介護保険 配置基準緩和するな 「基本給アップ必要」 / 介護保険改悪案 3割負担容認できぬ 利用者・家族苦しみさらに 倉林議員が反対討論 参院委で可決(厚生労働委員会)
(資料があります)
日本共産党の倉林明子議員は25日、参院厚生労働委員会で介護保険法等改悪案で介護職員の処遇改善が位置づけられていないもとで「介護報酬全体の引き上げが着実な賃上げを担保する」と主張しました。
倉林氏は、特別養護老人ホームなどでは、入所者3人ごとに1人以上の職員を配置するとされているものの、多くの施設が介護の質を確保するため基準以上の配置をしていると指摘。3対1の基準をクリアしていても、長時間労働や過密シフトを職員にお願いせざるを得ない状況に追い詰められている現場の実態を示し、「介護離職ゼロというなら、実態に即して配置基準を2対1へ引き上げ、配置に見合った報酬へ見直すべきだ」と迫りました。訪問介護の生活援助の配置基準緩和が検討されていることについても「やるべきでない」と批判しました。
倉林氏は、政府が処遇改善加算で介護職員の賃金を「月4万3000円増やした」と説明していることについて、実際の基本給は約1万3000円しか増えていないと指摘。厚労省の蒲原基道老健局長は「ご指摘の通り」と認めました。
倉林氏は、背景には2015年の介護報酬の大幅マイナス改定があるとし、「特養ホームでは12%の減収だ。処遇改善加算があっても基本給アップに踏み出せないのは当然だ」と批判しました。
参院厚生労働委員会は25日、一定所得以上の人に3割の利用料負担を求める介護保険法等改悪案を自民党、公明党、日本維新の会などの賛成多数で可決しました。日本共産党、民進党、「希望の会」は反対しました。日本共産党の倉林明子議員が反対討論に立ち、強行採決した衆院でも22時間審議したのに、参院では16時間で打ち切ったとし「審議が尽くされたとは到底いえない。強く抗議する」と訴えました。
倉林氏は、2015年改悪で2割負担に引き上げた影響調査の必要を政府も認めながら、結果が出る前に3割負担に踏み切ることを批判。「国庫負担を減らす一方、要介護者や家族の苦しみに追い打ちをかけるだけの、根拠なき3割負担は断じて容認できない」と訴えました。
倉林氏は、介護職員の人材不足解消策も不十分だと指摘。低い職員配置基準と国庫負担を引き上げるとともに、介護報酬全体の底上げに方向を転換するよう迫りました。
倉林氏はまた、「財政的インセンティブ」「我が事・丸ごと地域共生社会」の名で、自治体による強引な介護サービス取り上げや、福祉に対する公的責任が大幅に後退しかねない危険性を指摘。「政府は介護離職ゼロを掲げながら、法案の中身は介護離職や介護難民を拡大する危険を増大するものとなっている」と批判しました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
質疑が大分煮詰まってきたとかいう御発言もありましたけれども、午前中にもありましたとおり、徹底した審議を求める声も上がりました。私も引き続き、このテーマ、多岐にわたる問題でもあります。国民全般に大きな影響を与える重要な法案だという受け止めです。徹底した審議を冒頭求めておきたいと思います。
そこで、質問です。先ほど、自民党のそのだ理事からもお話ありました人材不足、介護保険においてこれ本当に喫緊の課題だと私も受け止めております。そこで、日本医労連が今年二月に、介護施設百四十三施設、四千九百五十三人に対して夜勤実態調査を行っております。その結果、二交代夜勤の職場、これが全体の九割となっておりまして、そのうち六四・五%で勤務時間は十六時間を超えているということになっています。月の夜勤回数、これ平均で四・四回と、極めて過酷な勤務実態、改めて明らかになった調査だったなというふうに思っております。
そこで、確認をさせていただきたいと思います。
介護職員の、施設のですね、特養ホーム等施設の介護職員の配置基準は現在どうなっているのか、そして、この配置基準に対して実態の配置、つかんでおられると思います。どうなっているでしょうか。どうぞ簡潔にお願いいたします。
○政府参考人(蒲原基道君) お答えいたします。
特別養護老人ホームにおける介護職員の配置基準の方でございますけれども、こちらは、利用者の状態に応じた弾力的な対応を可能とするため、最低基準として入所者の数三人ごとに一人以上の介護職員又は看護職員の配置を求めております。
それでは、実態の方でございます。実際は、特別養護老人ホームにおいては入所者の中重度化が進んでいることもありまして、平成二十六年度の経営実態調査によりますと、入所者二・〇人に対して一人の介護職員又は看護職員が配置されていると、こういう状況でございます。
