倉林明子

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政党助成で政界劣化(国の統治機構に関する調査会 参考人質疑)

 参院「国の統治機構に関する調査会」は17日、「二院制議会における今日の参議院の役割」をテーマに参考人質疑を行いました。

 日本共産党の倉林明子議員は、小選挙区制と政党助成法によって自民党などの党首が小選挙区候補の公認権と選挙資金の配分の権限を手にすることになったとして、これらが日本の政治・政党にもたらした影響について見解を尋ねました。

 筑波大学大学院人文社会科学研究科の岩崎美紀子教授は、政党助成金が政党の離合集散を促している問題点を指摘し、「政界の劣化につながっているのではないか」との考えを示しました。

 早稲田大学政治経済学術院の日野愛郎教授は政党助成金について、欧州の政党政治の歴史的経緯から「正当化できる」としつつも、いまの日本では政党のガバナンス(統治能力)の問題から「必ずしも政策型の民主政治を根付かせることに結びついていない」と指摘。年間約320億円もの支出がどのように使われているのか注視すべきだと述べました。

 倉林氏は小選挙区制について、「憲法が要請する『民意を忠実に執行する内閣』とかけ離れた実態をつくった要因になっている」と強調しました。

議事録を読む(参考人意見)
○会長(山崎力君) 国の統治機構等に関する調査を議題といたします。
 「時代の変化に対応した国の統治機構の在り方」のうち、「二院制議会における今日の参議院の役割」について調査を行うに当たって、本日は「二院制議会における両院の在り方」について参考人から意見を聴取いたします。
 御出席いただいております参考人は、筑波大学大学院人文社会科学研究科教授岩崎美紀子君及び早稲田大学政治経済学術院教授日野愛郎君でございます。
 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多用のところ本調査会に御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 皆様方から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 議事の進め方でございますが、まず岩崎参考人、日野参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただき、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、岩崎参考人からお願いいたします。岩崎参考人。
○参考人(岩崎美紀子君) 本日はこのような機会をいただき、ありがとうございます。
 二院制議会における両院の在り方について、比較政治学の立場から、二院制議会の起源、諸国の二院制議会の比較、その中で見えてくる我が国の二院制議会の特徴について述べたいと思います。
 議会は社会の代表機関であり、立法機関として民主主義体制の根幹を成す統治機構です。現在、世界のほとんどの国には議会があり、そのメンバーを選ぶための選挙が行われています。しかし、議会は初めから現在のような形であったわけではなく、歴史を振り返れば、議会の成立や変化には国により違いがあることが分かります。議会の在り方や議会の構造は体制の変化と連動して変わることも、時間軸を長く取れば明らかになります。
 例えば、スペインはカディス憲法以降数多くの憲法を制定していますが、自由主義勢力が主導する体制では議会は一院制となり、保守勢力が優位であれば二院制となります。
 フランスは一七八九年に全国三部会が百七十五年ぶりに召集されましたが、第三身分を中心に国民の概念をベースとした議会に転換しました。王により召集され立法権も持たない身分別三院制とも言える三部会が、一院制の国民議会に変貌し、この議会が人権憲章を採択、封建的特権の廃止などアンシャンレジームを否定する議決を次々に行います。一七九一年憲法で正式に発足したフランス初の議会は一院制でしたが、一七九五年憲法で二院制になりました。ナポレオン帝政期は人民投票が重視され議会は骨抜きになりましたが、復古王政では議会が復活、二院制でした。フランスは革命からの百年間、王政、共和制、帝政のサイクルを二回繰り返しました。体制変動ごとに憲法が制定、議会の在り方も変化しました。議会の在り方や議会の構造はこのように体制の変化と連動して変わります。
 では、二院制議会は、歴史的に見ればどこにそのルーツを求めることができるのでしょうか。現在まで存続している議会であるという点から、二つのケースを挙げることができます。
 まず、イングランドです。
 議会の起源としては、十三世紀末、エドワード一世が戦費調達の協力を求めるため王国を構成する主要階層から代表を召集したことに求めることができます。議会のルーツは、社会の代表が参集する場であり王の求める財政負担を認める場でもありました。
 議会が確かな機関として定着していくのはエドワード三世の治世で、百年戦争が絡んでいます。フランスへ外征する兵士や資金の調達のために、貴族だけではなく各地域の代表を招喚、それが頻繁に行われました。彼らは貴族とは別の部屋で会合しており、それが庶民院の形成に結び付き、十四世紀後半には貴族院と庶民院の二院制議会が成立しました。貴族とそれ以外という身分制の二院制というより、庶民院は地域の代表という明確な代表原理でした。
 各地域の有力者が庶民院議員としてイングランド全体の議会に集まるのですから、中央、地方関係の要の役割も果たしていました。行政権は王の専管ですが、立法権は王と議会で共有、法案は、議会の二つの議院における審議と可決の後、王の裁可を得て法として成立、公布されるという現在の立法手続の基礎が十五世紀には成立しました。
 イングランドは、清教徒革命により一六四九年から一六六〇年の十一年間共和国となります。王なき政体で、庶民院が最高機関となりました。しかし、護国卿体制に取って代わられました。一六六〇年の王政復古とともに貴族院も復活、以後、王と二院制議会が英国の統治機構の中枢機関となっています。
 アメリカは、議会の起源としては、印紙法への反対を契機とした植民地代表者会議を挙げることができます。
 植民地共通の課題への対応を話し合うために各植民地の代表が参集する場が大陸会議になり、一七七六年七月独立宣言を採択しました。
 独立戦争を経て、一七八三年に独立が承認されたときのアメリカは、各邦が主権を持つ国家連合でした。共通機関として邦の代表で構成される連合会議がありましたが、独立という共通の目標を達成し終わった後は連合会議は共通機関としての求心力を失いました。十三の邦を一つの国として全体を統括するような政府をつくらなければ外交も通商もままならない。一七八七年にフィラデルフィア会議で開かれた会議では、緩やかな連合で邦の主権を維持するか、より堅固な結合を実現させるため一つの国家政府をつくるかという二つの相反する主張をすり合わせていきました。
