「働き方」法案 19世紀の働かせ方容認 倉林氏 「残業基準低すぎる」 / 「働き方」法案、参院委で採決強行 委員長解任案を無視するかつてない暴挙 倉林氏が反対討論(2018/6/28 厚生労働委員会)
参院厚生労働委員会で、日本共産党の倉林明子議員は28日、国際水準に照らしてあまりにも長い日本の労働時間を是正することこそ必要であり、「働き方改革」一括法案は廃案にすべきだと迫りました。
国際労働機関(ILO)第107回総会(5月28日~6月8日)で労働時間法制の調査報告が行われ、「長時間労働」は週48時間以上、「非常に長時間」は週60時間以上と定義しています。EU(欧州連合)労働時間指令では、残業が週8時間、月32時間で長時間になります。勤務間インターバル実施は11時間の国が25カ国、12時間が21カ国です。
倉林氏は「国際水準は、日本の大臣告示の残業週15時間、月45時間よりも厳しい。法案の上限規制は月100時間を容認しており、国際的な水準に照らしてあまりにも低い」と強調しました。
加藤勝信厚労相は、「日本の現状は、他国に比べて長時間労働だ」と認めながら、「過労死ライン」を容認した法案の残業上限を「ギリギリ実現可能だと労使で合意した」などと主張。倉林氏は「労使合意を口実にした労働行政の責任放棄だ」と批判しました。ILOが最初に採択したのは1日8時間労働を定めた条約(1919年)でした。倉林氏は、「日本政府は『日本の事情は特殊だ』と主張し猶予を求め、以来100年、労働時間規制の条約を1本も批准していない」と問題視しました。
加藤厚労相は、8時間労働条約の批准について、「変形労働時間制など整合性に慎重な検討が必要だ」と述べ、例外的労働時間制度があるためできないと説明しました。
倉林氏は、「100年前の国際基準さえ批准するつもりがない。法案は19世紀の働かせ方を容認する逆行だ。廃案にして出直すべきだ」と強調しました。
立法の理由が完全に崩壊した「働き方改革」一括法案をめぐり、自民、公明の与党は28日、野党提出の島村大参院厚生労働委員長解任決議案を無視するという前代未聞の強硬手段までつかって、同委員会での法案採決を強行しました。法案には、与党と日本維新の会が賛成、日本共産党、国民民主党、立憲民主党、希望の会(自由・社民)が反対しました。与党は29日の本会議での成立を狙っています。
共産党の倉林明子議員が反対討論に立ち、「本法案はデータねつ造、隠ぺい、労働者ニーズのねつ造により、立法事実は完全に失われ、法案審議の前提が崩壊している。労働政策審議会も国会も冒とくするもので、廃案とすべきだ」と強調しました。
その上で法案の残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)が際限のない長時間労働となる危険があり、残業上限規制も「過労死ライン」を容認し、過労死を促進すると批判。「同一労働同一賃金」についても「人材活用の仕組み」を理由に格差を追認することになると強調しました。
この日の審議でも、高プロで、産休育休や保育などとの整合性など、政府が答弁に窮する欠陥が噴出。与党が審議を尽くさないまま採決を強硬に主張したため、共産、立民、希望の会は委員長解任決議案を提出しました。
与党は議院運営委員会で決議案を本会議に上程せず、たなざらしにすることを決めました。議運委員会で共産党の田村智子議員は、本会議であつかうべき解任決議案を上程しないことは、かつてない暴挙だと厳しく批判しました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
やっぱり、審議を通じまして、私は、この法案、立法事実も、そして提出根拠、これも崩壊していると思うんですよ。徹底審議の上、私は廃案にすることが立法府として取るべき態度だと申し上げたいと思います。本日の採決など到底認められないと、まず申し上げておきたい。
質問です。労働時間の規制、これが国際的にどんな水準になっているのか、そしてこの法案はその水準から見てどうなのか、これ検証する必要があると思うんですね。今月開催されましたILO第百七回総会、ここでは労働時間法制について画期的な調査報告が行われております。労働時間や週休などの条約や労働時間短縮などの勧告という国際基準に照らして百二十四か国の現状を調査した、これ初めての一般調査報告書ということで伺っております。