○倉林明子君 実態は上回る配置になっているということは今もあったとおりかと思います。
ところが、なかなか確保ができないということで、これ、ぎりぎりで配置しているという例も確かにあるんですね。こうなるとどうなるかというと、神奈川県の特養老人ホームの事例を伺っておりますが、入所者七十名、ショートステイが四名ということで、定員七十四人で三対一だと、介護職員二十二名ぎりぎり。こうなったら、夜勤や休みを除くと、日勤一人当たり、職員一人当たりで十人ほどの入所者さんの対応をするということになるわけです。お風呂入れて、欠ける人もあるということになるので、本当にぎりぎりの体制になると。そうなると、やっぱり事故のリスク、対応も高くなっているというわけですね。やむにやまれず基準を超えて、やっぱり安全確保必要だということで、実態の配置はそうなっているというふうに思うんですね。介護の質を確保するため、これが基準を超えた実態の配置、これが現状なんですよ。
こういう実態についても要望も聞いていると思うんですよ、配置基準そのものを上げてほしいと。この配置基準の見直し、下げる方じゃないですよ。引上げについての検討はされているんでしょうか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほども局長の方からも御答弁申し上げましたが、特別養護老人ホームの人員配置について、最低基準としての入所者の数、三人ごとに一人以上の職員配置、これを求めているわけでございますが、その一方で、実際には、全国平均で見ますと、基準より手厚く配置をされています。こうした実態も踏まえまして、特養においては介護福祉士などの手厚い人員配置を行った場合に評価をする加算というので充実を図ってきているところでございます。
特養が引き続きその役割をしっかりと果たしていかなければならないわけでありますので、サービス提供体制等については、今後、社会保障審議会介護給付費分科会、ここで検討をしていくわけでありますが、いずれにしても、今現状では、今申し上げたようなことで手厚い人員配置を行った場合には加算で評価をしていくということでやって、充実を図ってきたところでございます。
○倉林明子君 いや、加算なんですよね。配置基準はどうなんだということで聞いているんですよ。やっぱりそこが最低ラインになっていくということなので、要望、実態、こういうことも踏まえたら、本当に手を打つべき課題だというふうに思うわけですよ。現場は自助努力で、それは確かに加算ありますよ、あるけれども、自助努力でほぼ二対一というところを確保しているわけですよ。確保できなかったらそのしわ寄せはどこに行くかというと、長時間労働、過密シフトということをお願いせざるを得ないようになる、事業所も追い詰めることになっているわけですよ。
結局、その結果が現場で重労働を苦にして職員が離職する、慢性的な人手不足になるという事態になっているんですね。先ほど漫画でやる気とやりがいという話ありました。こうした人手不足の現状が放置されることが職員のやりがいもやる気も私は奪うことになっていると、これは本当に厳しく指摘したいと思うんです。
二十一世紀・老人福祉の向上をめざす施設連絡会の報告レポート集、これ出ております。見せていただきますと、宮城の施設長さんが以下のように述べておられます。政府は介護離職ゼロと言っていますが、施設ができても職員が確保できず開所できていない施設があること、経営が成り立たず閉鎖する施設がある事実に、現実に向き合った対応を考える必要があるんじゃないでしょうか、このままでは事業所も職員も疲弊してしまうと、本当に切実な声だと思うわけです。
私、介護離職ゼロということを掲げるのであれば、この現場の配置基準の見直し、二対一へとここ本当に引き上げて、加算じゃ駄目なんですよ、きっちりこれに見合った報酬、これ引き上げるという見直しをやるべきだと思います。どうでしょうか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 人員配置基準は、利用者の状態に応じた弾力的な対応を可能にするというために最低基準として設けているわけでございます。介護報酬につきましては、人員配置等の基準に基づいて設定されるわけではなくて、介護保険上、当該サービスに要する平均的な費用の額を勘案して設定をするということになっています。
介護事業経営実態調査などによって、この介護サービス事業所の経営実態等を適切に考慮して改定を行っていく方針でございます。
