倉林明子

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障害者の働く場を守れ 倉林氏 事業所閉鎖の対応迫る(2018/5/17 厚生労働委員会)

(資料があります)

 日本共産党の倉林明子議員は17日の参院厚生労働委員会で、就労支援事業所の閉鎖で障害者が働く場を失うことがあってはならないと主張しました。

 4月から、一般就労の困難な人たちが働く「就労継続支援B型」の基本報酬は平均工賃が低いほど減少する7段階制になり、目標工賃達成加算が廃止されました。

 倉林氏は障害者施設の全国組織「きょうされん」の調査にもとづき、多くの事業所で年間300万から700万円超の減収になると指摘。重度の人や利用日数の少ない人の排除につながると強調し、早急に実態調査と激変緩和措置を行うよう求めました。

 加藤勝信厚労相は、調査は今年度中に行うと答えました。

 倉林氏は、雇用契約を結んで障害者の就労支援を行う「就労継続支援A型事業所」が相次いで閉鎖し、多くの障害者が解雇されているもとで、厚労省が事業収入による工賃支払いを徹底すれば、いっそうの大量解雇も避けられないと指摘。「社会福祉事業に営利目的の企業参入をさせてきた。そのあり方を含めて見直すときだ。自治体による実効性のある監査体制の整備、財政措置も含めて早急な対応を」と求めました。


就労継続支援における賃金・工賃の向上

きょうされん報酬改定影響調査「実績」電話ヒアリング


議事録を読む

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 報道でもありましたとおり、また二十八歳の若い労働者が裁量労働制の下で、過重な労働の中で過労死された。本当に私たちはこの死を重く受け止める必要があるというふうに思っております。
 そこで、議論は改めてしたいと思うんですけれども、先ほどの石橋委員と総務省の審議官のやり取りの中で、統計データについてのやり取りございました。統計データとしてはこの労働時間等総合調査というのは扱うことができないという、また確認しますけれども、扱うことはできないという趣旨での御発言だったというふうに私は聞きました。
 本来、統計データとして扱う場合は総務省に申請をしてもらうことになっている、この一点だけ確認したいと思う。この労働時間等の総合調査については、統計データとして扱うという申請は総務省にされたのかどうか、この事実確認できますか。

○国務大臣(加藤勝信君) おっしゃる意味は、先ほど総務省でしたか……

○倉林明子君 さっきのやり取り。

○国務大臣(加藤勝信君) 総務省、総務省の方の答弁、これはいわゆる承認統計制度ということでありまして、そういった意味で承認を取っていないというのが答弁の中身でありますし、今確認したら、承認の申請もしていないということであります。

○倉林明子君 要は、統計データとして扱うのに値するのかどうかというところが問題だと思うんですよ。二割もデータをカットして、傾向に変わりがないから扱うと、この姿勢が問題だと思うんですね。でたらめな集め方、でたらめな処理が明らかになった下で、データ全体を撤回して、労政審に差し戻して、やり直したデータをお示しして、議論はやり直すべきだということを重ねて指摘をしておきたいと思います。
 今日は、障害者の就労継続支援事業がちょっと大変な状況になっておりますので、この問題に限ってお聞きしたいと思います。
 一般の事業所に雇用されることが困難な人に対して雇用契約による就労の機会を提供する、最低賃金を支払うというのがA型事業所ということになっております。二〇〇六年、百一件だったこの事業所数が昨年度三千六百件、急増をしてまいりました。このA型事業所が昨年から全国各地で突然の閉鎖、大量解雇と、社会問題になりました。
 厚生労働省は、昨年四月、制度の見直しを行いまして、原則として自立支援給付費を障害者の賃金に充ててはならないとして、事業収入から最低賃金を払えない場合、指定の取消しも検討する、こういう規制強化を行ったわけです。
 制度見直しの理由を簡潔に御説明ください。

○政府参考人(宮嵜雅則君) お答え申し上げます。
 障害福祉サービスについて支給される自立支援給付費は、当該施設の運営のために設備費や支援員の人件費を賄うためのものでございます。このうち、就労継続支援A型につきましても、事業収入から経費を控除した額から利用者の賃金を支払うべきことを制度創設の当初からお示ししてきたところでございます。
 しかしながら、自立支援給付費を障害者の賃金に充当しているとか、就労機会の提供に当たって収益の上がらない仕事しか提供していないなど、就労継続支援A型の基本方針や運営に関する基準の趣旨に反する事業所が存在していました。
 このことから、厚労省では、従来より事業所を指定する地方公共団体に対しまして、こうした不適切な事業運営に対して厳正な指導を実施するように求めてきたところでございますが、依然として不適切な事業運営が認められたことから、社会保障審議会障害者部会の御議論も踏まえて、二十九年の四月の基準改正に至ったところでございます。