そこで、確認をさせていただきたい。この報告書の中で長時間労働というのはどういうことで定義がされているのか、御説明ください。
○政府参考人(山越敬一君) 御指摘の労働時間に関する一般調査報告におきます長時間労働でございますけれども、一週間当たり四十八時間を超えて通常働くこととされております。また、非常に長時間の労働とは一週間当たり六十時間以上働くことと、それぞれ、これも定義されているところでございます。これに基づきまして、この労働時間に関する一般調査報告におきましては、各国の実情等が報告されているものと承知をしております。
○倉林明子君 残業を含めて週四十八時間、これが長時間労働の定義なんですよ。超長時間労働、とても長い労働と、これが週六十時間なんですね。
ちなみに紹介いたします。二〇〇三年に改正されましたEU労働時間指令、これによりますと、残業を含めて週四十八時間を超えてはならないと、こういう規定なんですよ。つまり、残業はおよそ週八時間、月三十二時間なんです。日本はどうかと。週十五時間、月四十五時間、この大臣告示になっているわけですね。こういう大臣告示さえも大幅に下回るというのがEUの当たり前と、これが世界水準であるということを私はしっかりこの法案審議の上でも押さえておく必要があるというふうに思っているわけです。
そこで、この報告書ですけれども、表題は、未来のために人間らしい労働時間を保証するというふうにしているわけです。この中で、勤務間インターバルの規制が実施されている国の調査結果も報告がありました。これ、十一時間で規定している国、十二時間で規定している国、調査は百二十四か国が対象でありますけれども、何か国にそれぞれなっているのか、答弁してください。
○政府参考人(山越敬一君) 諸外国の全てのインターバル規制について把握しているわけではございませんけれども、詳細な数字もまた把握していないところでございますけれども、今御指摘がありましたようなEU指令におきましては加盟国に原則として十一時間のインターバルを課しておりまして、実際に、ドイツ、イギリス、フランスといった国では十一時間のインターバルの規制を設けているというふうに把握をしております。また、スペインにおいては十二時間のインターバル規制を設けていると承知をしております。
○倉林明子君 今の答弁聞いていて分かったんですけど、報告書見ていないですね。報告書確認できていないんじゃないですか。
牧原副大臣、行かれたということだ。確認できますか。
○政府参考人(山越敬一君) この毎日の最低休息時間を十一時間から十二時間と定めているということで、その例といたしまして、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、キプロス、チェコ、デンマークなどがこの報告書では掲げられているということでございます。
○倉林明子君 報告書では国名がそれぞれ挙がっているんですよ。十一時間ということでいうと二十五か国です。十二時間は二十一か国あるんです。全て国名が記載されております。その中にはどういうものがあるかというと、十一時間では、ブラジル、そしてイラクあります。さらに、十二時間では、アゼルバイジャン、南アフリカ。つまり、発展途上国でも既に実施しているってことですよ。四十六か国で既にこのインターバルの規制が実施されているんですよね。
本法案のインターバルは、時間の規定もなければ、努力義務にとどまるんですよ。歴史的な規制とされる罰則付きの上限規制、これは月百時間未満までを容認すると、こういうものですね。つまり、国際的な水準から見たら余りにも、余りにも低いんです。大臣の認識、どうですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 今委員、二つのことをおっしゃっておられる。上限規制の話とインターバル規制のことですよね。
まず、上限規制については、もう法案の中身は申し上げませんけれども、これまでこうした上限規制ができなかった、そしてさらに罰則を科す、そういった中において、労使において、実効性があり、それぞれの立場からぎりぎり実現可能なものとして合意をしていただいたわけでありますので、それに沿ってこれをつくらせていただいている。
