倉林明子

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増税のダブルパンチに 所得税法改定案(本会議 反対討論)

 所得税法等改定案が29日、参院本会議で採決され、自民、公明などの賛成多数で可決・成立しました。日本共産党、民進党、社民党、生活の党などは反対しました。

 日本共産党の倉林明子議員が反対討論に立ち、消費税率10%増税を前提に導入する「軽減税率」について、低所得者対策として導入した「簡素な給付措置」が廃止され、「対象者にとって負担軽減どころか増税のダブルパンチだ」と強調。中小企業・小規模事業者にとっては、複数税率への対応などで負担を強いられるだけでなく、取引排除につながる問題だと指摘しました。

 さらに倉林氏は、法人実効税率の引き下げによる減税額は来年度分だけでも2390億円となり、研究開発減税では巨大企業1社に1千億円以上も減税する優遇税制がとられることを指摘し、「大企業の、大企業による、大企業のための減税政策にほかならない」と厳しく批判しました。
 倉林氏は「消費税に頼らず、大企業と富裕層優遇の税制を改めること、家計と中小企業への支援で内需拡大を進める経済政策へと転換すべきだ」と主張しました。

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○議長(山崎正昭君) 倉林明子君。
   〔倉林明子君登壇、拍手〕

○倉林明子君 私は、日本共産党を代表して、所得税法等改正案に対して、反対の討論を行います。
 反対する第一の理由は、来年四月の消費税一〇%増税を前提とした改正となっているからです。
 今回の消費税の増税は、五%から連続的に一〇%に増税するもので、短期間に総額およそ十三兆円、一世帯当たり十八万四千円、国民一人当たり八万一千円、世界でも例のない増税となります。
 安倍総理は、消費税八%増税の影響について、予想以上に落ち込んだのは事実であり、また予想以上に長引いているのも事実だと認めざるを得ませんでした。さらに、消費税を一〇%に上げれば、影響が拡大することは火を見るよりも明らかです。
 三月に政府が発表した月例経済報告では、国内の景気判断を五か月ぶりに下方修正しました。その大きな要因は、国内総生産の六割を占める個人消費の低迷です。勤労者世帯の実質世帯収入は、アベノミクスの三年間で五%も落ち込んでいるのです。これで家計消費が上向くはずがありません。期待された春闘でのベースアップも小幅にとどまり、今後も消費が上向く見通しは極めて厳しい状況となっています。もはやアベノミクスの失敗は明らかです。総理は、アベノミクスの破綻を認め、消費税増税をきっぱり中止すべきです。
 提案されている軽減税率は、負担の軽減ではなく、低所得者への増税のダブルパンチであり、今後の増税にも道を開く狙いが明らかになりました。
 八%への増税の際に低所得者対策として導入した簡素な給付措置を今回廃止するとしています。これは、食料品の消費税率を五%に据え置くため、負担が増えた分を低所得者に戻すというものでした。簡素な給付措置の廃止は、給付金の対象者にとって、負担軽減どころか、食料品もそれ以外も増税のダブルパンチとなるものです。
 与党幹部は、将来、消費税率は一五%、二〇%となっているかもしれない、そのときでも食べ物は八%に据え置かれる、今回たった二ポイントの軽減だが、将来この幅は大きくなる、そのときに初めて軽減税率の意味が出てくると発言しています。結局、低所得者対策と言いながら、実際は消費税の更なる税率引上げの条件づくりではありませんか。
 現在の八%の負担でも、中小零細事業者の実態は深刻です。売上げが低迷する中、消費税を払いたくても払えず、廃業に追い込まれる事業者が少なくありません。軽減税率は、中小企業・小規模事業者に大きな負担を負わせるだけでなく、取引からの排除につながることも審議を通じて明らかになりました。