○倉林明子君 元々、二〇〇六年の自立支援法、ここで、それまでは非営利法人しか運営できなかった社会福祉事業に営利企業も参入できるようにした。これが発端になってここまで増えたんですよ。規制を取り払ったことで、福祉を食い物にすると、そんなとんでもない悪質業者の参入が増えたということが背景なんですよね。私は、その責任というのは極めて重大だというふうに思っているわけです。
 事業収入だけで賃金が払えるA型事業所というのは全体の三割弱しかないというふうに伺っております。部品製造の下請、この事業者の話も聞いていますけれども、福祉単価というのがまかり通ると言うんですね。一般の相場の半値で下請に出されると。悪質な事業者だけじゃないんですよね。真面目な事業者でさえも、就労を支える、この事業収入だけでは賃金払えないという構造があるんですよ。
 制度の見直しが一律に実施される。つまり、この最低賃金を事業収入で支払えということになりますと、多くの事業所が淘汰されかねないという危険があるんです。これ、更なる障害者の大量解雇の可能性も否定できないという状況で、障害者の居場所、生活の糧、仲間、この働く誇りさえ奪うことになるんですよね。
 これ、障害者を路頭に迷わすようなことになってはならないと思いますが、大臣、どうでしょう。

○国務大臣(加藤勝信君) これ、そもそも就労継続A型事業所、いわゆる障害のある方が雇用契約に基づいて、最低賃金などの各種労働法制の下、就労に必要な知識、能力の向上のための支援を受けながら就労の機会を得られる重要なサービスであります。
 したがって、A型事業所は、十分な仕事量を確保して、そして健全経営を図っていただくということが重要でありまして、そういった趣旨から、今部長から答弁をいたしましたような指定基準の見直しを行い、そして、基準に満たない場合には経営改善計画を提出して事業を継続できるようにしているわけでありますし、また、単に我々そういう規制をしただけではなくて、予算事業によってA型事業所の経営の改善を支援をしていく。あるいは、平成三十年度の報酬改定では、販路の拡大、商品開発等の賃金向上に取り組むための人員配置への加算の創設といった支援策も講じておりまして、こうした取組によって就労継続支援A型事業の健全な運営を図っていくということ、そして、それが要するに持続をしっかりやっていただくということでありますし、また、その中で働く方々の就労を確保していくということが大事だというふうに考えます。

○倉林明子君 いや、構造変わらないので、このままこれ一律に適用するということになれば路頭に迷わすようなことにつながりかねないから、そんなことがあったら駄目だよということで、頑張ってほしいから言っているんですよね。
 今や、A型事業所の半数以上というのが営利法人ということになっております。私は、このA型の制度設計そのものに問題があったという反省が要るというふうに思っているんですね。その上で、この見直しの必要があるというふうに思います。非営利性、公益性、これ原則としているのが社会福祉事業ですよ。営利を目的とする企業を参入させてきた、この在り方も含めて見直すときに来ているんじゃないかというふうに思います。さらに、自治体による実効性ある監査体制を整備するということも現場際では不可欠になっております。
 財源措置も含めて、私は早急な対応を求めたいと思います。いかがでしょう。

○政府参考人(宮嵜雅則君) 就労継続支援A型事業所におきましては、その利用者に最低賃金を支払うだけのやっぱり収益を上げられる生産活動を行うことが、利用者の能力に相応し、就労機会の提供や事業所の健全運営などにつながるというふうに考えているところでございます。
 先ほど来御答弁させていただいておりますが、その指定基準の見直しとか、これもちゃんと計画を出していただく、経過措置とか設けておりますが、そういうものとか、報酬上の賃金向上の取組の評価などにも取り組んでいるところでございます。
 A型事業所につきましては、社会福祉法人だけではなくて、営利法人やNPO法人などによって運営されておりますけれども、一定程度のA型事業所は、運営努力により収益を上げ、生産活動により利用者の賃金を支払うことができているところでございます。
 引き続き、A型事業所の健全な運営のための取組を通じて、利用者の賃金の向上に向けて経営改善に努めていきたいというふうに考えております。

○倉林明子君 障害者福祉サービス、今度の報酬改定でA型も含めて非常に影響が出てきております。事業所収入が大きく減収になる、これが障害者団体きょうされんの調査で判明しております。特に影響が大きいというのがB型になっています。
 これは、報酬改定の中身は一枚目、そして実際の事業所で四月一か月どうだったかという試算をした中身、概要が二枚目のペーパーに付けております。これ、月額ですからね、影響。年間で見ると、三百万円から七百万円超えるという事業所あるんですよ。人件費で一人分、二人分、下手したら数人分という額になるんです。
 私、利用日数が少ない、そういうところ、そういう利用者が多いところや、工賃が低い利用者、就労以外の活動にも重点を置いている、こういうところが減収は大きいんですよ。つまり、精神障害者、障害重度、こういう方を頑張って受け入れているところが減収の憂き目に遭っているんですよ。
 こういう実態というのを把握しているかどうか、一言で。

