福島原発事故賠償打ち切るな 東電の「合意書」撤回主張(経済産業委員会 閉会中審査)
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日本共産党の倉林明子議員は12月3日の参院経済産強委員会で、福島第1原発事故による中小企業や自営業者などの営業損害に対し、東京電力が実質的な賠償の値切りや打ち切りをしている実態を示し、国に適切な指導を求めました。
東電は業者に対して、直近1年間の逸失利益の2倍相当額を営業損害「将来分」として払うとして、業者の合意を求めています。しかし、実際には、東電が「事故との相当な因果関係」がないとして賠償の値切りや申請を却下する事例が発生しています。
倉林議員は「利害当事者の東電が客観的な根拠もなしに、『相当な因果関係』(があるかないか)を決めることなど許されない」と指摘。また、原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)では、賠償請求権を放棄するような条項が請求書に記載されることへの懸念が示されていたにもかかわらず、東電の示した「合意書」には、「和解」を確認するかのような「将来分」を含むとの文言が明記されているとして、「原賠審の中間指針からも後退がある『合意書』は撤回させるべきだ」と主張しました。
林幹雄経産相は「個別の事情をうかがって丁寧な対応を行うことが重要」と述べるにとどまりました。倉林議員は「(賠償の)打ち切りが実際に起こっているという実態を踏まえた指導を行うべきだ」と重ねて強調しました。
質問に入ります前に、今憲法に基づきまして野党が臨時国会の開催を要求しております。ところが、これに応じないと。これ、大変異常なことだと思います。強く抗議の意を表明しておきたいと思います。
そこで、質問に入ります。福島原発事故の営業損害問題に今日は絞って質問したいと思うんです。
そこで、大臣にまず確認したいのは、この損害賠償に当たりまして、東電が三つの誓いということで、これ、大事な点を掲げております。これを大臣から御紹介いただきたいのと、この三つの誓いに対して大臣の評価を確認したいと思うんです。東電は、この誓い、三つしっかり遵守しているという評価なのか、反する行為はないと言えるとお考えなのか、いかがでしょうか。
○国務大臣(林幹雄君) 平成二十七年七月に変更を確認されました新・総合特別事業計画において、東京電力は、原子力損害の賠償についての三つの誓いとして、最後の一人までの賠償貫徹、迅速なきめ細かな賠償の徹底、和解仲介案の尊重、これを掲げて全社を挙げて取り組んでいるところでございます。
福島の復興と被災者の生活の再建のため、公平かつ適切な賠償が迅速に行われることが大変重要であるというふうに考えておりまして、私としては、東京電力には引き続き、この三つの誓いの趣旨を踏まえて、今後とも被害者の方々に寄り添い、誠意を持って丁寧に対応するよう求めてまいりたいと考えております。
○倉林明子君 現時点でこの三つの誓いに反するような行為はないというふうにお考えですか。
○国務大臣(林幹雄君) そのように考えております。
○倉林明子君 そこで、営業損害賠償の現状の実態について私の方から紹介したいと思うんですね。
現在、改訂されました福島復興指針、これに基づく新たな一括賠償の請求書が該当者に送られる、請求申請も始まっております。この新たな指針の説明を六月二十六日に福島原子力損害対策協議会、いわゆるオール福島が参加した損害対策協議会で説明をされております。
東電からは、皆さんの御要望も受けて賠償額の増額をするという説明をした上で、減収について、区域内の場合、減収率一〇〇%の年間逸失利益の二倍と、こういう説明です。区域外につきましては、他要因を含む直近一年間の逸失利益の二倍相当額と、考え方を明確に示されました。
ところが、将来分の請求を行いました区域外、このところでは半分になったと、あるいは全額却下されたと、こういう声が相次いで寄せられております。これ、二倍どころか賠償の値切り、打切りということが起こっているわけです。つかんでおられますでしょうか。これ、担当でお答えいただきます。
○政府参考人(田中繁広君) それでは、お答えを申し上げます。
先ほど御質問にもございましたとおり、本年六月に閣議決定をされました改訂福島復興指針を踏まえまして、営業損害賠償につきまして、今東京電力におきましては、避難指示区域外で商工業等を営んでいる事業者につきまして、風評被害など事故との相当因果関係が認められる減収を被っている方を対象といたしまして、将来にわたり発生する減収相当分として、直近の減収に基づく年間逸失利益の二倍相当額を一括してお支払をするということにさせていただいております。
