけです。
そもそも、厚労省において上水道へのコンセッション導入の検討というのはいつから始まったのか。先ほど議論もありました。明確にお答えください。
○政府参考人(宮嵜雅則君) 先ほども御答弁申し上げましたが、今委員からも御指摘がございましたが、自治体からの御要望、それから平成二十八年の骨太方針等の政府の決定、それを受けてというか並行して検討しておりました、二十八年十一月の、これは厚労省ですけれども、水道事業の維持・向上に関する専門委員会の取りまとめを踏まえて、今回の水道法改正案を立案したところでございます。
○倉林明子君 二〇一四年五月、ここの財政諮問会議、競争力強化会議、これ出発点じゃないんですか。ここで、出席した竹中平蔵氏はどう言っているかと。コンセッションの議論、インフラ運営の民営化、この促進を強く求めた発言しておられますよ。これ五月です。すぐその翌月の六月、二〇一四年、日本再興戦略、ここで竹中さんの提案どおりに三年間を集中期間として位置付けて、水道では六件。この目標、初めて出たのはここじゃないでしょうか。
結果、三年たったけれども導入はゼロだったのが水道なんですよ。達成年度が先送りされて、二〇一八年、ここが達成年度と区切られたわけですけれども、よく見てほしい。要は、手挙げして、やりたいところがいっぱいあって選択肢を増やしたというような話なんだろうかということですよ。
資料を付けました。これは、厚生労働省の水道課が出した、PFIの推進委員会に出した資料なんです。
うまくいっていないわけですよ、コンセッション導入がね。じゃ、これに対してどうかといったら、厚生労働省が働きかけたトップセールス、つまり市長に対する、首長に対するリストが挙がっているんですよ。リストの条件見てくださいよ、人口二十万人以上、原則黒字、二〇四〇年までに人口減少率は二〇パー以下。こういうところやったら可能やろということで、リスト挙げて働きかけしてきたのは厚労省なんですよ。本当にそういう意味でいうと、私は立法事実が問われるんじゃないかと思っているんです。
改めて聞きます。現状のこの水道六件のコンセッションの導入の達成状況及び見通しはどうなっていますか。
○政府参考人(宮嵜雅則君) お答え申し上げます。
今委員から御指摘がございましたように、三十年六月十五日に民間資金等活用事業推進会議において決定されましたPPP/PFI推進アクションプラン、平成三十年改定版におきまして、水道分野については二十六年から三十年までを集中期間として、事業実施に向けて具体的な検討を行っている案件を含め、六件のコンセッション事業の具体化が目標とされております。
これまで水道分野においてコンセッション事業を実施した事例はございませんが、資産評価に着手又は同等の検討を実施した案件が六件ということで、先ほど申し上げた六件の自治体でございます。
事業の件数目標は、事業実施に向けて具体的な検討を行っている段階の案件を含めて数えるということになってございますため、目標は達成される見込みであると考えております。
○倉林明子君 そういうところのカウントを甘くして、できたことにするということになっているというのは初めて知りました。
その上で、現状どうなっているかということです。コンセッション導入に関する条例改正案、これを議会に提出した大阪市、そして奈良市。大阪では二回、奈良でも、奈良では一回ですけれども、これ否決されております。つまり、来年度中に、今お話もあったけれども、コンセッションの導入の可否を決めるとしていた浜松市、ここも実は、十一月二十四日、市長選挙を前にしまして、少し時間を掛けても官民連携が理解されることが必要だということで、一八年中に判断しなくてもいいと、こういう表明が市長からありました。つまり、一九年度以降への先送りが示唆されたわけです。
完全に現状では一八年度中のこれ導入見込みもなくなったと、こういう理解でよろしいでしょうか。
○政府参考人(宮嵜雅則君) お答え申し上げます。
導入見込みがなくなったかどうかというのを現時点で我々の方でちょっとコメントさせていただくのはいかがなものかと思いますが、今委員から御指摘がありました例えば浜松市におきましても、委員から御指摘がございましたとおりで、一八年度中の話もコメントされております。
いずれにしても、これも我々も答弁ずっと申し上げさせていただいておりましたけれども、理解を得るということは大変重要なことでございまして、マスコミ報道でしか承知しておりませんが、浜松市長さんもそういうことを述べられていたというふうに承知しております。
○倉林明子君 目標達成年度を先送りしたけれども、達成できない。今お話あったとおり、そのぐらい市民の理解が得られないという現状を私はやっぱりしっかり受け止める必要あるというふうに思っております。
大阪市の場合で見ますと、丸ごと民営化する、この場合だと、固定資産税等の負担というのが百億円、これ見込まれていたわけです。運営権だけの売却だとこの負担はなくなります、運営会社にとってね。さらに、運営会社に、黒字ですので、大阪は、事業収入に対して三十年間で何と五百七十億円の公租公課が発生するという試算が出されております。これに対して大阪市は、軽減する法改正を国に求めるという提案までされたというふうに伺っております。
これ、参入企業には固定資産税は払わんでもええようになるし、もうけ上げても税金も支払を軽減させてもらえるって、これ大盤振る舞い以外の私何物でもないと。その上、市民にとっては料金は下がらないというわけですよ。議会のチェック機能も働かなくなったら、耐震化、管の耐震化とか老朽化対策というのが、これ進む担保もないわけですね。これ、市民の理解が得られないというのは当然だというふうに思います。議会での否決、二回も否決と、こういう結果というのは、住民の側にこれ立法事実はなかったということがこの事例では明らかになったと思うんですね。
世界の水ビジネス企業に対して日本の水道インフラを市場として開放する、これ竹中さんの考え方ですよ。こういうことがこの法改正の改めて目的なのかどうか、目的ではないのかと言いたいと思うんですけれども、どうでしょうか。これは大臣ですね。
○国務大臣(根本匠君) これまでも申し上げてまいりました今回の水道法改正案の目的、これは水道施設の老朽化や、人口減少に伴う料金収入など、水道事業が直面する深刻な課題に対応するために水道の基盤強化を図ることであります。
そして、これまでも官民連携はいろんな形で進めてまいりました。やはり基本は民間企業の技術や経営ノウハウを活用できる官民連携推進、その選択肢の一つとして、今回、コンセッション方式を、あくまでも水道の基盤強化を図る有効な選択肢の一つとして提示をいたしました。
その意味で、今回のコンセッション方式、これは地方自治体があくまで水道事業者の位置付けを維持して最終責任を果たすことができるように公の関与を強化した仕組みというのが大前提ですから、ですから、今議員御指摘のような、日本の水道インフラを海外の水ビジネス企業に開放するなどを目的としたものではありません。
○倉林明子君 そうはおっしゃるんだけれども、最後の結論のところはそうおっしゃるんだけれども、日本再興戦略及び財政諮問会議や競争力強化会議、ここの出発点では明確に公営インフラの民間開放ということから始まっているんですよ。それについて閣議決定までして進めてきたわけです。
私は、日本の水道インフラを外資に、海外の資本に対して開放してしまうというふうなことは絶対にやるべきではないというふうに思います。改めて、水道法第一条、清浄にして豊富低廉な水の供給を図り、もって公衆衛生の向上と生活環境の改善に寄与する、この目的に変更はないわけです。そういう意味で、改めて、リスクの高いこういうコンセッション方式の導入についてやるべきではない。解明されていない部分もたくさん残っておりますので、引き続きの審議を求めまして、終わります。