プルトニウム増招く 法案を批判 再処理等拠出金法(経済産業委員会)
(ページ下部に資料があります)
参院経済産業委員会は10日、再処理等拠出金法案の採決を行い、日本共産党と2会派(元気・改革)を除く賛成多数で可決しました。採決に先立つ質疑で日本共産党の倉林明子議員は、使い道のないプルトニウムを増やす再処理の実態と、増大する事業費の問題についてただしました。
対象事業の範囲について資源エネルギー庁の多田明弘電力・ガス事業部長は「使用済MOX燃料(使用済核燃料を再処理して取り出したウランとプルトニウムの混合酸化物)の再処理も含め、今後発生する全ての使用済み燃料が対象」と答弁しました。
倉林氏は「対象事業もその費用もどこまで増えるかわからないまま、公共料金である電気料金で費用を回収することは生活に直結する大問題だ」と批判しました。
倉林氏は、六ケ所村再処理工場(青森県)の稼働により発生するプルトニウム総量が年間8トンに対し、利用計画は年間5.5~6.5トン(プルサーマル=MOX燃料を通常の原発で使う=最大数の16~18基稼働した場合)であることを指摘。残りのプルトニウムについて多田氏は「回収ウラン等と同様に備蓄をしていく」と述べ、使い道のないことを明らかにしました。
倉林氏は「プルトニウムを新たに発生させるのが再処理だ」と強調。世界が保有する民生用プルトニウムの18%を日本が保有している実態をしめし「唯一の被爆国である日本で、プルトニウムを増やすことに国民の理解は得られない。原発再稼働・核燃料サイクルはきっぱりやめるべきだ」と迫りました。
原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
この法案によって原発事業者が拠出することになる総額、これが一体幾らになるのかということで本会議で質問をいたしましたが、答弁ありませんでした。
改めて確認をさせていただきたいと思いますが、現在の積立金で対象としている総事業費は一体幾らになるのか、そして、今回新たに対象となる事業及び額はどうなるんでしょうか。
○政府参考人(多田明弘君) お答え申し上げます。
まず、現行の再処理積立金法の対象事業の総事業費は幾らかという点でございますが、事業者からの最新の報告によりますと、六ケ所再処理工場における再処理事業に要する費用は、現時点で明らかになっている新規制基準への対応に必要な費用も含めまして約十二・六兆円であると承知をしております。
本法案におきましては、現行の積立金法で対象としていた事業に加えまして、そのほかに、現時点で具体的な計画を有していない使用済燃料の再処理に関連する事業、それからMOX燃料加工に関連する事業を制度の対象として追加をしているところでございます。
これら追加したものを含めました事業に要する費用の総額でございますけれども、これは本会議でも答弁があったかと思いますけれども、法案成立後、認可法人の運営委員会におきまして専門家等の外部有識者にも加わっていただき精査することとしておりますので、政府として予断を持ってお答えすることは控えたいと考えております。
○倉林明子君 六ケ所の再処理工場の建設費だけで、先ほど自民党の委員からも御指摘あったとおり、七千六百億円と当初見込まれていたものが二兆二千億円ということで、三倍にも達しているという状況ありますし、これまだ竣工しておりません。さらに、新たに対象となると今御説明ありましたMOX燃料加工工場、これ、額、時期いつかということありませんでしたけれども、新たなものも見込んでも一・二兆円だということで伺っているわけで、本当に巨額になるわけですね。これまでも増えてきたけれども、これから今後どこまで増えるかというのもはっきりしないというのが御説明の中身だと思うんですね。
それで、これまで積立金の対象、これは法文上どうなっていたかというと、「再処理」ということになっておりました。ところが、今回拠出金の対象ということで、「再処理」と「再処理関連加工」というふうに追加の規定がされております。MOX燃料、これを使用した後に生じるのが使用済MOX燃料ということになると思いますが、これも将来的には再処理が必要だということで検討しているという旨の政府参考人からの答弁が衆議院でもあったというふうに思います。
そこで、この新たな規定、対象となる再処理関連加工、ここに、法文上の規定からいって、これから必要となると、検討している使用済MOX燃料の再処理加工、これら除外することにはならないんじゃないかと思うんですけれども、どうでしょうか。
○政府参考人(多田明弘君) お答え申し上げます。
御指摘のとおり、今般の法案におきましては、競争が進展した環境の下におきましても使用済燃料の再処理等を滞りなく進める、こういう観点から、使用済MOX燃料も含めまして今後発生いたします全ての使用済燃料、これにつきまして再処理等、これは再処理とそれに伴います関連加工でございますが、これに必要な費用を電力会社から新たな認可法人へ拠出させると、こういうことを想定しております。