○政府参考人(宮嵜雅則君) 今回の改定を行うに当たりましては、まず、その基となる二十九年度の経営実態調査を行っております。障害福祉サービス全体で見ますと平均収支差率は五・九%ですが、B型事業所の平均収支差率につきましてはプラス一二・八%ということになっておりまして、一事業所当たりの平均しての年間収入も三千八百万円、収支差もプラスで四百八十六万円というような形になってございます。
 いずれにしても、その後報酬改定を行っておりますので、今回の報酬改定の影響に関しましては、今後実施する予定としております改定の検証調査を通じてしっかり把握していきたいというふうに考えているところでございます。

○倉林明子君 次の改定の話していたら間に合わへんさかいにしているんですよ。
 大体、人件費分が吹っ飛ぶような改定になっているんです、何にもプラスになんかなっていませんよ。実際に一か月試算して出したやつを、団体出しているんですね、調べて出してくれているんですよ。これ見たら、このままやったら事業継続できへんというのは分かりますやんか、そこを見なあかんのです。
 このままいったら何が起こるかというと、重度の人、利用日数の少ない人、排除しないと経営できないんですよ。それか人件費を下げるか、どっちかですわ。そんなことを続けさせたらあかんということです。だから、次の報酬改定の調査なんていうことではらちが明きません。いち早く現場の状況をつかんで、必要な激変緩和措置も含めてやらなあかんと思う。どうですか。

○政府参考人(宮嵜雅則君) お答え申し上げます。
 私、先ほどの答弁で次の改定の調査とは申し上げていなくて、今回の報酬改定の影響について今年度調査する予定というふうに申し上げておりますので、その中でいろいろ把握できるところは把握して対応していくということが必要ではないかと考えております。
 先ほども委員からも御指摘がありましたが、やはり工賃に応じてとか、時間、A型は時間に応じてですけれども、ある程度成果の指標を入れますと成果が上がらない人が排除されるという御指摘は検討チームでもありまして、例えば、今回のB型の利用者のその平均工賃を計算するときにも、他のサービスと併給していてフルには働けない人とか、当然月の途中で症状が悪くなって入院とか、仕事できなくなる人とか、そういう方は計算から除くような排除措置は設けているところですけれども、いずれにしても、今後実施予定の検証調査などを通じてしっかりそういう状況も見ていきたいと思っております。

○倉林明子君 一年掛かるわけでしょう、調査、あなたがおっしゃっているやつは。一年の間に対応できないから出ていかざるを得ないなんということがB型でも起こっていいのかと、そういうことなんですよ。
 要は、利用できない精神障害者がAのところで大量に生まれたと。じゃ、Bのところで、より重度な人、精神障害の人、この方々も利用できないというような状況をつくってはいけないと思うから聞いている。大臣、どうですか。

○国務大臣(加藤勝信君) いずれにしても、A型、B型を含めて、それぞれの方がその状況に合わせて就労の機会を得ていく、そういう場所として大変大事なものである、それはもう委員御指摘のとおりであります。
 また、他方で、報酬改定するときには、やはりそういった方々が、その能力は高めていただきながら、やっぱり賃金が上がっていくということをつくっていく、これも大変大事だという意味において、それぞれ今回そういった基準の見直しをしたり、あるいは今回の報酬改定で、賃金が上がればそれに、上げる努力に対して報いるような報酬改定をさせていただいたということであります。
 ただ、そういった中で、委員の御指摘のように、やはり障害の状況に応じてなかなかそれに対応できない方もおられる、これは御指摘のとおりだというふうに思います。それについてそれなりな配慮はさせていただいたところではありますけれども、その点も含めて今年度中、ただ、今回の報酬改定の結果というのは今年度中の成果を見ないと出てこないものですから、そういった意味で、ある程度の成果、成果というか結果が、やっぱり把握していくという意味においては今年度中にやっていかなければならないんだろうというふうに思います。

○倉林明子君 それはそれで、調査やってもらったらいいと思う。しかし、毎月毎月の報酬で運営していくということから、一年待っていたら就労継続できないという事態が懸念されているわけですよ。障害者の就労の場所というのは、A型にしろB型にしろ、親亡き後の希望なんですよ。
 絶対働く場を失うようなことはあってはならない。早急な実態調査、絶対雇用を取り上げないという対策、必要だ。強く求めて、終わります。