しかしながら、これまでも申し上げているように、これは上限であって、そこまで上げていいというものでは全くないわけでありますので、上限水準までの協定を安易に締結することを認める趣旨ではありませんし、また、可能な限り労働時間延長を短くするように、労働基準法に根拠規定を設け、新たに定める指針に関し、使用者及び労働組合等に対し必要な助言、指導を行うこととし、長時間労働の削減に向けた労使の取組を促していきたいと思っております。
インターバルについては、もうこれもこれまでも答弁をさせていただいておりますが、実態が、いまだ導入している企業が一・四%にとどまっている。こういうことを踏まえて、まずは制度の周知や導入促進を図ることが重要ということで、この法案では事業主に対して勤務間インターバル制度の導入を努力義務と、課したところであります。
国際的な今の状況、日本は長時間であると、これは十分我々も認識はしているところであります。
○倉林明子君 いや、長時間かどうかということで聞いたんじゃないんですよ。国際水準と比較してどういうふうに思っているのかというふうに聞いたんです。いや、今の答弁、ちょっとすり替わっているんですよ。
国際水準、規制の水準として私は余りにも低いんじゃないかと。どうですか。
○国務大臣(加藤勝信君) まず、日本の長時間労働の状況というのは他国に比べても長時間労働の状況にあるということ、これはまずそういった認識に立っております。
そういう中で、現行の中でどこまでやれるかということで、労使でぎりぎり調整していただいた結果ということを先ほど説明させていただいたと、こういうことであります。
○倉林明子君 労使合意でぎりぎりだって、もうこの間何度も説明受けたんですよ。でも、労使合意がなかったら法制化できないと、こういう口実がまかり通るようだったら、労働行政としては責任放棄になるんじゃないかと私思うんですよ。これまでに規制に踏み出さなかった、私は、そこの政府の責任というのが問われる問題だというふうに思っているんです。
そこで、改めて確認したいと思います。
ILOが初めて採択した条約は何だったか。
○政府参考人(山越敬一君) まず、今の御質問にお答えする前に、先ほどの私の答弁で、オーストラリア、ベルギー、インターバルを十一時間から十二時間と申しましたけれども、このオーストラリア、ベルギーなどはインターバル時間は十一時間ということでございまして、こうした国は二十五か国ということでございます。
それから、ILOが一九一九年に第一号条約として採択した条約でございますけれども、これは工業的企業における労働時間に関する条約でございます。
○倉林明子君 そして、この条約で初めて、一日八時間、週四十八時間労働、これが定められた、こういうものですよね。歴史的なものです。
このILOの今回の報告書の方ですけれども、十九世紀初頭においては一日十四時間又は十六時間労働が一般的であった、八時間労働制の国際基準を設定することは第一次大戦後における労働者の最も切実な課題の一つであったというふうに述べているんです。これに応えて採択された、これが第一号条約です。
当時、日本の政府は、この一号条約に対して一九一九年の日本政府の対応はどうだったのか、説明できますか。
○政府参考人(山越敬一君) この一九一九年のILO第一号条約が採択された際でございますけれども、我が国政府は賛成したものと承知をしております。
○倉林明子君 よく調べてから物は発言した方がいいんじゃないかなと思うんですね。
日本の事情は欧米と大いに異なる、日本は特殊だ、こう主張して二年の猶予を求めているんですよね。態度は今も、そういう意味でいうと変わっていないんです。ILOの労働時間に関する十八本の条約を一本も批准していない先進国といえば日本と米国のみではないですか。
第一号条約というのは、一日八時間、週四十八時間労働制を定めているわけです。長時間労働を是正するというのであれば、この一号条約の批准というのは直ちに検討、実行していくべきではないかと思います。いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) 先ほど賛成と申し上げておりますが、批准はしていないというのは今委員御指摘のとおりで……(発言する者あり)いや、批准は日本はしていないということですね。
○倉林明子君 だから、言いました。
○国務大臣(加藤勝信君) いや、ということは委員御指摘のとおりということでございます。