○倉林明子君 何ぼでも増えるということですわ。
今回対象となるMOX燃料加工工場、これに加えて新たな再処理関連加工費用と、今、使用済MOX燃料の再処理加工についてまで言及あったわけだけれども、一体本当にどれだけ増えるんだろうかということが非常に国民的には大問題になるということだと思うんです、私。
回収について、大臣は託送料金への転嫁も否定されなかった。これ、答弁の到達だと思うんですけれども、公共料金なんですね、電気料金は。この電気料金が国民生活に直結するという問題を鑑みれば、私は、一体どれだけの拠出総額になっていくのか、これは法案出すという時点で明確に説明があるべきだと思います。こういう額の説明がない、対象の説明も、いや新たにこういうことも考えられると次々出てくるって極めて無責任だと、これは強く指摘をしておきたいと思います。
そこで、更に重大だと考えておりますのは、使用済燃料、これを再処理しますと出てくるプルトニウムの問題です。
原子力委員会に来ていただいております。確認をしたいと思いますが、我が国のプルトニウム利用の原則、どうなっているか、プルトニウム利用計画にも触れて御説明をください。
○政府参考人(中西宏典君) お答え申し上げます。
平成二十六年の四月に閣議決定をいたしましたエネルギー基本計画において定められておりますけれども、我が国は、平和利用を大前提に、利用の目的のないプルトニウムを持たないという原則を引き続き堅持するというとともに、プルトニウムの適切な管理と利用を行うことなどが明確化されてございます。
我々原子力委員会の方では、プルトニウムの平和利用に対する考え方や利用目的の明確化のための措置といたしまして、これは平成十五年八月に、我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方についてというものを決定してございます。これに基づきまして、電気事業者に対してはプルトニウム利用計画を策定、公表するということを求めておりますし、その利用目的の妥当性につきましては我々原子力委員会において確認を行ってきているという状況にございます。
○倉林明子君 その計画をきちんと出してもらうと同時に妥当性を確認すると、プルトニウム利用計画についてはそういうことだと思うんですね。これ、今、現時点で新たなプルトニウムの利用計画はない、公表もされていないということは事実であります。
そこで、プルトニウムの利用計画が策定されないと再処理工場の操業はないという趣旨で大臣、衆議院で答弁されているかと思います。
そこで、大臣にお聞きしたいんですけれども、計画の策定だけじゃなくて、原子力委員会がその計画の妥当性、これを確認しなければならないとなっているわけですから、こういう計画の策定と原子力委員会による妥当性の確認、これがない限り再処理工場は稼働しないと、こういうことでいいのかと。さらに、確認したいのは、この妥当性が確認された利用計画がないという場合に再処理しないと、これは法文上担保されているのかどうか。いかがでしょうか。
○国務大臣(林幹雄君) 電気事業者は、政府の方針であります利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則を明確に認識をして、六ケ所再処理工場でプルトニウムの回収が開始されるまでに新たなプルトニウム利用計画を策定するとしているところでございます。プルトニウムの適切な管理と利用を進めていく上でこうした事業者の対応は当然のことと認識しておりまして、利用計画が再処理工場の操業前に策定されないようなことは全く想定しておりません。その前に必ず策定されるものと考えております。
その上で、原子力委員会による利用計画の妥当性の確認については、法令上は再処理工場が操業する前になされることが求められているものではありませんが、利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則を担保するためにも、この確認は六ケ所再処理工場の操業前に行われることが適切であるというふうに考えております。むしろ、電気事業者は、利用計画の策定に加えて、原子力委員会による確認が六ケ所再処理工場の操業前に間に合うように対応を進めるものと、こういうふうに認識をしております。
○倉林明子君 プルトニウムの利用の原則というのは、国がアメリカ等も含めて確認しているという、国の責任でやるべきことだと思うんですね。当然、事業者にそれを求めていくということについては、私はきっちり縛りを法文上も求められる性格のものだと、これは言っておきたいと思います。