 当時の政治体制の選択肢としては、国としては権力が王の下に一元化されている専制的単一制かスイスのような小国家連合しかありませんでした。憲法会議の議論の底流にあったのは、全体機関の権力の強化は独立を懸けて戦った英国のような専制の再現とはならないことを明示することでした。専制ではなく共和制を、連合ではなく連邦を、この二つの組合せをいかに制度として設計するかについて議論が展開し、憲法がつくり上げたのは連邦共和国でした。
 連合から連邦に移行することで、各邦の住民は連邦国家の国民となります。連邦共和国の議会が二院制とされたのは、邦を代表する議員と人民を代表する議員という代表制の異なる議院が必要とされたからです。国民代表の会議は人口比例の代表原則を取るため、人口の多い州では選出される議員の数も多くなります。州を代表する上院も、州の人口の多寡を反映すれば、人口の少ない州は連邦議会への代表度が相乗的に低くなります。
 州を代表する議員として上院議員の数は各州同数とすることで決着しました。上院議員は州議会が選ぶとされ、連合時代の連合会議との類似性があります。新規であったのは連邦国家となることで創出されるアメリカ合衆国民の議院としての下院でした。
 このように、イングランドは漸進的に議会が二院制となり、アメリカは第二段階の建国となった連邦憲法により議会二院制を設計しました。二院制議会が成立した背景にはこのような違いがありますが、両国には共通している点が二つあります。一つは、上院が元々の議会の系譜を引いており、下院に相当する議院がつくられたことで二院制となったこと。いま一つは、二つの議院の代表原則の違いです。
 二院制議会では、下院は必ず国民の直接選挙による選出という共通性がありますが、上院については各国様々です。二院制が意味を持つかどうかは上院の在り方によるところが大きいと言えます。
 議会二院制を取る諸国の上院を比較してみたいと思います。議院の規模、定数、議員任期などについてはお手元の資料にございますので、ここでは上院議員の選出方法に着目します。
 主要国の中で上院議員を直接選挙で選出しているのは、アメリカ、イタリア、日本、オーストラリアです。下院は直接選挙なので、選出方法が上下両院で同じになります。そのような中で、上院は下院とどのような違いがあるのでしょうか。
 アメリカの上院議員は、当初は州議会による選出でしたが、一九一三年に憲法修正第十七条により直接選挙になりました。選出方法は下院と同じ直接選挙ですが、建国当初から上院には下院にはない役割を持たせることを憲法で明記しており、上院と下院の違いは明白です。
 イタリアは、第二次世界大戦敗戦後の国民投票により君主制を廃止して共和制へ移行、一九四八年の共和国憲法で上院議員は直接選挙による選出となりました。それまでは王が任命する議員により構成されていました。
 イタリアの二院制議会は、合わせ鏡のように二つの議院は似ています。二院制の存在理由の一つに、どちらか一つの議院が機能することで議会という機関の継続性が確保できるというのがあり、上院にその機能が託されています。上院の方が下院よりも議員任期が長く、輪番的改選制を取ることが多いのも議会としての安定に寄与しています。
 しかし、イタリアの議会はそのようになっていません。任期は共に五年で、上院も下院も解散があります。下院と同様に上院にも不信任権があり、それがイタリア政治の不安定の一因になっています。最近、上院の改革が本格化されました。直接選挙をやめて、地方議員や大都市の市長などで構成される地域代表の議院とし、議員数も三百十五名から百名に縮減するという案です。上院改革には憲法改正が必要ですが、改正案は上下両院で可決されましたので、あとは国民投票で承認されれば、この新たな上院が実現します。
 直接選挙ではありませんが、上院議員となる者は選挙を経ているという観点からは、フランス上院のように地方政治家を選挙人団とする間接選挙のほか、ドイツのように、州議会選挙で勝利し、州の政権を掌握した州政府関係者がメンバーとなる上院もあります。
 上院議員が選挙とは無縁なのが英国とカナダです。
 英国貴族院は選挙で選出される庶民院に対してその権限が弱められましたが、カナダの上院は下院通過法案に対しての拒否権を持ち続けています。カナダとオーストラリアは、共に英国の政治原理である立憲君主制、議院内閣制を踏襲しながら連邦国家を成立させるという共通点を持ちながら、上院については、カナダは任命制の上院、オーストラリアは直接選挙による上院と対照的な設計をしています。国家建設に当たって、それまでの歴史や政治文化の違いが上院の在り方に映し出されたことが分かります。
 二院制を法が成立するためには二つの議院の可決が必要な議会と定義すると、上院の可決がなくとも下院再可決で法が成立する下院再議決制度があること自体、上院の立法権限の制約、下院の優越が組み込まれていることになります。イタリア、カナダ、オーストラリアにはこの制度はなく、上院の可決を得られなければ法は成立しません。ドイツは、連邦参議院の可決がなければ法が成立しない同意法案と、下院の再議決により法が成立する一般法案の二つのカテゴリーがあります。議院内閣制諸国の上院を比較すると、強い方から順にイタリア、カナダ、オーストラリア、ドイツ、日本、イギリス、スペインと並べることができます。
 議会は一院でも議会なのですから、二院制議会を選択するのは、第一院とは異なる第二院のイメージがあるからです。イメージは役割と言い換えることができます。役割というのは責任であり、責務でもあります。上院がその役割を果たすことができるようなメンバーを選ぶ、このロジックが明確なのがカナダです。
 カナダは、建国時、二院制議会の設計において二つの議院の補完関係を基本としました。下院は選挙によるので、上院も選挙とすれば二つの議院は競合することになります。上院は冷静な第二の考えを持つ議院として下院を補完する。冷静な第二の考えとは熟慮です。政党の影響下にある下院とは距離を置き、中長期的視野で立法化が必要な案件を調査、審議したり、下院通過法案を国家的、国民的、大局的な観点から再検討する熟慮が上院の役割です。この役割を果たすには、メンバーの識見や専門性、中立性、独立性が不可欠です。このような上院メンバーを得るために、任期を定めない任命制としました。議院の役割がメンバーの選出方法を決めたと言えます。
 カナダの上院は、一八六七年に誕生して以来、連邦を構成する州の増加に応じて議員定数が増えたこと、議員終身制が七十五歳定年制となったこと以外変わっていません。このような上院を非民主的として、前保守党政権は、上院議員の任期の設定、州民による選挙の実施などを柱とする上院改革を掲げました。しかし、上院の役割についてはビジョンがありませんでした。二院制議会第二院の存在意義を第一院との補完関係から規定する第二院の役割に求めるのか、議員の選出方法と任期だけで判断するのか。カナダ社会は、任命制、七十五歳定年制の議員で組織される上院は時代遅れとの認識はあります。しかし、だからといって州民による選挙で上院議員を選ぶべきと思っているわけでもありません。上院が政府・与党の過熱法案を冷静に審議するという役割を果たすことが重要なのです。
