年金削減 リスク大 影響も示さず 年金カット法(厚生労働委員会)対政府質疑・反対討論
日本共産党の倉林明子議員は13日の参院厚生労働委員会で、年金カット法案による給付削減がもたらす危険性も見通しも示されていないと追及し、「立法府の責任として廃案にすべきだ」と求めました。
倉林氏は、物価が上がっても賃金が下がれば年金削減するルール改悪について、名目手取り賃金は過去10年間、マイナス傾向だと指摘。短時間労働者の加入拡大や高齢者の雇用継続によって、名目賃金は押し下がるとただしました。厚労省の鈴木俊彦年金局長は「下方要因として働く」と認めました。
さらに倉林氏が、消費税増税によって賃金の指標が押し下げられるとただすと、塩崎恭久厚労相は「賃金上昇に全力で取り組む」と答えるだけで、否定できませんでした。
倉林氏が年金削減は地域経済にも打撃になると追及したのに対し、鈴木局長は、年金収入が家計消費の20%以上を占めるのは島根、鳥取、愛媛など9県で、県民所得の15%以上を占めるのは10県だと答弁。塩崎厚労相は「地域経済を支える役割があるのは事実だ」と認めました。
さらに倉林氏は、国際労働機関(ILO)の社会保障局長だったコリン・ギリオン氏の「年金は公明正大に運営すべきで、負担増や給付減を安易に繰り返せば、国民の信頼を失う」という発言を紹介。「真摯(しんし)に受け止めて廃案にすべきだ」と強調しました。
年金が地域の経済に与える影響についてまず質問したいと思います。
年金給付が県民所得の一五%以上になっている県はどこか、また、家計消費の二割以上、これ占めている県はどこか、県名で、そして一番高いところで結構ですので、どの程度になっているのかと、数値も併せて説明してください。
○政府参考人(鈴木俊彦君) 平成二十五年度の数値でございますけれども、年金給付総額が県民所得比で一五%以上となっている都道府県、島根県、鳥取県、高知県、秋田県、愛媛県、長野県、奈良県、長崎県、香川県、山口県の十県でございます。最も割合の高い島根県では一八・〇%となっております。
また、同じく二十五年度の数値でございますが、年金給付総額が家計消費支出比で二〇%以上となっています都道府県でございます。島根県、鳥取県、愛媛県、奈良県、山口県、福井県、富山県、岐阜県、佐賀県の九県でございます。最も割合の高い島根県では二三・五%となっております。
○倉林明子君 大臣の愛媛も含めて、大変影響が大きい、占める割合が高いということが出ていると思うんです。私、年金削減ということは、ただ年金生活者の生活の問題だけじゃなくて、地域経済にもマイナスの影響を与える、こう考えますけれども、いかがでしょうか、大臣。
○国務大臣(塩崎恭久君) 今局長の方から答弁を申し上げた中に私の愛媛県も入っているわけで、年金の支払が暮らしにいかに意味のある政策としてあるかということ、そして影響が大きいということを私どもも確認をしたわけでございますが、年金が地域経済の一部を下支えする役割というのを果たしているということは、これはもう事実でございます。一方、将来の年金水準がこれ以上低下することを防止する措置をとらなければ将来の地域経済にダメージを与えかねないということもそのとおりでございます。
その上で、今回の年金額の改定ルールの見直しに当たりましては、低年金の方にも十分配慮をする。まず、マクロ経済スライドにつきましては、賃金、物価がプラスのときに発動をし、またマクロ経済スライドによって前年度よりも年金の名目額を下げないという配慮の措置は維持をするわけで、その上で、未調整分を繰り越して好況のときに調整をする仕組みを導入すると、こういうことでございます。
そして、賃金が下がった際に賃金に合わせて改定をする見直しにつきましては、低年金、低所得の方に対する年最大六万円の福祉的な給付を平成三十一年十月までにスタートした後の平成三十三年度から適用すると。これによって、年金と相まって今まで以上に高齢者の生活を支えていくということでございます。
もちろん、適用拡大等々配慮をして、できる限りこの年金が幅広く受け取れるようにするということも大事であって、特に現役世代において現在の生活の安定、老後の不安の解消をもたらして、結果として消費の拡大につながることが期待できることから、経済にとってもプラスの影響を与えると考えております。