そこで、原子力委員会に改めて確認をしたいと思いますけれども、前回策定されたプルトニウムの利用計画、これについて確認をしたいと思いますが、プルサーマルで利用する量と再処理で発生するプルトニウム量、これ、それぞれ年間でどれだけになるか、そして総量でどうか、御説明ください。
○政府参考人(中西宏典君) お答え申し上げます。
平成二十二年三月に電気事業者が策定、公表いたしましたプルトニウム利用計画によりますと、平成二十七年度以降において利用する核分裂性のプルトニウムの目安の量は年間五・五トンから六・五トンとされているところでございます。また、平成二十二年度におきまして、日本原燃の六ケ所再処理工場で回収を予想しておりました核分裂性プルトニウムの回収量につきましては、平成二十二年の三月に電気事業者が原子力委員会に一回報告をしてございます。そのプルトニウム利用計画に基づきますと〇・五トンというふうにされておりました。
しかしながら、これは平成二十年の九月に六ケ所の再処理工場の竣工時期の見直しということが行われまして、それに伴いまして平成二十二年度のプルトニウムの回収量はゼロとなってございます。以降、分離されたプルトニウムは国内で発生していないという状況でございます。
○倉林明子君 フル稼働すれば再処理工場で回収できる核分裂性プルトニウムは四トン強だということで伺っております。
いろいろ計画どおりにならなかったということで先ほどの数字出たかと思うんですけれども、妥当だと原子力委員会が評価したこのプルトニウム利用計画で、計画段階とはいえ、プルトニウムが一体いつになったら減るのかと。余分なプルトニウムを増やさないという観点から、妥当性の判断として大事な指標だと思うんですけど、いつ減るという計画になっていたのか確認できますか。
○政府参考人(中西宏典君) 先ほど申し上げましたように、大体二十七年度以降、年間五・五トンから六・五トンという使用の目安といった量が示されていたところでございます。
○倉林明子君 つまり、いつになるかということでいうと、極めて不確定要素が多過ぎて見えていないというのが、現状、これまで認定したプルトニウム利用計画でもはっきりしていると思うんですね。
そこで、資料を今日は一枚用意いたしました。これは電事連が今年の三月に新たなプルトニウム利用計画策定できませんということで出してきたものとセットになっていたものだと思います。
この状況を見ますと、前提条件としてプルトニウム利用計画では十六基から十八基のプルサーマル発電できる原発の稼働が必要だということになるわけだけれども、全くそんな状況は見通せません。さらに、現在どれだけ稼働しているかといったら、先ほど御紹介あったとおり、プルサーマルはゼロです。原発の新増設はしない、これが今の政府の方針です。さらに、法の原則は、四十年で廃炉にするというのが原則となっています。結局、プルトニウムが消費できる、消費される、この見通しは私は全く現時点でないというふうに思うわけです。
そこで、経産省に聞きたいと思います。
再処理工場が稼働すれば、発生するこのプルトニウムの総量、これは年間何トンになるか、そのうち核分裂性プルトニウムは何トンでしょうか。
○政府参考人(多田明弘君) お答え申し上げます。
六ケ所再処理工場が竣工し、フル稼働した暁でございますけれども、年間約八百トンの使用済燃料を再処理するわけでございますが、その結果、約八トンのプルトニウムが回収されるということになります。そのうち核分裂性プルトニウムは約四トン強と、このように承知をしております。
○倉林明子君 結局、発生するプルトニウムはフル稼働で八トンだと、年間。ところが、プルサーマルで、電事連が元々立てた計画でも、利用する核分裂性の、核分裂性なんですよね、プルサーマルで使うということでいうと、年間五・五から六・五ということになると思います。残りが出てくると、プルサーマル発電でフルに使うということでも残りが出てくるというふうに思うんですね、フル稼働した場合。一体これどこに使うんでしょうか。
○政府参考人(多田明弘君) お答え申し上げます。
私先ほど申し上げましたけれども、八百トンの使用済燃料を再処理し、その結果、約八トンのプルトニウムが回収されますけれども、これは核分裂性、それから非分裂性の両方を足したものでございます。したがいまして、核分裂性のプルトニウムはそのうち約四トン強でございますので、先ほどの五・五トン等々の電事連の計画であれば、この約四トン強を上回る消費がなされるということになります。
○倉林明子君 非核分裂性のプルトニウムがあるんじゃないですかと。その使い道あるんですか。
○政府参考人(多田明弘君) 失礼しました。
今御指摘の非核分裂性プルトニウムにつきましては、他の回収ウラン等々と同様にして備蓄をしていくことになろうかと思います。
○倉林明子君 そういうのは当面の使うめどがないプルトニウムということになると思うんですね。
