倉林明子

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周知・給付徹底へ体制強化必要 年金受給資格期間短縮法案(厚生労働委員会)

(資料があります)

 参院厚生労働委員会は15日、来年10月支払い分から年金の受給資格期間を25年から10年に短縮する法案を全会一致で可決しました。

 採決に先立つ質疑で日本共産党の倉林明子議員は、新たな受給資格者全員への漏れのない周知・給付のための体制強化を求めました。塩崎恭久厚労相は「新たに受給資格を得る64万人全員に請求書を送付し、周知徹底する。相談に精通した職員を増員する」と表明しました。
 倉林氏は、任意加入や保険料後納制度の活用、第3号被保険者(専業主婦・主夫)の合算対象期間の統合でも資格期間を満たすケースがあると指摘しました。厚労省の伊原和人年金管理審議官は「年金記録が1カ月でもある方には案内する」と答弁。受給資格期間短縮で年金事務所などの窓口来訪者数が通常12万人の2倍以上に膨らむと述べ、800人を増員する考えを示しました。

 倉林氏は「請求者の40年間にわたる人生と向き合い、記憶を呼び起こし、ひもとくもので、地域の事情など経験や想像力が求められる」とし、業務に習熟した職員の増強を主張。4回の更新上限を理由に年金機構が7年間で8千人以上の有期雇用職員を雇い止めしてきたことを示し、見直しを求めました。

 塩崎氏は、今年度中に更新上限を迎える職員について、管理計画は管理計画としながらも「有期職員の今後のあり方についてよく考えていきたい」と述べました。倉林氏は、業務の混乱を防ぐには無期雇用化が不可欠だと強調。不当な懲戒・分限処分の取り消しで職場復帰した職員が未統合記録の発見で力を発揮していることに触れ、「今こそ経験豊富な職員を復帰させるべきだ」と求めました。


「受給資格期間短縮」の実務について


議事録を読む
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 本法案の提案理由の説明でも、公的年金制度の保障機能の強化を図り、年金制度に対する信頼を高めるためとされました。
 そこで、新たに発生する年金受給者に対し給付の漏れがないように取り組む、これは当然のことだと思いますけれども、改めて大臣の決意を確認しておきたいと思います。

○国務大臣(塩崎恭久君) 御指摘のように、保障機能をしっかりと確保するためにも、今回の受給資格期間の短縮というのは大変大事でございます。
 新たに年金の受給対象となる方、見込まれるのは六十四万人ということでありますので、この方々全員に、法律の成立後、日本年金機構から年金の請求書を順次送付をし、厚生労働省や日本年金機構のホームページなども活用して、今回の制度改正の目的、年金請求に必要な手続などについて周知を徹底しなければならないというふうに思っております。
 また、年金機構では、請求書の事務手続に関する審査等を適切に実施をできるように、裁定・相談業務に精通をした職員を増員をして、受付窓口や内容審査に従事をさせるなどの対応を今考えているところでございまして、さらに、受付窓口における予約制度、お待ちをなるべくいただかないように予約制度の利用拡充、あるいはコールセンターの相談体制を充実をするといったことを通じ、対象の方々に確実に年金を受け取っていただくように万全を期してまいりたいというふうに思います。

○倉林明子君 新たな対象者は六十四万人ということで今御紹介もありました。しかし、プラスアルファもあるということなんですよね。空期間のある人、議論もありました、さらに任意加入、後納制度を使う、こういうことで資格者となり得る場合もあるということだと思います。
 そこで、資格期間十年を満たし得る新たな対象者というのはどういったケースが想定されるのか、参考人からお願いします。

○政府参考人(伊原和人君) お答え申し上げます。
 十年の受給資格期間を満たしていない方が受給資格を満たすケースについては、その方の年齢などに応じて活用できる制度が異なるため一概には申し上げられませんけれども、例えば、老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていない方については最長七十歳まで任意加入が可能であり、これを活用いただくということが考えられます。それから、平成三十年九月までの特例措置としての五年後納制度、これの活用も考えられます。さらに、例えばサラリーマンの配偶者の方で、国民年金に任意加入しなかった期間である、年金額には反映されないけれども受給資格期間には反映されるいわゆる空期間、これをお持ちの方であれば、これを合算することによって十年以上という受給資格期間を満たす場合が考えられます。