 カナダの事例が示唆するのは、上院の役割がメンバーの選び方を規定するのであり、選び方の変更は役割に重大な影響を与えるということです。参議院が良識の府としての役割を持つのであれば、中立性、独立性が必要です。政権をめぐる権力闘争の主戦場である衆議院の党派政治からは距離を置ける、そのようなメンバーで構成されなければこの役割を果たすことは難しいと考えます。
 諸国の二院制議会との比較から、我が国の二院制議会の特徴が見えてきます。
 日本は、戦後憲法により参議院が創設、直接選挙により議員が選出される上院となりました。日本の問題は、上院と下院の違いが見えにくいことです。憲法第四十二条は「国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。」としていますが、第四十三条では「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」と規定しています。二院制議会諸国の中で、二つの議院の代表原則も選出方法も同じであることを憲法で明記しているのは日本だけです。同じであるなら一院制でもいいではないかと思われるのは無理はありません。
 二つの議院を憲法条項で探すならば、議員任期です。第四十五条で衆議院の議員の任期、第四十六条で参議院議員の任期とそれぞれ条項を立てていますが、憲法第四章の国会に関する多くの条項は、その主語が「両議院は、」となっています。これは、戦後、連合国最高司令部から示された憲法草案では議会は一院制であり、日本側が二院制に押し戻したという経緯を示唆するものでもあります。
 一九四六年三月六日に公表された日本政府の憲法改正案では、両議院は国民により選挙され全国民を代表する議員をもってこれを組織するとなっておりますので、ほぼそのまま憲法規定になったことが分かります。憲法改正案は六月二十五日に帝国議会に上程され、衆議院での修正、貴族院での修正を経て十月七日に議会審議を終えましたが、この条項については変わっていません。
 憲法でこのように決められた以上、二つの議院の違いをどのように出すのか。憲法は、両議院の議員定数、両議院の議員選挙人の資格、両議院の議員の選挙に関する事項については法律に委任しているので、二院制の議会の設計は立法に託されたことになります。
 衆議院は、戦前戦後継続している議院ですので、廃止される貴族院に代わる上院としての参議院の設計が焦点になります。憲法が公布された後施行されるまでの間に、選挙で選出されることになった上院の具体的内容を決め、実際に選挙を行い、議員を選出しなければなりません。参議院議員選挙法案を審議した帝国議会の議事録から分かるのは、参議院を衆議院とは異なるものとするためにされたのは、被選挙人の年齢と選挙の構成でした。選挙の構成とは、都道府県の区域を選挙区とする選挙と、全国を一つの選挙区とする選挙の二本立てとすることです。衆議院との違いを出すため選挙法で設定した二種類の選挙区で、都道府県選挙区選出議員には地域代表、全国区選出議員には職能代表の性格を持たせました。政党から距離を置く議員で構成されることが衆議院との違いであるとの認識もありました。
 二院制議会諸国では、下院は国民代表原則であることは共通していますが、上院はそれぞれです。普通選挙制度が定着した中では、国民代表原則の下院は代議士が代表する国民の数が同じであることが基本となり、一票の較差が問題となります。現実には地理的理由や歴史的経緯などで全く同じとなるわけではありませんが、この基本は尊重されています。しかし、上院については一票の較差の問題は生じません。
 例えばアメリカは、下院については代表の公正さに対しては厳格に対応しますが、上院は各州二名で人口の多寡に左右されないことが基本です。しかし、日本では両議院とも一票の較差訴訟の対象になっています。しかも、最初の訴訟は参議院議員選挙に対してでした。一票の較差訴訟とは、憲法第十四条の観点から投票価値の較差を問題とする選挙無効訴訟です。憲法は選挙については法律に委任しているので裁判所は立法府の裁量を認めていますが、国会が較差是正に真剣に取り組まなければ違憲判決が出る確率は高くなると思います。
 参議院については、較差が五倍程度であれば合憲と判断されてきました。参議院には地域代表的性格があるということからでした。しかし、二〇一二年以降、最高裁の姿勢は厳しくなり、違憲状態の判決が続いています。地域代表的性格の根拠は、参議院議員選挙法案の政府説明にしかありません。投票価値の平等をめぐる訴訟が憲法にその根拠を持つ以上、立法趣旨に依拠することはもうできなくなりました。
 国会は国権の最高機関で唯一の立法機関です。その国会を構成するのが違憲状態で選出された議員では、法治国家の根幹が揺らぐことになります。
 二院制議会における参議院の在り方を根本から考えるのであれば、一票の較差訴訟に翻弄されない落ち着きがまず必要です。衆議院は一票の較差問題から逃れることはできませんが、参議院は、諸国の上院がそうであるように、国民代表原則とは異なる代表原則であればこの問題の外に位置することができます。
 最初に申し上げましたように、二院制議会の歴史的起源は代表原則の違いにあります。日本の二院制議会の問題は二つの議院の代表原則が同じであることです。参議院は衆議院とは異なる代表原則で組織できなければ、第二院としての存在意義が問われ続けることになります。第二院の代表原則として多くの国が採用しているのが地域代表原則です。国は領土とそこに住む人々によって形成され、領土は幾つかの地域から構成されます。国の議会への国民の参加と地域の参加は、国家と社会の関係を二重に保障します。
 国民代表原則である下院は、一票の較差是正のために人口比例的に議席配分をしなければならず、人口の多い都市圏の議員が多くなります。自然が濃く残り、森林、田園が多い地方圏は、国土の観点からも水や食料といった生存基盤の観点からも重要であるのに、送れる議員の数は少なくなります。単一制は立法権が国の議会に一元化されている政治制度なので、国の議会で都市圏の議員が多くなればなるほど地方の利益は立法に反映されにくくなります。
 第二院が地域代表原則を取れば、人口の多寡に左右されず議員を送れます。国土を形成する数千キロに及ぶ列島の全国津々浦々からの議員が第二院に集まることで、第一院と相互補完的な議院になります。国民代表原則と地域代表原則が国の議会においてセットになり、二院制議会を構成することが単一制においてこそ不可欠だと考えます。地方創生など施策レベルにとどめずに、地域の重要性を立法レベル、憲法レベルに昇華させることが日本の基礎体力の強化になるのではないでしょうか。
 参議院の代表原則を地域代表とすることは、一票の較差問題、都市と地方の代表制の問題など、多くの問題への解となります。このためには、憲法四十三条の改正が必要です。第四十三条は、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」と規定しています。この両議院を衆議院に変え、これを組織するの前に、参議院は、地域を代表する議員でを入れます。これで、代表原則と選出方法が同じという二院制議会の否定とも言える根本が変わります。戦後、憲法制定プロセスにおいて第二院を設計し切れなかったことに原因があるのですから、ここに立ち返らなければならないと思います。
 私からは以上です。

