適正価格確保施策を 官公需法(経済産業委員会)
(ページ下部に資料があります)
倉林明子議員は4月16日の参院・経済産業委員会で、官公需における中小企業の受注拡大と人件費などの適正価格確保のため実効ある施策を政府に求めました。
倉林議員は、官公需法制定後40周年以上経過してようやく中小企業の官公需契約実績が全体の5割を超えたものの、契約額では20年前と変わらない実態を示し、ダンピング競争による労働者の賃金、下請け事業者へのしわ寄せで地域経済にも深刻な影響を与えていると指摘しました。
宮沢洋一経産相は「中小企業全体で官公需の受注を増やすことは非常に重要」としながらも、「適正は人件費の基準を一律に決めることは難しい」と消極的な態度を示しました。
倉林議員は、国交省が昨年末、公共工事発注者に対して示した「歩切り」(妥当な工事費用を予定価格の段階で控除する行為)の廃止を求める文書では、「歩切り」は違法であり根絶すべきものと明記していることを紹介。一方、建設業以外の官公需においては、適正価格の設定にあたっての配慮しか求めておらず法的義務がないとし、国が公契約法を制定し、中小企業、下請け労働者の賃金の底上げに貢献すべきだと主張しました。
官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)
〇委員長(吉川沙織君) 官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。
〇倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
官公需法に関わって質問をしたいと思います。
景気回復の実感を全国津々浦々にまで届けることが必要不可欠であるということが述べられていたかと思います。そこで、地域経済活性化のためには、新規中小企業の参入促進ということにとどめないで、全ての中小企業を視野に入れた官公需の活用、受注機会の増大ということが極めて大事になってきていると思いますけれども、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
〇国務大臣(宮沢洋一君) おっしゃるとおり、中小企業全体で官公需の受注機会を増やしていく、受注を増やしていくということは大変大事なことでありまして、これまでもそういうことでやってきたわけですが、今回は特に新規中小企業者を殊更に取り上げたわけでありますけれども、新規中小企業者につきましては、やはり販路開拓といった意味で大変苦労をしている、そしてその原因が受注の経験が少ないということというようなことでありますので、官公需というところで実績をつくっていただいて、そして新たにその他の民間にも入っていっていただくということで、新規中小企業者を今回の立法で特に国、地方で応援していこうということでありますけれども、中小企業全体の受注を確保していく、拡大していくということは、当然のことながら大変大事な政策であります。
〇倉林明子君 そこで、官公需法が制定されてから長いわけですけれども、一九六六年度の中小企業契約実績、今日は実績一覧を資料として入れておりますので御覧いただきたいと思います。実績で、発注率は当初二五・九%ということでした。
実績で五割、五〇%を超えたということでいいますと、一体何年になっているか。契約額ということで見ますと、超えた年に一体幾らになっているか。年と額でお答えください。
〇政府参考人(佐藤悦緒君) 官公需の実績で中小企業比率が初めて五〇%を超えたのは平成二十一年度で、官公需総契約額に占める中小企業向け契約額は四兆一千九百三十二億円でございます。
〇倉林明子君 法制定時から見れば、実に四十三年掛かってようやく五割を超えたということになっているんですね。契約金額で見ますと、中小企業発注比率が三七・七%だった、これは平成四年に該当します。ここで、中小企業・小規模事業者向けの実績額ということで見ますと、既に四兆四千億を超えておりまして、額で見れば二十年前と変わらないという額になっているんですね。確かに比率は増加したということは言えると思うんですけれども、全体の受注額がこれは増えてないということも言えると思うんです。
官公需法の目的である中小企業に対する受注機会の拡充、これは率直に見て進んだと言えるんだろうか、中小企業の経営基盤、これを強化するということで貢献できたというふうに見ているのかどうか、大臣、いかがでしょうか。