○倉林明子君 最後のところでも御紹介があったように、第三号被保険者の場合、一九六一年から一九八六年、ここは合算対象期間になるということを御存じない、自覚されていないという方も決して少なくないと思うんですね。こういうプラスアルファの部分もしっかり拾い上げて支給していくんだということで取り組んでいただきたいと思うわけです。
 そこで、確認したいんですけれども、少なくとも年金加入記録が一か月でもある人については全てが対象者だということでよろしいかと。さらに、今御紹介あったとおり、後納などについては年齢や期限ということがありますので、漏れなく全ての対象者に告知が必要だというふうに考え
ますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(伊原和人君) 年金加入期間が一か月でもある方にはきちっと全てお知らせすべきではないかという御質問だと思いますけれども、御指摘のとおり、今回、受給資格期間の短縮に伴いまして、十年の受給資格期間を満たしていない方に対しましても、年金加入記録が一月でもあれば全ての方を対象に制度の御案内、今もお話しになりました空期間の御案内も含めまして通知したいと、このように考えております。

○倉林明子君 今御紹介あったとおり、そういった方々も含めてしっかりと周知の漏れ、期限が切れたということがないような徹底が必要だということで強調しておきたいと思います。
 そこで、六十四万人はもとより、こうしたプラスアルファの方々も含めて、私相当な事務量になるということが十分予測されると思います。
 受給資格期間短縮の実務についてということで、厚労省から提出していただいた資料を付けております。異例の扱いということですけれども、平成二十九年八月施行前から分割して年金請求書を送付すると、段階的に送るというような工夫もされているようです。
 そこで、確認したいんですけれども、年金事務所などへの新規の来訪者、これが一体どのぐらい増えると想定しているんでしょうか。

○政府参考人(伊原和人君) お答え申し上げます。
 現在、新規の裁定の手続のために、毎月約十二万人の方が新規裁定の手続をされております。
 今回の受給資格期間の短縮により、約六十四万人の方に対して五回に分けて年金請求書をお送りすることになりますので、その六十四万人の方の相当数が年金事務所の方に御来訪されるんではないかと考えておりまして、現在の二倍以上の方が月平均しますといらっしゃるんではないかと考えております。
 こうした業務が増加する一方で、請求書の事務手続がきちっとできますように、日本年金機構では裁定・相談業務に精通した職員を増員し、受付窓口や内容審査に従事させるなどの対応を図ってまいりたいと、このように考えております。

○倉林明子君 かなり精通した職員の増員の対応ということが強調されていますけれども、本当にそうだと思うんですね。こうした年金の業務、裁定業務にかかわらず、相談窓口での対応もそうだと思うわけですが、年金請求者の四十年間にわたる人生、ここと向き合って半生の記憶を呼び起こしていく、こういう作業が必要となるものだというふうに思うんですね。一つ一つをひもといていくという作業が現場では求められていくということになります。
 その上で、制度の複雑さ、これを熟知するというだけじゃ足りないと思っているんですね。記録の確認には、地域の変遷、産業の特色、これによって対応とか調査のやり方も変わってくると思うんです。私、京都ということですが、機織りということで独特の雇用形態を取っているという地域性が働き方にもありますので、そういう経過を含めて知って調査を掛けていくということも必要になってくるわけです。そういう作業には、やっぱりマニュアルにはない、マニュアルには反映されない、そういう経験や想像力が私求められてくるものだというふうに思うわけです。
 そこで問題になるのが、そうした精通した職員も含めて何人増員するつもりなのかというのは確認したいということが一点。さらに、この間、年金機構では七年間で八千人を超える有期雇用職員が雇い止めになってきた経過があります。就業規則で有期雇用の更新に上限が定められておりまして、これは四回が天ということですから、経験が蓄積されたところで有期雇用の職員が雇用打切りということになっているわけです。
 そこで、この契約更新、今年末にも迫っておりまして、ここで大量の解雇が契約上は想定されるということになるわけですが、これ、法案可決すれば直ちに準備が始まるということになるわけです。こうした時期に、この最も求められる熟練した経験を、習熟しているスタッフ、精通しているスタッフ、こうした方々を雇い止めにするようなことがあってはならないというふうに思うんですけれども、信頼回復のためにも必要な措置だと思う。大臣の認識はいかがでしょうか。