○倉林明子君 今々アベノミクスの効果が地域経済の隅々まで行き渡らないと。今の課題なんですよ。そして、今、地域経済に年金減らすことがどれだけ影響大きいのか、その認識を聞きたかったんですけれども、制度全体の説明、今していただいても余り議論としてはかみ合わないんじゃないかと思いますね。指摘はしておきます。
高齢者は消費活動のほとんど、これ地域内で行うわけです。年金の削減、これは明らかに高齢化率の高い地域ほどマイナスの影響が大きいんですよ。地域の活性化にとって、高齢者の所得が増える、これ地域経済に直接プラスになるわけです。私、現在の、今求められる経済対策としても、地方活性化にとっても、年金の引上げ、効果が大きいと、これは強く指摘をしておきたいと思います。
そこで、次の質問なんですけれども、積立金の運用の続きを聞きたいと思います。
これ、二〇四〇年頃までに積立金が増え続けることになる理由を質問いたしましたところ、局長は、年金支給開始年齢の引上げによる給付額の減少があるんだと、さらにマクロ経済スライドによる、すなわち給付の減少によるということと答弁されております。つまり、今でも低年金で苦しむ高齢者にも一律に給付を削減して積立金を増やす、こういうことで理解は間違いないでしょうか。
○政府参考人(鈴木俊彦君) これは、年金財政の仕組みとその中での積立金の役割という基本論に立ち返っていただく必要があると思います。
御案内のように、今の年金制度、おおむね百年程度の財政均衡期間の中で年金水準を将来に向けて調整していく仕組みでございます。その中で、具体的に申し上げますと、少子高齢化が一層進みまして受給世代が増加して現役世代が減少していく、こうなるわけでございますが、このうち二〇五〇年代以降が少子高齢化が最も進むと見込まれますので、その頃がある意味年金財政にとって非常に厳しい時期になります。そうした時期も含めまして、世代間の公平を図りながら、積立金と運用収入を計画的にかつ最大限有効に活用して将来にわたって給付水準を確保していく、これが年金財政の仕組みと積立金の機能でございます。
そうした中で、厚生年金の支給開始年齢の段階的な引上げ、あるいはマクロ経済スライドの給付調整について今御指摘ございましたけれども、これらは、以上申し上げたような流れの中で、全ての方を対象といたしますけれども、将来にわたって給付水準を確保して持続可能な制度とするために必要な仕組みであるというふうに考えております。
○倉林明子君 つまり、否定されないわけで、今の低い水準の人たちの年金についても一律やっぱり給付削減することで積立金を積み増すという構図についてはそうだと思うんですよ、答弁されたとおりですから。
そこで、今後、この積立金の積立てというのは三十五年、マクロ経済スライドがどう機能するかということもあるんでしょうが、いずれにしても積み立てていくという、三十五年ほど積み立てていくということになっているわけですね。この莫大な積立金、この運用で損失が出た場合、これについて九日の参考人質疑で西沢参考人がおっしゃっておりました、損失はマクロ経済スライドの長期化を通じて解消するしかないと。三十年、四十年後にツケが回ってくると述べられております。私、西沢参考人のおっしゃるとおりだなと思いましたけれども、どうですか。
○政府参考人(鈴木俊彦君) 先般の参考人質疑で西沢参考人がお答えになったことでございますけれども、この御指摘は、積立金の運用が財政検証上の前提を一定期間ずっと下回り続けるような特殊な事態を想定しておっしゃっているんだろうと考えております。そして、かつ、一般的にマクロ経済スライドの調整期間に影響を与える要因といたしましては様々ございますけれども、人口構造、就業構造などの長期間の動向もございます。その中の一つとして長期間の積立金の運用実績もある、こういった論理的な構造について西沢参考人がお話しされたというふうに理解しております。
そうした中で、積立金の運用でございますけれども、これは繰り返し御答弁申し上げておりますけれども、短期的な損失が年金額に影響を及ぼしたり年金財政上の問題を引き起こしたりするようなことはないわけでございます。
今後とも、年金財政上必要な運用利回りを確保できるように、長期的な観点から安全、効率的に運用を努めてまいりたいと考えております。
○倉林明子君 いや、西沢参考人は著書の中でも明確に書いているんですよ。運用損失が出た場合、損失が発生した場合の制度設計がないということを指摘されているんです。損失に対応するには、現状の設計ではマクロ経済スライド、長期化して解消していくしかないとはっきりおっしゃっていましたよ。違うんですか。