〇国務大臣(宮沢洋一君) 官公需自体がやはりかつての高度成長の時代等々から比べますと小さくなってきているということ、特に公共事業などはかなり縮小してきているという状況の中でありまして、なかなか絶対額で伸びていくということは難しいわけですけれども、これなりのパーセント、五〇%を超える官公需が中小企業向けとなっているということは、それなりに意義のあることだろうというふうに思っております。
また一方で、官公需を受注した中小企業・小規模事業者の多くは、官公需の受注により金融機関などからの信用力が増して、その後のビジネスが拡大したという声もございまして、恐らく官公需といったもの、これからぼんと伸びるという状況ではないと思っておりますけれども、そういう中でしっかり中小企業の受注機会を確保していきたいと考えております。
〇倉林明子君 この間、一般競争入札が拡大する中で、地方でもそうでありますけれども、高額案件、これは大手が持っていく、地元の中小企業というのは下請に入れても利益が確保できないと、こういう実態が広がっております。元々地元の実績があった中小企業でも、価格を下げないと落札できないと。これが本当にひどいダンピング競争ということを引き起こしまして、公共事業を取ろうと思ったら赤字覚悟でないと取れないというのはよく御存じだと思うんですね。まして、企業規模が小さいほど利益率は低いと、我が京都でもそういう状況になってきております。
官公需を中小企業が受注することで、私、率直に言って経営基盤の強化に直結することになってないという実態をきちんと見る必要があるんじゃないかというふうに思うわけです。
そこで、工事だけでなくて、清掃、警備、この役務契約でも続いているダンピング競争、工事の品質の低下や労働者や下請業者へのしわ寄せということを引き起こしておりまして、私、地域経済にもこれ深刻な影響を与えているというふうに思うんですけれども、認識はいかがでしょうか。中小企業庁に伺います。
〇政府参考人(北川慎介君) ダンピングというような現象についての御指摘だと思います。
官公需におきまして、不当な低価格での入札、いわゆるダンピング、これは人件費へのしわ寄せ、安全対策面での問題、提供される商品、サービスの品質の低下と、様々な問題を引き起こす可能性があります。これは受注者側、発注者側双方にも不利益を生じさせるものであると思います。
このため、国等の契約の方針におきまして幾つか定めております。一つは、発注者側が適切な人件費等を含んだ予定価格を作成すること、二つ目が事業者に人件費等を適切に見積もるよう求めること、三つ目が仕様を可能な限り明確化するとともに契約の進捗管理を徹底すること、四番目が内容に応じまして総合評価落札方式の適切な活用に努めまして、価格以外の要素も評価していくということでございます。このようなことで適切な予算執行に努めていくと考えているところでございます。
また、予定価格が一千万円を超える工事あるいはその他の請負契約に
つきまして、落札価格が各府省の定める基準価格を下回る場合には、各府省は会計法令に基づきまして契約が適切に履行されるかを調査することとなっております。いわゆる低入札価格調査制度でございます。こうした取組を通じまして、ダンピング防止には十分配慮しつつ、中小企業者の官公需への参入を促進していきたいと考えております。
〇倉林明子君 ダンピング競争のしわ寄せということでいうと、いろんな手を打っているという説明なんですけれども、やっぱりしわ寄せが解消され切ってないという状況があるんですよね。そこに円安による原材料価格の高騰がある、消費税の増税があると。ますます中小企業の利益率が今現状で落ちているという実態をきちっと見ないと駄目だと思うんですよ。
その上で、改めて中小企業庁に確認したいんですけれども、官公需における適正価格、これはどうあるべきということでしょうか。短く端的に説明してください。
〇政府参考人(北川慎介君) 短くということでございます。
具体的には、予定価格の設定に際しまして、社会保険料を含む人件費、原材料コストの変動、消費税の負担などを勘案して適正な価格を作成するということだと思います。
〇倉林明子君 結局、その適正価格について、考慮は求めるけれども法的義務がないという規定になっているんですね、適正価格については。
ところで、公共事業の中でも建設業については激しいダンピング競争が本当に社会問題にもなってきたという中で、歩切りについては一歩踏み込んだ対応がされているということで聞いております。
そこで、国交省にも来ていただいていますので、歩切りについて、昨年末、「「歩切り」の廃止による予定価格の適正な設定について」と公共工事発注者に対してお知らせをされているかと思います。その要点、御説明ください。