私、唯一のプルトニウム消費の手段としている通常の原発の利用が、もう計画立てられないと、これ現状だと思います。その上、いつ使えるか分からない、長期保管というようなことになっている使い道が定まらないプルトニウムを、これ発生するのが再処理だということだと思うんですね。
安倍総理は、今年開催されました米国核セキュリティ・サミットで、核物質の最小化、適正管理に関し、日本は利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則を実践と、こう発言されたと聞いております。それならば、私は、再処理をすれば当面使い道、使うめどのないプルトニウムをつくることになるわけですから、決断としては再処理をしないということになるんじゃないかと思います。
大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(林幹雄君) 我が国は、エネルギー基本計画で閣議決定したとおり、自治体や国際社会の理解を得つつ、使用済燃料の再処理等を行う核燃料サイクルを推進する方針でございます。
使用済燃料を再処理する場合、使用済燃料を直接処分する場合に比べて高レベル放射性廃棄物の量の減少、放射能レベルの低減、回収されるプルトニウム等の資源の有効活用などの効果がございます。具体的には、例えば軽水炉サイクルの場合、高レベル放射性廃棄物の体積を直接処分する場合に比べて約四分の一に減らすことができますし、その放射能レベルについては十分の一以下にすることができます。また、残存する核燃料物質を有効利用し、新たに一、二割程度の核燃料を製造できるといった効果がございます。
こうした効果のある核燃料サイクルは、原子力を重要なエネルギーとして使用してきた資源に乏しい我が国にとっては必要なプロセスであるというふうに考えております。
○倉林明子君 もう使い古された説明だと思うんですね。私、国民にそれで説得できるんだろうかと思います。
現在日本が保有するプルトニウム四十七・八トンで、世界が保有している民生用プルトニウムの何と一八%にもなっているというわけですね。私、そこに再処理で新たに発生させると、これフル稼働したら年間八トンだと、利用目的のないプルトニウムを持たないという原則を実践しているというようなことは到底言えないと思います。
核兵器に利用可能なプルトニウム、これを大量に持ち続けることに国際的な批判が強まっている、まして唯一の被爆国である日本でプルトニウムを増やすと、こんなことに国民の理解というのは得られないと、明らかだと思います。
原発の再稼働、核燃料サイクルはきっぱりやめるように求めまして、質問を終わります。
原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○倉林明子君 日本共産党を代表して、原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律の一部を改正する法律案に対し、反対討論を行います。
反対の第一の理由は、原発の再稼働を前提とし、破綻が明らかな核燃料サイクル政策にしがみつき、国の関与を強めて推進する仕組みをつくるものだからです。
高速増殖炉「もんじゅ」は行き詰まり、再処理工場もMOX燃料加工工場もいまだ完成すらしていません。原発事業者自らが明らかにしているように、完成しても使用済燃料を再処理してできるプルトニウムを使い切れるめどは立っておらず、余剰プルトニウムを持たないとした日本政府の原則は崩れています。再処理と核燃料サイクルの政策の土台となってきた日米原子力協定の破棄を求めるものです。原発を使い続ける限り、処分の見通しがない核のごみが増え、更に再処理すれば使い道のないプルトニウムが増えることは明らかです。これ以上負の遺産の後始末を将来世代に押し付けることは許されません。
反対の第二は、今後の再処理事業や関連事業に係る費用の全体像を国民に示さないまま、将来発生する使用済燃料の再処理に加え、MOX燃料加工工場の運転や解体費まで電気料金という形で国民にツケを回そうとするものだからです。
再処理等の費用を最終的に誰が負担するのか、託送料金で回収することになれば全ての電気利用者の負担となります。自由に電気を選べるとうたった電力自由化の下で、原発でなく再生可能エネルギーを使いたいという消費者にも原発固有のコストを負担させることになるもので、認められません。今後、再処理等の事業費が増大することは明らかであり、際限のない国民負担につながりかねず、到底容認できません。
東京電力福島第一原発事故から五年、ふるさともなりわいも奪われた避難者は、昨日の段階でも九万四千人以上に上り、被害は深刻です。事故収束の見通しも全く見えません。痛苦の経験から国民は原発ゼロの日本を願っています。政府はこの声に応え、原発、核燃料サイクルからの撤退を決断することを強く求め、反対討論といたします。
※対政府質疑部分です
※反対討論部分です