○政府参考人(鈴木俊彦君) マクロ経済スライドの調整率に影響を与える要因としてそうしたことが、長期的に損失が非常に長く続けばあるということはそのとおりだと思いますけれども、問題はそうしたことは起きないということでございまして、具体的にそれを担保する仕組みといたしまして、五年に一度財政検証を行って、その中で必要な運用利回りを算出し、GPIFに対しまして運用目標として示し、これが実現できるような基本ポートフォリオを設定し、運用に努めている。これをずっと放置するわけではなくて、五年に一度きちんと検証しているわけでございます。
その中で、年金給付総額全体に占める積立金と運用収入の割合というのはたかだか一割でございますので、そうしたことも含めて、短期の損失が年金額、年金財政に影響を与えることはございませんし、そうした損失が長期になるようなことは、今申し上げた財政検証とその中での目標の運用利回り、ポートフォリオの設定という仕組みできちんと担保されているということだろうというふうに理解しております。
○倉林明子君 私、損失が出ないように運営していく、そういう意気込みについては盛んに説明を受けたんだけれども、やっぱり参考人の指摘もあって、この損失が出た場合についてのその責任は、まあ厚労大臣、形としては取ることになるかもしれないけれども、出た損失は一体誰が担うことになるんですかということでいえば、やっぱり加入者、被保険者が担っていくことになるわけですよ。こういうリスクを国民にやっぱり私きちんと説明すべきじゃないかと思うんですけれど、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほど来、局長からも答弁申し上げているように、GPIFの四半期ごとの損失などについて特におっしゃっておられるんだろうというふうに思います。
何度も申し上げるように、年金の資金はやっぱり長期的な運用を大事にしている運用でございますので、結果としてきちっとお約束をした年金を支払えるような利回りを実現をしていくというのが大事なことでございまして、短期的な評価損は評価損としてしっかりと見ていただくようにディスクロージャーもはっきりやっているわけでありまして、そういうことを含めてお約束どおりの利回りが実現するように、絶えずGPIFで運用をしっかりやってもらうように、私どもとして、私どもの責任として、この委託をした運用をよく見ていくというのが大事だというふうに思いますし、今回の法律でもってこの合議制の監督組織が経営委員会として見るということになるわけであります。
○倉林明子君 株式の運用拡大広げているわけで、そういうリスクを伴っているんだと、そして損失については一体誰が担うことになるのかと、ここまでやっぱり示してこそ説明責任果たしたということになるんじゃないかと指摘をしておきたい。
さらに、将来世代にとって重要になるのは、積立金の取崩しの問題なんですね。先ほどもおっしゃったように、二〇五〇年代以降については課題が正面に出てくると思います。私、必要なときに確実にこの取崩しできるのかということが出てくると思うんです。それは、国債などの債券の場合、これ通常十年、償還期限来れば、仮に時価下がっていたとしても元本割れないですよね。ところが、株式の場合、償還期限ありません。取り崩すためには株売却ということになるんじゃないでしょうか。現金化する必要がある。売却が必要なときに必ず株価が上がっているということは限らないと思うんです。
損失が出た場合、この将来世代の、ここでも損失が出た場合ですね、将来世代の給付水準にもこれマイナスの影響出るんじゃないでしょうか、いかがですか。
○政府参考人(鈴木俊彦君) この積立金の取崩しに関わって、資産である株式の売却ということをおっしゃっているんだと思います。したがいまして、この積立金の取崩し局面がどういう場合に生ずるかということでございますけれども、これは具体的には、二〇四〇年以降の段階的に取り崩していく局面で、実際にマーケットにどのような影響が与えられるかということでございますので、これは子細に見ていく必要があろうと思います。
しかしながら、構造的に申しますと、この年金給付に当てられます積立金というのは平均して給付総額の一割程度でございます。したがって、今申し上げた将来の取崩し局面でも、巨額の取崩しが一時的に生ずるということはございません。長期的に徐々に取崩しが進むわけでございます。したがって、実際に取り崩していく際には、積立金の運用益あるいは取崩しによって賄う財源の規模、タイミングにつきましてあらかじめ相当程度予測が立てられますので、これに従って慎重にやっていくということでございます。