○委員長(羽生田俊君) まず、伊原審議官。

○政府参考人(伊原和人君) まず、今回の増員の予定数の御質問がございましたので、お答え申し上げます。
 今回、受給資格期間の短縮に伴いまして、やはり年金事務所などでの相談体制の強化ということで経験あるいは知識のある方を配置するということになりますと、その他の業務の部分が手薄になるということもございまして、現在、八百人ほど来年度増員を考えてございます。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今、経験豊かな有期雇用職員、この問題について御指摘をいただいたわけでございまして、年金機構では、今回の受給資格期間の短縮によって確実に年金受給に先ほど申し上げたとおり結び付けるということが大事だと思っております。
 したがって、相談そして裁定事務、これに習熟した職員を窓口などに配置をするということは先ほど申し上げたとおりでありまして、一時的な業務量の増加に備えて有期雇用職員の採用を検討をしているというふうに聞いております。その際、今年度中に契約更新回数が上限に達して、そして契約期間が満了するという予定の方々の中からも経験や能力に応じて採用をする方向であると、つまり活用していくということを考えているわけでございます。
 また、現在の有期雇用職員全員の無期雇用化についてお話がございましたが、無期雇用化に関しましては平成二十年の七月に閣議決定がございました。日本年金機構の当面の業務運営に関する基本計画、この閣議決定に基づきまして職員の必要人員を管理する必要がまずございます。それに加えて、今回の採用を含めて、職員の採用に当たっては、採用枠に対して能力あるいは適性を考慮して判断をする必要があると、このように考えられることから、希望する有期雇用職員の方全員について継続的に雇用することは、全員についてというわけにはなかなかいかないというふうに考えているところでございます。

○倉林明子君 希望者全員の無期雇用については管理計画もあるのでできないという話なんだけれども、私、こういう年金の、低年金、無年金解消に向けての信頼回復のための法改正を厚生労働省が責任を持ってやっぱりやっていくんだということが、この管理計画とリンクしていないと思うんですよね。管理計画はこれを前提にしたものではないと思うんですよ。
 この法改正の趣旨を本当に実施していくためには、必要な人員を確保するという点からも、管理計画に縛られない習熟した人員の確保、これ最優先すべきことだと思うんですよ。年金機構任せにせずに、人員体制については、私、厚労省としてしっかり責任持ってやるべきだ。
 その際、焦点になっている有期雇用の職員については、希望者全員についてはやっぱり無期雇用にすると、こういう体制を示してこそ国民の信頼、窓口での混乱にも応えることになると考えますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今回の受給資格期間短縮が無年金者対策として極めて重要だということはそのとおりでございますし、できる限りの努力をして一人残らず対象となる方々をしっかりとこの年金の支給に結び付けていくというためには、やはり量的にも質的にもこれに従事する人たちを確保することはそのとおり大事でございます。
 一方で、閣議決定は閣議決定としてありますので、私どもとしては、閣議決定は閣議決定として守りながら、しかし、国民に対する大事な今回の行政サービスとしての期間短縮の対応、これも万全を尽くしていくということで、この有期の雇用職員の方々についての今後の在り方についてもよく考えてまいりたいというふうに思っております。

○倉林明子君 よく考えて、閣議決定の後に成立を図るこの法案がしっかり国民の信頼回復につながるような手は何なのかと、その点からも習熟した職員の確保には万全を期していただきたい、重ねて要望したいと思うのと、既に年金機構移行の際に、懲戒、分限処分の取消し、これによって職場復帰した方がおります。Kさんと紹介したいと思うんですが、相談業務通じて一日に何件もの未統合記録を発見されています。記録調査は経験だと、経験者が増えれば多くの記録が判明すると思うと述べておられます。

○委員長(羽生田俊君) 恐れ入ります、お時間ですので、おまとめください。

○倉林明子君 今こそこうした経験豊富な職員を職場に復帰させるべきだと申し上げまして、終わります。