無権利労働者を拡大 倉林氏、働き方法案撤回迫る(2018/6/26 厚生労働委員会)
日本共産党の倉林明子議員は26日の参院厚生労働委員会で、政府が「働き方改革」一括法案で掲げる「多様な就業形態」に労働者保護ルールが適用されない労働者が含まれる危険性を指摘。「今やるべきは、増大する『多様な働き方』に対して、労働者を保護する規制強化だ」として法案の撤回を求めました。
倉林氏は、「フリーランス」などと呼ばれる個人事業主や請負・委託などの働き方が広がり、民間調査では約1000万人超と推計されていることを指摘。政府の報告書では、「多様な就業形態」の問題点として低収入や無権利を挙げていることを指摘し、「本来、労働法制の対象となる保護されるべき労働者を除外するなどあってはならない」とただしました。
加藤勝信厚労相は「しっかりと保護されることが前提だ」としか答えませんでした。倉林氏は「実態は労働者でありながら、個人事業主とされれば、労働基準法や最低賃金法の適用からも除外される」として、実態把握と労働法制の順守こそ優先すべきだと主張。「多様な就業形態」の名のもとに無権利な労働者を拡大する法改定はやめるべきだと強調しました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
過労死の増加要因となっているその一つが、やっぱりハラスメントだと思うわけです。若い世代に過労自死が増加しておりまして、事態は待ったなしで対策が求められているというふうに思います。実効あるハラスメント対策が喫緊の課題だ。大臣の認識はいかがでしょう。
○国務大臣(加藤勝信君) 職場におけるセクハラあるいはパワハラ等のこのいわゆるハラスメント、これは働く方の尊厳、人格を傷つけ、職場環境を悪化させる、そういった意味ではあってはならないということ、そのことは委員と我々とも同じ認識を持っているというふうに思います。
セクハラ等について、あるいはマタハラと言われるものなどについては、その発生を予防するため、男女雇用機会均等法に基づき企業に対して義務付けている対処方針の明確化や相談窓口の設置など、雇用管理上の措置の履行確保、これを進めておりますし、パワハラについては、本年三月に取りまとめた報告書を踏まえて、労働政策審議会において具体的な議論を進めていきたいと、こういうふうに考えています。
○倉林明子君 私、遅過ぎると思うんですよ。やっぱり立法化に踏み込んでいくという段階に来ていると思うんですよ。そういう意味で、やっぱり今回議員提案ありました、国民民主、立憲民主のこの法案というのは意義ある一歩だというふうに私も受け止めております。
そこで、今月開催されたILOの第百七回の総会で、職場での暴力とハラスメントをなくすための条約を作り、来年の総会での採択を目指すというふうにされたわけですけれども、日本政府としてはどんな態度を取ったのか、明確にお答えください。
○政府参考人(宮川晃君) 本年六月八日のILO総会で採択されました委員会報告書では、労働の世界における暴力とハラスメントの基準設定に関し、文書形式を勧告付条約とすることが採択されたほか、多岐にわたる論点について様々な議論がなされたと承知しております。
日本政府といたしましては、各国の実情に応じた柔軟な対策を促進するような基準が設定されることが重要との立場から、積極的に議論に参加してまいりました。
委員会報告書の内容につきましては、十分議論することが必要な内容が多岐にわたって含まれておりますが、いずれにいたしましても、労働の世界における暴力及びハラスメントにつきまして新たな国際基準が設定されること自体は望ましいことと考えておりまして、この委員会報告書はコンセンサスによって採択されたということを我が国としても受け止めていきたいと考えております。
今後は、来年のILO総会において二回目の議論が行われた上で勧告付条約が採択されることが想定されているわけでございますので、我が国を含む世界各国が効果的にハラスメント防止のための取組を進めていくことを可能とするような基準となるよう、ILOにおける議論にも引き続き積極的に参加してまいりたいと思います。
○倉林明子君 いや、コンセンサスとしての到達点を聞いているんじゃないんですよ、日本政府としてどういう態度を取ったのかということを聞いているんですよ。