 今回、軽減税率の導入でインボイスへの対応が中小・小規模事業者にも求められ、事務負担が二倍、三倍になると、事業者からは悲鳴の声が上がっています。インボイスを発行できない免税事業者は取引から排除される可能性が高まります。さらに、農家の約九割は免税事業者ですが、政府の答弁では、そのうちの一割が取引から排除される可能性があることも明らかになりました。免税事業者は、課税業者への選択を強いられ、市場からの撤退を迫られることとなるものです。
 国民生活も中小企業・小規模事業者の営業も破壊する消費税の一〇%増税は、きっぱり中止することを重ねて強く求めるものです。
 反対する第二の理由は、庶民に増税を押し付ける一方で、黒字の大企業に一層の減税を行うなど、何の道理もないからです。
 法人税の実効税率引下げは二〇一五年税制改革から始まり、二年目の今回、二〇%台へと大幅に引き下げ、減税額は来年度分だけでも二千三百九十億円となります。その上、研究開発減税でも大企業優遇が続いています。二〇一四年度実績では、資本金百億円以上の企業で約八〇%を占め、何とトヨタ一社で一千八十三億円、全体の六分の一を占めています。
 その一方、実効税率引下げの財源確保策として外形標準課税が強化されました。中堅企業は、赤字であろうとも、課税所得一億円以下の企業まで軒並み増税となるもので、人件費率が高い中堅企業ほど負担が重くなり、賃下げやリストラにつながりかねません。
 巨大企業一社に一千億円以上も減税する優遇税制が残される一方、赤字や業績悪化に苦しむ中堅企業一万社には四百五十億円もの増税です。
 政府は、稼ぐ力のある企業への減税で、前向き投資、継続的賃上げが可能な体質への転換を促すとしましたが、三年余りで、大企業は、稼いだ分を内部留保に三十兆円積み増し、株主への配当金の拡大に回しただけで、労働者には賃下げの悪循環をもたらしました。大企業を優遇すればいずれ庶民に滴り落ちるというトリクルダウン政策は、完全に行き詰まっています。
 さらに、驚くのは、経団連に参加する大手大企業への特別待遇です。経団連の税制改正の責任者は経済誌の中で、実効税率引下げによる減税と租税特別措置法の見直しによる増税の影響を経団連の主要企業ごとに試算し、差引きで減税になるよう、少なくても増税にはならないようにしたと述べています。自分たちが得するように制度設計をしたと政策決定の内幕を語っているのです。政府はこの事実を否定しませんでした。結局、安倍政権の法人税改革とは、言い出したのも、制度設計したのも経団連、減税の恩恵を受けるのも経団連ということになるではありませんか。これでは、大企業の大企業による大企業のための減税政策にほかならないと厳しく指摘するものです。
 法人実効税率の引下げについて、総理は他国への減税競争にはならないと答弁しました。しかし、お隣の韓国では、現在、法人税の引上げが議論になっています。野党や市民団体が、福祉予算の確保、少子高齢化の財源として法人税の引上げを求めたのに対し、韓国の政府・与党は、日本は財政状況が韓国よりはるかに悪いのに法人税を引き下げる計画があるとして反対しました。日本の実効税率引下げが他国への競争上の圧力となっている事実を認識すべきです。
 日本は、アジアに減税競争をもたらす法人実効税率引下げを行うべきではありません。競争を防ぐ国際協調への努力こそ日本に求められる役割です。
 アベノミクスの株価つり上げにより、富裕層への富の一極集中が進みました。証券優遇税制の期限が切れ、株式譲渡益に対する税率は現在二〇%になったものの、所得が一億円を超えると税負担率が急激に下がる状況は残されたままです。格差是正を進めるためにも、株式譲渡益には欧米主要国並みの三〇%税率へ引き上げ、配当所得には総合課税を速やかに適用すべきです。
 消費税に頼らず、大企業と富裕層優遇の税制を改めること、家計と中小企業の支援で内需拡大を進める経済政策へと転換すべきです。貧困と格差を抜本的に是正するためにこの道こそ進むべきだと指摘し、反対討論といたします。(拍手)

○議長(山崎正昭君) これにて討論は終局いたしました。