○会長(山崎力君) ありがとうございました。
 次に、日野参考人にお願いいたします。日野参考人。

○参考人(日野愛郎君) この度は、国の統治機構に関する調査会という重要な会にお招きいただきまして、大変光栄に存じております。
 私がいただきましたテーマは、二院制議会における両院の在り方、そして衆参両院の在り方を踏まえた選挙制度でございます。望ましい選挙制度を論じることは大変難しいことでございまして、ましてや選挙を熟知されている先生方の前でお話しすると、何か参考になることを申し上げられるかは大変不安ではありますが、せっかくの機会ですので少し考えてきたことをお話しさせていただきます。
 一般に選挙制度を論じる際に、例えば一票の較差でありますとか、得票と議席はどの程度比例しているか、こういう比例性の基準といったような様々な基準があります。ただ、一票の較差等々の問題ですけれども、その国の実情によって、そして両院の位置付けによってそれらの基準をどう評価するかということ自体が変わってくるかと思います。
 したがいまして、本日のお話としまして、まずは両院の位置付けについてお話をした上で、初めてその後に望ましい選挙制度という順で、二段構成でお話を進めてまいります。お配りしておりますレジュメに沿ってお話を進めてまいります。
 まず、衆参両院の在り方でございますが、これは御案内のとおりですけれども、憲法には衆議院の優越の根拠となる条項がございます。レジュメにも挙げていますが、三分の二以上の多数で再可決ができるという憲法第五十九条二項から始まって、予算先議権は衆院にある、六十条ですけれども、さらに二項では、参院において議決がない場合には三十日の自然成立という条項がございます。これは六十一条の条約の承認に関しても同じことが当てはまります。このように法案に関する衆院の優越というものがまず規定されていると。
 さらには、内閣総理大臣の指名、これは六十七条二項ですけれども、十日以内に参議院で指名の議決がないときというのは、これは衆院の議決が当てはまるという条項もありますし、不信任案の決議に関して、これは六十九条ですけれども、衆議院にしかこれは認められていないということで、法案、内閣総理大臣の指名、いずれにおいてもこれは衆議院の優越が前提となっているというふうに考えられるわけです。
 一方、参議院の特徴に参りますが、参議院の特徴は、これは委員会制度が充実しているということであります。具体的には、次の三つの活動、決算、行政監視、調査会に象徴されているものですけれども、決算委員会の活動、これは国会法の第四十一条三項十四号で規定されている内容でございますが、御案内のとおり、参議院は衆議院に先んじて決算の早期提出並びに審査の充実に取り組んできました。これは歴代議長の下での参議院改革協議会を中心に積み重ねられてきた参議院の独自性であると思われます。
 実際に、二〇〇三年以降ですけれども、例外はありますけれども、従来の翌年の一月に提出されていた決算というのが、原則として同年の十一月に提出ということが実現しております。その年度が終わって、その同じ年に決算が提出されるようになったのは、このような参議院独自の取組の下での、今あるものはその成果によってあることだというふうに認識しております。
 順番、先に調査会の存在についてお話をしますけれども、調査会の先生方を前にして言うまでもありませんが、これも参議院の改革協議会の提言によって一九八六年に新設されたものです。これまで三年置きにずっと重ねられてきたことですけれども、調査会を基に、例えば高齢社会対策基本法案、これは九五年に成立しているものですが、等々三本の法律案が実際に提出され成立に至っているという経緯がございます。
 同じように、これも調査会の第四期のものであったと記憶しておりますが、その中間報告によって行政監視委員会というものを設置するということで、国会法が改正されて実際に、一九九八年以来、行政監視委員会というものが設置されていると。これらの参議院の特徴は、いずれも委員会制度が充実しているということを表しているというふうに思われます。
 以上の点を踏まえまして、少し衆参両院の在り方ということを整理しておきたいと思います。
 まず、衆議院というのは、これは内閣総理大臣の指名ですとか、予算審議において参議院に優越している、これは憲法の規定上読み取れるところ、理解できるところであります。したがって、衆議院というのは、内閣を構成し、国を運営していくということを主眼に置いた院であると言えます。与党、野党に分かれて、どちらが国政を担うのかということを争う対決型の院として捉え直すことができると思います。当然のことながら、解散がありますので、国会活動は政局にも大きく左右されるところでございます。
 一方、参議院は、解散がなく、半期三年、任期六年をベースに個別の政策にじっくり取り組むことができる。調査会などの独自の委員会制度もございますし、省庁の縦割りではなく、テーマごとに機動的な法案策定ということに取り組むことができる院でもある。また、参議院においては、法案提出における会派の機関承認が必要ないという点においても、自由に立法活動ができる環境にあるというふうに理解できると思います。
 少しこれは政治学的な言葉になりますけれども、これは先週の調査会において飯尾先生も使っていたので大丈夫だと思って使うところでございますが、衆議院は、いわゆる対決型の、これアリーナ型というふうに言いますけれども、与野党が闘技場で対決し合っているようなイメージですが、アリーナ型の院であるというふうに考えられます。どちらが内閣を担うのか、政権を担うのかということを対決し合う、そういうアリーナ型の院である。
 一方で、参議院は、これは政策立案型といいましょうか合意型といいましょうか、変換型議会という類型の名前で言われていますけれども、社会のニーズをどのように法案に変換していくか、超党派であったり、修正を重ねて最終的に法案を練っていくという、そういう変換型の院であるというふうにも捉えることができると思います。
 よくこれはイギリスがアリーナ型でアメリカが変換型というふうに言われるんですけれども、アメリカが変換型議会であり得る背景としては、行政府を担う大統領の存在があります。立法府とは別に行政府を担う大統領がいると。一方、日本では議院内閣制を採用しておりますので、イギリスと同じようにアリーナ型として立法府と行政府が融合している、こういう政治体制を取っているわけです。
 したがって、参議院の政策立案機能というものを重視することによって、二院制の下で立法府としての機能を補完していくということも一つの道筋であろうというふうに思われます。衆議院の方が政権を担うという意味ではアリーナ型であり、それゆえ多少立法機能活動が制限される、解散もありますし政局にも左右され得るということを考えると、解散がない参議院というのは、その意味において、立法機能を更に今まで以上に重視していくということが一つの道筋として考えられるだろうということであります。