このことにつきましては、非常に地元に対しましても丁寧な御説明をしながら、六月の十二日の閣議決定を経まして、六月の十七日にはプレスリリースを行い、また今先生からも御指摘がございました二十六日の説明会というふうに至っておるわけでございますけれども、そういった考え方を十分に説明をしました上で、現在東京電力におきましては、個別の事業者からいただいております申請についてしっかり読み込みをするとともに、事情も丁寧にお伺いをしながら、新たな請求の受付あるいは賠償金の支払を進めているところでございます。
現状、その請求内容を確認させていただいた結果としまして、事故との相当因果関係が認められる請求につきましては適切にお支払をさせていただいているということだと承知をいたしております。
それから、賠償の実施に当たりましては、いずれにしましても個別の事情をよく伺って丁寧な対応を行うことが重要であると考えておりまして、経済産業省といたしましても、事故との相当因果関係が認められる損害に対しまして適切に賠償するよう東京電力をしっかりと指導してまいりたいと考えております。
○倉林明子君 そこが問題なんですよね。
初めて今回、本件事故との相当な因果関係の判断をして、却下だ、値切りだということが始まっているわけですよ。当初は、これで再建につながるように増額要望に応えますと言っていたわけですよ、説明会で。これは、二倍とかいう説明というのは、全くの実態を反映しないだましのようなことを現場に与えているということをしっかり受け止める必要があるというふうに思います。
その上で、東電がやっていることは、私、重大な問題があるというふうに思っています。それは何かと申しますと、請求者に対し、相当な因果関係がなければ賠償はないと東電言っているんですね。ところが、相当な因果関係の特定、これ、誰がしているのかというのは重要なことになってくるんですね。公平で客観的な判断になっているのかと。住民が十分に、被害者が十分に納得できるものになっているのかということになるわけだからです。一体、この因果関係の特定というのは誰がしているのかと。
さらに、その根拠、データ等を見てというのが指針の中にもありました。このデータというのは一体何なのか、明確にお答えいただきたい。
○政府参考人(田中繁広君) お答えを申し上げます。
ただいま御質問ございました、まず相当因果関係でございます。
こちらにつきましては、一般的な損害賠償のルールですと、これは損害を求める側が立証するというようなことがあるわけですけれども、それでは事業者の方々に大変な御負担をお掛けするということも考慮をし、むしろ、この東電の賠償のケースにつきましては、東京電力自身も確認のできるようなデータはしっかりと集めたり、そういったまず作業をしっかりとするということがまず前提になっております。
その上で、申し上げるまでもなく、そういった得られる統計データなどにのみよって判断をするということではやはり足らない場合もあるわけでございまして、事業実態などに関します大変きめの細かい、またそれぞれお申立てのあるような状況というのを懇切丁寧にお伺いをしまして、そういったものを全て併せた上でしっかりと御判断をするという、そういった仕組みになっているわけでございます。
その際、統計データなどが使われることが多いわけでございますけれども、具体的には、公的なところが出すもの、それから団体が出す等、いろいろなものがございますので、そこについては様々なものを活用していると聞いております。
以上でございます。
○倉林明子君 妥当かどうかというのは、データが公開される、基準が公開される、こういうことがあって初めて私は可能になるものだと思います。
また、私これ質問するに当たって繰り返し求めたけれども、東電が公開していないので公開できませんと、こういうことでしたよ。私はそれは重大な問題だと思う。
さっき紹介した説明会で、県の参加者、私学団体連合会から、相当因果関係について指摘がされております。これは、東京電力側でこれは事故とは関係ない損害ですよと証明できなければ損害賠償する、これが当然であり、住民の方が事故がなくてもこうしたことが起こったんだと納得すれば賠償しない、これはやむを得ないと思うと。真摯な対応をしてほしいと。これは当然のことだと思うんですね、私。
六月の説明会で東電自身がどんな説明していたかというと、相当な因果関係による損害は他の減収要因と混在し特定困難と、こう言っていたんですね。これ僅か数か月の間で特定できるようになったという信じ難い話だと私は指摘しておきたいと思うわけです。そもそも、利害当事者である東電、まして加害者である東電がこうした客観的な根拠もなしに一方的に相当な因果関係を決めること、これ自体が私は許されないというふうに思います。
改めて、その基準となる指針を出しました文科省に確認をしたいと思うんです。
九月九日、四十一回の原賠審が開かれまして、賠償の見直しについての説明に対しまして、能見会長が改めて賠償の終期について御自身の理解を述べておられます。その箇所を紹介していただきたい。