報道を見ておりますと、柔軟な内容とすべきとして態度を保留したと、これ共同通信の報道。そのほかにも、要は、国内法が未整備な状態では条約による国際基準に対処できないと、勧告にとどめるよう求めたという報道もあります。もう非常に消極的だと思うんだけど、この報道は事実じゃないんでしょうか。
○政府参考人(宮川晃君) 文書形式について採択されました六月二日の委員会におきましては、この本件基準の対象者が従業員のみならずボランティアなど広範に及んでいることに懸念を表明しつつ、その時点で対策の内容についての議論が実は終わっていなかったという中で、文書の形式を判断できない旨の発言は行ったところでございます。
○倉林明子君 消極的だと受け止められるような対応だったのではないかということなんですよ。
私、きっぱり積極的にコミットしているのであれば歓迎されていると思うんですよ。ところが、そういう報道になっていないわけです。消極的な姿勢であるということであれば、私、極めて問題だと思っているんですよ。
セクハラ罪という罪は存在しない、これ、麻生大臣が言った言葉ですよ。こんなことを言っている日本だからこそ、暴力とハラスメント、これ禁止する法定化、これ急ぐべきだと思うんです。いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) ILOの議論は今説明をさせていただいたところでございます。
国内においては、先ほど申し上げましたが、パワハラ、パワーハラスメント防止対策については、本年三月に取りまとめた報告書を踏まえて、今後労働政策審議会において具体的な対策について議論を進めていく、そういうこと、そうした議論を踏まえて、ハラスメントのない職場づくりを是非進めていきたいと思っておりますが、ハラスメント行為を法律によって禁止するということで、これ例えば労働法の世界で禁止するということになりますと、労働法制そのものは、もう何回も申し上げていますが、労使の交渉力の違いを踏まえ立場の弱い労働者を保護する観点から契約自由の原則を修正するものであり、基本的に法律上の責任の主体、これは事業主になっていることが多いわけであります。そのため、労働者の間あるいは顧客など労使以外の者との間で問題になり得る様々なハラスメントを禁止して行為者に刑罰を科すということは、この労働法制の基本的な枠組みの中においてはなかなか難しいというふうに考えているところであります。
○倉林明子君 いや、法定化を急ぐべきだと。さらに、ILOでも来年には条約ということになっているわけですよ。私は、先送り許されないと思うんですよ。過労死を本当になくそうと思ったら遅過ぎるぐらいなんですよ、法定化が。やっぱりハラスメントに対して、罰則を含めて有効な法定化ということを重ねてこれは求めておきたいと思います。
次に質問移ります。
本法案では、雇用対策法が名称も変更され、新たに生産性の向上が目的に加わる、国の施策に多様な就業形態の普及ということが加わることになるわけです。そもそも、多様な就業形態、これが普及すべきものなのかということなんですよ。
そこで、具体的に確認したいと思います。多様な就業形態の類型と対象となる就業者数は現状で何人か。そしてまた、働き方改革実行計画、ここに目標まで出ているんですよね、これはどうなっているでしょうか。
○政府参考人(小川誠君) お答えを申し上げます。
今回規定した多様な就業形態の普及につきましては、働く方それぞれの置かれた個々の事情に応じて多様で柔軟な働き方を選択できるようにするためのものでございます。これは当然しっかりと保護がなされることが前提と考えておりまして、現時点で積極的に普及を図る対象としては、雇用型テレワークやシルバー人材センター等を念頭に置いております。
それぞれの就業者数につきましては、テレワークを認めている社内規定等に基づく雇用型テレワーカーの、テレワークの割合は、平成二十九年度テレワーク人口実態調査、これは国土交通省の調査でございますけれども、によれば、雇用される者の九・〇%を占めております。また、シルバー人材センターの就業者は約六十万人となっております。
現時点で定められている具体的な数値目標につきましては、世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画において、平成三十二年までに、テレワーク導入企業を平成二十四年度比で三倍、テレワーク制度等に基づく雇用型テレワーカーの割合を平成二十八年度比で倍増することが目標として掲げられているところでございます。