それから、その前提となりますポートフォリオについても、先ほど申し上げましたように、五年に一度財政検証を踏まえて見直されるわけでございますので、そうしたいろいろな面からきちんと、今先生の御懸念のようなことが起きないように、慎重かつ計画的に取崩しを進めていくということであろうというふうに思っております。
○倉林明子君 経済の先百年は読めないという話も再々出ておりますけれども、株価ほど見通せないものも一方でないということが、この間の株価の動き見ていて本当に国民も実感していることじゃないかと思うんですね。株式運用の拡大というのは、そういう意味で様々なリスク、国民の資産に対して毀損するようなリスクも、そして将来にわたっても、売却時の私指摘したようなことも含めて、やっぱり株式運用のリスクという問題が生じているわけですよね。
私、将来世代に対して、高い運用利回りも今後見直していくからというような説明一生懸命されるんだけれど、きちんとどんなリスクがあるかということでいえば、私は全く不十分だと思います。将来世代の年金もリスクにさらす、こういう株式運用拡大というのは、私きっぱりやめるべきだと指摘をしておきたいと思います。
本法案では、先ほど来も議論もありますが、物価が上がっても賃金が下がった場合、物価よりも賃金の下げ幅が大きい場合、賃金スライド、賃金にスライドさせて年金を下げるということで、新しいルールが盛り込まれることになっているわけです。
確認したいと思います。年金改定の指標となる手取り賃金、この変動率というのは過去十年間何%で推移してきたか、説明してください。
○政府参考人(鈴木俊彦君) ただいま御質問のございました名目手取り賃金変動率の推移でございますけれども、平成十九年度以降を申し上げます。平成十九年度が〇・〇%、二十年度が三角〇・四%、二十一年度が〇・九%、二十二年度が三角二・六%、二十三年度が三角二・二%、二十四年度は三角一・六%、二十五年度は三角〇・六%、二十六年度はプラス〇・三%、二十七年度はプラス二・三%、二十八年度は三角〇・二%といった推移でございます。
○倉林明子君 結局、プラスになったというところありましたけれども、消費税の増税の影響ですよね、これ。労働者全体の実質賃金というのはマイナス傾向から脱していない、こういうことが言えると思うんです。
そこで、質問なんですけれども、二〇一二年に続いて、本法案でもパート、短時間労働者、これ被用者年金に加入拡大すると先ほど来議論もありました。これ自体、私は必要なことだと思います。しかし、この加入、進めば進むほど、進めなあかんと思いますよ、でも、これ進めば進むほどどういうことが起こるか、年金の賃金指標を押し下げるということになるんじゃないでしょうか。
○政府参考人(鈴木俊彦君) 今回の法改正によります適用拡大の標準報酬に与える影響ということに関して申し上げますと、先ほど来御議論ございましたように、今回のスキームが労使合意に基づく適用拡大でございますので、正確な人数という意味ではなかなか困難なところがございますけれども、仮に今回対象として見込んでおります全体、約五十万人、これが対象になったといたしましても、厚生年金の被保険者は全体四千万人でございますので、しかも、この適用拡大自体が時間を掛けてある程度進むということも考え合わせますと、賃金変動に与える影響というのは限定的ではないかというふうに見込んでおります。
○倉林明子君 いや、下げるのかということを聞いたんですけど。限定的でも下がるんじゃないですか。
○政府参考人(鈴木俊彦君) 賃金の低い方々が被保険者に入ってくるということになりますと、それが全体の標準報酬の額を引き下げる下方要因に働くということは論理的にそのとおりでございます。その影響についてはただいま限定的であるという見込みをお答えしたところでございます。
○倉林明子君 つまり、五十万で見込んでいるから限定的なんですよ。本気でここを拡大しようと思ったら、見えてきたのはさっきの指摘どおり一千二百万人でしょう。ここまで本当に広げていこうと思ったら、賃金指標を本当に下げるということにもなっていくんですよ。私は、それを直視する必要あると思うんです。これ解決していかなあかん問題だからですよ。