○倉林明子君 今のは適切な改定はやれているという大臣の認識の御紹介だったんでしょうか。ちょっと確認させてください。
○国務大臣(塩崎恭久君) 今申し上げたように、介護報酬については、人員配置等の基準に基づいて設定されるわけではないわけでございまして、介護保険上の平均的な費用の額を勘案して設定をしているということでありますので、当然、その現場に合わせて評価をして設定をされているということでございます。
○倉林明子君 私は、やっぱり介護報酬全体がマイナス改定ということがあって、本当にそういうことがあるからこそ安心して職員の処遇改善につながっていかない、こういう状況がある下で、本当に現場でぎりぎりの体制は、二対一に現実になってきているわけですよ。この配置基準がしっかり担保できるような報酬そのものを見直していくということが必要だということを申し上げておりますので、受け止めていただきたいと思います。
委員会の質疑の中でも、介護福祉士の養成校が定員割れをしていると、こういう実態の紹介もありました。私、深刻だと思います。現場が疲弊していると、こういう実態を放置したままでは離職が止まらないと思います。外国人が人材確保だみたいなさっき話がありましたけど、実習生は人材確保目的じゃなかったはずですよ。そんな話がまた出てくるというのは私はちょっととんでもないなと思って聞いていましたので、それは指摘しておきます。そこで、こうした人材確保がどんどん困難になるという悪循環、断ち切るためにも配置基準の見直しが私は改めて必要だということ。
この問題でいうと、今、介護報酬の改定の議論が始まっているということで、訪問介護の生活援助の人員配置基準、これ緩和の方向で見直すというふうなことが始まっていると。こういうことはやるべきではないと強く申し上げておきたいと思います。
そこで、次に職員の賃金の問題で質問をしたいと思います。
資料の一枚目を見ていただきたいと思います。これ、二〇〇七年以降二〇一六年までということで、一般労働者と介護関係職員の平均賃金の月額の差額を右にしております。これ、二〇〇七年、十一万九千九百円、ずうっとこれ、十年たっているわけですけれども、賃金格差、十万五千四百円、本当にこの格差というのが埋まっていないという実態がよく分かると思うわけです。
二〇一五年度、これ処遇改善加算を事業所、ここがどのように取得したのか、その内訳を、賃上げに使ってもらうんだということで出した加算の使い方がどうだったのか。ベースアップ、定期昇給、各種手当の増額、賞与の増額と、それぞれ何%になっているのか、数字でお願いします。
○政府参考人(蒲原基道君) お答え申し上げます。
平成二十七年度の介護従事者処遇状況等調査の結果によりますと、平成二十七年四月から九月までの間における、処遇改善加算を取得した事業所における給与等の引上げの実施方法でございますけれども、この二十七年度の調査によりますと、ベースアップが一七・七%、定期昇給の実施が五九・八%、各種手当の引上げが五〇・七%、賞与等の引上げが一九・一%ということでございます。これは平成二十七年度の調査でございますけれども、平成二十八年度の調査はそれぞれまた一六・四、六九・七、二九・九、一四・八と、こういう状況になっておるところでございます。
○倉林明子君 今御紹介あったように、二〇一五年、一六年の数字を御紹介いただきました。
二〇一六年、新しいところで、二枚目の資料にして、今の内訳を書いたもの、全体と、あと施設、事業所ごとの状況を資料にいたしました。ほとんど、全体で見れば定期昇給七割ということで、定期昇給に回っちゃっているんですよ。確かに、定期昇給に賃金が下がるということは含まれないけれど、これは当然のものなんですよ。賃金が上がったというところで見る場合は、やっぱり給与がどうかと、基本給がどうかということが問われると思うわけで、基本給で上がっているのは僅か一六・四%しか回っていないんですね。福祉保育労の調査を伺っておりますと、手当を上げるために基本給を下げたというところさえあったという報告を聞いております。
そこで質問です。二〇一五年度の処遇改善、これで一体給与と月額、どれだけ増えて、そのうち基本給の増額分というのはどれだけでしたか。
○政府参考人(蒲原基道君) お答え申し上げます。
二十七年度の介護報酬改定では、一人当たり月額一・二万円相当の処遇改善加算の拡充を行ったということでございます。そういう仕組みの拡充の下で、平成二十七年度の、先ほどの言いました介護従事者処遇状況等調査では、本加算を取得した事業所における介護職員の給与額、これは前年と比較いたしまして給与額全体で月額平均一万三千百七十円の増となっております。このうち、御質問がございました基本給につきましては月額平均二千九百五十円の増というふうになっております。