 その点でいうと、予算の先議権、これ衆議院にあるわけですけれども、決算は参議院を中心にという役割分担も、これは両院の二院制の下で捉え直すことができるのではないかと思います。両院というのは言わば抑制と補完の関係にありまして、衆議院がアクセルであれば参議院がブレーキという、そういった補完関係にもあるというふうに捉えられるかと思います。
 三として衆参の在り方の明確化ということで、議決不一致時の対応でありますとか、行政監視機能、政策立案機能の充実若しくは参院先議の可能性、それから内閣総理大臣の指名や問責決議について記しておりますけれども、これはちょっと時間の関係で、後に時間が許せば少し丁寧にお話しさせていただければと思います。
 続きまして、今の両院の、衆参の在り方を踏まえて、では、衆議院、参議院でどのような選挙制度が望ましいのか、これ大変難しい問題ではございますが、今の話を前提に少し更に話を進めていきたいと思います。
 まず、衆議院の選挙制度でございますが、これは内閣を構成するための選挙、いわゆる政権選択選挙であるということが考えられますので、政党本位の選挙制度が望ましいであろうと。これは、言うまでもなく一九九四年の政治改革関連法案によって実現してきた選挙制度でありますが、これは事前にお配りさせていただきました参考資料にも書いてあることでございますけれども、その後二十年たって、様々な実証研究というものが積み重ねられてきています。
 その実証研究の成果を、これは様々な先生が積み重ねてきたものをまとめたものですけれども、その知見として明らかになっていることを少しまとめてみますと、これは、選挙の後に必ず、明るい選挙推進協会によって全国調査、世論調査を行っているものを見ていくと、投票の基準として、政党を重く見て投票したか、候補者を重く見て投票したかということを毎回聞いております。グラフを見ていくと、政党を重く見て投票を決めたという有権者が、やはり一九九六年の改革以降現在に至るまで一〇%から二〇%増加しているということが明らかになっております。
 そして、投票行動の分析を見ますと、候補者の要因というものは、これ依然として一定の影響力を持っているわけではありますが、その影響力は相対的にですけれども低下しつつあると。一方で、政党評価の影響力というものが増加する傾向にあり、そして、政策投票とか争点投票と言いますけれども、そのような影響力は必ずしも増加しているとは言えないと。
 選挙制度改革は、政策本意、政党本位ということで言ってきましたので、政党本位という面では一定程度成果が実際に実証的に見てもあったのではないかということが言えると思いますが、必ずしも政策投票、政策本位に本当の意味でなっているかというところは実証分析の結果から確たることは言えないという状況かと思います。
 一方で、議員の部会の出席ですとか委員会の発言というものを全てこれ統計的に比較をしていきますと、実際に選挙制度改革以前よりも以降の方が立法活動は活性化しているということもデータによって裏付けられています。その意味においては、政策重視ということが以前よりは少し強まっているということは実証研究の中では言われております。一定程度、その意味においては、選挙制度改革がもくろんだものが、実際に現時点においてある程度は達成しているというふうに見る向きもあろうかと思います。
 政権選択を可能とする選挙制度というと、これはまさに、小選挙区制ということはその一つで今なされてきたわけですし、小選挙区比例代表並立制という形でなされてきたわけですけれども、実際に政権交代がこれ二度実現していますので、言うまでもなく、その意味においては政権交代が可能な選挙制度であると言うことはできるかと思います。
 ただ、小選挙区制度というのは、理想としてはやはり二大政党制の下で運用されるのが望ましい、これはかねてから言われてきていることでございますが。日本が二大政党化するかどうかということを、実際にこれは政党数といいますか政党の数と政党の規模を加味した指標がありまして、それを見ていくと、九三年のときは、これは有効政党数と呼んでいるものですけれども、四以上ありました。これが、現在は二から二・五の間に落ちてきています。その意味においては政党の数は減っている。しかしながら、皆さん御存じのとおり二党制にはなっていないわけでありまして、現在の日本は多党制であると。
 そのような状況の下で小選挙区を行うとどういうことが起こるかと。これは心理的な効果ということでよく言われるところでありますけれども、心理的効果というのは、まずは政党、政治家に対しての選挙制度、小選挙区が持っている効果というものがあります。それはまさに候補者調整でありまして、小選挙区においては候補者調整をしないと中小政党は議席を取ることができないということがありますので、候補者調整が必要になると。そうすると有権者の選択肢が狭められる。これは、選挙区によっては、例えば自民党、公明党、若しくは前回の選挙であれば民主党と維新の党といったような形で候補者調整が行われてきたと思いますけれども、自分の支持する政党の候補者が自分の選挙区で立候補していないというような状況、これは有権者の選択肢が狭められていると。
 有権者に対しての心理的な効果でいうと、今お話ししたように一定程度死票が出ますので、一般的には満足感そして投票率が低下するというふうに言われています。私も、世界各国、いろんな国で選挙制度がありますので、多数代表制と比例代表制、投票率比べてみたことがあるんですけれども、多数代表制三百九の選挙、これは二〇一三年の段階ですけれども、投票率の平均が六九・五%、これは義務投票制などは除いたものですけれども、であるのに対して、比例代表制は三百六十二選挙の平均が七三・二%と、三、四%程度比例代表制の方が投票率は高くなっているという状況にあります。
 ヨーロッパの世論調査データで、これは国際比較ができるようなしっかりとした世論調査データで、三万以上のサンプルを基に、民主主義、これは選挙制度ではなくてデモクラシー、民主主義に対する満足度ということで、十点満点で聞いておりますけれども、多数代表制の諸国は四・六七、比例代表制諸国が五・二九と、統計的にも満足度が高いという結果が出ています。
 それでは、比例代表制の下で政権交代可能な選挙制度はないのかという疑問につながるわけですが、これは日本と同様の時期である一九九三年に比例代表並立制に移行したイタリアの例が少し参考になるかと思います。
 ほぼ同じ時期に小選挙区比例代表並立制を導入したイタリアですけれども、二〇〇五年に制度変更していまして、プレミアム付き、まずは小選挙区を廃止して比例代表制にしました。比例代表制というのは、かねてより、投票が終わってみないとどの政党とどの政党が連立を組むか分からないという意味においてアカウンタビリティーがないというようなことが批判としてあったかと思いますが、それをある種、その問題点を解決するという意図であると私は理解しておりますけれども、プレミアム付きの比例代表制というものを導入しました。