そこで、賃金を押し下げるという要素はこれだけじゃないんです。昨日御指摘しましたように、高年齢者の雇用継続の実態なんですね。低賃金労働者の実質的な切替え、こういうことが実態は進んでいるわけです。年金の賃金指標、これも押し下げる可能性高いんじゃないでしょうか。どうですか。
○政府参考人(鈴木俊彦君) これは、一にかかって、高齢者の方々の雇用継続が進んだ場合のその賃金水準がどうかということだろうと思います。
一般的に、高齢者の雇用継続の場合の賃金水準が低いんだというふうに前提で考えれば、それは先ほどの短時間労働者の場合と同じく、標準報酬の下方要因に働くということになります。ただし、実際にどうかということは、その時点での標準報酬、賃金の動向全体、これも踏まえて見てみなければ分からないということだと思います。
○倉林明子君 要は、年金制度のやっぱり水準に関わってくることなんですよ。これがパート、短時間労働者の問題でも、そして高年齢者雇用の問題でも、その賃金水準は労使合意だと、つまり、そこには政府の責任というのが見えてこないんですよ。どうやってその水準を引き上げていくのか、ここに政治の仕事というのがあるんじゃないかと私は思うんですよ。
このままほっといたら、この法で改定したとおり進めれば進めるほど賃金水準下がる、つまり年金水準下げるということに結果としてはつながっていきかねない。これ、重大な問題だと思います。
さらに、質問でも指摘したように、消費税の増税による賃金押し下げ圧力というのもあるわけです。私、賃金は上げますとおっしゃる、そしてすぐに年金は下がることはないとおっしゃる、賃金改定ルールの発動がまだ先だからということでもあろうかと思うんですね。しかし、パートの適用拡大や、消費税の増税や、指摘したような高齢者の雇用継続、非正規の問題の指摘もありました。私、今後、年金の賃金指標を押し下げる要因というのが増えてくる、こう思うんですね。賃金マイナススライドルール、これが早期に発動する、こういう可能性は極めて高いんじゃないかと思うんですけれども、大臣はいかがお考えですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 実際に賃金変動率がどういうふうにこれから推移していくのかということについては、一概にこれを予測し、申し上げるというのはなかなか難しいわけでありますが、現時点であらかじめお尋ねの可能性を申し上げることは難しいというふうに思います。しかしながら、議員御指摘のような事情がどの程度の影響があるのかといった点については、今後、当然、注視をしていかなければいけないというふうに考えております。
いずれにしても、賃金、物価が上昇をしていくということが今回の見直し後のルールが適用されることはないのでありまして、賃金上昇を含む経済の再生、この経済政策全体に全力で取り組んでいくことが何よりも政府として重大に感じなければいけないということで、私どもとして真剣に今取り組んでいるところでございます。
○倉林明子君 今の説明でよく分からないんですよね。年金が直ちに下がることはないというのは、大臣もおっしゃっていたけれども、総理も答弁で何度もされていたと思うんですね。下がらないというんだったら、はっきり根拠、国民が納得するような説明をすべきだと思いますよ。どうですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 今回の賃金に合わせた年金額の改定ルールの見直しは、低年金、低所得の方に対する最大限六万円の福祉的な給付を平成三十一年十月までにスタートをした後の平成三十三年度から適用すると、こういうものであることを繰り返し申し上げてまいりました。また、その適用後も、そもそも経済の状態が良く賃金と物価が上がるという状況であれば年金額が下がるということは起きないわけでありまして、むしろ賃金と物価が上昇している場合は年金は上がっていくということになるのは、もう委員も御理解をいただいているというふうに思います。
したがって、今回の改正によって例えば来年度とかあるいは施行初年度の平成三十三年度に年金額が引き下げられることが決まるものではないわけで、総理もそういう意味で申し上げてきたというふうに承知をしているところでございます。