○倉林明子君 衆議院の質疑でも先ほど来の質疑でも、厚労省は月四万三千円増やしたと、この間、そういう説明をしているんですね。
しかし、実態、基本給ベースで見てみたらどういう実態になっているのかというのが三枚目の資料に付けております。
二〇〇九年から二〇一五年まで月額給与アップをこれだけしてきたんだという、政府が四万三千円と言っているのが左側の数字ですよね。これ、その内訳で基本給ベースはどうかというと、それぞれ、今の回答があった二〇一五年は二千九百五十円なんだけれども、この二〇〇九年から四回分を積算しても、これ一万三千円余りが基本給で引き上がったということになると思うんですけれども、これが実態、基本給の実態だと思いますけれども、間違いないと思いますが、どうですか。
○政府参考人(蒲原基道君) 委員御指摘のとおり、この調査によりますと、合計で四万三千円の増というのが全体の引上げの実績でございまして、このうち基本給部分が合計で約一万三千円の増ということでございます。
○倉林明子君 だから、基本給が本当に上がらない。だからこそ、この格差、埋まっていかないという状況も続いているんだということなんですよ。これ、基本給が上がっていかないからこそ将来見通し、働き続けるという見通しも示せていない賃上げになっちゃっているんですね。
私は、この報酬改定、そしてこの加算の在り方ということが、事業所にこういう賃上げしかできないという状況を一方つくってきた責任は厚労省にあるということを申し上げたいと思うんですね。報酬改定、処遇改善加算、これ基本給に結び付いていない。この結果について、理由は何だと思いますか、大臣。
○政府参考人(蒲原基道君) 済みません、私が先にお答えいたします。
処遇改善加算につきましては、その算定額を介護職員の賃金引上げに充てることが必要でありますけれども、その実施方法については、基本給、手当、賞与等のいずれでもよいということにしているところでございます。
御指摘のような御意見があることは承知しておりますけれども、一方で、一つは、介護職員の賃金というのは一義的には労使間で自律的に決定されるべきものであり、賃金引上げの具体的な方法まで国が制限を設けるということについては慎重な対応が必要であるというのが一つございます。また、もう一つ、仮に基本給による引上げに限定した場合、事業所が加算の取得を控えてしまうと、かえって介護職員の処遇改善が図られなくなってしまうおそれもあるといったような課題もあるものと考えております。
こうしたことから、幅広い賃金引上げの方法を認めつつ、各事業所に処遇改善加算がしっかりと定着していくことが重要というふうに考えてございまして、今年度からの月額一万円相当の処遇改善も含めまして、事業所が加算を継続して取得できるように努めてまいりたいというふうに考えております。
○倉林明子君 そういう考え方でやって賃金が上がっていないわけじゃないですか。十万円の格差が問題だと言って長いことなっているんですよ。それでも、それは事業所と労働者の契約で政府は介入すべきではないなんて、そんなことを言っていたら、いつになったって賃上げなんてできませんよ。
賃上げされなくても結果として構わないと、こういう立場なんでしょうか、大臣。
○国務大臣(塩崎恭久君) これは先ほど御答弁申し上げましたけれども、正規社員だけで成り立っているわけではなくて、非正規の方々が施設の場合には大体四割でありまして、あと訪問介護の場合には七割ぐらい、八割ぐらいですかね、七割から八割、これは非正規なんですね。したがって、非正規の給与の報酬については、これは同一労働同一賃金でこれから底上げをしていこうということをやっているわけでありますが、その場合には、基本給という部分が非正規の場合にはどの程度になっているのかよくまだ明らかではない中で、そこは、先ほど局長から答弁申し上げたように、どういうふうに賃上げを図っていって、施設にしても優秀な人材が来てくれる方が当然いいわけでありますから、それは当然、ほかと比べても見劣りがしないようにするための努力をしていただくということが選ばれる道だろうというふうに思いますが、しかし、何かこういう、例えば基本給だ手当だ賞与だということで決め込んでいくということは余りなじまないことではないかなというふうに思っています。
いずれにしても、大事なのは、処遇が改善されるということが現実に起きるということが大事だと思っています。