 これは、比例代表選挙の結果、第一党が過半数に満たない場合は、六百十七議席ある中で三百四十議席まで議席を与えると。これは五五%強の議席率になるわけですけれども、必ずしも、五五%以上を第一党が取っていればそのままもちろん取りますけれども、満たない場合は一定程度安定した政権運営ができる五五%を自動的に与えるという制度を導入しました。選挙戦の前に事前にこれは左右の陣営に分かれて、将来というか、その選挙後の首相候補を決めた上で選挙戦を戦うと。これも選挙法に定められたところでありますけれども、そのような選挙制度に移行しました。
 そうすると、事前の連立協定ということが必要になってくるわけですが、これも事前にお届けしました私の過去に書いたもので少し述べているところでもありますが、事前に連立協定をやはり、政策協定ですね、しっかりとすり合わせをしておくことが重要になってくるということにもつながってまいります。
 なぜ五五%なのかというところに明確な根拠がないということで、これ違憲判決をイタリアでは受けまして、その後、今また別の選挙制度ということになっているわけですけれども、これは必ずしも、プレミアム付きが変更したというよりも、実際に、これ二〇一三年であったと記憶しておりますが、三つぐらいのある意味コアリション、連立が出てきた場合に完全に五五%を与えられないというような状況が出てきたという政治的な要因もありまして、今、三七%以上を取っていないともう一回、二回投票制をするというようなことで改められているというふうに理解しておりますが、そのような選挙制度が例えばあると。
 ギリシャでも、これは三百議席中の五十議席が多数派のボーナスとして与えられるというようなことでプレミアム付きということがなされています。これは、一つの試みとしては、比例代表制の下で政権交代が可能な選挙制度ということなのであろうというふうに思います。
 一方で、イタリアでは小選挙区制が廃止されていますので、日本の実情に合わせて考えると、ドイツの併用制のような、小選挙区は残しておいて、小選挙区の得票の度合い、小選挙区の結果を、最終的に比例代表の議席配分の後に誰が議席を得るのかというときに小選挙区の結果を生かすというようなことも組み合わせて考えることも可能かと思います。
 総じて、日本が今後二大政党化するのであれば、これは現行の小選挙区がよいと思われますが、多党制の状況が続くようであれば、政権交代可能な比例代表制を模索するということも一案かと思われます。
 続きまして、参議院の選挙制度に話を移してまいりますが、これは、先ほどの両院の在り方を踏まえますと、立法府を構成するための選挙でありますので、いわゆる政権を監視するという役割もありますし、政策立案選挙であるということが言えると思います。
 そうしますと、望ましい選挙制度というのはやはり人物本位の選挙制度。これは、二〇〇〇年に可決した非拘束名簿式の比例代表制、二〇〇一年の参議院選から実際に実施されているものというのはこのような意図、背景があって導入されたものというふうに理解しておりますけれども、政策立案を促す選挙制度というのはどういうものがあるかということで考えていくと、一つは人物本位、比例代表制の下で人物本位というと非拘束名簿式で現行のものをということになるわけでありますが、その中で、一方で、やはり政党の判断で、政策能力がたけている、政策立案能力が高く、そのような活動をされてきている人を、例えば政党の判断で拘束名簿式としてそのような候補者を上位に付けるということもできるような選挙制度、これは私は変動型拘束名簿式というふうに呼んでいるんですけれども、変動型の拘束名簿式の比例代表制。これはベルギーが参考になると思われまして、どういうことをやっているかといいますと、まずは政党のクローズドリスト、拘束名簿式のリストがあります。有権者は、政党に丸をするか、そのリストに掲げられている候補者に丸をするか、日本の今の現在の比例代表制、参議院のものと似たようなものですけれども、その得票が多かった人に関しては順位を上げることができる、こういう意味で変動型の拘束名簿式選挙制度というものがあります。
 これは、選挙区における当該政党の得票を獲得議席プラス一で割ったもの、これは当選基数と呼びますけれども、それに達した候補者は自動的に当選すると。達していない場合は、その政党の得票から順に足していって、その当選基数満たした人が当選するというようなことをやっています。政党の得票がなくなった場合は、単純に票数の多い人から当選するというようなことでやっていまして、基本的には政党のその順位順になるんですけれども、やはり有権者によって、この人は当選させたいということで票が十分集まった人に関してはその順位を変えて当選することは可能であると、ある種の折衷案でありますけれども、そういうことが一九一九年よりずっと行われてきています。
 政党じゃなくても、この場合、個人でも比例代表選挙に立候補することができるような仕組みづくり、これは一定の政策目的を持った候補者であるとか、一定の運動を重ねてきていて一人でもそういう意味では立候補できると、全国規模の得票を基に当選することができるような可能な仕組みも必要になると思われますし、全体としてこれはメディアの取組も含まれると思うんですけれども、法案を議員立法等で通していくという活動をしっかりと認知していくと、そういう取組も必要であろうというふうに思います。
 例えば、法案の提出者の名前、これはアメリカなんかは名前が法案に付いていますけれども、非公式にでもメディア等でそういうものを使うでありますとか、選挙公報等の選挙キャンペーンのときに、どういう立法をしてきたのか、なかなか一人のお名前を挙げるということは難しいかと思いますが、そういう取組をやはり可視化していくということも、参院の特徴といいますか政策立案を重視した選挙、議院、ハウスの院としての意義を出す上では必要かもしれません。
 一方で、選挙区選挙をどうするかと、この問題は難しいところがありまして、定数は今都道府県で異なっていますので、政党間連合の在り方が都道府県によって異なっているという問題があります。これは憲法の問題もあるかもしれませんが、都道府県ごとに一定の地域代表も視野に入れる、アメリカ、ドイツ等、岩崎先生のお話にもありましたが、そのようなことも一つの視野に入ってくる点かというふうに思います。あるいは、国民代表という点で、これは憲法上の問題はあるかもしれませんが、世代代表制というような議論があることも承知はしております。
 総じて、選挙制度の優劣を付けるということは大変難しいことでございますけれども、参議院に関しては政策立案を促すような選挙制度が望ましいと考えているということを申し添えて、私の意見陳述を終えさせていただきます。
 ありがとうございました。