○倉林明子君 雇用型のテレワーク、シルバー人材センターということで説明あったんだけれども、これ拡大ありきの目標ですよね。雇用型テレワークにとどまらず、非雇用型テレワークあるいは副業、兼業、雇用類似の働き方、いわゆる多様な働き方、これがもう急速に拡大してきているというのが実態だと思うんです。
これ、民間の調査によりますと、既にフリーランスという働き方が一千万人を超えているというものもあります。実態ということでいうと、私は、正確に政府はつかめていないというふうに思っているわけです。さらに、この閣議決定された働き方改革実行計画というものでは、非雇用型テレワークも、さらに副業、兼業も、雇用によらない働き方、こういうことで位置付けされているんですね。
多様な働き方の一つである雇用類似の働き方について、今年三月末の雇用類似の働き方検討会の報告書、ここでは、実態、課題の整理しておられます。一体問題点として何が分かったのか、御説明ください。
○政府参考人(宮川晃君) 働き方改革実行計画に基づきまして、雇用類似の働き方につきまして、法的保護の必要性を含めて中長期的に検討していくこととされております。このため、厚生労働省におきましては、雇用類似の働き方に関する検討会におきまして、その実態等の把握、分析、課題整理に着手し、本年三月に報告書を取りまとめたところでございます。
先ほど委員御指摘のとおり、このいわゆる雇用類似の働き方というものについては定義もなく、その総数についても、様々な資料等はございますが、非常に幅のあるものになっております。また、把握した働いている方の問題意識等を整理した課題等といたしましては、例えば、契約条件の明示ですとか契約内容の決定、変更、終了のルールの明確化ですとか報酬額の適正化、あるいはスキルアップやキャリアアップなどが挙げられておりまして、必要性も含め、今後検討を進めていくことが考えられると報告書ではされているところでございます。
検討会で把握した実態等を踏まえ、引き続き雇用類似の働き方に対する保護等の在り方について検討してまいりたいと考えております。
○倉林明子君 具体的に言うと、収入が不安定、収入が低い、さらに、失業保険、労災保険がない。こういうところでは本当に保護の必要性ということが浮き彫りになっている報告書でもあるなというふうに私も思って読ませていただきました。
座長からも、今ちょっと紹介ありましたけれども、保護の内容と雇用類似の働き方をする者の範囲を総合的に議論していただき、拙速に結論を出すのではなく、丁寧な議論をしていただくことを期待したいと、こういう発言もあって、要は、慎重に実態把握も含めてやる必要があるということだと思うんですね。課題も多いと。さらに、兼業、副業のところでいうと、過労死認定のルールについてはこの六月二十二日から具体的な検討が始まったということで、報道も見ました。
いずれも、これ切り分けていると言うんだけれども、法案提出前に十分私は労政審での丁寧な議論尽くされてから出てくるものじゃないのかと思うんですね。順番逆転していると思うんですよ。
多様な就業形態、この現状についてなんですけれども、連合、組合の連合が実態調査、二〇一七年にされております。世界的にもやっぱり問題となっているいわゆる曖昧な雇用関係、この実態と課題を明らかにしようとした調査になっているわけですが、いわゆる偽装雇用、雇用関係があるのに装っている、こういう偽装雇用とか、仕事の仲介として本来適用されるべき労働法制の規制逃れ、これが問題だということでやられた調査でもあったんですね。
私は、多様な働き方、多様な就業形態という場合、そこに隠れている本来労働基準法の適用を受ける労働者、これを見逃すとか排除するとかいう方向に行ったら大変なことになると思っているんです。
そこで、確認です。労働基準法の適用を受ける労働者、この定義は何か。
○政府参考人(山越敬一君) 労働基準法における労働者でございますけれども、これは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいうとされております。
この労働基準法上の労働者に該当するか否かは、契約形態にかかわらず、仕事の依頼や業務指示等に対する諾否の自由はあるか、業務を遂行する上で指揮監督を受けているか等の実態を勘案して総合的に判断されるものでございます。
