原発汚染水漏らすな 福島第一(経済産業委員会)
(ページ下部に資料があります)
日本共産党の倉林明子議員は23日の参院経済産業委員会で、福島第1原発の汚染水対策の目標期限の先送りが濃厚になっている東京電力の対応と、それを容認する政府の姿勢を批判しました。
昨年6月の廃炉・汚染水対策関係閣僚会議で決定した福島第1原発廃止措置に向けた中長期ロードマップでは、信頼性が低いフランジ型タンクを2016年早期に全て溶接型に切り替えるとしています。しかし、東電は3月、処理すべき汚染水量を減らせていないことなどを理由に老朽化したフランジ型タンクを再利用する計画を示しました。
倉林氏が、凍土壁稼働により新たに汚染水が増えるリスクについてただし、田中俊一原子力規制委員会委員長は「決して起こらないようにする」としつつ、リスクについて否定できませんでした。
「これ以上、汚染水を環境に出すことは絶対にあってはならない。フランジ型タンクの再利用などとんでもない」と迫った倉林氏に対し、林幹雄経産相は「東電を指導する」と答弁せざるを得ませんでした。倉林氏は「豊かな漁場を奪われ、汚染水漏れによる実害に苦しんでいる人々の思いに真摯に向き合い、なし崩しにトリチウム水を薄めて海に流すなど決して許されない」と強調しました。
(参考資料)上空から見た福島第一原発の様子(2016年2月25日撮影)
福島第一原発の汚染水問題について質問いたします。
昨年六月に開催された廃炉・汚染水対策関係閣僚会議、ここで、先ほども御紹介あった福島第一原発の廃止措置等に向けた中長期ロードマップが改訂をされております。そこで確認をさせていただきたいんですけれども、ここに掲げている中長期の取組の実施に向けた基本原則、四つありますが、その一と二、読み上げて御紹介ください。
○政府参考人(田中繁広君) お答え申し上げます。
昨年六月に改訂をいたしました中長期ロードマップにおきましては、福島第一原子力発電所の廃止措置等を、放射性物質によるリスクから人と環境を守るための継続的なリスク低減活動と位置付けた上で、中長期の取組の実施に向けた基本原則として四つの原則を規定をしております。
まず、原則の一として、「地域の皆様、周辺環境及び作業員に対する安全確保を最優先に、現場状況・合理性・迅速性・確実性を考慮した計画的なリスク低減を実現していく。」こと、また、原則の二として、「中長期の取組を実施していくに当たっては、透明性を確保し、積極的かつ能動的な情報発信を行うことで、地域及び国民の皆様の御理解をいただきながら進めていく。」ことを掲げております。
○倉林明子君 私、大事な原則だと思います。
この間の経過をたどってみましても、やはり地元住民、そして国民の信頼、理解なくして廃炉も汚染水対策も進まないと、こういう自覚に立って進めていくべきものだというふうに思います。
そこで、中長期ロードマップの主要な目標工程、幾つか挙がっています。その一つに、汚染水を保管するタンクについてのものがあります。高濃度の汚染水については、汚染水漏れを繰り返したフランジ型タンクは二〇一六年早期に全て溶接型のタンクにすると挙げられております。今、この目標達成の見通しはどうなっているでしょうか。
○政府参考人(田中繁広君) お答えを申し上げます。
福島第一原発に設置されておりますフランジ型タンクにつきましては、安全を最優先にしつつ、より信頼性の高い溶接型タンクへ順次置き換えを行っております。置き換え作業といたしましては、フランジ型タンクに貯水をしております水を多核種除去設備等により浄化処理を行った上で溶接型タンクに移送をいたしまして、その後、空になったフランジ型タンクを解体いたしまして、これにより空いたスペースに新たな溶接型タンクを設置するといった、そういった工程を踏んでおります。
その一方で、昨年初めのタンクでの死亡事故などが残念ながら起こっておりますけれども、作業安全を更に更に重視をしていくという観点から、タンクの解体作業を慎重に進めておりますため、想定より時間を要しているという状況にございます。そのため、暫定的にフランジ型タンクを継続的に使用することとしております。
また、建屋への地下水流入量の大幅な抑制が期待されるいわゆる陸側の凍土壁につきましても、原子力規制委員会から認可をいただきまして早期に稼働するべく今作業を進めておりまして、それとともに、溶接型タンクの増設もしっかりと進めながらできるだけ早期に溶接型タンクで全ての処理水の貯水を行うという、そういった目標が達成できるよう引き続き東京電力を指導してまいりたいと考えております。