議事録を読む(参考人質疑)
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 今日は、両参考人に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
 まず最初に、岩崎参考人にお聞きしたいと思うんですけれども、各国の議会の歴史や事情にも通じておられるということで、女性が参政権を獲得して日本で七十年ということになるわけですけれども、いまだに日本の国会議員の女性比率というのは極めて国際的に最下位のクラスになっているという状況がありまして、参考人、女性として今日おいでいただいているということで、女性として参考人の問題意識というのをお聞かせいただきたいなと思います。

○参考人(岩崎美紀子君) 女性として来ているのかどうかはちょっと、女性ですからそうなのかなと今すごく悩みながら、どう答えていいものかと思っておりますけれども、事実の面からお答えしたいと思います。
 諸国に比べて国会議員の中で女性議員の占める割合は日本が低いというのは事実であります。よく引き合いに出されますのが北欧諸国ですとか、それからカナダも多いんですけれども、フランスも多いですよね。この場合に、北欧諸国が多いのは、比例代表制を取るときに、比例代表制の名簿に、フランスはパリテ法も作ったんですけれども、名簿の順位、名簿に女性、男性、女性、男性というふうに同じような人数になるようにするというふうに、それを法律で決めました。
 これはどうするかということなんですが、女性議員をどうしても増やしたいというのが国会の意思であるのなら、それを法律で書く、それは、比例代表制を取る場合の名簿のリストに男女同数の候補者名を書くというふうに、それを法律で規定することによって強制をする。フランスのパリテ法がそうだったんですけれども、それは余りにも行き過ぎではないかというふうなことで、そうならない場合には政党は一種の、罰金じゃないですね、それを払って変えることができるというふうになっています。
 ですから、申し上げたいことは、クオータ制を取ってまで女性議員を増やすことを考えるのか、それとももう少し違う角度から女性議員が増えるようにするのかということがあると思います。私は、無理やり増やすということが果たしていいのか悪いのかということは少し考えるところがあります。
 もちろん、女性議員が増えることは重要だと思っています。なぜかと申しますと、生活実感があるのはやっぱり女性議員の方だと思います。男性議員の方々が生活実感がないというふうに申し上げているのではありませんけれども、例えば台所を預かるとか子育てをするとかそういうことが、女性がやっていくのであればそのいろんな問題を反映できるという意味で、生活実感があるので、そういう生きた生活のヒューマンな政策ができる可能性は高まるかなというふうな気もしています。

○倉林明子君 女性議員を増やすということは重要だということで共感できるものだなと思いました。
 改めて、今日のテーマとの関係で、やっぱり選挙制度の問題含めて、九四年の政治改革関連法がこの間の政治に与えた影響というのはすごく大きかったなというふうに思っているわけですね。
 そこで、両参考人に議会制民主主義の実現という観点からお伺いしたいと思うんですけれども、小選挙区制がまずもたらした影響をどうお考えかということで、二〇一四年の二月に行われた本調査会に野中廣務元自民党の内閣官房長官おいでになりました。そこで、ここ数年の政治の実態は、憲法が規定し、期待するものと相当に異なったことが平然として行われていると懸念を表明されて、与党での議論と国会での野党の議論が形骸化していけば議会制民主主義は機能不全となると、今日相当危険な状態、事態ではないかと繰り返し心配を表明されたわけです。
 その後、集団的自衛権の行使容認の閣議決定がされる、圧倒的な民意の反対があったにもかかわらず安全保障関連法が強行されるということが起こっております。私は、憲法が要請する民意を忠実に執行する内閣、これと懸け離れた要因、今の実態がそうなっているんじゃないかという御指摘もあるとおりで、こういう実態をつくってきた要因の一つに小選挙区制が挙げられるんじゃないかという思いを持っておりますが、両参考人の見解を伺いたいと思います。