○倉林明子君 つまり、使用者の指示、そして対価としての報酬、いろいろ要素あると言うんだけど、この二つというのは労働者か否かということでいうと決定要素になろうかと思います。多様な就業形態、ここで働いている人も実態は労働法制の対象となる労働者が私は含まれていると、ここは本当につかむ必要があるんじゃないかというふうに思っているんです。
多様な就業形態を普及するというのが今回の法律に新たに盛り込まれるわけですよ。じゃ、この多様な就業形態はどういう就業形態を規定しているのかと。法案に明示されていないんですよ。本来、労働法制の対象となる保護されるべき労働者、これを除外してその多様な方に入れ込むようなことがあってはいけないと思うんですよ。いかがですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 今回の雇用対策法第四条の改正において、法の施策として規定した多様な就業形態の普及、このような考え方の下、働く方が置かれた個々の事情に応じて多様で柔軟な働き方を選択できるようにするために行うという趣旨であります。
その多様な就業形態の普及について、働き方改革法案の要綱を議論いたしました平成二十九年九月十四日の労働政策審議会の職業安定分科会においてお示しをしているところでありますけれども、しっかりと保護がなされることが前提だと考えておりまして、保護がなされておらず不安定な就業形態を普及しようとする観点から法改正を行うものではないということをその場でもお示しをさせていただいているわけであります。
○倉林明子君 いや、規定がはっきりしていないから問題にしているんです。
実態は労働者でありながら個人事業主、こういう扱いになると、労働法も最低賃金法の適用からも除外されるんです。今でも一円ももらえないという不払問題、これ発生しております。三日連続の徹夜なんかをして、長時間労働、これが蔓延しているということも告発されております。
私、偽装雇用の実態、これまずつかむべきだと思うんです。そして、そこには労働法制をまず遵守させるべきだと思います。大臣、どうですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 先ほどの何が労働者に当たるかは基準局長からお話をさせていただいたところでありますけれども、契約において雇用によらない働き方をされる場合であっても、労働者としての実態があれば労働基準法や最賃法の保護を受ける。労働基準監督署においては、これは、個別具体的に見なければこれは判断できませんから、労働者の実態をしっかり判断をして、結果として法違反が認められる場合には是正に向けた指導をこれまでも行ってきているところでありますし、引き続きこれをしっかりと進めさせていただきたいというふうに思うところであります。
それから、ちょっと先ほどの多様な就業形態の普及の関係でありますけれども、そういった議論も踏まえて、さらに基本指針をこれ決めることになっておりますから、そういった中において、しっかりと保護される就業形態であることが前提である旨、これを基本方針においても明らかにしていきたいというふうに考えております。
○倉林明子君 後からなんですよ、そういうことをはっきりさせていくのがね。私は、多様な就業形態、この名の下に無権利な労働者を拡大する危険があるということを指摘したいと思うんですよ。そういうことにつながるような法改定になっているからやめるべきだということは申し上げておきたいと思います。
今やるべきは、増大するような、多様な、増大しているんですよ、無権利な働かせ方が、多様な働き方として。こういうことに対して、労働者を保護する規制強化こそやるべきだというふうに思います。大臣、どうでしょう。
○国務大臣(加藤勝信君) まさに、雇用類似の働き方については、先ほども局長から答弁をさせていただきましたけれども、そうした検討会において実態の把握、分析、課題整理にも着手をし、本年三月に報告書をいただいたところでありますので、それらを踏まえて、労働政策審議会の基本部会において保護等の在り方について検討させていただいているところでありますので、しっかりとそこで議論させていただきたいと思います。
○倉林明子君 保護等の在り方の前に、現行の労働者として労働法制の保護の下にあるべき人まで排除される実態が非常に問題だと言っているんですよ。そういうところを更に拡大しかねない、こんな法案については断じて容認できないと申し上げて、終わります。