〇政府参考人(栗田卓也君) 公共工事における歩切りの廃止に向けた取組についてのお尋ねでございます。
昨年六月に、公共工事の品質確保の促進に関する法律、これが全会一致で改正されております。これによりまして、発注者の責務として予定価格を適正に定める、これが法定されております。これを受けまして、昨年九月の閣議決定で、いわゆる今委員御指摘の歩切りというものは公共工事の品質確保の促進に関する法律に違反する、違法行為であるということを明記したということでございます。
こういった状況を踏まえまして、御指摘のとおりでございますけれども、昨年十二月にリーフレットを作成いたしました。「「歩切り」の廃止による予定価格の適正な設定について」と題するものでございます。これを全ての公共工事の発注者に周知いたしました。
ポイントでございますが、そこの中では、歩切りを根絶すべき理由として、歩切りが行われると予定価格が不当に引き下がりますので、能力のある建設業者が排除される、ダンピング受注を助長する、そういったことになる、中期的には、インフラのメンテナンス、そういった将来の地域の維持にも支障が出る、こういったことを明記しております。
したがいまして、そのリーフレットの中でございますが、歩切りの根絶ということで、市場の実勢等を的確に反映した積算による予定価格の適正な設定に取り組んでいかなければならない、こういう旨を要請しております。なお、今申し上げました市場の実勢といいますものは、市場における労務費、こういったものの取引価格を的確に反映するということを念頭に置いております。
引き続きまして、歩切りの根絶に向けてしっかり取り組んでまいりたいと考えております。
〇倉林明子君 私、品確法、建設業法、それに対して違反であるということを明確にメッセージとしてお知らせしているというところが大きく踏み込んだということだと思うんですね。建設業以外の官公需でも、適正な人件費、これがきちっと確保できるということをやっぱり法令で担保していく、規定していく、こういう考え方に転換していく必要があるんじゃないかと。官公需から率先して実施すべきではないかと思うんです。
先ほど来、賃上げのお話もありましたけれども、どうやって底辺で働いている地域の地元の産業、中小企業のところの賃金の底上げを図るかという観点からも、私、本当にいい国交省の取組等にも学んで考えていくべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
〇国務大臣(宮沢洋一君) 人件費等々が出ないような価格で落札するという競争があったわけですけれども、かなり現在は状況が変わってきていると思っておりまして、大震災の復興また東京オリンピックといったようなことで、少なくとも私の地元では、仕事はあるけれども人が集まらないと、こういう状況でありますので、少し状況は良くなってきていると思いますが、またいつ何どきこういう状況が起こるか分からないという状況だと思っております。
今、話を承っておりまして、歩切りというのはある程度外形的にも分かるんだろうなと。一方で、適正な人件費というのは実は、何が適正かというのは抽象的には言えますけれども、なかなかこれははっきりしないというようなことで、少し法令でいろいろ規制するというのは正直言って大変難しい話だろうと思っておりまして、先ほど企業庁長官からもお話ししましたけれども、国の契約の基本方針においてしっかりと書き込んで実施していきたいと思っております。
〇倉林明子君 結局、低入札、ダンピング競争がどういう現象を引き起こしたかというと、下請のところでの総額の、受ける際に、三割、四割カットして受けると。そうなった分は全部労賃に跳ね返って、そこがぐっと引下げ圧力になる、いつまでたっても末端労働者の賃金が上がらないという構造になってきたわけでね。じゃ、その際に最低賃金を参考にしなさいと、最低工賃も参考にしてほしいと、こういう議論もしましたけれども、やっぱり最低限の人件費を適正に確保していくという考え方でやっていく必要があると。実際には地方自治体では、公契約条例ということを幾つかの自治体でも作っております。そういう公契約の下で末端の労働者の賃金が上がるという現象もこれ確認できているわけです。
本来、国が公契約法を制定して、中小企業・下請労働者の賃金の底上げと、賃上げと言うんやったらこういうところからやるべきじゃないかと強く指摘いたしまして、終わります。