○倉林明子君 そんなこと言ったら、もう何年たったって介護現場の職員の賃金上がらないと思いますよ。本気で、どうやって介護職員の処遇改善、賃上げ、底上げをしていくのかということが問われているんだと思うんですよ。
参考人でおいでになった服部さんは、二〇一五年報酬問題、触れておられました。これ、史上最高のマイナス改定で、実質四%を超えるマイナスとなったと、基本的には介護報酬をしっかり付けて、まともな仕事に、人が辞めないということをやっていくことが妥当だろうと。私、本当にそのとおりだと思いました。
特養ホームでは、この改定によって減収が一二%、処遇改善の加算があったって基本給のアップに踏み出せない、これは当然じゃないかと思うんですよ。一方で処遇改善だといって加算をしながら、一方で全体では報酬の削減だと、こういうやり方をやめるべきだと言いたいと思うわけです。報酬の全体の引上げ、これこそが着実な賃上げを担保することになると、これ強く申し上げたいと思う。
そこで、質問、保険料の滞納処分問題、これについて質問移りたいと思います。
二〇一四年、保険料の滞納、これを理由に差押処分が一万人を初めて超えました。給付制限、これは一万三千人を超えた状況になっています。介護保険料の滞納がある場合、給付を受ける段階で、災害、失業など特別な事情がないと判断されると一体現在どんな制裁措置があるのか、御説明ください。
○政府参考人(蒲原基道君) 介護保険制度は、国民の共同連帯の理念に基づいて相互に保険料を負担し合う社会保険制度でありまして、全ての被保険者の方に保険料を収めていただくということが非常に制度の根幹であると思います。このため、介護保険料の未納対策については、市町村が介護保険財政を安定的に運営する、あるいは保険料負担の公平性を図るといった観点から保険料の徴収を確実に行う必要がありまして、保険料の適切な納付を促すために行うものでございます。
具体的に、介護保険料の滞納者につきましては、保険料の滞納期間に応じて、一つは保険給付の償還払い化、これは支払方法の変更でございます。二つ目、これが保険給付の支払の一時差止めでございます。三番目、保険給付の減額。このような措置をとることといたしております。
○倉林明子君 なかなか聞いているだけでは分かりにくいと思いましたので、資料を付けました。資料の一番最後のところをめくっていただきたいと思います。これ、滞納者に送られたチラシ、大阪府東大阪市が作っているもので大変分かりやすくなっております。
一年以上滞納すると、右側の高齢者、男性の方がおっしゃっています、十倍も払うのと、九割償還はされますというもの。一年六か月以上滞納すると、右側の女性、十割払ったのに九割返してもらえないのということで、一部差止めや滞納保険料にその分回りますよという説明。二年以上滞納するとどうかというと、三割も払うのということで、びっくりした高齢者の顔が載っているものです。
国保の場合、時効で消滅した保険料、これ取立て不能となるわけですけれども、請求された滞納分、これ支払えばペナルティー解除となる。ところが、介護は、この時効を過ぎたら後払いというのはできません。保険料が徴収できなかった期間に応じたペナルティー措置というのが出てきます。
二年間を超えた滞納があると利用料は三割というのが現行のペナルティーですね。ほかにもあるんですけれども、ペナルティー措置は。本法案では三割負担が導入するという提案になっております。この過去二年間滞納期間が、二年を超えた滞納期間があった場合、この利用料負担というのは一体どうなりますか。
○政府参考人(蒲原基道君) 現行制度におきましては、保険料をきちっと払ってもらうという趣旨から、お話がございましたとおり、一定の、二年以上滞納した場合について、その場合についてのその負担の割合というのを一割、二割から三割にしているわけでございます。今回、一定の方に対して三割負担を導入するということになっています。それに伴って、保険給付の減額が果たすべき言わば未収納対策としての役割が維持されるように、これらの方に対する給付制限としては負担割合を四割にするということにいたしております。
○倉林明子君 もう本当に四割って驚きですよ。ひどいと思いますね。
現役時代に何らかの事情で保険料の未納があった人、これがいざサービス受けようとなったときに初めて気付くというような場合も私はあるだろうと思うんです。滞納から二年たったら、滞納した分払いたいと言っても、これ、受け取れませんということになるわけですよ。今でも三割負担になって、補足給付、高額介護サービス費等は出ません、滞納していると。それが三割負担に該当する人の場合は四割負担になると。本当に余りにも厳しいペナルティー措置ではないかと言いたいと思うんです。