○倉林明子君 今、説明ありませんでしたけれども、地下水ドレーンからのくみ上げた水を本来放出するというはずだったのが、高濃度に汚染されているということで、処理せざるを得ない水となっていると。つまり、ストロンチウム処理水については、フランジ型使って保管せざるを得ないという状況になっているというような認識です。これ東電の説明だったと思います。
いわゆるこのフランジ型、信頼性が低いタンクについて再利用せざるを得ないという状況になっている、極めて私は厳しい状況にあるんじゃないかと、目標達成の状況からは。こう言わざるを得ないと思います。
そこで、改めて確認をさせていただきたい。これ、規制委員会にお願いします。これまで法令上に基づく報告があった汚染水漏れ、何件になるのか、そのうちフランジ型タンクが関連した主な漏えい事象は何件になりますか。
○政府参考人(山田知穂君) フランジ型タンクからの漏えいのお尋ねでございます。
震災以降、福島第一原子力発電所において発生をいたしました事故、故障等に関して、原子炉等規制法に基づく報告として受けておりますのは、汚染水漏れに関するものとして十一件ございます。そのうちフランジ型タンクが関連するものは五件でございますけれども、このフランジ型タンクのフランジの部分、弱い部分でございますけれども、こちらから汚染水が漏えいしたものは一件となってございます。
○倉林明子君 原子力災害特別措置法十五条、二十五条、これに関わった汚染水漏れ事象というのはもう少し多かったんじゃないかと思います。これは追って、また改めて確認をさせていただければ結構です。
その上で、繰り返し報道もされ、そして汚染水漏れが起こったというたびに漁民を始め多くの信頼を失ってきたし、風評被害の大本にもなってきた、これが汚染水漏れだったと思っているんです。そのフランジ型タンクはタンクの信頼性が低いということにとどまらず、ずさんなタンク管理で繰り返し起こってきたのが汚染水漏れだったと思うんです。海を汚された漁業関係者、国民の信頼、私は大きく失ってきたものだと思うんですね。この老朽化したフランジ型を汚染された処理水で再び再利用する、これはとんでもないことだと言わざるを得ません。
そこで、規制委員会に確認をさせていただきたい。海側遮水壁を完全に閉じるということがされました。これは汚染水を漏らさないということからとられた措置ではありますが、これ、内側、つまり陸側の水位が上がるということは当然予測されたことで、それが地下水バイパスの水にどんな影響を与えるか。私は、高濃度の汚染も十分予測は可能だったのではないかなと思っています。
その上で、今後、凍土壁を稼働させるということになっていくわけですが、非常に心配なのが、水位のコントロールは本当にできるんだろうかと。高濃度の汚染水がこの凍土壁の利用に伴って外に漏れるリスク、環境に漏れるリスクというのはどう考えているのか。いかがでしょうか、委員長。
○政府特別補佐人(田中俊一君) ただいま先生が御指摘のように、凍土壁を設けるということは、地下水位が、予定どおり機能すれば、下がっていきます。そうすると、今現在溶けた燃料を冷やしている水が、高濃度汚染水になりますが、それが炉内にありまして、そこで逆転現象が起こるという可能性がありますので、そういうことのないようにしつつ水位を下げていくということで、ずっと私どもの監視検討委員会で議論をしてきました。
今先生御指摘のような心配事が起こらないということを確認しつつ、今後、陸側の、陸側というか、の遮水壁から水を止めながら、少しずつ様子を見ながら、水位をコントロールしながら凍土壁の利用を進めていくということで、東京電力と私どもといろいろ議論をしまして、そういう方向で進めることで今合意ができましたので、そういう方向で今後進むものというふうに考えています。
○倉林明子君 東電というのは、なかなか見通しどおりいかないということが繰り返し起こっている。初めてこんな重大事故起こったということで、何もかも初めてな中で全てが見通しどおりにいくということは確かに厳しいんだと思うんですけれども、これ以上汚染水を環境に出すなんということは絶対あってはならないわけで、甘い観測、楽観的な見通しというのは許されないということは重ねて申し上げておきたいと思います。
そこで、大臣に聞きたいと思います。