○参考人(日野愛郎君) 御質問ありがとうございました。
 議会制民主主義を達成する上で小選挙区制を導入したと、こういう経緯であったわけですし、それから二十数年がたち、総括をする時期であるという認識も私も共感するところであります。
 様々な問題点がこの間出てきたことも認識を共有するところでありますけれども、それが選挙制度に帰するものなのかという点で、そこは完全に切って論じることはできないかもしれないですけれども、私は、様々な問題というのは、これはやはり選挙制度というよりも、政党のガバナンスに起因する問題が多くあるんであろうと考えています。
 すなわち、一九九四年に至るまでの一連の政治改革に関する議論の中で、政党も同じようにその中で、関連法案、一括法案の中の一つは政党助成法だったわけですけれども、政党が法人格として認知されたということで、その中に、政党本位の選挙と先ほども話をしていた中で、政党ということは重要な一つの、デモクラシーを、民主主義を一つ成立させるための核であるという認識はあったわけですけれども、やはりそのガバナンスの問題ということはまだまだできることが多くあるんだろうというふうに思います。
 例えば政治資金の問題もありますし、政党の中でどのように政策を練り上げていくのか、そのプロセス、例えば一つマニフェストを取っても、どのように練り上げていくのか。どのような制度、政党の中のガバナンスとして、これはヨーロッパには様々な試みが長年なされてきていますけれども、党員も含めて、何年か掛けてマニフェストを作っていくということもありますし、一度それを党大会等で承認した後はそれに縛られるという認識の下で党員といいますか代議士も行動すると。そのようなやはりガバナンスがあったと思いますし、ファイナンスの面でもガバナンスはまだまだ行き届いていないところが、私が申し上げるのは僣越ですけれども、外から見ていて思うところはあるところです。
 また、選挙制度であるかどうかということは、正直、小選挙区制というのは、先ほどちょっと私の話にもあった、様々な実証的に見てそれなりの成果があったと、小選挙区比例代表制の後の様々な政策活動に関してもそうですし、投票行動に関してもそうですし、内閣に関してもそうですし、様々な面で見て一定の成果があったという、ある程度の実証研究の下でのことは言えると思っていますので、政党ガバナンスについてもう少し考えてはどうかなということが個人的な意見でございます。

○参考人(岩崎美紀子君) 小選挙区制と議会制民主主義の関係だと思うのですが、小選挙区制が議会制民主主義を形骸化しているということは、それは理論的にはないと思います。もしもそうだとすると、英国やカナダは全くのいわゆる単純小選挙区制という言葉で語られるような選挙区制です。そこでウエストミンスターモデルと言われているような政権交代が起こり、二大政党制が起こり、そして有権者の選択肢がありということなので、議会制民主主義がより反映されている、より強化されている、強化というか、より展開されているというふうに考えます。
 では、日本の問題は何かというふうに考えますと、それは、小選挙区制が機能するためには強い野党の存在が必要で、与党は常に緊張感を持って政権を運営するということが重要になります。その強い野党の存在というのは、与党の中の一体化も進めるし、それからいつ政権が奪われるかも分からないというふうに考えるし、かつ、野党を支持している方々のいろんな考え方にも配慮することになります。
 つまり、自分のところに投票した人たちだけのことを考えて、そしてそれを国民の民意と称して政治を展開するというのはそれは傲慢そのものでありまして、そうではなくて、自分のところに投票されていない人たちのところを考えながら、かつ、緊張感を持って国政を運営するということが重要なのであって、それは、日野先生がおっしゃったように、政党のガバナンスにも随分関わってくることだと思います。
 選挙制度を変えたからといって変わるものか、それとも選挙制度を動かす政党の問題なのかというのは分けて考えるべきだし、そして併せて考えるべきだと思っています。

○倉林明子君 小選挙区制だけではない、今起こっている事案について、一つの要因として挙げられるんじゃないかと思っているわけですね。
 そこで、小選挙区制の導入に野党として合意した当時の河野洋平氏が新聞等に再々登場して発言されているんですけれども、二月十四日にも、この間登場されていまして、小選挙区制は政治劣化を招いたとの指摘もあって責任を感じていると言われた上で、見直した方がいいというふうに述べておられるということは注目すべきだなと思って見ておりました。同時に、日野参考人からも御指摘あったように、ガバナンスの点で政党助成金についても付言されております。同時に、河野洋平氏は、政治献金絡みの疑惑が出て政治不信が高まっているとした上で、政治資金に関わる制度も改革してもらいたい、これはおっしゃるとおりじゃないかと思うわけです。
 そこで、最後にお聞きしたいのは、両参考人にお聞きしますが、この政党交付金が日本の政治、政党に何をもたらしたのかという影響なんですね。政治改革関連法で、与党の党首ということでいうと、小選挙区制では候補者の公認権を得たと、さらに、政党交付金で選挙資金も含めて配分の権限が集中すると、こういうことになったんだと思うんですね。
 政党交付金による日本の政治、政党の変化という点で見てどうかということをお聞かせいただきたい。

○参考人(岩崎美紀子君) 私は、政党交付金と日本の政治について、政治というか、考えることは、政党交付金が政党の再編というか離散集合といいますか、それを促進しているということが大きいのかなと思います。年末になったら何かちょっと永田町が騒がしくなるのはそういうことだということも何か聞き及んでおりますけれども、実態はどうか分かりませんけれども、国民の目から見て何でというのが、その政党助成金を受けるための要件を満たすためにということがあるのかなというふうに思っています。
 政党交付金は、国民がたしか一人二百五十円でしたか、それで交付されているもの、いわゆる公の資金なのですが、国民の理解はまだちょっとそこは足りないのかなというふうに思っています。自分たちのお金がそういうふうに使われていて、パイの取り合いみたいなことに使われていて、かつ、それが政界の劣化につながっているのではないかというふうに考えておりますので、国民は自分のお金がどのように使われているかということをもう少し考える必要があるのかなというふうに思います。

○参考人(日野愛郎君) 政党交付金の問題でありますけれども、政党交付金というのは、これはやはり政党というのが公の存在であり、そして持続的に存在し続けて、それはもちろんいろいろ離合集散ありますけれども、その下で政党政治が行われるということでありまして、これはヨーロッパ等々でも、政党交付金というのは八〇年代、九〇年代と認められていったという流れもあります。正当化、そういう意味ではできるものだというふうに思っております。
 ただ、その条件がやはりありまして、政党交付金というのは、例えば調査立法活動、いろいろな費目がありますけれども、そのような政党の目的といいますか活動には様々なものがありますが、必ずしも当初もくろんでいたような形で全て使われているわけではないと。政党には、当然のことながら、いろんな政党が追求するものとしては、選挙なら得票であったり政策であったり公職であったりと、いろいろあるわけです。必ずしも政策型の民主政治を根付かせるというところに結び付いているかというと、そうではない。どういうふうに支出されているかということは、これはやはり完全には問われていないわけでありまして、三百十九億円ぐらいの年間支出が国庫から出ているわけですけれども、やはりそれがどのように使われるかということをもう少し注目していった方がいいんではないかというふうに個人的に思っております。

○倉林明子君 ありがとうございました。