○政府参考人(板倉周一郎君) ただいま御指摘がありました第四十一回原子力損害賠償紛争審査会における能見会長の御発言の概略を御紹介させていただきます。
能見会長からは、本年六月に閣議決定された「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」改訂に基づく営業損害の一括賠償に関しては、二年分を賠償することで、それで逸失利益は全て賠償したことになるという意味で理解すべきではない、審査会の指針では営業損害の終期について具体的には示していないが、将来にわたる損害、二年分で終わりという意味だとすると、指針の考え方を少し踏み越えているように感じる、営業損害の一括賠償の後、個別の事情でまだ営業損害が続いているというような状況があれば、それはなお賠償の対象となり得るという理解でよいかとの御発言がありました。
これに対して東京電力より、個別事情をお伺いして相当因果関係のある損害がある限りは賠償を行うとの回答がありました。
○倉林明子君 能見会長は、営業損害について、その終期、指針ではっきり書いていないと、どこかに終期はあると思うが、はっきり書けないので書いていないと、こういう発言をされておるわけで、その続きでも今御紹介あった話もされているということです。
だから、結局、今やられているという、東電が将来分の請求に対して、いや、もう実質的には却下しますと、半分ですというようなことを通告しているというのは、私は終期を東電側が決めているということになるんじゃないかと思うんです。私は、原賠審の会長が懸念されたように、指針から見ても明確な後退があるんだと思うんです。
経産大臣に聞きたいんですけれども、こうしたそもそもの基準を決めた指針からの後退、賠償の値切りや打切りということについては、私は直ちにやめるように指導すべきだと思います。いかがでしょうか。
○国務大臣(林幹雄君) 東京電力によります新たな経営損害賠償につきましては、改訂福島復興指針を踏まえて、事故との相当因果関係が認められる減収が生じている事業者に対し年間逸失利益の二倍相当額を支払うことといたしまして、その後は個別の事情を踏まえて適切に対応することとしております。
営業損害賠償の終期に関しては、中間指針においても、個々の事情に応じて合理的に判定することが適当であるとされておりまして、新たな営業損害賠償についてもその考え方に沿ったものであると考えております。
賠償の実施に当たっては、個別の事情をよく伺って丁寧な対応を行うことが重要でありまして、経済産業省としては、引き続き事故との相当因果関係が認められる損害に対して適切に賠償するよう、東京電力に対して指導をしてまいりたいと思います。
○倉林明子君 私は、第四十一回の原賠審の中で会長自身からも大きく懸念がされた、後退になるようなことあっては指針を踏み越えるものになるんじゃないかと、この指摘は私重大だと思うんです。因果関係が証明されなければ実際にはもう終わりですということ現実起こっているわけですから、私はこの問題では指針を踏み越えるようなことをやめるべきだと。
さらに、この合意書、今日は添付資料として添付しております。黄色のアンダーラインのところを見ますと、原賠審で能見会長が心配、懸念を表明されていた、これが和解書のようなものになってはいけないという指摘もされているんですね。そういう懸念を表明されています。
ところが、これ見れば、営業損害の将来分を含むということで明確に記入されているんです。将来分を含んだ合意なんだということをまさに和解する文書に私はなっていると思います。その上、精算条項もプラスマイナス書かずに記載がされている。これにも合意しろというのは終期への合意を求めるものにほかならないと。
私は、撤回して、懇切丁寧な賠償の貫徹と、この三つの誓いに戻った指導を徹底していただきたい、強く求めたいと思います。重ねてこの合意書の撤回を求めたいと思います。いかがでしょうか。
○委員長(吉川沙織君) 簡潔に答弁をお願いします。
○国務大臣(林幹雄君) はい。
東京電力による商工業等の営業損害賠償につきまして、改訂福島復興指針において、国が特に集中的に自立支援施策を展開する二年間に東京電力が営業損害や風評被害への賠償について適切に対応することとされたことを踏まえたものであります。
東京電力は将来にわたる損害への賠償として逸失利益の二倍相当額を一括賠償することとし、また、一括賠償の後においても、個別の事情を確認の上、適切に対応することとしております。賠償を打ち切るものではございません。このため、中間指針から後退しているものではないと考えておりまして、国としても、集中期間に自立支援施策にしっかりと取り組み、被害者の事業や生業の再建、事業者の自立などを通じて、原子力災害により生じている損害の解消を図ってまいります。
○倉林明子君 打切りが実際起こっているということを経産省も知っているはずですから、実態を踏まえた指導を強く求めたい。
終わります。