サービスが必要な人がサービスを利用できるように、これ原則だと思うんですよ。ペナルティー措置でいったら、医療よりも更に厳しくなっている。こんな、滞納分払ったら、少なくともこのペナルティー措置というのは解除できるようにすべきじゃないですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 保険給付の減額措置について、社会保険でございますので、介護保険制度にとっては全ての被保険者に保険料をお納めをいただくことが制度の第一歩であるわけでございます。市町村が介護保険財政を安定的に運営をして、そして保険料負担の公平性を図るといった観点から、保険料を二年以上滞納をし、保険料の徴収権が時効消滅した期間がある方に限って実施するということとしておるわけであります。
これについて、例えば要介護状態等となってから一括して滞納相当分を支払うというようなことになりますと、保険給付の減額を逃れる仕組みとした場合、要介護状態等に至るまでの時期における保険料の未納を助長をしてモラルハザードが生じるおそれが出てくるわけでございまして、時効消滅する前に納付をすれば保険給付の減額措置の対象にはならないことから、確実に保険料を納めていただくことが何よりも基本であり、また重要であるというふうに考えております。
保険料の収納率の向上につきましては、これまでも口座振替を勧奨するとか、あるいは収納事務をコンビニなどでも委託をするとかなどの対策をいろいろやってきて、自治体へお願いをしているところでありますけれども、引き続き被保険者相互の負担の公平を図る観点から収納率の向上を図ってまいりたいと思います。
○倉林明子君 いや、未納者というのは現実増えているんですよ。滞納者って増えているんですよ。制度開始と比べたら、率で二倍になっている、額で十倍になっている。このまま放置すれば、実際に受けるという段階で、こういう大きなペナルティーを受ける可能性が出てくるわけですよ。
こういう人たちを除外するということになりかねない。適正なサービス利用を阻害するような制度改悪、これは到底認められないと申し上げまして、終わります。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
私は、日本共産党を代表し、地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案に断固反対の立場で討論を行います。
本法案は、衆議院では二十二時間の審議で、地方公聴会も開かないまま強行採決されたものです。本委員会での審議時間はこれを下回る僅か十六時間足らずであり、徹底した審議が尽くされたとは到底言えません。本日の採決に強く抗議するものです。
反対理由の第一は、介護サービスの利用者に重い負担増を押し付けるものだからです。
衆議院の議論を通じて二割負担の影響調査の必要性を政府自身も認めていながら、その結果が出る前に三割負担に踏み切るなど、到底国民の理解は得られません。国庫負担金を大きく減らす一方で、要介護者や家族の苦しみに追い打ちを掛ける根拠なき三割負担は断じて容認できません。
第二は、喫緊の課題となっている介護職員の人材不足解消策が全く不十分だからです。
人材確保を困難にしている最大の要因は、介護現場の低い職員配置基準を見直すことなく、介護報酬の評価も効果的にされてこなかったことにあり、政府の責任は重大です。配置基準を見直し、それを保証するために思い切った国庫負担の引上げを行うこと、介護報酬全体を引き上げる方向への転換が求められています。
第三は、本法案が導入する財政的インセンティブが自治体による強引な介護サービスの取上げを更に拡大する危険は極めて高く、介護保険の本質をゆがめかねない重大な問題があるからです。
参考人質疑では、自治体に公的サービスを止められた要介護者が状態悪化や重度化に至るケース、自費サービスの購入を余儀なくされている実態が明らかになりました。
本法案による負担増と給付の切捨ては、介護が必要な人に対するサービス利用を阻害するものにほかならず、公的介護制度に対する国民の信頼を土台から突き崩すことにつながることを厳しく指摘するものです。
第四は、我が事・丸ごと地域共生社会の名の下に、高齢、障害、子供などの福祉に対する公的責任が大幅に後退しかねないことです。
政府は介護離職ゼロを掲げながら、本法案の中身は、更に介護離職を拡大し、介護難民を拡大する危険を増大するものとなっています。
断固反対することを強く申し上げ、反対討論といたします。