先ほどの答弁の中で、汚染水問題は順調に進んでいるかのような趣旨の御答弁があったかに聞こえました。私、中長期ロードマップというのは関係閣僚会議で確認されたものだという点は重いと受け止めております。
大臣は所信表明で安全かつ着実に対策を進めると述べておられるわけですが、汚染水に関わる目標、これ大変厳しい、目標を達成できるかどうかは厳しいという状況だと思うわけですが、信頼性の低いフランジ型のタンクを使う、こういう東電の対応については、中長期ロードマップの基本原則から見て、大臣は今どう評価しているんでしょうか。
○国務大臣(林幹雄君) 廃炉・汚染水対策は、世界に前例のない困難な取組でありまして、東電任せにはしないで、国も前面に立って中長期ロードマップにのっとり取り組んでいるところでございます。
フランジ型タンクから溶接型タンクへの置き換えにつきましては、作業安全の観点からタンクの解体作業を慎重に進めているところでございまして、当初の予定に比べて時間を要しているものの、こうした対応は、まさにロードマップの基本原則で明記されております「安全確保を最優先に、」、「計画的なリスク低減を実現」という方針に沿ったものでございます。
今後とも、凍土壁の運用開始など建屋への地下水流入量を抑制する対策を講じるとともに、溶接型タンクの増設を進めまして、できるだけ早期に目標が達成できるよう、引き続き東京電力を指導してまいります。
○倉林明子君 私、福島県民の中でも、前面に立っている経産省の姿が見えないという声を再三お聞きをしてまいりました。本来、担当大臣として、東電に対して本当に、こういうフランジ型を再利用するというようなことはあかんと、きちんと溶接型に切り替えていくというところを厳しくやっぱり指導すべきだと、そうでこそ県民にも姿見えてくるというふうに思いますので、ここは一言申し上げておきたい。
その上で、今後、凍土壁の部分活用が開始されるということで、先ほど慎重にやっていくという姿勢示されましたけれども、建屋内の水位が上昇したという場合、新たに汚染水増えるリスクが私はあるんじゃないかと思うんですけれど、いかがでしょうか。
○政府特別補佐人(田中俊一君) 建屋の水位の方が周りの地下水位より高くなるということのないように、仮にそういう兆候が現れた場合には、注水井戸を設けてありまして、そこから水を入れて地下水位を上げるということも対策として考えておりますので、今先生が御指摘のようなことは決して起こらないように慎重に進める必要があるとは思いますが、一応対策は取れるようになっております。
○倉林明子君 私、地下水のドレーンを使うときも、これは十分水流せる、これで建屋の流入量、処理量も減るという話で進んできたのが、やっぱりうまくいかなかったと。やっぱり想定外のリスクということも十分に踏まえて、汚染水漏れで国民や県民の信頼を失うようなことが絶対あってはならないというふうに思いますので、その点でのリスク対応も含めた十分な措置、対応が求められていることだというふうに指摘をしておきたいと思います。
そこで、先ほども議論ありましたトリチウム水の処理の問題です。
規制委員長は、繰り返し、このトリチウム水について、薄めて海に流すべきだという主張をされているわけです。私、地元漁業者、そして住民、国民の理解はトリチウム水を海に流していいということで合意が得られている段階では決してないというふうに思います。なし崩しに海に流すというようなことは決してやるべきではないと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(林幹雄君) トリチウム水の扱いにつきましては、IAEAからも、海洋放出を含むあらゆる選択肢を検討すべきとの助言をいただいているところでございまして、今、専門家による委員会で様々な選択肢について検討を進めているところでございます。
この扱いをめぐっては、風評被害も懸念されるため、地元関係者の御理解を得ながら、方針決定に向けた取組を丁寧に進めてまいりたいと存じます。また、方針が決定された後においても、国が前面に出てしっかりとその責任を果たしてまいりたいと、このように考えております。
○倉林明子君 県も、世界の英知を結集し前面に立って取り組むよう国に対して求めているとおりだと思います。豊かな漁場を奪われ、何度も汚染水漏れによって実害に苦しんできた人々の思いに真摯に向き合う立場に立っていただきたい、強く要望して、終わります。