○倉林明子君 私、この法が動き出して、そして本当にパート、短時間労働者を適用しようと、さらに高年齢の方々も引き上げようということになったら、物価が相当上がったとしても、景気回復が一定程度進んだとしても、年金のこの改定によっても下がる可能性というのがあるんだということを、私は逆にきちんと説明しないと駄目だということを指摘したいと思うんですね。
ここで紹介したいのは、ILOの社会保障局長であったコリン・ギリオン氏がこう語っているんですね。最も重要な公的年金政策は、年金数理の帳尻合わせではなく、若者、女性、高齢者の就労促進で年金の支え手を増やすこと、年金財政を公平、透明に運営することだ、その上で、そうした政策抜きに縮小するパイを当然の大前提に給付削減と国民負担増を安易に繰り返したり、政治家や官僚の都合で年金財政の不透明な運営を横行させたりすれば、国民の信頼は急速に失われる。重大な指摘だと思います。政府は、この指摘、真摯に受け止めるべきだと思いますよ。大臣、感想をお聞かせいただきたい。
○国務大臣(塩崎恭久君) 私どもは、ひとえにこの年金をお約束どおり払えるようにしっかりと運営をしていくということであり、絶えず見直しを繰り返していくということで財政検証を五年に一遍やらさせていただいているわけでございまして、平成十六年の改正法にのっとって国民に対してお約束をしている所得代替率五〇%を守れるかどうかということを絶えず検証し続けていくということが大事であり、当然のことながら、言ってみれば自助である働く機会というものも当然確保していくということで、そういう選択肢もきちっと用意していくことが大事だというふうに思います。
○倉林明子君 将来のリスク、そして試算の指摘もありました。今の年金がいつからどの程度下がるんだろうか、こういう見通しも示せないで国民の理解というのは私得られないと思います。この審議の状況、そしてこの法案の内容、このまま成立させるというようなことは私、立法府としても責任が問われる問題だというふうに自覚をしております。廃案にしていくべきだということを最後は皆さんにお訴えをして、質問を終わります。
討論に入ります前に、本日採決を行うということに対しては断固反対だと、この意思を表明しておきます。
日本共産党を代表し、公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案に対し、反対討論を行います。
反対理由の第一は、際限なく年金を引き下げる賃金マイナススライドを導入するからです。
これまで政府は購買力の維持のために物価に合わせて改定してきましたが、この法案により、賃金、物価のひたすら低い方に合わせて年金を引き下げることとなります。老後生活の基礎的部分を賄うという考え方で基礎年金制度がスタートした約束をほごにし、度重なる抑制が行われてきました。この二十年間、年金は下がり続けており、今後カバーできない部分がますます増えることは明らかです。政府は将来年金確保法案だと説明しますが、ただでさえ低い年金を更に引き下げて将来世代に引き渡すものであり、看板に偽りありと言わざるを得ません。
反対理由の第二は、いわゆるキャリーオーバーで更に年金を引き下げることになるからです。
実質的な年金削減が繰り返され、ただでさえ弱い最低保障機能を更に弱めるものにほかなりません。さらに、賃金マイナススライドとキャリーオーバーの導入により、二〇一九年十月に実施予定の消費税増税が物価、賃金の指標に反映される際に、年金がゼロ改定、マイナス改定になる危険性も明らかになりました。増税で物価は跳ね上がるのに年金は減額などという事態は断じて容認できません。
○委員長(羽生田俊君) 傍聴席の方はお静かにしてください。
○倉林明子君 反対理由の第三は、年金積立金を株価維持のために株式運用するものだからです。
年金を引き下げ続ける一方、年金積立金は増え続けることになります。あろうことか、安倍政権は、この巨額の積立金を株価つり上げのために運用を拡大しました。運用利回りが確保できる制度的保障もなく、国民の財産である積立金を危険にさらすことは到底容認できません。積立金を維持、積み増しすることを前提とした考え方を撤回し、給付抑制を回避する運用へ転換すべきです。
必要な財源は消費税に頼らず、応能負担の原則に立った税制改革で確保すべきです。保険料負担上限を見直し、再分配機能を強化することが必要です。減らない年金への改革に踏み出し、年金額を引き上げることを目指すべきです。それが国民の公的年金制度への信頼を取り戻す確かな道であることを指摘し、本法案は廃案にすべきことを強く求め、反対討論といたします。
対政府質疑
反対討論