その上で、この御指摘の第一号条約、これは工業的企業における労働時間について、原則として一日八時間、一週四十八時間を超えてはならないことを定めたものでありまして、この第一号条約の批准については、我が国においては変形労働時間制、これは一週最大五十二時間まで可能となる仕組みになっておりますが、それとの関係なども含めて、引き続き国内法制との整合性について慎重な検討が必要という立場でございます。
○倉林明子君 百年前のこの一号条約も批准できない、そういう立場ですか。もう一回答えてください。
○国務大臣(加藤勝信君) この一号条約について、例えば現在四十七か国が批准をしておりますけれども、G7ではカナダだけ、それ以外の国は批准をしていないというふうに承知をしておりますが、いずれにしても、日本の立場においては、今申し上げた変形労働時間制との関係なども含めて、国内法制との整合性について慎重に判断をしていく必要があるということでございます。
○倉林明子君 情けないと思うんですよね。百年前の、今の水準じゃないですよ、百年前の国際水準さえ、これ批准しようという気が全く感じられない答弁ですよ。
労働行政を預かる者として、本当に基本が問われると私は思っているんですよ。月百時間未満までの合法化という、今回、上限付きで、罰則付きでやるって、これ上限規制で規制強化の法だと言っているんだけれども、その中身たるや、月百時間未満まで合法化するということにほかならないと私は思っているんです。これは、十九世紀の世界の働かせ方、これを容認するということになるんじゃないかと思うんですよ。世界的な逆行ですよ。断じて私は認められないと思う。
この法案については、過労死を促進する、こういう懸念が繰り返し繰り返し家族会の方から、労働組合の方から寄せられております。労働者は、この法案について本当に望んでいる人がいないということも私は議論を通じて明らかになったと思うんですよ。労政審に出したデータもでたらめだったわけです。出直すべきだ、廃案にすべきだと、重ねて申し上げまして、今日は終わります。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
私は、日本共産党を代表して、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案に断固反対の討論を行います。
本法案は、データの捏造、隠蔽、そしてニーズの捏造によって立法事実は完全に失われ、法案審議の前提が既に崩壊しております。労政審もそして国会も冒涜するものであり、廃案とすべきであります。
反対する第一の理由は、長時間労働を更に拡大し、過労死を促進するものであるからです。
高度プロフェッショナル制度は労働時間規制を完全に適用しない労働者をつくり出す制度であり、明確な指示でなければ使用者による業務の指示も可能なため、際限のない長時間労働となる危険があります。さらに、健康確保措置も長時間労働の歯止めにはならず、過労死しても、労災認定はおろか、労災申請さえも困難にする最悪の事態を招きかねません。
時間外労働の上限規制については、過労死ラインの時間外労働の合法化にほかなりません。「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」、こう定める労働基準法に過労死ラインの上限を書き込むことは到底認められません。長時間労働の是正のためには、大臣告示の法制化、例外規定の撤廃、インターバル規制の導入、労働時間の正確な把握、記録を罰則付きで義務付けることが不可欠であります。
第二の理由は、雇用対策法の役割を大きく変質させることです。
法律の名称を雇用対策から労働施策に変え、労働生産性の向上を目的に据えるものとなっております。労働者保護法制が適用されない非雇用型就労も含めた多様な就業形態の普及を国の施策に加えるなど、無権利、低所得の労働者を増大させることにつながるものであり、認めることはできません。
第三の理由は、同一労働同一賃金について、将来の転勤や昇進等の人事異動の可能性という人材活用の仕組みの違いを理由に、現在の格差を追認することになるものです。正規、非正規間の処遇間格差の是正と言いながら、格差の固定化につながりかねません。
加えて、フレックスタイム制の清算期間を三か月に拡大することは、長時間労働の助長、新たな未払残業につながるものとなります。
総理は、過労死の悲劇を二度と繰り返さないと何度も決意を述べられました。しかし、本法案ではこの決意を実現することは断じてできない、このことを申し上げまして、反対討論といたします。